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私だけの針箱を持つ楽しみ 「ちょっとだけ、ていねいな暮らし」vol.1

私だけの針箱を持つ楽しみ 「ちょっとだけ、ていねいな暮らし」vol.1

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安全ピンや半端なボタンなどが隅っこに溜まっているのを見ていたら、祖母や母の古い針箱の中と似てきたことに気がつきました。女の針箱は、その人の生きてきた歴史とともに、どうしてもこんな風になるのかもしれません。

2022.03.21

まなぶ

春をよろこぶ卯月 「月々の文様ばなし」vol.1

マイペースな「ちょっとだけていねいな暮らし」

気がつくと、五月がもうすぐそこまできています。

時の過ぎる早さにはいつも驚かされますが、忙しくしていても、ほんのちょっとでいい、気持ちを切り替えて、自分の好きなことをする。面倒な作業にひと手間かける。どうしたらそうできるかしら?と、日々そんなことを思いながら過ごしています。

私なりの、マイペースな「ちょっとだけていねいな暮らし」を綴ってみようと思います。お時間がございましたら、どうぞお付き合いくださいませ。

手仕事へのハートをくすぐるお気に入りの針箱

滅多に針と糸を持つことがなかった生活に、まずとびきりお気に入りの針箱を用意しましょう。きっと箱を持ち出すたびに、億劫だった針仕事も、ちょっとだけやる気にさせてくれますよ。

針箱

二十代で着付けを習い覚えてから、私はたちまち着物を着る楽しさに夢中になりました。

けれども、すぐにある問題に直面しました。それは半衿の掛け替えという面倒さ。着物を着る人なら誰でも、この問題から逃れることはできないのではないでしょうか。

社会人になってからは針と糸を持つのは、とれたボタンをつけ直す時だけ。旅行に携帯するお針セットしか持っていなかった私は、どうしたらこの面倒な作業をやる気になるのか、考えてみました。

頭に浮かんだのは、実家にあった祖母や母の古い針箱です。

こまごまとした裁縫道具

こまごまとした裁縫道具のほか、錆びた鋏に、糸屑や半端なボタン、端切れや小さな写真、小銭まで入っていたりして、見栄えは悪いものの、そこには家の暮らしの記憶の断片と、かすかに女子の手仕事へのハートをくすぐるものがあったように思います。

そこで私は「自分の気に入った針箱を持とう!」と思いつきました。ちょっとでも針と糸を持つ気になれる、私だけの針箱を。

最初に用意したのは、赤い千代紙が貼られた小物入れでした。

赤い千代紙が貼られた小物入れ

仕掛け箱のように左右に開くと、中から互い違いになった小物入れが三段現れるもので、その中へ、京都土産の愛らしい針山や、鈴を付けた糸切り鋏などを入れ、気に入った道具をちょっとずつ足していきました。

私だけの針箱を持つ楽しみは、想像以上の効果がありました。

私だけの針箱を持つ楽しみ

衿の掛け替えはもちろんのこと、なみ縫いをするだけで作れる手拭いの巾着やあずま袋、前掛けやたすき紐、さらには裾除けなども縫ってみたりと、針仕事をやり始めたではありませんか!

かつてはボタンをつけ直すだけでも面倒だったのに。

赤い和紙の針箱は、かなり長い間活躍してくれましたが、やがて壊れたので、今度は綺麗なお菓子の空き缶に替えました。

お菓子の空き缶の針箱

何色もの木綿糸や絹糸、「かけはり」や「くけだい」金具など和裁道具なども加わり、その分だけ、最近の私の針箱の中は雑然としてきました。

かけはり」や「くけだい」金具など

安全ピンや半端なボタンなどが隅っこに溜まっているのを見ていたら、祖母や母の古い針箱の中と似てきたことに気がつきました。女の針箱は、その人の生きてきた歴史とともに、どうしてもこんな風になるのかもしれません。

そろそろ箱の中を掃除し、道具を組み直そうかしら、と思案しているところです。

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