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和裁初心者が知っておきたい仕立ての3つのコツ。仕上がりを美しくするには?

着物と和裁の3つの学び <中級編> さくらおばあちゃん直伝!「あわせ」「キセ」「くける」~

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中級編では、さらにもう一歩進んで和裁のことを知りたい方向けに、実践で役立つ内容を紹介します。和裁ならではの、「あわせ」「キセをかける」「くける」という3つの学びをピックアップして、さくらおばあちゃんに習っていきます。

和裁の基本がわかったら、次はいよいよ仕立てにはいります。 さくらおばあちゃんの和裁帳には、仕立ての順番や方法が細かくメモされていました。 ビギナーの方も経験者の方も、せっかく浴衣や着物を仕立てるなら、きれいに仕立てたいと思うものですよね。 美しく仕立てるための和裁のいろはやコツ、事前に知っておくと役立つポイントをみていきましょう。
目次 1 さらにもう一歩進みたい! 2 和裁ならではの「あわせ」 3 和裁ならではの「キセをかける」 4 和裁ならではの「くける」 5 まとめ
1 さらにもう一歩進みたい!
実際に仕立てをするには運針だけではなく、和裁のいろいろな決まりごとを知ったりスキルを身につけたりすることも必要になってきます。 和裁の基本のいろはをマスターして、上手に仕立てられるようになるためにはポイントがいくつかあります。 その中から、ここは押さえておきたいという和裁ならではのことがらを3つピックアップしてみました。
2 和裁ならではの「あわせ」
和裁と洋裁のちがいのひとつは、反物を使うこと。 身頃や袖は反物の幅をそのまま活かして使いますが、衽や衿は反物の幅を半分に切って使います。 そのため、片側が耳、片側がはさみをいれた裁ち目になります。 そして、裁ったパーツを組み合わせるとき、耳と裁ち目のどちら側を縫い目にするのかが決まっているのだそうです。 「衽は耳がつけ、衿は裁ち目がつけってよく先生に言われたんだよ。」和裁のお教室に通っていたころを思い出すように、さくらおばあちゃんが教えてくれました。 「つけ」というのはそちらを縫い目にするということで、衽は耳側を身頃との縫い目にし、衿は裁ち目を縫いつけるということです。 これが和裁のいろはのひとつです。 「振袖とか訪問着はもう柄が決まっているけど、小紋は柄を見ながらどっちを上前にするか決めるんだよ。」とも話してくれました。 例えば、ちょうちょと桜の柄が描かれた反物があるとしましょう。 裁断が終わったらまずは上前の身頃の柄を確認します。 おはしょりから裾にかけての柄が着たときによく見えるところなので、その部分と衽との柄のバランスを考えます。 衽は反物の幅を半分に切ってあるので、場合によってはちょうちょや桜の柄がない部分もあるかもしれません。 下前は着たときに人の目に触れることはほとんどないので、2枚の衽のうち、柄がきれいにでている方を上前にもってくることが多いそうです。
また、上前の身頃との柄の配置も大事なんだそうです。 「ちょうちょばかりで桜が見えなくてもバランスが悪くなっちゃうでしょ。柄のあるところと柄のないところが互いちがいになった方がいいかな、とか、両方合わせてみて具合を見るんだよ。」と柄合わせのポイントを教えてくれました。 「衽は耳がつけ、衿は裁ち目がつけ」という基本ルールがありますが、柄合わせの具合によってはその限りでなくてもよいそうです。 それぞれのパーツにどんな柄があらわれるかは仕立てをはじめてみないとわかりません。 どのように組み合わせたら美しいものになるのかという判断は、経験があればこそのテクニックですね。 すべてのパーツの合わせが決まったら、ヘラつけ(印つけ)が始められます。 ちなみに、袖なら袖、身頃なら身頃を2枚と、同じパーツは2枚重ねてヘラつけをするそうです。 そうすると印がずれなくてよいのだそうです。
3 和裁ならではの「キセ」
和裁では、縫い目のすぐそばに「キセ」というものかけます。 縫い目が表側から見えないようにして、かつ、きれいな折り目がつくようにという役割があります。 和裁では、ほとんどすべての縫い目にキセをかけますが、キセをかける方向はそれぞれの場所で決まっているのだそう。 例えば、背縫いは、左の身頃が上になるようにキセをかけます。 それでは、キセのかけ方を見ていきましょう。
・キセのかけ方1
これはキセをかけるところです。 縫い目の1ミリか2ミリくらい離れたところを手前に折って、かんばりでおさえます。 そして挟んだ指をすーっと移動させながら折り目をつけていくのです。
・キセのかけ方2
しっかりキセをかけたい時は、さらにアイロンかコテで押さえると良いそうです。 アイロンをかけるときは、当て布をして、裏側からかけるのがポイント。 「表側からアイロンをかけてしまうと、そこが光って見えてしまうことがあるからね。」とさくらおばあちゃん。 まちがって表からアイロンをかけてしまっても浴衣などの綿の生地はそれほど気にならないようですが、絹などの素材は特に気をつけないといけないそうです。 また、あまり強く押したり引いたりすると、生地が伸びてしまうことがあるので、軽く上から押さえるようにアイロンをかけるのが良いそうです。 しっかりキセがかけられたら、表側から確認しましょう。
4 和裁ならではの「くける」
和裁ならではの技術として、「くける」というものがあります。 これは洋裁での「まつる」と同じようなもので、裾や袖口などを三つ折りにして縫いとめる縫い方です。 袷の着物にはほとんどくけるところがありませんが、単衣の着物は裾、袖口、衿、脇縫いや衽などたくさんくけるところがあります。 さくらおばあちゃんは、「単衣の着物は袷より縫うのは難しくないけど、くけるところがいっぱいあるから、結構時間がかかるんだよ。」と言っていました。 くけるときの針目は縫い目ほど細かくしなくて大丈夫だそう。 だいたい1cmくらいの間隔でくけていくのがよいそうです。 「袖口はね、ちょっと細かめにくけた方がきれいに見えるんだよ。」とコツも教えてくれました。さすがはベテランです。
くけるときはくけ台を使います。 このようにピンと張って使います。
例えば、裾をくけるときは、裾の生地を三つ折りにしてくけていきます。 生地の裏側が見えるようにして、三つ折りの山の中に針を進めていきます。 1㎝くらい進んだら表に針をだして生地をを少しだけすくうというのをくりかえしていくのです。 このとき、表側に糸が見えないようにくけるのがポイントだそうです。 「表側の生地の糸を1本か2本だけすくうようにすると上手にくけられるんだよ。」とプロのテクニックを伝授してくれました。 ほんとうにきれいにくけてある着物は、よくよく目を凝らして見てもどこに糸が通っているのかわからないほどです。
くけ終わった後の裾を表から見るとこうなります。 こちらの画像ですと、だいたい下から1/4くらいのところを横にくけてあるのですが、どこに糸があるのか見分けるのが難しいです。 このようにいくつか色がはいっている着物は、ベースとなる色と同じ色の糸で縫ったりくけたりします。 きっちり1cmでくけていくとすると、青や黄色のラインのところで糸をすくわないといけないことがあります。 もちろん、くける糸が見えてしまっても問題はありません。 でも、表に針を出す間隔を少し調整して白いところだけに針を出すようにすると、さらに見栄えがよくできるそうです。
5 まとめ
「衽や衿のつけ方」「キセ」「くける」といったことが、着やすく、そして美しく仕立てるために必要なポイントなのですね。 縫い目の1ミリか2ミリ離れたところにキセをかけたり、表の糸を1本か2本すくってくけたり、ほんとうに細かなところが重要なようです。 着物を着るときに縫い目のひとつひとつまで気にとめる方は少ないかもしれませんが、目立たないところでも手を抜かず、丁寧に丁寧に着物を仕立てていたさくらおばあちゃん。 着物に対する愛情とプロとしての心意気が感じられます。 農家の仕事に養蚕、家事や子育て、そして和裁と、一生懸命働いてきたさくらおばあちゃん。 ある映画に「働き者のきれいな手」という言葉がありました。 さくらおばあちゃんの手も、そんなきれいな手でした。
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