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『生誕140年 YUMEJI展 大正浪漫と新しい世界』 東京都庭園美術館 「きものでミュージアム」vol.35

『生誕140年 YUMEJI展 大正浪漫と新しい世界』 東京都庭園美術館 「きものでミュージアム」vol.35

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『生誕140年 YUMEJI展 大正浪漫と新しい世界』東京都庭園美術館で開催中! 竹久夢二は「大正ロマン」を象徴する画家で詩人。独学で夢二式の美人画を確立。本展では、新発見の《アマリリス》や《西海岸の裸婦》を含む180点の作品が展示されます。

2024.05.21

よみもの

『デ・キリコ展』東京都美術館 「きものでミュージアム」vol.34

庭園美術館に展開される夢二の世界

今回は、 東京都庭園美術館で開催中の『生誕140年 YUMEJI展 大正浪漫と新しい世界』をご紹介します。

※本コラム内の美術作品の写真につきまして、各美術館プレスより撮影および掲載の許諾を得て使用しております。

東京都庭園美術館前

東京都庭園美術館前

竹久夢二(1884-1934)は岡山県出身。神戸中学校を中退後、福岡へ転居、18歳で家出して上京し、早稲田実業学校に入学しました。正規の美術教育を受けることなく独学で自身の画風を確立し、”夢二式”と称される叙情的な美人画によって人気を博しました。

雑誌投稿で画家を志し、1909年に画集を刊行。自らデザインしたきものや雑貨なども人気になります。1931年から欧米を視察し、1933年に帰国。翌年、肺結核のため療養先の長野県で亡くなりました。

「夢二ポートレート」

「夢二ポートレート」1932(昭和7)年 宮武東洋撮影 夢二郷土美術館蔵

本展は、竹久夢二の生誕140年を記念し、最新の研究に基づいた新しい視点で彼の生涯を辿ります。

夢二の油彩画は現存するものは約30点と少なく、今回その貴重な油彩画が多数展示されています。

長年行方不明であった油彩画《アマリリス》は、東京では初めての展示。

また、アメリカ滞在中に描かれた貴重な油彩画《西海岸の裸婦》や夢二の友人に遺されたスケッチブックや素描など、初公開の資料を含む約180点の作品が、夢二の故郷の岡山にある夢二郷土美術館のコレクションを中心に展示されます。

庭園美術館は、朝香宮邸として 1933年(昭和8年) に建てられたアール・デコ様式の建築です。実際に朝香宮邸に夢二の色紙が飾られていたこともあったそう。そこに夢二の世界が展開され、またとない空間が演出されています。

※作品はすべて竹下夢二の作品

発見された幻の名画《アマリリス》

展示室に入ると、まず《アマリリス》が目に飛び込んできます。

《アマリリス》

《アマリリス》1919(大正8)年頃 夢二郷土美術館蔵

《アマリリス》は、鉢植えのアマリリスときもの姿の女性が描かれた油彩の作品で、この女性は後に夢二の恋人となった職業モデルのお葉であると考えられています。

この作品は1919(大正8)年福島県での展覧会に出品された後、東京・本郷の『菊富士ホテル』の応接間に飾られていました。1944(昭和19)年のホテル閉館後は所在不明となっていましたが、近年の調査により発見され、昨年、岡山県・夢二郷土美術館に収蔵されました。

《アマリリス》

夢二の作品と言えば穏やかで柔らかい色彩のイメージを持っていましたが、鉢植えのアマリリスと女性の唇、半衿と帯締めの赤が醸し出す妖艶なムードが印象的。全体的にはとても暗いトーンで描かれています。

絵葉書《あまりゝす》

絵葉書《あまりゝす》1919(大正8)年頃 夢二郷土美術館蔵

背景の暗さも、私が持っていた夢二の作品のイメージとはずいぶん違いますが、とても惹き込まれるものがあります。しばらくじっとながめてしまいました。

展示風景

貴重な油彩画の数々

現存する夢二の油彩画約30点のうち、13点を夢二郷土美術館が所蔵しています。今回はその貴重な油彩画を拝見できる特別な機会。

《初恋》は現存する最初期の油彩画で、島崎藤村の「まだあげ初めし前髪の」で始まる「初恋」から着想を得たと考えられています。

《初恋》

《初恋》1912(大正元)年 夢二郷土美術館蔵

林檎の木の下で恋に悩む女性と、その後ろに、うつむく青年が描かれています。

恋の行方は2人の視線のようにすれ違ってしまうのか、少しはかなげでもの悲しさが漂います。夢二式美人の特徴である、女性のたおやかな大きな手はここでも健在です。

《西海岸の裸婦》は、1931(昭和6)年から欧米に外遊した夢二がアメリカ西海岸で描いた油彩画の大作です。

《西海岸の裸婦》

右:《西海岸の裸婦》1931~32(昭和6~7)年 夢二郷土美術館蔵

この作品は、夢二がロサンゼルスで世話になった日系人の元に残したものでした。そのお孫さんからフェイスブックにメッセージが寄せられ、夢二郷土美術館蔵に収蔵されることになりました。
まぶしい光の中で輝くような外国人女性の肌を表現するのに苦心しながら描いた夢二。夢二の新しい挑戦がみられ、”最後の美人画の傑作”と言われています。

大正ロマンの世界にひたる

油彩以外にも、夢二の魅力的な作品が並びます。

展示風景

”夢二式”と呼ばれる美人画の数々は淡い色調の作品が多く、ノスタルジックで詩的な雰囲気が漂います。

庭園美術館で夢二の作品に囲まれていると、まるで大正時代にタイムスリップしたような錯覚に。

《賀茂川》

左:《賀茂川》 1914(大正3)年頃 夢二郷土美術館蔵

今回の展示には屏風など大型の作品も並びます。カーテンが閉められ少し薄暗いせいか、いっそう古き時代のように感じました。

《一力》

《一力》 1915(大正4)年 夢二郷土美術館蔵

庭園美術館の照明は各部屋で違う物が設置され、デザインも凝ったものが多くあります。夢二の作品はそれらとの相性がとても良いよう。照明だけでなく、室内の装飾もまるで夢二展のためにしつらえられたのかと思うほどでした。

展示風景

夢二の「かわいい」がいっぱい

絵画以外にも”夢二ワールド”が繰り広げられています!

封筒の展示

左から封筒「どくだみ」、封筒「つりがね草」、封筒「菜の花」 いずれも大正期 夢二郷土美術館蔵

1914(大正3)年に開店した『港屋絵草子店』には、夢二が企画しデザインした封筒や千代紙などが並び、帯や半衿・浴衣など、身に着けるものも手掛けました。

半襟「椿」「馬蹄」

半襟「椿」「馬蹄」 大正前期 夢二郷土美術館蔵

きもの好きなら、帯や半衿の展示に心惹かれることでしょう。封筒や絵葉書のかわいさには、頬がゆるみます。

展示風景
帯「いちご」

帯「いちご」 大正前期 夢二郷土美術館蔵(6月30日までの公開)

初公開のスケッチブック

正木不如丘旧蔵外遊スケッチ

正木不如丘旧蔵外遊スケッチ展示風景

夢二は、晩年の1931(昭和6)年から約2年間、アメリカをはじめ、ドイツ、チェコ、オーストリア、フランス、スイスなど欧米各地を周遊する旅をしました。

多数のスケッチ帖に、滞在中の出来事を描いた夢二。

スケッチ帖

スケッチ帖展示風景

その一部は、友人で夢二が亡くなるまで献身的に治療にあたった医師の正木不如丘まさきふじょきゅうの手元に残されました。今回、それらが初公開されています。

鑑賞を終えて

館内風景

いままで夢二の作品をこれほどまでにまとめて観たことはなく、とりわけ油彩画は、ほとんど観たことがありませんでした。

油彩画の女性たちは、それまで私のなかにあった淡くはかないイメージとは少し違い、重い色彩や陰影のせいか少し物悲しくも感じました。

庭園美術館ほど夢二の展覧会にふさわしい場所はないかもしれません。その世界をじっくり堪能できました。

フォトスポットにて

フォトスポットにて絵のポーズをまねて(原画:《立田姫》1931(昭和6)年 夢二郷土美術館蔵)

そして、これほどきものが似合う展覧会があるでしょうか。庭園美術館のアールデコの室内装飾と竹下夢二の大正ロマンの世界が共鳴するすばらしい世界。自分もすっかり大正時代の女性になったような気分になりました。

きもの割引もありますので、ぜひきものでお出かけください。フォトスポットも設けられていますので、撮影もお楽しみくださいね。

この日の装い

この日の装い1
この日の装い2

この日は夢二の「大正ロマン」の世界を意識して、レトロな色柄のきもので。実はこちらは「洗えるきもの」で、とてもリーズナブルでしたので普段着ないような色柄を選びました。

半衿はきものの中の青緑色にリンクさせて。

この日の装い3
この日の装い 帯回り

迷いましたが帯は、長井紬の間道の帯をセレクト。帯締めを作ったあまり糸とコットンパールで作った自作の根付けをアクセントに。

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撮影/五十川満

今回ご紹介の展覧会情報

YUMEJI展ポスター画像

生誕140年 YUMEJI展 大正浪漫と新しい世界

東京都庭園美術館(本館+新館)
https://www.teien-art-museum.ne.jp/

日 時:2024年6月1日(土)~8月25日(日)
    10:00~18:00 (入室は閉室の30分前まで)

休館日:毎週月曜日 ※ただし7月15日(月・祝)、8月12日(月・祝)は開館、7月16日(火)、8月13日(火)は休館)

※オンラインによる日時指定予約を導入しています。
ドレスコード割引(きもの着用の方は当日券を100円引き)ご利用の方はご予約不要です。公式サイトのドレスコード割引のご案内をご確認ください。

※詳細は美術館公式サイトをご覧ください。

■巡回予定

夢二郷土美術館(岡山)2024年9月7日(土)~12月8日(日)
あべのハルカス美術館(大阪)2025年1月18日(土)~3月16日(日)
富山県水墨美術館(富山)2025年5月23日(金)~6月29日(日)
大分県立美術館(大分)2025年7月6日(日)~8月17日(日)
など全国5~6館を巡回予定

その他、おすすめの美術展

※日時など変更になる場合があります。おでかけ前に公式サイトなどで最新情報を確認してください。

TRIO展ポスター画像

TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション

東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー
https://art.nikkei.com/trio/

日 時:2024年5月21日(火)〜8月25日(日)
    10:00〜17:00(金曜・土曜は10:00〜20:00)※入館は閉館の30分前まで 
    
休館日:月曜日(7月15日、8月12日は開館)、7月16日、8月13日

2024年9月14日(土)〜12月8日(日)
大阪中之島美術館 4階展示室で開催
※一部作品は展示替えがあり

北斎 グレートウェーブ・インパクトポスター画像

特別展 北斎 グレートウェーブ・インパクト ―神奈川沖浪裏の誕生と軌跡―

すみだ北斎美術館(3階企画展示室、4階企画展示室)
https://hokusai-museum.jp/GreatWaveImpact/

日 時:2024年6月18日(火)~8月25日(日)
    9:30~17:30※入館は閉館の30分前まで
※前後期で一部展示替えを実施
前期:6月18日(火)~7月21日(日)
後期:7月23日(火)~8月25日(日)

休館日:月曜日(7月15日(月・祝)、8月12日(月・振休)は開館)、7月16日(火)、8月13日(火)

民藝 MINGEIメインビジュアル

民藝 MINGEI―美は暮らしのなかにある

世田谷美術館 1・2階展示室
https://mingei-kurashi.exhibit.jp/

日 時:2024年4月24日(水)~6月30日(日)
    10:00〜18:00
    ※最終入場は閉館時間の30分前

休館日:月曜日

巡回予定:富山、名古屋、福岡

※詳細は展覧会公式サイトをご覧ください。
※きもの割、各種タイアップサービスあり。

◆ 読者プレゼント ◆

YUMEJI展ポスター画像

今回は『生誕140年 YUMEJI展 大正浪漫と新しい世界』東京都庭園美術館の招待券を5組10名の方にプレゼント!
ぜひ、きものでお出かけくださいね!

下記リンクより、お使いのSNS経由にてご応募くださいませ。

◆インスタグラム
https://www.instagram.com/kimonoichiba/?hl=ja
◆X
https://twitter.com/Kimono_ichiba

※応募期間:2024年6月23日(日)まで

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