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中村梅枝夫人 小川素美さん 「歌舞伎俳優 ご夫人方の装い」 vol.2 ―嫁ぐとなってからはもっときれいに着たいと思った

中村梅枝夫人 小川素美さん 「歌舞伎俳優 ご夫人方の装い」 vol.2 ―嫁ぐとなってからはもっときれいに着たいと思った

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今年の「六月大歌舞伎」にて、初代中村萬壽さん、六代目中村時蔵さんの襲名披露興行が行われ、五代目中村梅枝さん、初代中村陽喜さん、初代中村夏幹さんが初舞台を踏むこととなりました。おめでたい襲名記念にあやかり、今回は四代目中村梅枝ご夫人にご登場いただき、定番の装いや思い入れのあるお品の紹介、歌舞伎俳優の妻の仕事についてうかがいました。

2024.04.16

よみもの

中村時蔵夫人 小川晃枝さん 「歌舞伎俳優 ご夫人方の装い」 vol.1 ―”役者のかみさん”は襦袢の衿のように

劇場でお客さまをお迎えする装い

――「劇場でお客さまをお迎えするさいの装い」というテーマでお越しいただきました。どのようなお召し物かご紹介いただいてもよろしいですか。

「劇場でお客さまをお迎えするさいの装い」というテーマ

「はい、いつも着ているもので恥ずかしいのですが、そのままの、いつもどおりの装いです(笑)。柄々したものや派手なものが好きではないんです。柄物が多い小紋でも、シンプルなものが好みですね。

今日の着物と帯は、実家のある京都の母が持たせてくれたもので、年中着られるものがやはり使えるということで選んでくれました。私自身、こういったいろいろな季節のお花が入っているものを着ることが多いですね」

――ぼかしの入った縮緬に春秋の花々が。お色みもきれいで手の細かい刺繍が入っていますね。帯は唐織りのもので、こちらも春秋のお花の柄。

どちらにも梅の花が入っているのがポイントでしょうか。梅の花は、夫が『梅枝』なので季節関係なく、年中身につけてしまいます

梅のものは、とくに帯が多いですね。いただくものも梅のものが多いですし」

ぼかしの入った縮緬に春秋の花々が

――じきに時蔵さんになってしまいますが……

「そうですね、どうしましょう(笑)。でも、息子が梅枝になりますのでね」

どちらにも梅の花が入っているのがポイント

梅花は至るところに

――帯締めもよく馴染んでいますね。

「今日、緑のものと迷ったんです。緑のほうが映えるかな? と思いまして。でも、あえてこちらにしました。

扇子は母と同じく文扇堂さんの扇子ですね、帯に挿した時に赤色が見えるのが本当にかわいらしくて」

扇子は母と同じく文扇堂さんの扇子

──お母さまの晃枝さんからは江戸好みのセンスを感じましたが、素美さんからはご出身の方ならではの、京都らしい”はんなり”とした印象を受けます。

「京都感ありますか。自分ではわからないですね。着物は明るめの淡い色合い、ピンクなどが好きですが、最近は黒もすてきだなと思っています。黒を着るとやはりきゅっと締まって見えるのでいいなと。京都のときは黒なんて着たことありませんでしたね」

京都のお茶のお家に生まれて

──京都にいらしたときから着物は着てらっしゃったんですか。

2年前に亡くなったのですが、父が茶道の先生をしておりましたので、小さいころからお稽古はもちろん、お運びでしたり、お茶会にいく機会などにはよく着せてもらっていました。

子育てや舞台で慌ただしくお休みしていますけれど、いまでも東京の先生にお茶は習っています。小さいころは三味線に日本舞踊、太鼓もしていましたね」

──そういうお稽古を通して、着付けも自然とできるようになっていたのでしょうか。

市田美容室の着付け教室へ行きました

「なんとなく着ることはできていました。ただ着付けは、進学した大学にお茶お花着付けの授業がありましたのでそこでも習いまして。

さらに嫁ぐとなってからは、もう少し崩さずにきれいに着たいと思い、市田ひろみさん主宰の着付け教室へ行きました。大学でも同じ先生から教えてもらっていましたので」

──ちなみに、おいくつのときにご結婚されたのでしょうか。きっかけは? 

「25歳です。彼が京都の南座公演に来てたときに、私の姉や京都の友人たちが一緒に食事するというので、たまたまた誘われて行ったのがきかっけで知り合いました」

──お茶とは関係なく。

「ぜんぜん関係なかったです(笑)。小さいころから歌舞伎はよく観ていましたけど」

自分で合わせながら着ているのはこちらに来てから

──嫁いでから着物で困ったりすることはありませんでしたか。

「そうですね。京都のときは自分でコーディネートするというより、母が用意したものを着せられているだけだったので、自分で合わせながら着ているのはこちらに来てからです。

でも、市田先生の着付け教室で着物のTPOなども教えてくださったので、そんなに困ることもないですね。

一度だけ袋帯を締めなければいけないシーンで名古屋帯を締めてしまったことがあり、そのときは、晃枝お母さんに「こういうときは袋帯よ」と教えてもらいました。「そうなんだ!」という発見がありましたね」

歌舞伎俳優の妻として

──歌舞伎俳優の妻として気をつけていることはなんでしょう。

「お客さまに気持ちよく帰っていただきたいということが一番ですね。

劇場にいらっしゃる時間から帰られるまで、ずっと楽しんでいただきたいと思っています。ですので、私はつねに笑顔でいることを心がけています

つねに笑顔でいることを心がけています

──6月にご主人の「時蔵」襲名、息子さんの「梅枝」での初舞台が控えていますが……

主人と子供の体調を崩さないようにする、私の願いはそれのみですね。主人は公演中に体調を崩すことはないのですが、子供にはなにが起こるかわからないので、母親としては心配で。夢にもでるくらいです。悪夢はもう何度見たことか。病気にならないように、気をつけてます。

そして、ここががんばりどころだと思っているので、一生懸命、みなで力を合わせてやりきりたいですね。とはいえ、ほとんど父と母が準備もしてくれているので、ついていっているだけなんですけれども」

なで力を合わせてやりきりたいですね

──一丸となって。

「そうですね。主人と子供もすごく仲良くしているのでよかったなぁ、と。4月もずっと2人で楽屋にいました。厳しくすることももちろんありますけど、親子としては、仲はいいですね。小川家はみな子煩悩だと、みなさんおっしゃってくださるんですが本当ですね」

思い入れのあるお品

──思い入れのあるお品をご紹介いただいてもよろしいですか。

思い入れのあるお品

「かわいらしいものにしました。どちらも母(晃枝さん)からいただいたものです。菜の花と蝶々です。

菜の花のほうは嫁いだころにいただきました。季節が限られてしまうのですが、春に着けられる楽しみのひとつ。このときだけ、というのが贅沢ですよね

──菜の花の帯、めずらしいです。どちらの帯も見ていて気持ちが明るくなる帯ですね。

「そうなんです。蝶々のほうは萬屋の定紋が桐蝶なので、季節を問わずうちでは年中締めています。色合いもかわいらしくて気に入っていまして、黒っぽいものと合わせることが多いかな。母も年を重ねて、着づらくなってきた色柄のものなど譲ってくださって助かっています」

着物ファンへのメッセージ

──着物で歌舞伎観劇したいと思っている方はたくさんいらっしゃいます。

ぜひ、着ていらしてほしいですね。劇場が華やかになりますし、舞台からも客席がけっこう見えているみたいで、役者さんたちも着物姿の方を見るとうれしいみたいです。

私たちも、ロビーで立っているとつい着物の方を見てしまいます。すてきな帯だな、かわいい着物だな、とか。着こなしや合わせ方を参考にしたりもしています

せっかくなので、お友達と張り切って着てでかける機会にしていただけたらいいな、と思っています。お待ちしております」

洋服よりも和服のほうがらくだなと感じるように

──素美さんの思う、着物のよさってなんでしょう。

着ると、しゃんと背筋が伸びます。そこが着物のいいところかな。

人の視線も感じますし、気が引き締まりますよね。いまではフォーマルな場所へでかけるなら、洋服よりも和服のほうがらくだなと感じるようになりました

小川素美さん

公演情報

インタビューでご紹介しました歌舞伎座での「六月大歌舞伎」にて、中村時蔵さんが「中村萬壽」を、時蔵さんのご長男・中村梅枝さんが「六代目中村時蔵」を襲名することとなりました。

また、梅枝さんのご長男・小川大晴さんが「五代目梅枝」として、中村獅童さんのご長男・小川陽喜さんが「初代中村陽喜」として、ご次男の小川夏幹さんが「初代中村夏幹」として初舞台を踏みます。

六月大歌舞伎 チラシ01

昼の部は、六代目中村時蔵襲名披露狂言として、時代物の傑作『妹背山婦女庭訓』より「三笠山御殿」を上演。

夜の部は初代中村萬壽襲名披露狂言、五代目中村梅枝さん初舞台として、舞踊『山姥』を。そして世話物の名作『魚屋宗五郎』にて、中村獅童さんのご子息、初代中村陽喜さんと初代中村夏幹さんが初舞台に挑みます。チケットなどの詳細はこちらのサイトをご参照ください。

六月大歌舞伎

そして今回はなんとスペシャルプレゼントも!

6月23日(日) 昼の部 1等席2組4名様をご招待!

下記リンクより、InstagramもしくはX経由でご応募くださいませ。

◆Instagram
https://www.instagram.com/kimonoichiba
◆X
https://twitter.com/Kimono_ichiba

※応募期間:2024年5月19日(日)まで

取材コーディネーター/akemi
取材・構成・文/渋谷チカ
撮影/TADEAI 久野藍

インタビュー

歌舞伎俳優 尾上右近さん

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