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小さな宝石のような味、色、形。金平糖専門店『緑寿庵清水』を訪ねて 「京都できもの、きもので京都」vol.9

小さな宝石のような味、色、形。金平糖専門店『緑寿庵清水』を訪ねて 「京都できもの、きもので京都」vol.9

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一粒めでノックアウト。この小さな粒から立ち上がる味の宇宙!噛むと凝縮された果物の甘みと香りが口内に広がり、幸せな心地に。

2024.01.12

よみもの

『護王神社』で足腰の御守を新調 「京都できもの、きもので京都」vol.8

よみもの

山崎陽子さんのコラム「つむぎみち」(全13回)はこちら!

「これが金平糖?」初めて食べたときの驚き

緑寿庵清水

10年ほど前、大学1年生だった息子が帰省のお土産にくれたのが『緑寿庵清水』の金平糖でした。

私は「え?なんで金平糖なの」と不服そうな顔をしたかもしれません。だって、あの”子ども騙しの甘いだけの粒々”だと思ったからです。

小さな粒から立ち上がる味の宇宙!

息子は自転車通学の行き帰りにどこからともなく漂ってくる甘い匂いが気になり、その在処を突き止めようとうろうろした末、お店に行き着いたとのこと。

試しに買った金平糖があまりに美味しくて、お土産に買ってきたと話してくれました。

緑寿庵清水の金平糖

たしか、パインだったと記憶していますが、その一粒めでノックアウト。

この小さな粒から立ち上がる味の宇宙!

噛むと凝縮された果物の甘みと香りが口内に広がり、幸せな心地になりました。

山崎陽子さん

レシピのない金平糖づくり

金平糖は戦国時代にポルトガルからもたらされ、美しく貴重な菓子として珍重されました。

ただ製造法までは伝えられず、その後江戸時代になって、試行錯誤の末、製造されるようになったそうです。

緑寿庵清水は1847年の創業

緑寿庵清水は1847年の創業。

以来、京都でただ一軒の金平糖の専門店として製造販売し、現在の当主・清水泰博さんで5代目となります。

5代目当主・清水泰博さん

そもそも、砂糖は素材を加えると分離して固まらないという性質があり、よく見かける金平糖は「砂糖味」しかありません

でもこちらでは、果物などの素材を加え、結晶化させることに成功

90種以上の味と色彩を手作り

現在、季節限定のもの、チョコレートやお酒を使った『究極の金平糖』を含め、90種以上の味と色彩を手作り

さらに泰博さんは、中心核に柚子の皮やさつまいもなどの素材そのものを使った角平糖なども考案。現代のさまざまな嗜好に合った味覚に挑戦しています。

砂糖の蜜を少しずつかけて

「釜で転がる金平糖の声を聞いて」まるで赤ちゃんを育てるように

コテ入れ十年、蜜掛け十年

その日の天気、気温や湿度によって、蜜の濃度、釜の角度や回転速度、温度を微妙に変えるのですが、その塩梅は「金平糖が釜で転がる音を聞いて」判断するそう。

一人前の職人になるのに「蜜掛け十年、コテ入れ十年」と言われる所以です。

塩梅は「金平糖が釜で転がる音を聞いて」判断

0.5mmほどのイラ粉という核を回転する大きな釜に入れ、砂糖の蜜を少しずつかけて、コテでほぐして乾燥させていきます。

約8日後、イガが出揃います

約3日後、徐々に金平糖特有のイガが出始めます。約8日後、イガが出揃います。

目を細める泰博さん

冷暖房のない工場で、200℃にもなる大きな釜に向かってコテを入れるのは、「しんきくさい作業」と言いますが、でも「今日はこんなに大きくなって」と目を細める泰博さんの表情はとてもにこやか

さつまいもの角平糖

一粒手にのせてくれたあったかい『さつまスイーツ角平糖』の、ほくほく甘くて美味しかったこと!

ほくほく甘くて美味しかったこと

水分を飛ばし切って結晶に仕上げ、一種類の金平糖を完成させるには2週間以上かかりますが、こうすることで保存性が高まり、何十年ももつ

乾パンとともに、非常食として配給された時代もあったそうです。

完成させるには2週間以上

工房内に充満する甘い香りは、ぜひ現地で

初釜の干菓子に茶道専用の玉あられ金平糖を

玉あられの金平糖(梅、柚子、山椒など)

店舗で買い求めた京都本店限定の茶道専用、玉あられの金平糖(梅、柚子、山椒など)は、1月の初釜のお干菓子として添えました。

私にとっては初めての本懐石のお茶事で、薄茶点前を務めましたが、とても喜ばれていい記念になりました。

小さな蓋物の愛らしさは格別

五代目女将・珠代さんの丁寧な説明に、いっそう魅力が増して

皇室では御慶事の際、金平糖の入ったボンボニエールを引き出物の一つとして贈られます。

以前、ミキモトホールで皇室のボンボニエールの展示をみたことがありますが、小さな蓋物の愛らしさは格別でした。そこに美しい星のような金平糖が入れられる。

ゆかしいお祝いの慣習ですね。

好みの器ものを見つけて金平糖入れにしたい

いつか好みの器ものを見つけて金平糖入れにしたい、そんな目標ができました。

5代目当主・清水泰博さんは高校、大学、社会人野球でも活躍された元球児

5代目当主・清水泰博さんは高校、大学、社会人野球でも活躍された元球児。ポジションはセカンド、思った通りでした!

今日の着こなし

日差しが春めいてきました

立春を過ぎ、寒い日もあるものの、日差しがどんどん春めいてきました。

読谷山花織は黒っぽい地にピンクや赤の花織がちらちら浮かんで、寒さのなかに小さな春が生まれていくかのように感じられます。

帯は原田麻耶さんのもの

帯は、国画会の会員として活躍された原田麻耶さんのもの。そのめがね織や吉野間道は、藤山千春さんに影響を与えたとお聞きしました。

この帯は赤やピンクの色合いに温かみと大人っぽさがあり、北欧のテキスタイルにも通じる心地よいフォークロア感があって、大好きです。

帯締めは道明の冠組

帯締めは道明の冠組で灰桜色。帯揚げはきねやの縮緬のなかでも、いちばん活躍しているくるみ色です。

2023.06.27

よみもの

和装小物の店『きねや』で学んだ、京都らしい色づかい 「京都できもの、きもので京都」vol.1

バッグは、母が刺繍して縫った手提げ

ユナヒカのポケット付きストールに、バッグは母がチクチク縫った手提げ。オリジナルの図案で刺繍したもので、袋物を縫うのが得意だった母の遺品のひとつです。

撮影/弥武江利子

2023.09.19

まなぶ

有職組紐 道明(東京都台東区上野・組紐)「バイヤー野瀬の、きもの産地巡り」vol.6

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