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映像への愛を語る、寛一郎さん単独インタビュー 「きもの de シネマ」番外編

映像への愛を語る、寛一郎さん単独インタビュー 「きもの de シネマ」番外編

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銀幕に登場する数々のキモノたちは、着こなしやコーディネートの良きお手本。せっかくなら、歌舞伎やコンサートみたいに映画だってキモノで愉しみませんか。今回は、蝦夷地を舞台にアイヌと和人の歴史が語られる『シサ』で主演を務めた寛一郎さんの単独インタビューの様子をお届けします。

2024.09.13

よみもの

アイヌと和人の共生への軌跡『シサ』 「きもの de シネマ」vol.52

「チセは居心地がよかった」

昨日に引き続き、ごきげんよう、椿屋です。

今回の番外編にご登場くださったのは、映画『シサ』で主人公・高坂孝二郎を演じた寛一郎さん。

ご存じのとおり、三國連太郎氏を祖父に、佐藤浩市氏を父にもつ注目のサラブレッドな俳優さんです。

寛一郎さん

高坂孝二郎は、アイヌとの交易を生業とする松前藩士・高坂家の次男。初めて足を踏み入れた蝦夷地で思わぬ事件に遭遇し、アイヌの人々に助けられます。

回復するまでコタン(村)で暮らすうち、彼はアイヌと和人の間にあるさまざまな問題を目の当たりにするのです。

――アイヌコタンでの生活(撮影)はいかがでしたか?

すごく居心地がよかったです。とくに、彼らの生活の場であるチセは、実際の資料に基づいて伝統的な造り方で美術スタッフさんたちがゼロから造り上げたもの。天井が高くて、風通しが良くて、中はあったかいんですよ。

――北海道での撮影は昨年の夏頃だったそうですね

はい。約1か月間、北海道にいました。普段はコンクリートジャングルに住んでいるので、北の大地の自然には圧倒されました。

寛一郎さん

実は、(インタビュー取材の)少し前まで別のお仕事で屋久島にいたんですが、気温と湿度の高さがすごくて……カメラのレンズが曇ったり、汗でセットした髪やメイクが崩れたり。

それに比べると、北海道の湿気のない夏は過ごしやすかったです。ロケも素晴らしく快適で、楽しかった。

「アットゥシは肌に合う」

本作で印象的なのは、和人である孝二郎がアイヌの民族衣装を着てコタンでの日々に馴染んでいく描写です。

©映画「シサム」製作委員会

©映画「シサム」製作委員会

月代さかやきがなくなり、髭も伸び、まるで別人のように様変わりした孝二郎は、アイヌの生活に身を置き、その文化にふれるにしたがって、自然と共存しながら生きる彼らの思想を理解していきます

――アイヌの民族衣装を着た感想を教えてください。

初めて着させていただいたんですが、着心地は良かったです。すごく軽くて、涼しくて。肌に合うかんじ。和人のときの着物や袴よりラクでしたね。

――プライベートでも着物をお召しになりますか?

いえ、全く着ないですね。でも、一昨年くらいから時代劇に出させていただく機会が増えて、立つ・歩くといった基本的な動作から字を書くといった所作まで、時代によって違うことを学びました。いまは、人として成長していくなかで、着るものに相応しい所作が馴染めばいいな、と思っています。

©映画「シサム」製作委員会

©映画「シサ」製作委員会

――作中、アイヌの服を脱いで、アイヌ文様で繕われた着物に着替えるシーンがとても印象的でした。

あれは、ターニングポイントとなるシーンです。

生き方や未来を選択する際に身にまとうものを変える――外面的なもので内側が変わることってありますよね? セリフではなく衣裳から孝二郎の気持ちが伝わるシーンになりました。

「映画でアイヌ文化を残したい」

――以前からアイヌ文化には興味があったのでしょうか。

そうですね。実は、小学生の頃、通っていた学習塾の課外行事で、2週間ほどアイヌの集落に滞在するツアーに参加したことがあるんです。なので、オファーをいただいたときに、とても惹かれました。

寛一郎さん

――撮影で大変だったことはありましたか?

アイヌ語を使ったシーンでしょうか。アイヌの方々であっても実際に喋れる人が少ないので、不確かな中で模索しながら撮影していました。アイヌ役の役者さんたちは、苦労されたと思います。

――和人でありながらアイヌ文化を理解しようと寄り添い、後世に伝えようと努める孝二郎の生き方は胸を打ちます

本作の主人公は、あくまでもストーリーテラー。アイヌの人々との交流を通して視野が広がっていく役どころです。

和人として、客観的に見ることができる貴重な存在でした。アイヌという文化が少しずつ消えていってしまうなかで、映画文化としてそれを残せたら……と願っています。

寛一郎さん

「きもの文化も映像として残したい」

――今後は、どのような作品に参加されたいですか。

アイヌ文化をテーマに扱った今回の『シサ』もそうですが、その時々の自分が興味のあるものに参加できたら嬉しいですね。

――作品選びや役作りについて、お父様に相談されることはあるのでしょうか。

決めたことに対する報告だけですね(笑)。もちろん、作品について話をすることもありますよ。見たことのない時代を生きる役の場合に、生きてきた時代について教えてもらえるのはありがたいです。

幼いながらにリスペクトを感じて育ってきたので、仕事の話ができるのはうれしいですよ。

寛一郎さん

――おじい様との思い出をひとつ、お聞かせください。

直接のエピソードではないですが……。母親から、三國さんがよく着物を誂えていた呉服屋さんが京都にあるという話を聞いていたのですが、なかなかタイミングが合わなくて行けてなくて。でも、そろそろ着物も一着持っていた方がいいのかな、と思っているので、近いうちに訪れたいですね。

――お着物姿、よくお似合いだと思います。

ありがとうございます。アイヌ文化同様、着物の文化も映像というカタチとして残せたら幸せです。

寛一郎さん

ヘア(メイク)/AMANO(フリー)
スタイリスト/SHINICHI SAKAGAMI(Shirayama Office)
撮影/五十川満

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