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着物の柄や文様の由来や豆知識をご紹介。伝統文様に詳しくなろう!

着物の模様の由来や、そこに込められた意味!模様を知って着物の着こなしをランクアップ

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柄と柄を組み合わせて着こなす着物。コーディネートする際には、その模様の持つ意味や背景、格を知っておくと、着こなしが格段にレベルアップします。

まなぶ

月々の文様ばなし

着物の模様について知る意義とは?

瑞祥文様である雲取りに、同じくおめでたい意味を持つ菊や橘をあしらった柄

着物や帯を美しく彩る「模様」は、四季折々の自然をはじめ、扇や屏風、楽器や文箱、御所車(ごしょぐるま)などのさまざまな道具や生活用具など、私たちを取り巻くあらゆる素材をモチーフにデザイン化したもの

また中国やインドなどの大陸からもたらされた染織・美術工芸品に端を発し、日本文化のなかに取り入れられた模様も多数あります。

それらは工芸の分野とも密接に関わりあいながら、長い時間をかけて磨き抜かれてきました。

2023.02.11

まなぶ

桜柄の着物が着られる季節とは?気を付けるべきポイントやマナーを徹底解説!

着物は、着物と帯の模様を組み合わせて着こなしますが、組み合わせることによってストーリーや季節感を表現したり、装いの格を高めたり、逆にカジュアルダウンしたりすることができる、特異な装いということができます。

そうしたことからも、日本人の美意識とイマジネーションによって育まれた“模様を知る”ことは、“着物を識る”ことといっても過言ではありません。

ここからは、豊かに広がる模様の世界の一端をのぞいてみましょう。

2023.03.18

よみもの

【Q3】帯の柄の格がよくわかりません 「いまさんの着物お悩み相談室」

奈良・天平時代|大陸から伝来した格調高い「正倉院模様」

奈良の東大寺にある正倉院は、奈良時代に聖武天皇・光明皇后ゆかりの品を納めた建物。

この時代最高峰のさまざまな工芸品に表された模様を「正倉院模様」といいます。

日本の古典模様として最古とされ、多くは海外から渡来したもの。格調高い模様としてフォーマルな着物によく使われます。

宝相華(ほうそうげ)

正倉院模様を代表する格調高い模様「宝相華」

想像像上の花を表したもので、インド、唐を経て天平時代に日本に伝来。正倉院を代表する模様であり、仏教美術をはじめさまざまな工芸に用いられています。

着物や帯にも格調高い模様として多用されています。

ぶどう唐草

ペルシャなどの西方が起源とされる「ぶどう唐草」

ぶどうの蔓と唐草模様を取り合わせ、果実と葉を配した模様。ペルシャなどの西方が起源といわれています。古来より、ヨーロッパなど世界各地に伝播、豊穣の象徴とされてきました。

秋をイメージさせるぶどうがモチーフですが、文様化されているので季節を問わず、着物や帯に使用されます。

忍冬(にんどう)

蔓草のすいかずらに似た植物を文様化した「忍冬」

蔓草のすいかずらに似た植物を文様化したもの。

古代ギリシアのパルメット文様が、日本に伝来して忍冬文様と呼ばれるようになりました。飛鳥~奈良時代の美術工芸品に多く見られます。

忍冬唐草模様ともいわれるように、蔓と茎がリズミカルに構成されています。

平安時代|貴族の装束に由来する「有職(ゆうそく)模様」

平安時代、貴族の衣装や調度品などの日本独自に育まれた優美な模様のこと。正倉院模様など渡来した模様が、日本の風土や日本人の感性に合うよう和様化して生まれました。

典雅な吉祥模様として礼装などにもよく用いられる有職文様は、織りの模様に由来するものが多く、図案化されているので着用の季節を問いません。

七宝

輪つなぎで模様を表す「七宝」

七宝とは、仏教用語で「金、銀、瑠璃、玻璃、珊瑚、めのう、真珠」の貴重な宝物を示す言葉

模様でいう七宝は、同じ円周の4分の1を重ねていく輪つなぎ模様を指し、一般的に輪を繋いだ形や、輪のモチーフを単体のみ、また一部が欠けている「破れ七宝」という形で表されます。

小葵(こあおい)

アオイ科の植物に似ていることから名付けられたといわれる「小葵」

小葵は、銭葵(ぜにあおい)というアオイ科の植物の花に似ているところからこの名が付いたといわれています。

菱形の花の周りを葉のようなモチーフが囲んだデザインで、中世には有職模様のひとつとして貴族の衣装に用いられました。

現在は、着物に用いる白生地の地紋によく使われます

亀甲

亀の甲羅に似た正六角形の幾何学模様「亀甲」

正六角形の幾何学模様で、亀の甲羅に似ているのでこの名が付けられています。

アジア各国に古くから存在し、長寿や吉兆を祝うおめでたい柄。日本では「有職文様」として平安時代に定着

モチーフを上下左右に繋ぎ、花菱を詰めた亀甲花菱など模様のバリエーションも豊富です。

室町〜桃山時代|舶来品として珍重された「名物裂(めいぶつぎれ)模様」

「名物裂」とは中国やインド、中近東から渡来した織物に見られる模様。別名「時代裂」とも。特に茶道では珍重され、産地や裂の持ち主などに由来した名前が付けられています。

もともとは織物で、金襴(きんらん)、緞子(どんす)、錦、間道(かんとう)、風通(ふうつう)、モールなどの技法で織られています。

現在では格式のある模様として、留袖や訪問着、袋帯などに染めや織りで表されています。

笹蔓(ささづる)

明の時代に伝来した名物裂を写した「笹蔓(ささづる)」

中国、明の時代に伝来したとされる名物裂、笹蔓緞子を写した模様。300年に一度実を付けるといわれる竹の実と、花を蔓の形にデザイン化したものです。

アレンジも多く、模様表現によってフォーマルからカジュアルまで幅広く着物や帯に使われています。

吉野間道(よしのかんとう)

江戸時代、吉野太夫が愛用したとされる「吉野間道」

名物裂では、縞や格子を「間道」といいます。

こちらは江戸時代に、島原の有名な芸者で後に豪商で茶人の灰谷紹益(はいやしょうえき)の妻となった吉野太夫が愛用したとされる模様。

基本は濃い萌黄地に白、赤の経縞(たてじま)を浮き織にし、赤、白、紫で真田紐状の横縞を表現したもので、現在は色のバリエーションも多く、人気のある模様です。

蜀江(しょっこう)

中国から伝来した蜀江文様

中国から伝来した蜀江錦に織り出されている文様。八角形と四角形が繋がったようになり、そのなかにいろいろな模様が入ります。

現代では帯地によく使われる文様です。

室町〜江戸時代|能や歌舞伎などの芸能衣装に由来する模様

模様の中には、芸能衣装などから生まれたものも少なくありません。

例えば室町時代に大成した「能楽」は時の権力者に庇護され、能装束には、格調高い模様を量感豊かに表現した唐織や縫箔など、当時最高の染織品が用いられました

まなぶ

気になるお能

また「歌舞伎好み模様」は江戸時代に歌舞伎役者が使った衣装や、役者自身が考案した模様のこと

縞や格子、役者の名前にちなんだ柄など多くの模様がありますが、総じて粋な風情が特徴です。

よみもの

歌舞伎へGO!大久保信子先生に聞く着物スタイル

〈模様のつけ方〉熨斗目(のしめ)

袖下から腰部分にかけて一文字に違う模様で表す柄の校正を「熨斗目」といいます」

能や狂言の装束、江戸時代の武家の礼装に用いられた小袖に見られる模様構成のことを「熨斗目(のしめ)」といいます。

身頃の袖下から腰部分に一文字に違う模様が表されます(イラストグレー部分)。「腰替わり」「一文字取り」と呼ばれることも。

ちなみに似たような名称で「束ね熨斗(たばねのし)」という模様がありますが、全く別の模様です。

〈模様のつけ方〉肩裾(かたすそ)模様

肩と裾に柄があり余白を大きく取った模様を「肩裾(かたすそ)模様」といいます」

肩と裾に柄があり、余白を大きく取った模様構成のこと。室町、桃山時代によく見られ、この時代の能装束に名品があります。

江戸時代初期 寛文年間に流行した「寛文小袖」にもよく見られる柄付けで、肩を包むように模様があるため華やかな印象に。現代の着物では訪問着などに使われます。

〈歌舞伎好み〉高麗屋(こうらいや)格子

縦横ともに太い線と細い線を交互に繰り返した荒い格子「高麗屋(こうらいや)格子」

役者好みの縞格子として知られ、経縞、横縞ともに太い線と細い線を交互に繰り返し通した粗い格子のこと。

江戸中期の名役者、四代目 松本幸四郎が『鈴ヶ森の長兵衛』を演じたときの衣装にこの模様を使ったとされます。

屋号が「高麗屋」のため、この名で呼ばれるように。男女問わず好まれる柄です。

〈歌舞伎好み〉三升(みます)格子

升に見立てた大中小の正方形を入れ子にした「三升格子」

升に見立てた大中小の正方形を入れ子にした模様。歌舞伎役者 市川團十郎の紋所としても有名です。

また、七代目 市川團十郎が定紋の三升を崩して三筋の縞を縦横に組んだ三筋格子は「團十郎格子」「三升格子」として文化、文政期の江戸の町民の間で大流行しました。

2021.03.17

着物の柄

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江戸時代|江戸小袖を代表する「慶長模様」と「寛文模様」

現代の着物の原型となった「小袖(こそで)」。なかでも、江戸期を代表するこちらふたつの模様は大変よく知られています。

ひとつは慶長年間(1596〜1615年)をはじめ江戸初期に流行したデザインで、不定形な場を染めで設け、絞り、刺繡、摺箔などで隙間なく埋め尽くした「慶長模様」

もうひとつは、寛文年間(1661〜1673年)を中心に流行したデザインで、右肩から後ろ身頃にかけておおらかに流れるような柄付けが特徴の「寛文模様」です。大胆な表現の梅や扇面などが刺繍や絞りで表されますが、特に現代では菊模様は「寛文菊」として有名で、着物や帯のモチーフに多く使われています。

慶長模様

慶長年間は、安土桃山時代と江戸時代をまたぐ重要な時代。慶長模様は、着物全体に不定形な場を染め分け、刺繡、絞り、摺箔などで表した小さな柄を配した小袖模様のことです。

豪華な総模様で、地を柄で埋め尽くしたようなところから「地無し模様」「地無し小袖」とも

寛文模様

慶長年間からさらに天下泰平に向かう寛文年間は徳川四代 家綱の時代で、町人文化が花開いていくこの時代に流行したのが、寛文模様

右肩から後ろ身頃にかけて、絞りと刺繡で弧を描くように大きく模様を表し、片方は地空きを広く取るという大胆かつ、無地場の美を感じる模様付け

2022.11.19

まなぶ

辻が花とは?幻と称される染め物の特徴をご紹介

江戸時代|日本画の系譜から生まれた「光琳模様」

「琳派」とは、尾形光琳の名に由来した日本美術の流派。古典文学を背景として詩情あふれる美意識で表現するのが特徴です。

そうした光琳の画風の影響を受けて江戸中期に大流行したのが光琳模様。モチーフのディテールを簡略化し、意匠的で柔和に表すのが特徴。

「光琳松」「万寿菊」「光琳水」などは現在も着物や帯の模様としてよく用いられています。

万寿菊

ふっくらとした丸い菊花と話んで表現された「万寿菊」

尾形光琳が創始した装飾的な琳派の菊の模様

別名「光琳菊」とも呼ばれ、デザイン的にふっくらとした丸い菊花と花芯でシンプルに菊の花を表現。和菓子の意匠としてもよく用いられます。

光琳水(琳派流水)

しなやかで流動的な流水を表現した「光琳水」

水面にきらめく流水のしなやかで流動的なさまを表した光琳の水模様

洗練されていて洒脱な印象が漆などの工芸品をはじめ、現代の着物や帯の柄としても好まれています。

江戸時代|精緻な風景を題材にした「御所解模様」や「茶屋辻模様」

流水や建物、草花などを取り合わせ、風景のように構成した、まるで日本画を鑑賞しているような趣のある贅沢な印象の模様もあります。

糊を置かず直接生地に模様を描く「素描き」や、伏せた糊の部分で模様を表現した白上げで表されることが多く、画力や作り手の力量が発揮されます。

留袖や訪問着、染め帯などに多用され、風景模様に御所車や几帳(きちょう)などを配した典雅な「御所解模様」や、水辺に橋や家屋、草花などを配した「茶屋辻模様」は有名です。

御所解模様

四季の草木などの風景に御所車(ごしょぐるま)や几帳(きちょう)などの器物を加えた典雅な趣の御所解模様」

江戸時代中期から後期にかけて、上級武家や公家の女性の衣装に用いられた風景を表した小袖模様

四季の草花や樹木、家屋などの風景に御所車や几帳などの器物を加えて、古典文学の一場面を想起させる典雅な趣の模様です。

明治以降、御殿女中の着物が流通したことからこの名称がついたという説があります。

茶屋辻(ちゃやつじ)模様

水辺模様に橋や家屋、樹木、草木を聖地に表した茶屋辻(ちゃやつじ)模様」

茶屋染ともいわれますが、名称の由来は不明です。江戸時代、中級武家の女性が夏の正装に着用した、麻の総模様の着物の絵柄をいいます。

もともとは藍染めを中心に部分的に薄黄色を加えた配色で、水辺模様に橋や家屋、樹木、草花などを精緻に表した模様をいいます。

まとめ

模様は着物にとって重要な要素であることは言うまでもありません。自然や器物などの幅広いモチーフをデザイン化し、各時代においてさまざまな模様を生み出してきました。

それらは海外から伝播したものから、日本独自に発展したものがあり、現在の着物や帯にも生かされています。

また模様の定義は大変幅広く、特徴的な柄の配置などにも「模様」という言葉を使います。

模様は、それが生まれた背景や由来によって「格」があり、その取り合わせによって装いの格を高めたり、逆にカジュアルダウンしたり、着物の着こなしに大変重要な役割を果たします

コーディネートをする際には、色みや雰囲気だけで判断するのではなく、模様の持つ背景や格も考慮に入れたいもの

迷った際には、一般的に、着物と帯の模様を同じ時代のものやテイストで揃えると統一感を得ることができるといわれます。

深くて楽しい模様の世界を知り、より素敵な装いを目指しましょう。

文章/田中晃

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