貴久樹
創業33年。インドの染織文化の奥深さに感動し、日本で初めて野生の糸を使った呉服に挑戦。アジア各地の手仕事から生まれる着物や帯は、豊かな表情と着心地のよさが魅力。
アジア各地の素材や伝統的な技法を用いて、個性の光るものづくりを続ける貴久樹。
アジアの国々を行き来しながら商品のディレクションを担当する糸川常務に、そのこだわりについてお話を伺いました。
インドのタッサーシルクやムガシルクをはじめ、アジア各地の野生の糸を使ったオリジナルの布を開発し、着物や帯に仕立てています。
更紗と呼ばれる、つる草や唐花などの植物、またはペルシャ由来の文様を好んで描いたり、手刺しゅうを施したり。
インド、インドネシア、中国、日本など、アジア圏に残る伝統的な手仕事を、着物や帯という形で残していけたらと思っています。
日本人というと、ものすごく緻密にものをつくることが得意な国民性ですよね。
創業者である糸川禎彦氏の言葉に「88点の美」というのがあるんです。100点満点ではなく、88点。精密であることが絶対ではなく、どこかちょっと抜けていたり、人がすることのどんくささが顔を見せたり、味わいを感じるもの。
機械で織れば均質な布が織れるんでしょうけれど、不揃いなムラのある野生の糸を使って手織りすることで、すごく愛おしいものができあがってくる。標準化を極めてきた日本では残っていないようなものが、幸いアジアの各地にはまだ残っています。そういうものを探して、着物や帯に取り入れています。
手織りだから経糸を細くできるので、そういった布がつくれます。
着物や帯は重たい印象がありますが、貴久樹の商品はとても軽く、大変着心地がいいと、お客様にも喜んでいただいています。
インドの女性が着るサリーやタイルの模様、また昔の掛物などからインスピレーションを得て、デザインすることもありますね。
現地の方とコミュニケーションを取りながら生産していますが、ときにはコミュニケーションがうまくいかず、お願いした通りにできあがらないことも。
日本だと一遍にできることでも、失敗の積み重ねの上にやっとできるという感じですね。
最近は縫い子さんが減ってきている状態なので、手刺しゅうには特に思い入れがありますね。
ひと針、ひと針、縫い上げて仕上げる商品は、途方もない時間がかかることも。ものによっては一年以上かかります。
どの商品もみんな我が子のようにかわいいのですが、その中でも手刺しゅうのものは本当に愛おしいなと思います。一つひとつ違う表情をしているところも好きですね。
そういった方々と、わたしたちの刺しゅうの技術や更紗のデザインをミックスして、これまでにない新しいものを生み出していきたいですね。
世界のものづくりに広く精通しているからこそ、さまざまなアイデアも出てくるはず。
日本のつくり手さんと協働することで、楽しい化学変化が起きればいいなと期待しています。
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