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技能五輪全国大会「和裁」W受賞の快挙! 『大原和服専門学園』(前編) 「和裁のいま」vol.1

技能五輪全国大会「和裁」W受賞の快挙! 『大原和服専門学園』(前編) 「和裁のいま」vol.1

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“きものを創る専門学校”として和裁と着物染織の学科を有する『大原和服専門学園』。大正13年の創業以来、独自の和裁技術教育を核とし、“きものづくりのプロ”を育てています。そんなきものの総合学園にお邪魔して、「第61回技能五輪全国大会」和裁職種において金賞・銀賞を受賞した2名の学生さんにお話をお伺いしました。

まなぶ

茶筅師の手しごと

「和裁士」への入口は、適正診断と進路相談会

創立100周年を迎えた「大原和服専門学園」には、現在30名ほどの学生が未来の“きものづくりのプロ”を目指して技術習得に情熱を注いでいます。

今回お会いしたのは、令和5年11月18~19日の2日間にかけて行われた「第61回技能五輪全国大会」の和裁職種部門において、奈良県代表として出場し、見事金賞に輝いた江嵜美紀さんと、銀賞を受賞した芝田琴音さんです。

笑顔のふたり

銀賞を受賞した芝田琴音さん(左)と、金賞に輝いた江嵜美紀さん(右)。江嵜さんが一学年上の先輩

歴史ある全国大会でのワンツーフィニッシュで、学園の技術教育の質の高さを証明した彼女たち。

ふたりが学ぶ和裁学科には、和裁科[2年制]・和裁専攻科[1年制]・和裁研究科[4年制]の3つの学科があり、国家検定を目標にプロの和裁技術を修得することができます。

ふたりが学ぶ和裁学科

ふたりが学ぶ和裁学科

学生たちの出身地も様々で、江嵜さんは富山県、芝田さんは和歌山県から学園のある奈良へとやってきました。また、入学に際して年齢制限はなく、着物について全くの素人でも問題ありません

彼女たちが「和裁士」を知ったのもイマドキなきっかけだったといいます。

江嵜さん

江嵜さんが「和裁士」を知ったきっかけとは?

江嵜さん:友だちについて行った進路相談会で「和裁士」という言葉を初めて知りました。手芸クラブに入っていた小学生の頃からちまちまする作業が好きだったこともあって、一気に心を摑まれました。

朝家を出るときは単なる付き添いのつもりだったのに、帰った瞬間、「ただいま!私、和裁士になる!!」って宣言したくらいです(笑)。

芝田さん

芝田さんはなんと……適性診断!

芝田さん:やりたいことが全くなくて進路に悩んでいたときに、授業で受けた適正診断の結果で和裁士という仕事があることを知りました。

本やネットで調べて、運動よりちまちまと手を動かしている方が好きな自分には合っているかもしれないと、興味を持ちました。学校の体験入学会で浴衣を縫う体験をして、「うん、苦じゃないな!」って感じたことが入学の動機です。

金賞&銀賞の快挙!初のW受賞を成し遂げる

技能五輪の存在は入学してから知ったふたり。大会への印象は、大きく異なっていたようです。

金賞&銀賞の快挙!初のW受賞を成し遂げる

まずは銀賞を受賞した芝田さんから。

芝田さん:私は正直嫌でした。大会ならではの、あのシーンとした雰囲気が苦手で。でも、断れない空気感だったので……やるからには頑張ろうと思いました。今回は二度目の挑戦。初めてのときは何がなんだか分からなくてやり切るだけで精一杯でしたが、流れが分かっていたので、今回はペース配分が出来たのがよかったです

一方、江嵜さんは……

江嵜さん

直前には自分自身をかなり追い込んだという江嵜さん

江嵜さん:先輩たちの話を聞きながら、このままいけば私も出るんだろうなぁって思っていました(笑)。

大会は時間との闘い。練習中はタイムウォッチを側に置いて、常に時間を意識しながら作業するようにしていました。本番一週間前から外界をシャットアウトして、親への連絡も絶って自分を追い込んだので、結果が出て本当にうれしかったです

芝田さん

芝田さん:正直、賞は取れないだろうと思っていて、時間内にきっちりハマって、去年よりキレイに出来たら……くらいの気持ちでした。だから銀賞をいただけてビックリしました。

江嵜さん:私は一回目が銅賞だったので、それよりは上……あわよくば金が欲しいな、という想いはありました。前回は練習のときにはやったことのないような失敗をいっぱいして、それをずっと後悔していたので、今回はとにかく注意深く丁寧に取り組みました。

和裁漬けだった学園生活を振り返って

ひたすらに和裁と向き合った日々。記憶に残っていることを訊いてみれば――

ひたすらに和裁と向き合った日々

江嵜さん:家族に浴衣を縫うという課題で、兄に浴衣をつくったことです。いまでもすごく着てくれていて、もうボロボロです(笑)。

やり始めた頃のカタチがそのまま残っているのは、自分の成長を目で確かめられるので、ありがたいですね

和裁道具

芝田さん:私は父の浴衣を縫いました。少し照れながらもニコニコして羽織ってくれて、喜んでくれたので、つくってよかったと思いました

教室の風景

教室はすべて実習形式

学園の教室はほぼすべて実習室。プロと同じ環境で、本格的なものづくりを実践的に学んでいきます。プロの和裁士養成のため、ときには和裁士の卵として、実際にお客様の手元に届く商品を手掛けることもあり、一つひとつの課題が真剣勝負

「責任感の重圧はすごいけど、だからこそ身に付くことがある」と、ふたりが声を揃えます。

作業風景 手元ヨリ

そんな彼女たちに互いの印象を問うてみれば、称賛合戦に。

江嵜さん:(芝田さんは)スピードが速くて羨ましいです。速さと仕上がりがちゃんと比例してて、めちゃくちゃキレイ! いつ越されるか分からないってヒヤヒヤしています(笑)。

江嵜さん

一年先輩の江嵜さんからから芝田さんへ

芝田さん:(江嵜さんは)全てがめっちゃキレイです。針目が細かくて、真っ直ぐで、揃ってる。(衣桁に)吊ってるときも四角くて本当に美しい!

芝田さん

くったくのない笑顔から、ふたりの仲の良さがうかがえる

ともに学び、これからの着物業界を支えていく仲間であり、ときに好敵手にもなる同志ゆえの距離感が、この学園の最大の魅力なのかもしれません。

笑顔のふたり

黙々と個の作業に集中するクラスメイトたちの沈黙はやわらかく、この空気感こそが彼女たちの切磋琢磨の毎日を支えているのでは、と感じさせたのでした。

撮影/弥武江利子

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