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ついに、アバカの村へ!フィリピン・サンラモン滞在記  「古谷尚子がみつけた素敵なもの」vol.20

ついに、アバカの村へ!フィリピン・サンラモン滞在記 「古谷尚子がみつけた素敵なもの」vol.20

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フィリピン・マリナオ村のアバカ。現地の生活向上を支援するための事業として日本へ展開させた河西実さんを昨年亡くし、そのバトンを引き継いだ井澤葉子さんとともに、古谷さんもいざ、出発です!

2023.10.04

よみもの

草履の革命児 華麗なるカレンブロッソの秘密 「古谷尚子がみつけた素敵なもの」vol.19

ついに、アバカの村へ!

みなさま、ご無沙汰しておりました。不定期連載とはいえ、申し訳ありません。その代わりと言ってはなんですが、海外ネタを2本お届けします!

まずは連載中3回目の登場となる「アバカ(Abaca)」について。

行ってきました!フィリピン現地ルポをお届けします。

よみもの

アバカに関する記事一覧

この春『M+abaca』として再出発

本題の前にご報告です。

フィリピン・マリナオ村のアバカ製品の日本への展開は、京都のNPO法人フェア・プラスの河西実さんが現地の生活向上を支援するために始めた事業でした。

足かけ10年、お土産もの程度だったマクラメ編みの技術を職人技のレベルにまで引き上げ、ファーストクラスのアバカが育つ場所に植林し、マクラメ編み普及のための小さな集会所を建設するなど現地に尽くしてきた河西さんでしたが、昨年、こころざし半ばで亡くなってしまいました。

ようやく軌道に乗ってきた事業が宙に浮いてしまう……

そんな時、プロダクトデザインを担当していた井澤葉子さんが河西さんのバトンを受け継ぐ決心をされ、それならばと、私もお手伝いをさせていただくことに。

ブランド名はMinoruさんとMarinaoにちなんで『M+abaca』

ブランド名はMinoruさんとMarinaoにちなんで『M+abaca』

というわけで、現地の窓口「サンラモン アバカ ハンディクラフト アソシエーション」代表のビンさんを訪ねるべく、機上の人となりました。

マニラ上空。フィリピンの首都は大都会

マニラ上空。フィリピンの首都は大都会

成田からマニラ経由カリボ着。朝9時半の便で出発し、到着したときは21時になっていました

成田からマニラ経由カリボ着。朝9時半の便で出発し、到着したときは21時になっていました

フィリピン中部パナイ島のカリボは、スーパーマーケットもあるそこそこ大きな街。フィリピン有数のリゾート、ボラカイ島の玄関口です。

村々の境界には必ず名前を配したアーチが

村々の境界には必ず名前を配したアーチが

白い砂浜ビーチへと向かう人々を尻目に、内陸部へ小一時間ほど車に揺られて、お仕事に向かいます。

目的地は、マリナオ村の「サンラモン地区」

もしや密かな人気? アバカ八寸帯の話

一部のSNSでは、このアバカの八寸帯を画像で見て、羅では?とか自然布の織帯?とか、憶測が飛び交いましたが、こちらはアバカの繊維を撚って糸状にし、マクラメ編みで制作している帯

アバカの八寸帯

『M+abaca』の商品は、「サンラモン アバカ ハンディクラフト アソシエーション」に所属するつくり手の中でも、技術力の高い15人に限定されていて、そのうち帯が編めるのは現在3人しかいないのだそう。

アバカの帯

八寸帯を1本編むのに約1か月かかるので、生産量はおのずと限られます。

「ただ長く編むだけなのに?」とビンさんに聞くと、「これを見て」と出してきた帯はまっすぐに垂れずによじれてしまいました。

「これは練習のために編んでもらったけど日本には出せないもの。帯は格段に難しい」

これが技術力の違いなんだ……数メートルにわたって同じテンションで編むことの難しさ。織物と同じですね。

3人しかいないマエストロにご挨拶

私たちは日本から持参したお菓子を手に、帯を編む職人3人を訪ねることにしました。

まずは、一番若手のジェネリンさんのお宅へ。

一番若手のジェネリンさんのお宅へ。

新作として設計図を渡した数寄屋袋を編んでいるとのことで、途中経過を見ながら打ち合わせです。

ジェネリンさんは4人の子の母親で、一番下はまだ赤ちゃん。途中Tシャツをめくってお乳を飲ませつつマクラメ編みを続けます。

ジェネリンさんと赤ちゃん

ジェネリンさんと赤ちゃん

設計図を渡した数寄屋袋を編んでいる。

設計図を渡した数寄屋袋を編んでいる

一番上のお姉ちゃんや近所のおばちゃんたちが交替で抱っこして赤ちゃんの面倒をみている様子は、村全体が家族のよう。

「赤ちゃんがいても仕事を続けられる。マクラメ編みのおかげよ」

ほかの子供たちもわいわいと寄ってきて、みんな幸せそう。

続いては、一家でアバカに携わるジュンさんのお宅へ。

お父さんのジュンさんは農業をされていましたが、足を怪我してしまい車椅子生活に。手先の器用さを生かしてアバカのマクラメ編み職人になり、今やマエストロです。

お父さんのジュンさん

帯を編むジュンさん。車椅子生活ながらも手先の器用さを活かして

お母さんのアウレリアさんが、夫ジュンさんと、娘のジェネリーンさん・ジンキーさんが編むアバカの繊維を糸状に撚る役目。

バッグ大の菱繋ぎをしているジェネリーンさん

バッグの菱立涌を編んでいる娘のジェネリーンさん

クラッチバッグを製作中

もうひとりの娘のジンキーさんはクラッチバッグを

ふたりの娘たちの家も敷地内で、子供たちと牛やニワトリやネコや犬と、平和でのどかな風景に癒やされます。

牛
敷地内で遊ぶ子供たち

3人目のマエストロ、マリオさんを訪ねると、八寸帯の模様部分に青く染めたアバカ糸を編み込んた新作を制作中でした。とても美しい!

八寸帯を制作中

マリオさんの腕はピカいちで引き抜き数多だそうですが、畑仕事をしながら自分のペースで没頭できるこの環境が一番楽しい、と満足そう。

いつまでも「サンラモン アバカ ハンディクラフト アソシエーション」の一員でいてくださいね。

マリナオ一番の編み手、マリオさん

マリナオ一番の編み手、マリオさん

そもそも「帯」って何?百聞は一見にしかず

つくっている職人さんたちは、そもそも「帯」をどう着るのか知る由もないのでは?

実際の着姿をみせなくちゃと、集会所に集まってもらいました(汚れてもいいような浴衣を持ってきてしまった私、映える色にすればよかったとちょっと後悔……)。

集会所にて
帯の着用の仕方を実演中の古谷さん
熱心に動画を撮る青緑色のシャツの方が代表のビンさん。私たちのマリナオの母

前結びで帯結びを実演し、柄の入る位置の重要さを説明するとみなさん納得の様子。

ごくたまに、柄の位置がなんでここ?という製品があったりするのですが、それもそのはずですよね。理解不能な商品をつくってもらうには直接会って話さないと!

何事も、はじまりはコミュニケーションだと実感。

「サンラモン地区のアバカ」がなぜ美しいのか

マクラメ編み

マクラメ編みは、手で紐を結んだり編んだりする工程を繰り返して模様を生み出す技法のことで、13世紀頃のアラビア半島が発祥といわれています。

アラビア語の「格子編み・交差して結ぶ」を意味する”ムクラム(macrame)”が語源とも。アラビア人によってヨーロッパにもたらされ、フィリピン中部にはスペイン統治時代(1521〜1898年)に伝わったのではと推測されます。

フィリピンに多く自生するアバカ(糸芭蕉)とマクラメ編みが融合するのに時間はかからなかったのではと想像できます。

前出の河西実さんは、マリナオ村「サンラモン地区のアバカ」の繊維が他の地域よりも白くて光沢があることに着目し、この手仕事の支援をするようになったそうです。

河西さんが植林に協力したアバカの森へ案内してもらいました。

花と実がついたアバカ

花と実がついたアバカ

ナタで伐採

ナタで伐採

2年目くらいの、花と実がついたアバカを選び、ナタで伐採。

すぐに茎の皮をむいて上質な白い部分のみを取り出し、森に備え付けた手作りの道具でしごくように繊維状に。

しごくように繊維状に。

しごくように繊維状に

上質な白い部分のみ。

上質な白い部分のみが糸に

沖縄の芭蕉布も、外皮に近い「なはうー(中苧)」は帯地用、着物にするのはより内側にあって上質な「なはぐー(中子)」などと使い分けられていますね。

強い日差しに燦々と輝く、細く丈夫な植物の糸。

マリナオ村「サンラモン地区のアバカ」の繊維がとりわけ白く美しいのは、4つの川が流れるこの地域ならではの特性と考えられており、きちんと検査を受けてファーストクラスの品質であることが証明されています

天然製品ライセンス

現地の農務省が天然製品ライセンスにてファーストクラスの品質を保証

カリボにある農務省のサテライトオフィスのスタッフ

カリボにある農務省のサテライトオフィスのスタッフは、平均年齢が若かった!

アバカの繊維はそのまま乾燥させ扱いやすいよう手で揉みます。

手で揉みます。
均一の太さにするのには、太ももの上!

均一な太さの糸に撚る作業は、なんと太ももの上。それがちょうどいいのだそう。

最初から最後まで文字通りの手作業で、森にも人にも一切の負担がない。

考えてみたらバッグひとつとってもすべて土に還る素材。そして技術は親から子へと受け継がれていく― 本当の意味のSDGsがここにあります。

「サンラモン地区のアバカ」を選ぶ理由

フィリピンでは、アバカのマクラメ編み商品が土産物店や市場でも売られるほどポピュラーな手仕事ですが、『M+abaca』の商品の特長は、

マリナオ村「サンラモン地区」の上質な素材であること
選りすぐりの限られた職人が担当していること
デザイナーの井澤葉子さんが商品プロデュースおよび設計図を書いていること(編み目の大きさもちゃんと指定しています)

このアドバンテージをきちんと証明してもらおうと、マリナオの市長さんを訪問して直談判。なんと市長のジョセフィーヌさんは筑波大学に留学して繊維の研究をなさっていたのだそう。

市長室にて

市長室での謁見叶い、ちょっと緊張(右から市長のジョセフィーヌさん、井澤葉子さん、私、ビンさん)

マリナオ村「サンラモン地区のアバカ」をもっと日本に広めたいという、私たちの熱意を快く受け止めてくださり、100%ハンドメイドであることの証明書を発行してくださいました。

100%ハンドメイドであることの証明書

証明書を発行いただきました!

マリナオ市庁舎前にて

マリナオ市庁舎前にて

これにて私たちのミッションは無事終了。

市役所にて

ビンさんは市役所にお勤め。同僚のみなさんにも帯をお披露目しました

今年も恒例の丸善日本橋からアバカ製品の展開が始まります。ぜひみなさまお手にとってご覧下さい。

もちろん、京都きもの市場のオンラインでもご購入可能です。

アバカ POPUP SHOP のお知らせ

丸善 日本橋 3階特設会場

4月10日(水)~16日(火)
9:30~20:30(最終日は15時閉場)
東京都中央区日本橋2-3-10

インスタグラム @m_plus_abaca

もう一度食べたい!フィリピンのローカルフード「タホ」

できたての温かい豆腐に黒蜜をかけ、サゴ(フィリピン風タピオカ)をトッピングした、とてもシンプルなスイーツ「タホ」。

タホで祝杯!

タホで祝杯!

朝食後のデザートとして食べられることが多いのだそうで、タホ売りのおじさんに出会えるのは午前中のみ。

運良く市庁舎前でバイク売りのおじさんを呼び止めてタホで祝杯をあげたのでした!!

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