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昔ながらの道具にふれる 「都留詩織のきもので下町おでかけ帖」vol.14(最終回)

昔ながらの道具にふれる 「都留詩織のきもので下町おでかけ帖」vol.14(最終回)

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きものでいると、なぜか昔ながらのものに惹かれてしまう…… 連載最終回は「下町おでかけ帖」にぴったりな、ぬくもりあふれるお店へご案内します。

2024.04.08

よみもの

お花にワインに郵便やさん!? 「都留詩織のきもので下町おでかけ帖」vol.13

みなさんこんにちは!都留詩織です。

今回でいよいよ連載も最終回!

引き続き谷中銀座商店街にて、暮らしまわりの道具を扱うお店を訪ね、店主のおそうじ哲学を伺いました。きものファンのみなさま必読です!

『暮らしの道具 谷中 松野屋』へ

松野屋看板

JR日暮里駅から徒歩10分ほど、「夕やけだんだん」の階段を登ったところにある『暮らしの道具 谷中 松野屋』にやってきました。

松野屋外観

店の外にまで大小さまざまな籠がずらりと並んでいるので、道ゆく人々も思わず足をとめています。

出迎えてくださったのは、店主の松野きぬ子さん。松野さんもまた、きものをお召しになられるそう!

松野さんとお話し

谷中はきものを着ておでかけするにはぴったりの町だと思います。

私は以前谷中に住んでいて、ここで子育てもしました。そのご縁でこの土地でお店を始めたんですが、寺町で路地が多いから車もあまり入ってこないし、高い建物もないし、昔から商売をされているお店が多くてのんびりした雰囲気が気に入っています」(松野さん)

きものに合いそうな雑貨がたくさん!

きものに合いそうな雑貨がたくさん!

店内には、たくさんの暮らしまわりの道具が。

色とりどりのがま口財布

色とりどりのがま口財布

手編みのブローチがかわいい!

手編みのブローチがかわいい!

きものに合いそうなカゴバックやブローチ、がま口財布や割烹着などもありましたよ!

きものに合いそうな割烹着も

きものに合いそうな割烹着も

帯留にしてもかわいいかも!

帯留にしてもかわいいかも!

財布と帯の色がリンク

帯にぴったりの色の財布も

店主・松野さんのおそうじ哲学

お店にある商品で私が特に気になったのが、大小さまざまな長さや形のほうき。

ロボット掃除機のある時代に、どうしてほうき?とお思いでしょう」と私の心を見透かしたように笑う松野さん。

様々な大きさのほうき01

そのとおり、私が松野さんにお聞きしたかったのはそこなんです。

「わざわざ掃除機を取り出してこなくても、汚れが目に入った時、かけていたほうきでさっと掃く。それって意外と便利なんです。私は日々の掃除はほうきでさっと掃くことで汚れが目に入らない状態にし、休みの日に徹底的にはたきをかけたり、雑巾掛けをしたりします。小一時間でフローリングもスッキリしますよ」

様々な大きさのほうき2

「私の娘の話ですが、働いていると忙しさで家の中が荒れ、だんだん心までイライラしてしまう。でも「たまに雑巾掛けまですると爽快だ」と言うんです。一見手間がかかるように見えても続けるとほこりが溜まりづらくなるし、年末の大掃除が楽。結局、それが効率がよかったりします。

だから私は一ヶ月に2回でもいいので、拭き掃除をおすすめしています。始めてしまうと頭をからっぽにできますし、運動にもなりますよ。あと雑巾はね、使い捨てのものではなく自分で作るといいですよ。古タオル作ったものはなかなかへたらないし、自分で縫うから愛着が湧いて大切に使います。するとゴミも減るでしょう」

都留さん

単なる掃除というだけでなく、生き方にも通ずるような松野さんの掃除哲学に触れたような気がしました。

商店街ときもの。その共通点

仕事や家事、子育てなどに追われる私たちの毎日。スーパーやネットで必要なものはなんでもすぐに揃う現代において、商店街というのは非効率的な場所かもしれません。

でも谷中銀座商店街で出会ったのは、目の前のことに心を込めて家事をしたり、人との何気ない会話を楽しんだり、ものを大切に使ったりといった、豊かな心や時間を持っている方々でした。

松野さんと2人で

それは、きものにも同じことが言えるかもしれません。

きものは洗濯機で気軽にじゃぶじゃぶ洗えるわけではないし、季節に合わせた準備やルールの知識も必要です。汚れたらすぐに捨てて、新しいものに取り換かえるというものでもありません。

でも、手間をかけて、時間をかけて、お金をかけて、勉強をしてでも着たいのがきものという不思議な衣類ではないでしょうか。

非効率であっても、その工程の一つひとつが私たちの心を豊かにし、ゆとりある贅沢な時間を持たせてくれて人生を彩ってくれる。いつまで経っても完璧!とはいかないもどかしい着付けも、私たちの体の変化に寄り添ってくれる、心強い味方です。

またきものや和文化、季節にまつわる知識は、一生かけても学びきれないほど奥深いもの。私たちの知的好奇心を絶えず刺激し、飽きることがありません。

きものは人生に絶対必要!というわけではないけれど、あれば人生を豊かにしてくれます。この「きもの道」とでも言うべき奥深い道に足を踏み入れた私はとても幸せです!

たくさんの感謝を込めて

これから勇気を持ってこの「きもの道」に足を踏み入れてみようと思っている人の背中をそっと押したい、と思ってこのコラムを書いてきました。連載は今回が最終回ですが、これからもきものの魅力を一人でも多くの人に知ってもらえるような活動ができたらいいなと、今からワクワクしています。

最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。

そして、取材に不慣れな私を温かく迎え入れてくださった下町のみなさん。ほかの素敵なお店をご紹介いただいたり、取材交渉までしてくださったり、急な依頼を受け入れてくださったり、おいしい食事やドリンクをご馳走してくださったり、私の着付けを直してくださったり……思い出を挙げるとキリがありません。

みなさん本当に親切で、その町のことを深く愛している素敵な方ばかりでした。みなさんとの出会いの一つ一つが、私の宝物です!!

最後になりましたが、この連載をかたちにしてくださった編集部のみなさん、素敵な写真とお人柄で取材をいつも助けてくださったカメラマンの佐藤さん、持ち前のセンスで毎回きものに合わせたヘアメイクを提案してくださったヘアメイクのシゲヤマさんにも御礼を伝えたく思います。

また、どこかでお会いしましょう!都留詩織でした!

撮影/YUTAKA SATO
ヘアメイク/MIKU SHIGEYAMA

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