着物・和・京都に関する情報ならきものと

『モネ 睡蓮のとき』 国立西洋美術館 「きものでミュージアム」vol.39

『モネ 睡蓮のとき』 国立西洋美術館 「きものでミュージアム」vol.39

記事を共有する

『モネ 睡蓮のとき』が 国立西洋美術館で開催中。印象派を代表するクロード・モネの<睡蓮>を中心に、ジヴェルニーの終の棲家の庭を描いた晩年の作品の数々がパリのマルモッタン・モネ美術館から!モネが生涯をかけて追求した光と色彩の世界!!

過去最大規模! モネ〈睡蓮〉が一堂に会する機会

今回は、国立西洋美術館で開催中の『モネ 睡蓮のとき』をご紹介します。

※本コラム内の美術作品の写真につきまして、各美術館プレスより撮影および掲載の許諾を得て使用しております。

「モネ 睡蓮のとき」展示室前ロビー

「モネ 睡蓮のとき」展示室前ロビーにて

今年は、1874年に第1回印象派展が開催されてから150年

その記念すべき年に、印象派を代表する画家のひとりであるクロード・モネ(1840-1926)の晩年の制作に焦点をあてた展覧会が開催されています。

パリのマルモッタン・モネ美術館の所蔵作品およそ50点に、国立西洋美術館をはじめ日本各地に所蔵される作品を加え計64点、すべてモネの作品です。

「モネ 睡蓮のとき」展示風景

「モネ 睡蓮のとき」展示風景、国立西洋美術館、2024-2025年

モネが40歳を過ぎてから終の棲家として住んだジヴェルニーの庭で描いた作品、特に〈睡蓮〉のシリーズが数多く並びます。

およそ 250点 もの〈睡蓮〉を描いたモネ。本展は過去最大の規模で、モネの〈睡蓮〉が一堂に会する機会となります。

モネの光と色彩、そしてその表現の変遷を存分に堪能することができます。

水と反映の風景に取りつかれてしまった。
老いた身には荷が重すぎるが、どうにか感じたままを描きたいと願っている。

1908年8月11日 モネの手紙より

※出品作品はすべて、クロード・モネの作品

モネの色遣いをたどる

モネは、1896年から1898年にかけて、ジヴェルニーから近いセーヌ河の風景を描いた連作を約20点制作しました。

毎朝3時半に起き、早朝の光と空気のわずかな変化をとらえるため、同時に14枚のカンヴァスに向き合って描き進めたといわれています。

左から:《セーヌ河の朝》、《ジヴェルニー近くのセーヌ河支流、 日の出》

左から:《セーヌ河の朝》 1897年 ひろしま美術館、《ジヴェルニー近くのセーヌ河支流、 日の出》 1897年 マルモッタン・モネ美術館、パリ(エフリュシ・ド・ロチルド邸、サン゠ジャン゠キャップ゠フェラより寄託)

同じ風景を描いた《セーヌ河の朝》と《ジヴェルニー近くのセーヌ河支流、 日の出》が並びます。

木々とその水面に映る様子が鏡のように映し出されて。朝霧に包まれる未明の情景と朝焼けの光の表現の違いが、とても味わい深いです。

《睡蓮、 夕暮れの効果》は、最初期に描かれた<睡蓮>と推測される作品のひとつ。

《睡蓮、 夕暮れの効果》

《睡蓮、 夕暮れの効果》 1897年 マルモッタン・モネ美術館、 パリ

睡蓮の花に焦点をあて、繊細に描かれています。睡蓮の可憐さと色の美しさに惹かれますね。

続いて、睡蓮の連作が並びます。

「モネ 睡蓮のとき」展示風景

「モネ 睡蓮のとき」展示風景、国立西洋美術館、2024-2025年

これらでは花よりも、水面に映る景色や水のゆらめきに焦点があてられています。

作品を比較しながら、離れて観たり近づいて観たり、色遣いや筆致を存分に味わうことができます。

《睡蓮》

《睡蓮》 1903年 マルモッタン・モネ美術館、 パリ

「モネ 睡蓮のとき」展示風景

「モネ 睡蓮のとき」展示風景、国立西洋美術館、2024-2025年

モネは睡蓮以外にもジヴェルニーの庭のアイリスやアガパンサス、藤などの花々も描いています。

自分で庭の手入れも行っていたモネの、花に対する愛情を感じる作品が並びます。

《黄色いアイリス》

《黄色いアイリス》 1914–1917年頃 国立西洋美術館

1919–1920年頃 マルモッタン・モネ美術館、 パリ 、右:《藤》 1919–1920年頃 マルモッタン・モネ美術館、 パリ

左:《藤》 1919–1920年頃 マルモッタン・モネ美術館、 パリ 、右:《藤》 1919–1920年頃 マルモッタン・モネ美術館、 パリ

左:《藤》 1919–1920年頃 マルモッタン・モネ美術館、 パリ 、右:《藤》 1919–1920年頃 マルモッタン・モネ美術館、 パリ

「モネ 睡蓮のとき」展示風景、国立西洋美術館、2024-2025年

1908年頃からモネには、白内障の症状が現れはじめます。

その影響もあって晩年の作品では次第に筆致は大きく大胆になり、色遣いにも変化が現れます。

「モネ 睡蓮のとき」展示風景

《日本の橋》の連作「モネ 睡蓮のとき」展示風景、国立西洋美術館、2024-2025年

不確かな視覚と闘いながら制作した作品は、モネの制作への情熱がそのままキャンヴァスにぶつけられたようで胸を打ちます。

これらは大装飾画の制作と並行して手掛けられました。のちの抽象主義の先駆に位置付けられます。

モネ 睡蓮のとき」展示風景

「モネ 睡蓮のとき」展示風景、国立西洋美術館、2024-2025年

モネ 睡蓮のとき」展示風景

「モネ 睡蓮のとき」展示風景、国立西洋美術館、2024-2025年

「大装飾画」壁画に託された想い

モネが構想した「大装飾画」とは、楕円形の壁面を覆うように睡蓮の池を描く大作の装飾画です。

モネは、観る人がまるで睡蓮の池のそばに立っているかのような没入体験を提供しようとしていたのです。パリのオランジュリー美術館に設置されることになる作品に、70歳を超えたモネは勢力的に挑みました。

本展では、こうした「大装飾画」に取り組んだモネが、同時期に制作していた作品を観ることができます。白い楕円形の部屋の壁面に「睡蓮」がずらりと並ぶ様子は圧巻です。

「モネ 睡蓮のとき」展示風景

「モネ 睡蓮のとき」展示風景、国立西洋美術館、2024-2025年

これらの作品には、空の反映、木々の揺らめき、そしてさまざまな水面の表情が独自のタッチで描かれています。

壁面全体が一体となって空間を包み込むような、現実の水辺にいるかのような感覚を与えてくれます。

モネ 睡蓮のとき」展示風景

「モネ 睡蓮のとき」展示風景、国立西洋美術館、2024-2025年

こちらは本展での、私の一番のお気に入り。

《睡蓮》

《睡蓮》 1916–1919年頃 マルモッタン・モネ美術館、 パリ

青い空と白い雲が美しく水面に写り、池の水面が輝くよう。ひときわ鮮やかな色で描かれた睡蓮の花にも惹かれました。

モネと松方幸次郎との交流

《 陽を浴びるポプラ並木》と《舟遊び》

左:《 陽を浴びるポプラ並木》 1891年 国立西洋美術館(松方コレクション)、右:《舟遊び》1887年 国立西洋美術館(松方コレクション)

”日本びいき”としても知られたモネ。浮世絵を収集し、ジヴェルニーの庭には日本風の橋や植栽を取り入れました。

そして、川崎財閥の二代目総帥として経済界に大きな影響を与え、美術収集家としても有名な松方幸次郎(1866-1950)

彼のコレクションは世界恐慌や戦争の影響で多くが手放されましたが、戦後まで残された美術品は日本政府に寄贈され、上野に国立西洋美術館が開館するきっかけとなりました。

現在は国立西洋美術館の常設展示でおなじみですが、今回モネの作品は本展に展示されています。

《睡蓮》

《睡蓮》 1916年 国立西洋美術館(旧松方コレクション)

松方幸次郎は、ジヴェルニーのモネのもとを訪れ、数十点に及ぶモネの作品を直接購入。

モネは、大装飾画に関連する作品の大部分を売らずにアトリエで保管していましたが、生前にその装飾パネルを手放したのは、松方ただ一人でした。それがこちらの《睡蓮、 柳の反映》です。

《睡蓮、 柳の反映》

《睡蓮、 柳の反映》 1916年? 国立西洋美術館(旧松方コレクション)

第二次世界大戦後、作品の所在が長らくわからなくなっていましたが、2016年にルーヴル美術館の保管庫で損傷した状態で見つかり、その後、国立西洋美術館へ返還されました。

作品の再発見当時、AIで欠損部分を再現したこともありました。今回はほかの同時期の睡蓮の作品とともに展示されていますので、それらを手助けに欠損部分を想像するのも興味深いですね。

最後に

これほどたくさんの睡蓮を観るのは初めてで、貴重な体験でした。それぞれの作品は、光や色の加減が違い、比較することができます。

また、時代によるモネの作風の変遷もおもしろく感じました。

画家にとって目が衰えていくのはどれだけ恐ろしいことだったでしょう……その焦燥感と衰えない創作意欲のせめぎあいを感じました。

「モネ 睡蓮のとき」展示風景

「モネ 睡蓮のとき」エピローグの展示風景、国立西洋美術館、2024-2025年

モネの作品は、近くで観るのと、離れて観るのとでは大きく印象が異なります。

近くで観ると、思わぬところに思わぬ色が使われていたり、筆致の違いを味わい深く楽しむことができます。さまざまな位置からご覧いただき、モネの世界をご堪能ください。

この日の装い

この日の装い1

印象派を意識した装いは、淡い色彩が美しい小糸染芸の訪問着と帯です。

この日の装い お太鼓

染め帯は特定の花を描いたものではありませんが、睡蓮にも見えますでしょうか。

この日の装い 帯回り

帯締めは道明の唐組・春秋。帯揚げは、京都きもの市場のみずのしのぶ先生の講座に参加したときに購入した、2色ぼかしのものです。

2020.09.29

インタビュー

小糸染芸 5代目当主・小糸太郎さん

2021.07.17

イベントレポート

着付けポイントレッスン「みずのしのぶの秘密の小技」 日本最大級きもの展示会2021@東京丸の内KITTE イベントレポート vol.3

撮影/五十川満

今回ご紹介の展覧会情報

モネ展ポスター画像

モネ 睡蓮のとき

国立西洋美術館(東京・上野公園)
https://www.ntv.co.jp/monet2024/

日時:2024年10月5日(土)~2025年2月11日(火・祝) 9:30 〜 17:30(金・土曜日は21:00まで)※入館は閉館の30分前まで

休館日:月曜日、11月5日(火)、 12月28日(土)-2025年1月1日(水・祝)、1月14日(火)
(ただし、11月4日(月・休)、2025年1月13日(月・祝)、 2月10日(月)、2月11日(火・祝)は開館)

■巡回予定

2025年3月7日(金)~6月8日(日)
京都市京セラ美術館

2025年6月21日(土)~9月15日(月・祝)
豊田市美術館

※詳細は展覧会公式サイトをご覧ください。

その他、おすすめの美術展

※日時など変更になる場合があります。おでかけ前に公式サイトなどで最新情報を確認してください。

はにわ展ポスター

挂甲の武人 国宝指定50周年記念 特別展「はにわ」

東京国立博物館 平成館(上野公園)
https://haniwa820.exhibit.jp/

日時:2024年10月16日(水)〜12月8日(日) 9:30〜17:00 ※毎週金・土曜日、11月3日(日)は20:00まで ※入館は閉館の30分前まで

休館日:月曜日 ※11月4日(月)は開館、11月5日(火)は本展のみ開館

■巡回情報
2025年1月21日(火)〜5月11日(日)
九州国立博物館

ベル・エポック展ポスター

ベル・エポック―美しき時代
パリに集った芸術家たち ワイズマン&マイケル コレクションを中心に

パナソニック汐留美術館
https://panasonic.co.jp/ew/museum/

日時:2024年10月5日(土)〜 12月15日(日)10:00~18:00 
※11月22日(金)、29日(金)、12月6日(金)、13日(金)、14日(土)は夜間開館20:00まで開館 ※入館は閉館の30分前まで

休館日:水曜日(ただし12月11日は開館)

※土曜日・日曜日・祝日は日時指定予約(平日は予約不要)。当日空きがあればご入館いただけます。

◆ 読者プレゼント ◆

モネ展ポスター画像

さて、恒例の招待券プレゼント!
今回は『モネ 睡蓮のとき』国立西洋美術館の招待券を5組10名の方にプレゼント!
ぜひ、きものでお出かけくださいね!

下記リンクより、お使いのSNS経由にてご応募くださいませ。

◆インスタグラム
https://www.instagram.com/kimonoichiba/

◆X
https://x.com/Kimono_ichiba

※応募期間:2024年11月11日(月)まで

シェア

BACK NUMBERバックナンバー

LATEST最新記事

すべての記事

RANKINGランキング

  • デイリー
  • ウィークリー
  • マンスリー

HOT KEYWORDS注目のキーワード

CATEGORYカテゴリー

記事を共有する