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昭和映画で見た憧れの衣装ブラシ 「ちょっとだけ、ていねいな暮らし」vol.2

昭和映画で見た憧れの衣装ブラシ 「ちょっとだけ、ていねいな暮らし」vol.2

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若いころにはまって、たくさん見た昭和のモノクロ映画から教わったことのひとつに、衣類にブラシをかける、という動作がありました。

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その日、その時期に着た衣類に軽くブラシをかける。

そのちょっとした動作が私はとても好きです。ものを大量に持たなかった時代の映画から、着るものも大事に扱うことを教えてもらったように思います。

毎日毎回はとてもできないけれど、私なりの、マイペースな「ちょっとだけていねいな暮らし」。お時間がございましたら、どうぞお付き合いくださいませ。

モノクロ映画から教わった衣服のブラシがけ

私の手元には、衣類用のブラシが三本あります。

洋服用の馬毛のブラシと、別名「エチケットブラシ」ともいう持ち手のついたホコリ取り、そしてもう一本は、和服用の柔らかい豚毛のブラシです。

衣類用のブラシ

洋服用の馬毛のブラシ(奥)、ホコリ取りの「エチケットブラシ」(中央)、和服用の豚毛のブラシ(手前)

若いころにはまって、たくさん見た昭和のモノクロ映画から教わったことのひとつに、衣類にブラシをかける、という動作がありました。

小津安二郎監督作品の『晩春』は、鎌倉に住まう父と娘を描いたホームドラマですが、物語の後半、主人公のヒロイン紀子(原節子さん)の縁談話をまとめようと、叔母(杉村春子さん)が返事を訊きに鎌倉の家を訪れ、遅くに帰宅した紀子の返事を聞き出そうと急かす場面でのこと。

衣類にブラシをかける

紀子が、脱いだ上着に軽くブラシをかけるシーンが目に留まりました。

時間にして十秒ほどの、なんということもないシーンですが、これを見た私は「洋服用のブラシを買おう!」と思ったのでした。

社会人になってまだ一人暮らしを始めて間もない時期のことで、日用品には何が要るのか、自分はどんな暮らしをしたいのか、雑貨店などあれこれ見てまわるのがとても楽しい時期でした。

衣類用のブラシ

田舎から移り住んでみれば、東京の街は、秋から春にかけて埃が大量に舞い、想像以上に空気が汚くて驚いたものでしたが、そのせいもあって衣服のブラシがけに気持ちがいったのかもしれません。

繊維にからむ埃をとるエチケットブラシも、携帯用だけでなく、柄のついたしっかりしたものを用意しました。

柄のついたしっかりしたブラシ

そして、着物を着るようになってからのこと。

やはり空っ風の吹く冬場など、静電気ではりついた裾の内側に、埃がいっぱいまとわりついていたのを帰宅してから見て仰天したことがありました。

着物用のブラシ

あるとき着物用のブラシがあることを知り、私にはちょっと値がはる買い物でしたが、頑張って手に入れてから、この和装用ブラシもずっと愛用しています。とくに苦手な花粉の飛散する季節には、とても心強い味方です。

和装用ブラシもずっと愛用しています

シーズン中、一度しか手を通さなかったような上着やコートは、それだけでクリーニングに出すのも気がひけるので、花粉の飛散もおさまった五月の空気が爽やかなお天気の日に、ベランダでていねいにブラシをかけ、埃をとってから箪笥にしまうようにしています。

上着やコートは埃をとって

若いころ、とくにものを大事にしようという心からではなく、昭和の映画で見た原節子さんのちょっとした動作に憧れただけのことかもしれませんが、その時に購入したブラシは、今も私の手元で現役として活躍してくれています。

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