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季節の意匠を濃地・薄地の両方に 「今井茜、季節の着物コーディネート」vol.9

季節の意匠を濃地・薄地の両方に 「今井茜、季節の着物コーディネート」vol.9

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京都祇園、ニューヨーク、東京と、3都市の着物スタイルを知る今井茜さん。「女性らしさ」や「上品さ」をキーワードとして、装う方の魅力を引き出すコーディネートをご提案します。

2023.10.25

まなぶ

晩秋に愉しむキレイ色 「今井茜、季節の着物コーディネート」vol.8

奈良への旅路にて 

茜さん

過日、奈良は東大寺と第75回正倉院展(10月28日〜11月13日)へ参りました。

東大寺へは、小学校の修学旅行、東大寺新別当就任奉納舞の際、続いて今回で3回目。滞在中は感動の連続で、一日では足りないほど。毎年秋の奈良訪問を継続したいと思います。

正倉院には9000件を超える宝物があり今回は59件を展示、そのうち6件は、これまでに出展されたことがないもの。

御即位記念特別展「正倉院の世界ー皇室がまもり伝えた美ー」

2019年(令和元年)に東京国立博物館にて、御即位記念特別展「正倉院の世界ー皇室がまもり伝えた美ー」を拝見したことを思い出しました。

その時の展示は、奈良時代に光明皇后が聖武天皇遺愛の品々を東大寺に献納したという宝物(ほうもつ)で、以来、東大寺の大仏開眼会に関わるものや東大寺の運営に関わるものを見る機会がないかとずっと興味を持っていました。

西川明彦氏の『正倉院のしごと』

宮内庁正倉院事務所所長などを歴任された西川明彦氏の『正倉院のしごと』では、宝物を守り伝える舞台裏について興味深く拝読。

大変印象的だったのは「正倉院は宝物をずっと保管して開けないタイムカプセルではない」ということ。

定期的に曝涼(ばくりょう:虫干し)と点検を行い、明治以降は一年に一度、現在はコンクリート製の宝庫で目通しが行われているようです。

正倉院

出土したものではなく、人の手による宝物が人の手によって受け継がれてきたことは世界的にも珍しく、そのおかげで、私たちは現在でも貴重な宝物を見ることができるのだなと感慨深く感じています。

濃色と薄色、両方を楽しめる染め帯

日本の四季を堪能できる、その季節だけの贅沢な友禅の染め帯

紅葉の季節にぴったりな作品をメインに、濃色と薄色、両方を楽しめるコーディネートをしてみました。

京友禅九寸名古屋帯「金霞紅葉」

帯:京の染匠 一富司 京友禅九寸名古屋帯「金霞紅葉」

少しご紹介が遅くなってしまいましたが、こちらは10~11月にお締めいただくのにぴったりな紅葉柄の作品。京友禅の技法にて、背景の金霞も典雅にしっとりと染め描かれています。

付下げから色無地、小紋などに。

上品なオフホワイトのお色地がとりわけ、染め色の深みを際立たせます

この染めつきの良さ!

夜の京都の風景に浮かび上がる紅葉をイメージ

白地や薄色の染め帯が好きな理由は、着物の地色の濃い薄いに関係なく合わせられるから。本当に重宝します。

こちらの帯を濃色の着物にあわせますと、夜の京都の風景に浮かび上がる紅葉がイメージされます。

濃色コーディネート 

濃色の着物は、源氏香五十四帖の意匠が表現されている付け下げ

新小石丸を用いた草花の地紋が浮かぶ白生地は、赤み、青み、その両方を絶妙に含んだ深い濃茶色に染められています。

先日の『やまと絵展』では、中国から入ってきた文化が日本人の感性によって変化していくさまを見ることができました。

見事な国宝源氏物語絵巻を拝見して感じたことがあります。

さまざまな文化をありがたく受け取り変化を加えながら、現在でも私たちが着続けている着物。やはり私はそれが好きだ、と実感いたしました。

2023.10.28

よみもの

特別展『やまと絵 -受け継がれる王朝の美-』東京国立博物館 「きものでミュージアム」vol.27

京友禅に独自の技法を加えています

太陽光で色が美しく変化する「玉蟲染」など、新しい技術を取り入れ伝統の京友禅に独自の技法を加える『いと由(いとゆう)洛楽人』。

こちらはなんと、光を蓄えて暗い所で光り輝く蓄光技法が用いられているそうですよ。

控えめな柄行きが魅力的な今回の付け下げ。

付け下げというとフォーマル寄りに思われる方もいらっしゃいますが、お洒落袋帯や軽めの染め帯を合わせて、カジュアルなシーンにも活躍します

逆に今回のように金彩が多めの作品ですと、染め帯でも少しフォーマルな場所にぴったり。着物のコーディネートはこういった応用がおもしろいですね。

帯締めには、有職組紐 道明さんの冠組(かんむりぐみ)の縞柄を。趣ある鶸色に金糸も用いられています。

着物と帯の中にすでにある色を選ぶのではなく、「夜の京都の風景に浮かび上がる紅葉」というストーリーを思い浮かべつつ、それをイメージできるような色を持ってくると合わせやすいのではないでしょうか。

2023.09.19

まなぶ

有職組紐 道明(東京都台東区上野・組紐)「バイヤー野瀬の、きもの産地巡り」vol.6

薄色コーディネート

京都きもの市場さんが完全オリジナルで染め出したという「100色色無地

同じ水色系でも絶妙なお色の変化で何色も取り揃えられていますが、今回は水浅葱色を選びました。お顔まわりが華やかになるお色ですね。

小花唐草の地紋入りの白生地は伊と幸さんの「松岡姫」。今なおひとつひとつ、職人さんが昔ながらの引染め技法にて染め上げていらっしゃるそうです。

13mもの長い白生地を刷毛(ハケ)ひとつでムラなく染め上げていく作業は、湿度などの条件に左右されるため機械化できるようなものではなく、熟練の職人技を必要とするのだとか。

そしてそれを均一に乾かすためには風の吹かない場所での作業が必要となり、夏は暑く、冬は寒く……本当に頭が下がります。

さまざまなシーンで着用でき、略礼装から慶弔のお席にまで幅広く活躍する色無地

紋を入れるか入れないか、また染め抜きにするのか縫い紋にするのか、などと考えるのは悩ましくあり、また楽しいひとときでもありますね。

同色の縫い紋を入れますと、袋帯にも染め帯にも合わせられておすすめです。

世界観を崩さないクリアなムードの小物あわせで。

一年の締めくくりも間近に

紅葉も見頃を迎え、一年の締めくくりの12月も目前となりました。

”季節を装う”ことは着物の醍醐味

写実的に描かれる季節柄の染め帯で日本の四季を堪能しつつ、とりあわせる着物の地色選びもお好みのままにぜひ満喫されてくださいね。

今井茜さん

静物撮影/スタジオヒサフジ
着姿撮影/TADEAI 久野藍

ITEM

記事に登場するアイテム

着物:【洛楽人工房】染付下げ着尺 「源氏香五十四帖」

着物:【伊と幸・松岡姫】色無地着尺「小花唐草紋・水浅葱色」

帯揚げ:【加藤萬】 唐織ぼかし帯揚げ 桐菊唐草襷紋 浅黄色

帯締め:【道明】 有職組紐 帯締め 冠組 縞柄 鶸色/金

帯揚げ:【加藤萬】 唐織ぼかし帯揚げ 桐菊唐草襷紋 薄黄緑色

帯締め:【衿秀】 冠組無地帯締め 柿渋染 白×金銀

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