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風味豊かな煎りごまは絶品!『祇園むら田』へ 「京都できもの、きもので京都」vol.16

風味豊かな煎りごまは絶品!『祇園むら田』へ 「京都できもの、きもので京都」vol.16

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鉢であたる時に立ち上がる香りが豊かで、時々切らすことがあると、よそとの違いを実感させられます。「ああ、やっぱりむら田さんがいいなあ」と恋しくなるのはそんなとき。

2024.08.04

よみもの

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よみもの

山崎陽子さんのコラム「つむぎみち」(全13回)はこちら!

20年ほど前、美味しいもの好きの京都のライターさんからお土産にいただいたのが『祇園むら田』さんの瓶入り煎り白ごまでした。

ふわっと立ち上がる雑味のないごまの香りは格別で、その上品な味わいは食卓を豊かにしてくれます。

「むら田」

高台寺ほど近く、着物での散策にもぴったりのエリアにある店舗

店舗が新しくなり、4代目社長が就任されたばかりとお聞きし、久しぶりに祇園のお店を訪ねました。

丁寧に煎った、粒揃いのごまの品のある香りに魅せられて

お土産にいただいた煎り白ごま

上段が瓶入りの煎りごま

祇園むら田さんのことを知ったのは、お土産にいただいた煎り白ごまがきっかけです。

京都に行くと、錦市場や祇園のお店で求め、その後練りごまも愛用するようになりました

胡麻和えや白和え、お寿司やお丼、汁物や鍋のたれにと年中出番がありますが、鉢であたる時に立ち上がる香りが豊かで、時々切らすことがあると、よそとの違いを実感させられます。

「ああ、やっぱりむら田さんがいいなあ」と恋しくなるのはそんなとき。

4代目社長の村田賢俊さん

4代目社長の村田賢俊さん。清潔感ある店舗にて

「質のよいごまを探し求め、今はグアテマラのものを使っています。

乾燥させ、煎る前に表皮をきれいに取り除き、ムラが出ないように丁寧に煎ります。プチプチした粒感と濃厚な風味を出すため、加工の工程は手作業が多く、その分時間もかかりますね」

と、4代目社長の村田賢俊さん。

4代目社長の村田賢俊さん

物腰やわらかな村田社長。若奥様と二人三脚で家業を営む

水上勉のエッセイ『土を喰う日々』の中で、禅寺での侍者時代に、和尚さんから胡麻豆腐の作りかたを習うくだりがあります。

まず「胡麻の皮を剥け」と言われびっくりしたという話が出てくるけれど、まさにむら田さんのごまは、丹念な皮むきを怠らないやり方

小さな粒ひとつひとつに手をかけることが、この美しさと風味を生むのだとわかりました。

名料亭や割烹の味を支える素材から、気軽に味わえるふりかけ、スイーツも

祇園で創業して103年。3年前にお店を改装し、明るく気持ちのよい店構えになりました。

もともと名だたる料亭や割烹、ホテルに乾物や素材を卸す商いでしたが、一般のお客様にも質の高いものをと、煎りごまを小売したのが約30年前のこと。

近年は新しい商品開発も

口コミでそのおいしさが広がり、すっかり“京のごまや”という冠が定着しました

店内には上質な削り節や昆布、手軽なだしパック、極細の刻み海苔、黒豆や栗の甘露煮など、京の本格料亭の味を支える素材も販売されています。

本格料亭の味を支える素材も販売

また近年は新しい商品開発もなさって、大人気のふりかけのほか、ごまを使ったスイーツなどのニューフェースも。

最近ではすり鉢とすりこぎを使ってごまをあたる家庭も少なくなり、より手軽に食べられるものが求められてきました。

特にふりかけはごま、鰹節や海苔など自社の素材をふんだんに使った贅沢な味。ごはんが進むおいしさです。

近年は新しい商品開発も

おすすめは?の問いに、最近人気なのは……と教えてくださった「ごまふりかけ」

そして、もうひとつの顔が『菊水』という屋号での生麩の販売。

「菊水」という屋号での生麩の販売

この地には豊臣秀吉の妻・北政所が茶湯に使った“菊水の井”があり、むら田さんのご先祖はその井戸をお守りしてきたそう。店内にはその菊水の由来が記された書画が飾られています。

菊水の由来が記された書画

「今まで作ってきた確かなものを提供しながらも、新しい商品を作る挑戦もしていきたい」と語る村田さん。伝統と革新を見据えたこれからのものづくりが楽しみです。

海外では黒ごまがブーム?日本では白ごまが圧倒的人気です

海外のお客様からの需要も

日本食のブームやインバウンドの増加もあり、最近では海外のお客様からの需要もあります。

フランスやイタリア、香港など、美食の国からのリクエストが多く、それも圧倒的に黒ごまが人気というのが面白いところ

「黒い食材って意外にないんですよね。それにごまは甘いお菓子にも辛みの料理にも使えますし、いろんな可能性があります。料理人にとって魅力的な素材なのかもしれません」

と村田さん。

逆に日本では、9:1の割合で白ごまが人気なのだとか。私も白ごま派です。

私も白ごま派です

そして、最近うれしかったことといえば、私の行きつけのご近所スーパーでむら田さんの煎り白ごまの取り扱いが始まったこと!

こぢんまりした街のスーパーマーケットですが、おいしいもの、安心安全な食品を全国から取り寄せる熱心なお店。これで切らす心配がなくなりました。

とはいえ、京都でしか手に入らないものもあります。

ときどき祇園を散策しながらむら田さんにお寄りして、余計な添加物が入っていない純正な食材を買って帰りたいと思います。

今日の着こなし

9月前半の京都は真夏並みの暑さ。単衣でも夏寄りの素材で少しでも涼やかに見えるようにしました。

単衣でも夏寄りの素材で

2022年に沖縄を訪れたとき、紅型や芭蕉布、琉球絣などいくつもの工房や作家さんのアトリエを案内してくださった大城拓也さん。

また今度会いましょうという約束は叶わず……楽しかった3日間の思い出が遺されました。

ご実家の大城廣四郎織物工房にも連れて行ってもらい、この地括りの二六玉生紬と出合いました。

着用の写真は見てもらいましたが、これを着て沖縄でお会いしたかった…… ご冥福をお祈りしながら、袖を通しました。

型絵染め作家・澤田麻衣子さんのコスモス

帯は、型絵染め作家・澤田麻衣子さんのコスモスです。

花びらの枚数が違っていたりと、リアルには描かれていないので、矢車草に見立てて春先にも締められそう。

ご自身もきものをよく着られるという澤田さん、あえて季節を限定しないところも嬉しい心遣いです。

帯締め

帯締めは、ごまやさんに合わせてこの金茶の冠組か、道明さんのごまちゃんシリーズの冠組かで迷いましたが金茶色に。

西田信子さん作のスーパーマーケットバッグ

バッグは西田信子さん作のスーパーマーケットバッグです。7年持ち歩き、だいぶいい色艶になりました。

学生時代を神戸で過ごし、そこで奥様と出会われた村田さん。楽しい思い出話にほんわかしました。

今日の着こなし

撮影/弥武江利子

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