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目にも涼しく。優美な京うちわの名店『阿以波』へ 「京都できもの、きもので京都」vol.15

目にも涼しく。優美な京うちわの名店『阿以波』へ 「京都できもの、きもので京都」vol.15

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京都には古い歴史を持つ「京うちわ」があると知り、創業元禄二年、三百年を超す長きにわたり「うちわ一筋、うちわに全精魂を打ち込むこと」を家訓に製作する『阿以波』さんを訪ねました。

2024.07.11

よみもの

帯匠 誉田屋源兵衛十代目当主・山口源兵衛さんが語る『倭文ー旅するカジの木』 「京都できもの、きもので京都」vol.14

よみもの

山崎陽子さんのコラム「つむぎみち」(全13回)はこちら!

素敵な1本を選びました

今までいろんなうちわを使ってきましたが、こんなに美しいものに出会ったのは初めてです。

京うちわの歴史や高度な技術、美的造形を知り、透かしがポイントの、素敵な1本を選びました。

「かざる」「あおぐ」そして、邪気を払う「縁起物」としての役割も

薄物に扇子、浴衣にうちわは、なくてはならない夏の小物。

うちわについて言えば、小ぶりな水うちわと大きめな房州うちわを3本ずつ持っていますが、どれも実用的で、色柄もカジュアルなものばかりです。

京都には古い歴史を持つ「京うちわ」があると知り、創業元禄二年、三百年を超す長きにわたり「うちわ一筋、うちわに全精魂を打ち込むこと」を家訓に製作する『阿以波』さんを訪ねました。

『阿以波』

暑い暑い京都の夏、まず京町家の古いお店、磨かれたガラス越しに見えるうちわの景色に涼を得ました。

透かしが入った面に、花鳥風月の切り絵細工が施された繊細な飾り用うちわは、インテリアとして「かざる」ためのもの。和洋を問わず、季節感を楽しむために使われています。

繊細な飾り用うちわ
繊細な飾り用うちわ

透かし柄をアクセントにした実用うちわは、手に心地よく、しっかり風が送れる「あおぐ」ためのもの。

実用うちわ

もうひとつ、古来よりうちわは「縁起物」としての役割がありました。

団扇は縁起物

邪気や悪霊を打ち払うものとして、紀元前には存在していたそう。日本には6、7世紀ごろ、伝わってきたと考えられています。

飛鳥時代の高松塚古墳の壁画に女性がうちわを持つ姿が描かれていますし、その後の奈良平安時代の宮廷では、貴人や女性が顔を隠すためにも用いられていました。

貴人や女性が顔を隠すためにも用いられていました

2023.07.21

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涼風が呼ぶ団扇の思い出 「ちょっとだけ、ていねいな暮らし」vol.4

実用的なうちわにも、京らしいはんなり感と品格が感じられて

300〜350種のうちわを製作します

祇園祭の時期にピークを迎えるうちわの仕事。

10代目当主・饗庭長兵衛さんは、毎年柄を新しくしながら300〜350種のうちわを製作します。

「差し柄」という技法

「細い骨を放射状に並べたうちわ面に、別に作った把手を組み合わせる「差し柄」という技法で、竹は嵯峨の4〜5年もの、紙は越中(富山)八尾や越前(福井)の手漉き和紙、柄は栂材や杉材などを使います。

御所うちわ、都うちわとも呼ばれ、宮廷でも用いられてきましたので、やはり品格のあるものを、と常に心がけてきました」

饗庭智之さん

10代目当主・饗庭長兵衛さん

跡を継いで最初の20年は作ることに専念し、その後の20年は、うちわのブランディングについても考え、透かしうちわの造形工芸について研究してきたそう。

作家ではなく職人として、数量ではなくその工芸的な質にこだわって、今があります。

柄に漆や金彩を施し、優美を極めた最高級の飾りうちわはもちろんのこと、実用性を重んじた並型のものにも、なんとも言えない京らしさ、はんなりとした優しさがあり、阿以波さんの矜持が感じられます。

並型片透かしの赤い桔梗柄

たくさんの商品から私が選んだのは、並型片透かしの赤い桔梗柄。

ふだんは窓際に立てて飾っていますが、2本の糸ススキのような透かしが涼やかです。部屋に差し込む光を受けて、まるで影絵のような陰影が生まれる景色を見つけたときなど、ふと見とれてしまいます。

ふと見とれてしまいます

桔梗の赤の色合いも切り絵のシルエットも美しく、柄を持ったときの感触や握り心地も優しくて、手仕事の素晴らしさを実感。

「温故知新」を旨とするうちわ専門店の技能と美意識はやはり特別です。

うちわ専門店の技能と美意識はやはり特別
うちわ専門店の技能と美意識はやはり特別

両透かし、片透かし、木版の技法、特大から並型、小丸型などさまざまなサイズ、それぞれの楽しみと使い方があり、オリジナルの別誂えの製作にも応じてくれるというのもうれしいサービスです。

うちわ専門店の技能と美意識はやはり特別
うちわ専門店の技能と美意識はやはり特別

大切な商品は香紙とともに箱に入れて、京の街の双六柄の包装紙に包んで渡されます。

最後の最後まで雅なのでした。

京の街の双六柄の包装紙

2024.07.17

よみもの

浴衣をカッコよく着こなすコツ 「大久保信子さんのきもの練習帖」vol.15

本日の着こなし

本日の着こなし

真夏の京都へは、絹紅梅の浴衣で。

秋草の模様が透ける浴衣は、きもの愛好家として知られた菊地信子さんのコレクションから譲っていただいたもの。

帯は宮古上布、新里玲子さんの織られた「ひまわり」です。

新里玲子さんの織られた「ひまわり」

昨年夏に宮古島へ出かけ、新里さんをはじめ、宮古上布に関わる方々にお会いして、いろんなことを教えていただきました。

何十年ぶりかの夫との旅だったこともあり、思い出に残っています。

2023.12.21

まなぶ

宮古上布 新里玲子さん(沖縄県宮古島市)「バイヤー野瀬の、きもの産地巡り」vol.8

帯締め

帯締めは江戸組紐中村正さんの、ちょっと細めのタイプ。夏帯にさっぱりよく合います。

半衿はインスタグラムを通じて知り合った方が作ってくださったビーズ編み。ひんやりとした感触が気持ちよく、夏の定番になっています。

半衿はビーズ編み
「サンアルシデ」のラフィアかご

バッグはフランス「サンアルシデ」のラフィアかご、足もとは麻の足袋とシナ布の木草履です。

足もとは麻の足袋とシナ布の木草履

撮影/弥武江利子

2021.12.21

まなぶ

そもそも扇子の種類とは? 【扇子のギモンを解決! vol.1】「きくちいまがプロに聞くシリーズ」

2021.08.26

よみもの

美しさと実用、”名古屋扇子”『末廣堂』を訪ねて。「きもので巡る名古屋」vol.3

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