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着物を“あるべき姿”で残したい― キモノインフルエンサー りょうたす。さん(後編)

着物を“あるべき姿”で残したい― キモノインフルエンサー りょうたす。さん(後編)

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総フォロワー数が70万人を超えるキモノインフルエンサー・りょうたす。さんの流儀についてお届けする後編。きものの師からの学びを得て、大切にしていることや敬愛するものについて語ってくれました。

2024.12.07

インタビュー

フォロワー数70万人の”きもの男子” キモノインフルエンサー りょうたす。さん(前編)

りょうたす。流、きものの選び方

りょうたす。流とは

りょうたす。さんのお気に入りは、『JOTARO SAITO』

※JOTARO SAITO……京都出身。祖父は染色作家・故斉藤才三郎氏、父は現代キモノ作家・斉藤三才氏。27歳のとき最年少キモノ作家としてデビューし、現代空間にマッチするファッションとしてのキモノを追求。日本を代表するキモノデザイナー・テキスタイルアーティストとして活躍する。

「シンプルかつシックなものが多い男性きものにおいて、上太郎さんのきものはインパクトがすごかった!」

きものを着始めて一年くらいだった青年は、「こんな男性きものがあっていいのか!」という大きな衝撃を受けたのです。

りょうたす。さんのお気に入りは、「JOTARO SAITO」

ご自宅の一角にて

着付けは動画で学んでマスターした彼ですが、「自分の目で見て納得したものを、人から直接買いたい」という想いが強い。

最初に購入した浴衣以外は、誂えたものしか着ていません。

「最初にガッと揃えて、それからは年に3~5枚くらい誂えています。きものは70~80枚、帯が10本くらいかな」

どんなきものが好きか訊いてみると、「このきものを街中で着ている人をもしお見かけしたら、僕なら一目惚れしちゃうな……」と思うものを選ぶと教えてくれました。

りょうたす。さんのお気に入りは、「JOTARO SAITO」

撮影クルーからのリクエストに応じて、廊下を何度も行ったり来たり

「赤と黒が多いですが、色味や素材などにこだわりはなくて、粋か粋じゃないか。

ちゃんと思い入れがあって、ちゃんと品もあって……ちゃんとしたもの=ホンモノ以外は着たくないんですよね。

あと、人と被らないものが好きです(笑)」

迷わず選んだ渾身のコーディネート

動画を撮影している和室

こちらが!あの和室

動画を撮影している和室は、フォロワーにはお馴染みの場所。

無理をお願いして、同じ場所でお着替えシーンを撮影させていただきました。

動画を撮影している和室

一つひとつの所作も美しい

それまでのジャージ素材の着物=「ダル着(部屋着)」(りょうたす。さん談)から一変、華やかな襦袢と目を引く朱赤の袷でカメラの前に現れたりょうたす。さん。

随分と印象が違って見えました。

角帯は、八掛と同じ柄のもの。

八掛と同じ柄の角帯

このリンクコーデをご覧あれ!

ぱっと見には分からないオシャレも、彼の好むところ。

「これは八掛を決めてから帯を買いました。女性ものだったので、切って角帯に仕立ててもらっています」

半衿は襦袢の共布で。

半衿は襦袢の共布で

柄 on 柄のお見本コーデ

フェミニンな柄行が、赤×黒のキリッとした印象を引き立てているから面白い。

「柄 on 柄もけっこう好きです。さり気なく女性らしさを取り入れたり。裏優りの恰好良さもいいですよね」

即買いした着物

「この着物は、JOTAROさんのきもののファッションショーで一番輝いて見えた作品です。

ロマンスグレーの男性モデルが着用されていて、すごく魅力的だったんですよ。30年後の自分の理想像そのものだったので、即買いでした!

そういうのも、きものを着続けていく醍醐味だと思います」

きもののファッションショーで一番輝いて見えた作品

「水も滴るいい男」を体現してみる

小雨が降る中、ご近所での撮影

小雨が降る中、ご近所での撮影にも快く応じてくださったりょうたす。さん。

手には、日本最古の京和傘屋『辻倉』の番傘(雨傘)を携えて。紫×黒の妖艶な雰囲気が、よくお似合いです。

そこに黒の長羽織で、格好良さをプラス。

足元は黒

足元は、黒で。

「角ばっていて踵の高いタイプが好みで、気づけば似たような草履ばかりが増えていきます(笑)」

足元は、黒で。

「ここ通学路だったんですよ。家の近くにこんな映える場所があるなんて、思ってもみませんでした!」

と、カメラマンの腕に興奮するりょうたす。さん。

22歳(取材時)の青年らしさに溢れていました。

”負担のないカタチ”での継続が大事

不躾ながら訊いてみました。きもの一枚、いくらまで出せますか?と。

「110万円まで!」

明確な答えが返ってきました。

「毎日着るものなので……どんなに気に入っても、それ以上だと諦めます」

きもの一枚、いくらまで出せますか?

取材中、彼が何度か口にした「毎日着る」という言葉。それは、着付けについて問うたときにも、するりと出てきました。

「動画を見てもらうと判るんですが、基本は腰紐一本で着ています。

毎日着たいのでしんどいのは避けたくて。紐一本でもいいから減らしたい。あるとき、衿留めというアイテムを知って、これは!と。

着崩れているのが分かる部分だけきちっとできればいいので、すぐ試してみました。もう手放せません。

ざっくりとした着付けが恰好いいこともあると思いますが、ぼくはあくまでもキレイに着たいし、シュッとしてたいんです」

動画でもよく登場する玄関

動画でもよく登場する玄関。10~12足くらいを履き回している

自身の着姿にも厳しい彼。SNSに上げる動画も、

「美じゃなくね?と思ったら削除することもあります(笑)。憧れや理想はもちつつ、自分に負担のないカタチで継続していくことが大事なので」

と、そのスタンスは柔軟かつ軽やか。

“あるべき姿”で、きものを伝えたい

最後に、今後の展望(野望?)について質問してみたところ――

「もう、毎日訊かれるんですよー!(笑)」

と頭を抱えたりょうたす。さん。

日本の和の顔になりたい!

「正直、好きで着ているだけなので、きものの未来なんてどうでもええわ!と何回も思ったけど(苦笑)、これが使命なんじゃね?だったらやるしかない!とも思うんですよね。

ホンモノの姿を残したい。そのためにも、まずは知ってもらうことが大切」

「ひとことで言うなら……”和の顔”になりたい!かな。何でもやるっきゃない。きものや和に興味をもってもらえるきっかけになれたら。

今後は、日本の和をもっと盛り上げられるような会社を立ち上げて、海外を見据えていろいろと挑戦していきます」

22歳の青年らしさに溢れていました。

「100年後、200年後まで、“あるべき姿”できものを伝えたいと本気で思っているので……

きものと読者のみなさまのお力を借りられたらええなぁ。それがぼくの切なる願いです!」

扉画像

取材・構成/椿屋
撮影/松村シナ

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