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灯 高橋完治さん(前編) 「彼らが”和”を想う理由」vol.4-1

灯 高橋完治さん(前編) 「彼らが”和”を想う理由」vol.4-1

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日本全国にある伝統工芸品を最新の光技術と融合させ、全く新しい照明機器を次々と生み出している『灯』代表 高橋完治氏。幻想的で優美な空間演出は、”伝統”と”モダン”の掛け算が織りなす光ならでは。『灯』の光が照らす先は、今や日本を超え世界へ―

インタビュー

「彼らが”和”を想う理由」

プロローグ

「ついでに見ていかない!?」

建材業の友人の誘いで、鈴鹿市白子にある『伊勢型紙資料館』に足を運んだ高橋完治氏。たまたま出張で三重に来ていた。

灯 高橋完治氏 インタビュー

当時の高橋氏は、大手半導体メーカーの光のセールスエンジニア。

感激をゆうに超え、衝撃が走った。千年に近い長い歴史を持ち、現存する伊勢型紙をたくさん目にしたのだ。

伊勢型紙

学生時代は理系専攻、勤務先も鉄鋼、半導体業界の技術者。幼少期から絵は好きであったが、日本の伝統文化に触れていた記憶はない。

偶然に好奇心が誘われ、新たな道が拓かれる。

現在展開されている唯一無二の照明器具たちは、伊勢型紙や彫金、シルク糸など、専門の職人の伝統技術と高橋氏の光の技術の融合の賜物である。

灯 製品01

原点は、伊勢型紙

白子での衝撃的な出会いから、今や高橋氏が保有する伊勢型紙は4,000枚を超える

型紙を”お宝”と称する高橋氏のその表情からは、先人の技術者やものづくりへの尊敬と、畏敬の念までもがにじみ出ている。

灯 高橋完治氏 スイートルームにて

古いものと新しい技術の掛け合わせ、その発想は、どうやらどんどん出てくるらしい。ユニークなものを生み出したい、と常に考えているようだ。

目指すはフィンランドの『マリメッコ』のような、国民に愛されるブランド。

原動力は何ですか?とお伺いすると、「僕には時間がないから」と屈託のない笑みで。

楽しいね!大変だけどね」と、とても自然体。

灯 高橋完治氏 笑顔

日本のものづくりは「MADE IN JAPAN」だけで付加価値がつくように、万国共通の認識である。自身が技術者であったからこそきっと、職人や技術者の繊細な感性や緻密なこだわりが手にとるように分かるのだろう。

伊勢型紙からはじまり、現在は、それぞれが特徴を持つ4種類の商品を展開されている。

すべて人とのご縁がきっかけで、伝統文化継承への共感と賛同のもと生まれた作品たち。みなさまはどちらを灯してみたいだろうか。

『かたリベ』

伝統工芸士 内田勲氏作の伊勢型紙をランプシェードにし、日本古来の文様を投影する

2017年度「おもてなしセレクション」受賞

『煌き』

煌めきシリーズ

工芸美術的なパターン模様が光の影絵を生み出す

『かおり行燈』

灯 こもれびシリーズ

提供:灯

日本古来の着物柄(伊勢型紙)をランプシェードにし、癒しの灯と日本の香り(お香)を忍ばせた

『澄み凪』

澄み凪シリーズ

シルク曼荼羅ランプ

”糸かけ曼荼羅”という緻密な手仕事で作られ、幻想的な影絵が浮かびあがる

『加賀屋』へ。その突破力

ものづくりに、一切の妥協や余白はいらない。すでにそのものがすばらしい伊勢型紙をさらに活かすため、それは至極当たり前のこと。

最初の伊勢型紙の照明から、こだわり尽くした。

構成する要素は、輪島塗り、美濃和紙、岐阜の木材……とすべて日本の伝統文化である逸品ばかり。光が灯される空間は柔らかで優しいが、緻密な技術のもと、シャープな光が発せられなければ成り立たない。

加賀屋へ

作品のデビューとして、置かれる場所も徹底的に考えられた。

日本のおもてなしの舞台と言えば……

石川の老舗旅館『加賀屋』(和倉温泉)にしよう!と決めた高橋氏。皇室御用達の有名老舗旅館である。

灯 高橋完治氏 

毎月毎月、足繁く加賀屋に通い続けた。

まずは知ってもらう。作品の価値、想いを何度も何度も伝える。途中担当が変わっては、また最初から。

熱意が伝わったのか、価値に気づいてくれたのか、先方も少しずつ興味を持ってくれた。

旅館の調度品はリース品が多いなか、高橋氏の作品は受注生産の高額商品。しかし今までにない日本の伝統文化が凝縮した逸品に、先方も熟考し検討を重ねていたのだろう。

気づけば5年の歳月が過ぎ……時は2013年、貴賓室への採用となる。

こだわりの逸品は、こだわりの場所にてデビューを果たす。

灯 デビュー

燃え続ける情熱の松明

『加賀屋』貴賓室への採用から自動的に水平展開……という淡い期待は外れ、高橋氏は引き続き、自らマーケット開拓に切磋琢磨することに。

そこでも高橋氏の歩みは留まることを知らない。

その甲斐あり、現在はエクセルホテル東急、大阪エクセルホテル東急、銀座和光、三越本店、高島屋本店、新宿高島屋、蔦屋家電(二子玉川)、蔦屋書店(銀座シックス)に採用されている。

また、蔦屋家電をおとずれた全日空の社員の目に留まり、2018年ANA機内誌11月号『WINGSPAN』(国際版)の表紙を飾ることとなる。

2019年には経済産業省の『Challenge Local Cool Japan in Paris』に選出され、その後3回続けて『Maison wa』に展示される。またJETRO主催の日本のベスト100選『TAKUMI NEXT』に2019年、2020年と連続して選ばれる。

灯 高橋完治氏 想い

後世に日本の伝統を残したい」という高橋氏の想いが、照明という形となり広く人々の目に留まり、伝わりはじめている。

「伝統」の語源とされるひとつに「傳燈(でんとう)」という仏教用語があること。

仏教寺院にてお釈迦様の教えを伝えるため長い長い松明(たいまつ)を燃やし、その火を別の松明にうつす火の手渡し。先人からの教えを代々にわたり後世に伝えていく―

社名の『灯』が物語るように、高橋完治氏の情熱の松明は今なお燃え続けている。

灯 今なお続く挑戦

~ 後編へ続く ~

撮影/五十川満
聞き手/池田千恵里、藤田陽子

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