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ケからハレまで、豊かな男きもの『私にふさわしいホテル』 「きもの de シネマ」vol.57

ケからハレまで、豊かな男きもの『私にふさわしいホテル』 「きもの de シネマ」vol.57

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銀幕に登場する数々のキモノたちは、着こなしやコーディネートの良きお手本。せっかくなら、歌舞伎やコンサートみたいに映画だってキモノで愉しみませんか。2024年最後にお届けする映画は、堤幸彦監督最新作『私にふさわしいホテル』です。

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ごきげんよう、椿屋です。

新年を迎える支度で気忙しい歳の瀬、年内最後のピックアップ作品は『私にふさわしいホテル』です。

©2012柚木麻子/新潮社©2024「私にふさわしいホテル」製作委員会

©2012柚木麻子/新潮社©2024「私にふさわしいホテル」製作委員会

原作は、柚木麻子さんの同名小説。

新人賞を受賞したにも関わらず、未だ単行本を出すことができない不遇な新人作家・相田大樹こと中島加代子(のん)が、その原因となった酷評を書いた宿敵・東十条宗典(滝藤賢一)相手に、権威と柵だらけの文学界で下克上に奮闘する物語です。

©2012柚木麻子/新潮社©2024「私にふさわしいホテル」製作委員会)

©2012柚木麻子/新潮社©2024「私にふさわしいホテル」製作委員会

多くの文豪に愛されながらも、2024年2月に惜しまれつつ全面休館を迎えた「山の上ホテル」が全面協力した本作。

文豪好き、ホテル好きにもたまらない映像がちりばめられています。昭和レトロな空間で、野心あふれる新人作家VS文壇の権威の象徴たる大御所作家との攻防がコミカルに繰り広げられます。

メガホンを取ったのは、ドラマ「ケイゾク」「池袋ウエストゲートパーク」「TRICK」などの話題作を手掛けてきた巨匠・堤幸彦監督。出版界の裏側に迫り、作家の本音を赤裸々に描き出します。

©2012柚木麻子/新潮社©2024「私にふさわしいホテル」製作委員会

©2012柚木麻子/新潮社©2024「私にふさわしいホテル」製作委員会

不屈のエネルギーで権力者へ立ち向かっていく主人公の片棒を担がされるのは、彼女の大学時代の先輩でもある曲者な敏腕編集者・遠藤道雄(田中圭)

加代子や東十条といった猛獣のごとき作家たちを巧みに操り、才能至上主義ながらもどこか人間味にあふれる憎めない編集者です。

©2012柚木麻子/新潮社©2024「私にふさわしいホテル」製作委員会

©2012柚木麻子/新潮社©2024「私にふさわしいホテル」製作委員会

どんなに踏みつけられても立ち上げる雑草精神に驚き、大いに笑い、なんだか元気さえもらえる気がする物語です。

ズタボロになっても諦めない主人公の“痛快下剋上”を観て、晴れやかな気持ちで新年をお迎えください。

©2012柚木麻子/新潮社©2024「私にふさわしいホテル」製作委員会

©2012柚木麻子/新潮社©2024「私にふさわしいホテル」製作委員会
「美しいキモノ」2024冬号(婦人画報)の表紙を飾っているのんさん。映画の撮影場所となった「山の上ホテル」(現在クローズ中)で撮影されています。表紙の着物は「バーノンノン」の前で撮られたカット

大御所作家のハレとケの装いに注目

ポスタービジュアルを見れば一目瞭然。

のんさんのレトロキュートなファッションも素晴らしいですが、大御所作家を演じる滝藤さんの着物姿こそ見逃せない要素です。

©2012柚木麻子/新潮社©2024「私にふさわしいホテル」製作委員会

©2012柚木麻子/新潮社©2024「私にふさわしいホテル」製作委員会

執筆時や食事でも、いつも着物。とくに部屋着や不断着ふだんぎとして着用する際には、中にタートルネックをインしたざくっとした着こなしで、大変ナチュラルです。

©2012柚木麻子/新潮社©2024「私にふさわしいホテル」製作委員会

©2012柚木麻子/新潮社©2024「私にふさわしいホテル」製作委員会

かと思えば、授賞式などハレの場ではTPOに合わせた羽織袴を着用。一瞬で威厳と風格ある大御所感が立ち昇ります。いるいる!こういう大物作家!!

©2012柚木麻子/新潮社©2024「私にふさわしいホテル」製作委員会

©2012柚木麻子/新潮社©2024「私にふさわしいホテル」製作委員会

と思っていたら、行きつけのクラブでは女の子に鼻の下を伸ばすちょいエロおやじに。

「女はかくあるべし」が口癖の男尊女卑な尊大さに主人公同様、吼えてしまいそうになる一方で、内に秘めた追われるもの特有の焦燥感を滲み出させたり、長年第一線で活躍する作家らしいイノセンスを求める姿を垣間見せたり。

加代子(のん)にはなぜか振り回されてしまう、駄目なおっさんの一面も愛おしくなってくるのは、遠藤さんの好演があってこそ。

©2012柚木麻子/新潮社©2024「私にふさわしいホテル」製作委員会

©2012柚木麻子/新潮社©2024「私にふさわしいホテル」製作委員会

ちなみに、銀座にある馴染のCLUB「ジレ」でのシーンも見どころ満載です。

美人ママ・明美を演じるのは、田中みな実さん。

©2012柚木麻子/新潮社©2024「私にふさわしいホテル」製作委員会

©2012柚木麻子/新潮社©2024「私にふさわしいホテル」製作委員会

大御所作家を虜にし、手の平で転がす手練れっぷりを遺憾なく発揮しています。東十条が贈ったという見事な着物は、まさに眼福です。

店内の壁に彩りを添える帯をモチーフとした装飾もお見逃しなく!

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