君翔きみしょう

出身地：兵庫県
屋形：宮川町・本城
見世出し：2019年4月23日
ひとこと：いろんなことがありますが、どんなことも夜中に大好物のラーメンを食べたら復活します！ 衿替え前はいろいろと忙しくて大変どしたけど、ラーメンを食べられへんかったのが一番辛おした（笑）。

ご本人コメント

3月の終わり頃に衿替えを決めてからは慌ただしくて、舞妓最終日となる今日※1まであっという間どした。春秋座での『京おどり』はポスターにも出させてもうて、センターを務めさせていただきました。宮川町の代表として多くの方の目にふれるので、とにかく期待に応えられるようにという想いで、毎日汗だくで踊っていました。合間をぬって鬘かずら合わせをして、おどりが終わったらすぐに「黒髪」のお稽古が始まって。気がついたら、先笄さっこう※2を結うてました（笑）。

※1……去る2024年6月2日が舞妓として過ごした最後の日。取材はこの日の昼下がりに屋形にて行なわれました。
※2……衿替え（舞妓から芸妓になること）前の約一週間（期間は各花街によって異なる）だけの髪型。地毛で結う、舞妓としての最後の髷。

うちは、祖母のお着物部屋で足袋を履いて遊んでいるような子どもどした。ピアノや合唱が好きで、芸事だけに邁進できる環境に憧れて花街へ。いろいろとお稽古さしてもらうなか、気づいたらお三味線が大好きになってました。普段は厳しいお師匠さんに褒められたら嬉しくて！

サボりたいと思うときもありますが、一日一回、たとえ5分でもお三味線を触る時間をつくるようにしてます。さまざまな会に出させてもらうことも増えてきたので、もっと余裕をもってできるように頑張りたいです。いまは、芸事がちゃんと出来る芸妓さんになるのが目標どす。地方さんとしても精進します。

撮影後記

翔ちゃんに初めて会ったとき「田舎の少年みたいな子だな」と思ったのが、ついこないだのことのようです（笑）。

あれから5年……誕生日には大好物のラーメンはしごのお伴をするくらい、もうすっかり娘みたいなかんじで、彼女が叱られているのを見ていると泣きそうになるくらい心が痛みます。だから、翔ちゃんの衿替えは一際感慨深い。彼女の決断を、昨年11月に亡くなったおっきなお母さんも本当に喜んではるはずです。

ご自身ではあがり症だと言うものの、周りからはいつでも余裕綽々に見える舞妓さんでした。今年のポスターに選ばれて、センターを任されて、「緊張しましたぁ。汗だくどしたぁ」なんて言ってましたが、舞妓最後の『京おどり』を見事に踊り切りました。彼女が舞台上から剛速球で投げる手拭いはコントロール抜群で（笑）、瞬時に観客席を見渡し、ここぞ！というお客様へと届けることができるんです。あれでファンが増えたと言っても過言ではありません。

取材中本人は、「運の良さで生きてきた女どす」とおどけてましたが、その運の良さを引き寄せられるのも彼女の才能であり、翔ちゃんが多くのお客様に愛されている証拠だと思います。今後ますます、多くの人を魅了する素敵な芸妓さんになっていくと信じています。