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昭和の夏の風物詩、再び 「きものとわたしのエイジング」vol.8

昭和の夏の風物詩、再び 「きものとわたしのエイジング」vol.8

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「夏に浴衣」は「夏の風物詩」のひとつだし、なくなることなどない、と認識していたのですが……

2023.07.14

よみもの

年齢を重ねたからこそ、わかること 「きものとわたしのエイジング」vol.7

海外中学校での「浴衣実習」

昨年に引き続き今年も、台北にある中学校での「浴衣実習」に講師として呼んでいただきました。

生徒さん一部 ゆかた後ろ姿

2022.08.14

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実は海外では驚くほど、「日本人なら誰もがきものを自分で着ることができる」と思われています。

残念ながら、実際には日本でもきものを1人では着られないかたが多い……かくいう私も、自分できものを着るようになったのは、ほんの10数年前のこと。

ただ不思議なことに、夏の浴衣だけはかなり昔から自分で着ることができました

それだけ幼いころから毎年夏になると着せられていた、そうしているうちに慣れて自分でも着られるようになってきた、そんな経緯だったような気がいたします。

記憶が定かではありませんが、浴衣を縫う授業があったことは覚えていますので、着方もその時に習ったのかもしれません。

そんな経験から、この授業の遠い先には、私のように「浴衣をきっかけにきものにハマる」誰かが生まれるかもしれない

ここが、はじまりの一歩になるかもしれないと思うと、その時間に関われることが、とても感慨深く感じられました。

そしてこちらの日本人中学校では、10年前からこの取り組みをされているとのこと。背筋の伸びる思いで教壇に立たせていただきました。

背筋の伸びる思いで教壇に

授業では、日本の伝統衣装であるきもの、その歴史に簡単に触れつつ、浴衣は夏の普段着であること、式典以外に着るきものは洋服と同じように自由であることをお話しました。

男子生徒の角帯を結ぶ位置については、「腰骨」という表現も「腰パン」という言葉もその位置がわかりにくいとの経験から、まず自分のおへそを自分の両手の親指で触ってもらい、残りの4本の指が自然に下におりた場所までが角帯を巻いた幅になると、表現してみました。

男子生徒の角帯を結ぶ位置

和装の「カッコイイ」「美しい」とされる着姿は洋装とは違うことなどを画像で説明したあと、男女それぞれに分かれて実習。

はじめて浴衣に袖を通す子たちが多く、まさに海外での貴重な経験となったようでした。

照れ笑いする様子は、本当に微笑ましいもの

男子生徒の実習は台北にある、台湾唯一の本格的な呉服屋、京都和服館さんから、店長の顔(ガン)さんとスタッフさんが、昨年同様お手伝いに入ってくださいました。

京都和服館さんは、10数年台湾での和服文化の伝承に携われています。

男女合流しての写真撮影では、みなさま、自分の浴衣姿はもちろん、同級生の姿も眩しかったのでしょう、照れ笑いする様子は、本当にほほえましいものでした。

日本茶道裏千家師範の長田さんと台北京都和服館のお2人

講師として呼んでいただいた茶道裏千家師範の長田さん(左)と台北京都和服館のお2人と

中学生といえば、私とは40歳以上の歳の差です。

誰を見ても何を見ても初々しく「かわいらしい」中学生たち。

その中に入れば私も0.5歳くらいは若返るんじゃないかと期待していたのですが……慣れない早起きと連続2クラスの授業に疲れ果て、家路に着く頃にはヨロヨロ。

毎日何時間も授業をされる先生の体力を思うと、ひれ伏すばかりです。

衝撃の事実

今年は昨年と比べて、自分の浴衣を持ってくる生徒の数がかなり減ったことに驚きました。

場所が海外であること、昨年までコロナ禍で行事が中止されることも多かった、ということも理由にあげられますが、日常的でないものは、必要な時には「レンタル」で済ますという合理性が垣間見れた出来事となりました。

「きものと」読者のみなさまは、TPOに合わせて小物までを使い分け、季節感を楽しめる衣服として、きものも浴衣も、日常的に着る方が多いと存じております。

それでも全体数としては、絶滅危惧的存在だということは自覚していましたが、まさか「夏の浴衣」も夏の風景のあたりまえから消えつつあるのだとしたら、「もったいない」という思いでいっぱいになりました。

なぜなら「夏の浴衣」にはメリットがたくさんあるのです。

・涼しげに見える
・日焼け防止になる
・二の腕の太さが見えない
・夏らしい

今風に言えば「かなり盛れます」。

その上自宅の洗濯機でネットに入れて洗えます。

「夏にゆかた」は「夏の風物詩」

浴衣であっても着慣れていなければ、着るのが億劫になったり、洋服より面倒だと思う気持ちは十分理解しています。

私は決して「浴衣のほうがラク」だとも「きものでも行動は制限されずに何でもできる」とも思ってはいません。

むしろ洋服の方が、手軽だと感じています。

ですがそれでも「夏に浴衣」は「夏の風物詩」のひとつだし、なくなることなどない、と認識していたのです。

でも今回の「浴衣実習」で少し危機感を強くしました。

居ても立っても居られない気持ちでここ数年の「夏の風物詩ランキング」を調べてみたところ、「浴衣」はなんと、どのランキングからも10位圏外という結果でした。

「夏祭り」や「花火」は上位に入っているのにです!

この2つと「浴衣」はセットだと思っていました……

花火

幼い頃に着せられた浴衣、学生時代に授業で自分で縫った浴衣、祖母の日常のきもの姿や、母の節目のきもの。

歳を重ねたから、また海外にいるから遠ざかったのではなく、実際の日本でも目にしなくなっているのですね。

夏こそ浴衣

台北では、人気スポットの大稻埕(だいとうてい/ダーダオチェン)で毎年花火大会があります。

今年は、人出の多さと長時間の近隣の交通規制を緩和する施策で、7月1日から8月20日までの毎週水曜日に花火をあげています。

土日の混雑が苦手な私は、水曜日なら、とはじめて台北での花火大会に出かけることにしました。

ゆかた姿も花火と同時に楽しんで欲しい

平日の仕事終わりに訪れる人が多いからかもしれませんが、この日は、浴衣姿は私と友人の陳さん(茶道と日舞の師範)2人だけでした。

ぜひとも8月20日の最終日には、多くの方が、花火と同時に浴衣姿も楽しんでほしいと思います。

「ゆかた」を着ただけで「風情」を感じる

ただの河辺ですが、「浴衣」を着ただけで「風情」を感じる風景になる衣服。

夏こそ、浴衣。

そういえば「蚊取り線香」もランク圏外でした。

ああ、昭和……

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