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ちょっと贅沢がお洒落なり。紋紗のコート 「古谷尚子がみつけた素敵なもの」vol.18

ちょっと贅沢がお洒落なり。紋紗のコート 「古谷尚子がみつけた素敵なもの」vol.18

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お洒落巧者の教訓を胸に(?!)京都・上七軒にて、またまた出会ってしまった古谷さん。着物ファンなら気になる”はおりもの”事情、道中も胸を張って歩きたくなるコートとは?

2023.07.26

よみもの

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人前で脱ぐものこそ、上等をよしとせよ

その昔、バブル時期のファッション雑誌の編集部はほんとうに華やかで、“お洒落さんじゃなくちゃ編集者じゃない!”というくらい、いかにもファッション系ですという主張ある風貌をするか、ブランドものにピンヒールか、という世界でした。

映画『プラダを着た悪魔』に遠からず、いやほとんどそんな感じな……

後ろ姿

だけれども仕事の内容は、大きい荷物を持って貸し出しだ、撮影だ、と走り回り残業して終電に駆け込むという裏方そのもの。

そんなパワー全開の時代にファッション誌編集者というキャリアを積んできた中で、いくつか頭に残っている格言がありまして…

コートと靴は上等を心がけよ

言うまでもなく、取材先、ホテルやレストランで、脱いだときに“値踏み”をされがちなアイテムにはとくに気を配って、♪今日に限って~安いサンダルを履いてた♫とならないようにすべし!という教えです。

以来、人前で脱ぐモノはちょっとだけ贅沢が私のなかの基本となりました。

コートって、機能重視でもいいけれど…

そんな刷り込みもあって、機能重視のプレタコートもおさえつつ、最初のコートは花織で誂えました。

かなり着倒して裾が擦り切れてしまい、2枚目は大島紬の生地で。

エレガント系のコートがもう一枚欲しいなあ、素材は紋紗がいいかも~となんとなく思っていたところ、京都・上七軒の『弓月』さんで、出会ってしまいました!

京都・上七軒の「弓月」さん

暖簾をくぐった瞬間に吸い寄せられた魅惑的な濃碧色の紋紗、その名も『ムハサラ』

魅惑的な濃碧色の紋紗地『ムハサラ』

「ムハサラとはアラビア語で”繊細な・細かい”という意味です。袷のきものよりも糸数が少ない組織でありながら、いかに繊細な紋様を創り出すかに挑戦した紋紗のシリーズ名として名付けたのですが、カッコイイでしょ?」

弓月女将であり西陣の織元・秦流舎の野中順子社長が自分の息子のように嬉しそうに自慢するその紋紗に、”もうこれしか目に入りません”状態の私。

ムハサラとはアラビア語で繊細な・細かいという意味」

濃碧色の紋紗『ムハサラ』シリーズ、王宮ダマスク紋様

まず何より好きな色であること。

そして透ける紋様がアラベスクのようでもあり正倉院紋様のようでもあり、ぼんやり思い描いていたコートにぴったり!ほかを比べるまでもなく、即決です。

アラビアンレース紋様

こちらはムハサラシリーズのアラビアンレース紋様。落ち着いた葡萄色がとても素敵

そもそも紋紗ってなんでしょう?

温暖化の影響もあってか、薄物のバリエーションも豊富に見受けられるようになるなかで、ひときわ注目されている紋紗とは、そもそもどんな織物なのでしょう

いろいろな紋紗地。透け感が優雅

いろいろな紋紗地。透け感が優雅

野中社長に聞いてみると、

「ちょっと難しい綜絖(そうこう)※の話になりますけど、経糸(たていと)を上下だけでなく左右入れ替え、開口させることによって緯糸(よこいと)を通し、もじりながら織り上げていくのが紗です。

紗と呼ばれるものには、組織によって本紗(ほんしゃ)・紋紗(もんしゃ)・粋紗(すいしゃ)・擬紗(ぎしゃ)などいろいろな種類があって、糸の間に空間が多いため通気性がよいのが特徴ですね。

紗の中で紋様を織り出したものを紋紗といいますが、このムハサラは図案家と紋図屋との技の結晶で、素晴らしい出来上がりになりました!」

と、女将としてもとても自信作の様子。

※綜絖……織機で、緯糸(よこいと)を通すために経糸(たていと)を上下に分ける器具のこと

きものに仕立てるか、羽織やコートにするかはあなた次第

あまりにも素敵な織物だけに、一瞬、きものにしたほうがいいかしら?羽織にしてもカッコイイかも?と思いましたが、ここは初志貫徹でコートに。

デザインはこの表から自分好みをチョイスすることができます

デザインはこの表から自分好みをチョイスすることができます

なんと12種類もある衿型デザインのなかから「着物衿」を選択、丈はフルレングス、紐はリボンを選んで全体的にシンプルな感じにオーダーしました。

気兼ねなく着られるようにガード加工もお願いして……カンペキだ!

そして、約二ヶ月後。「仕立て上がりましたよー」の連絡を受け、上七軒へ向かいました。

素敵なコート!

見てください!素敵でしょ?

いてもたってもいられずにお店の2階をお借りしてきものに着替え、しばし京都を満喫してから帰りま~す。

後ろ姿もきれいでしょ?笑

後ろ姿もきれいでしょ?笑

なんど見ても笑みがこぼれる~!上品な紋様がお気に入り

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レースの羽織が素敵な女将の野中社長と!

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撮影/スタジオヒサフジ

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