みなさま、連休はいかがお過ごしになられましたでしょうか。

私は、東京都青梅市にあります『櫛かんざし美術館』が今月末より休館と聞いて伺い、小さな形状のなかに込められた世界観に魅せられるひとときを過ごしてまいりました。

着物のコーディネートにおいても”引き算”を意識する私にとって、鼈甲や本漆、素材そのものの魅力を活かしたデザインの作品はより心に響き、凝縮された美意識のなかに、今後の私自身のデザインにも生きるヒントをたくさんいただきました。

ぜひ、訪問着の銀駒刺繍にご注目を。

止め糸の色にまでこだわって統一された様子が伺えますし、実に手の良い仕上がり。ふわりと風の通り抜ける一瞬が捉えられて、一糸の狂いもなく繍いあらわされています。

間仕切りや風除けに用いられたという几帳。流れるような銀糸の線美に女性らしさを感じますね。

それとは対極的に、用いられた絹地の地模様は細かな格子柄。帯にあわせた市松柄ともぴったりで、すっきり、凛とした格好良さも漂わせます。

「訪問着」とは言いながらも「付下げ」のような気軽さもあわせ持つアイテムですので、金銀箔や金銀糸がふんだんに使われているものでしたら、染めの名古屋帯を合わせていただくのもステキなとりあわせとなりましょう。

ポイントとなるのは、帯締めのセレクトでしょうか。

基本的に格を上げる場合には、平組などの太めの組み方で金銀糸が入ったものを用いますが、染め帯をあわされる場合にはそれよりも少し、金銀糸使いや太さを抑えめにしていただくことをおすすめします。

今回は織りの袋帯をあわせていますが、あえて多色使いを避けた単色の帯締めで、この季節ならではのすっきりとした印象に仕上げました。

梅垣織物「有綵無彩」の帯は、金銀の押し箔が美しく輝く袋帯です。

角度によって輝きが変わるので動くたびに華やかな印象を与え、落ち着いた黒地が、派手になりすぎることなく上品さを保っています。

帯揚げには、無地感覚のものを持ってくると格好良く、白場が多い友禅のものや絞りのものを合わせると女性らしい印象になります。

通常はおしゃれ用として用いるこちらの帯揚げも、卯年にちなんでさりげなく取り入れて。

箔使いもあり、全部をみせずに着付けるのでしたら、全体のムードを損なうこともありません。

袋帯を締めることで、結婚式やお茶席、パーティーなど、格式の高い場面にふさわしい、重厚な印象を与えるコーディネートになります。

訪問着の装いには季節や場面に応じてさまざまなバリエーションがありますが、こういったとりあわせでしたら、美しく、凛とした印象を与えること間違いなしですね。

重ねる布地の数が少なくなり、身も心も軽やかに弾むこれからの季節……

着物ファンにとっては、さまざまな素材に心躍る季節がやってきます！

私は染め織りの勉強も兼ねて、はじめての沖縄へ。きらめく海と空の下で、よりみなさまの心に響くデザインを考えるひとときを過ごす予定です。

どうぞみなさまも、季節を堪能してくださいね！

静物撮影／スタジオヒサフジ
着姿撮影／TADEAI 久野藍