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映画のまち・京都が生んだ“新”時代劇 『仕掛人・藤枝梅安2』 「きもの de シネマ」vol.27

映画のまち・京都が生んだ“新”時代劇 『仕掛人・藤枝梅安2』 「きもの de シネマ」vol.27

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銀幕に登場する数々のキモノたちは、着こなしやコーディネートの良きお手本。せっかくなら、歌舞伎やコンサートみたいに映画だってキモノで愉しみませんか。春爛漫のいま、京都が舞台となった『仕掛人・藤枝梅安2』をぜひ劇場でお愉しみください!

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新春の京に描かれる因縁の行方

京のそこかしこで、満開の桜が咲き誇っている春真っ盛り。
ごきげんよう、椿屋です。

河毛監督と豊川悦司さんに制作の裏話をお聞かせいただいて、早二月。あっという間に、第二作の公開と相成りました。

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池波正太郎生誕100年を記念した今回の映像化プロジェクトには、海外に通用する新しい時代劇を作りたいという想いが込められています。

©「仕掛人・藤枝梅安」時代劇パートナーズ42社

©「仕掛人・藤枝梅安」時代劇パートナーズ42社

時代劇を「守る」のではなく、時代劇で「攻め」ていく。そんな気持ちをカタチにするために白羽の矢が立ったのが、針という武器を使って人を殺めるダークヒーロー・藤枝梅安でした。鍼医者と仕掛人という二つの顔を持つ梅安と彼に関わる人々を通して、緊迫感ただよう闇の中に“本当の悪”が浮き彫りになる本作。

©「仕掛人・藤枝梅安」時代劇パートナーズ42社

©「仕掛人・藤枝梅安」時代劇パートナーズ42社

梅安(豊川悦司)とその相棒・彦次郎(片岡愛之助)をはじめ、おもん(菅野美穂)、おせき(高畑淳子)、鍼の師である津山悦堂(小林薫)らレギュラー陣に加えて、第一作同様にくせ者ゲストが作品に深みを増しています。

©「仕掛人・藤枝梅安」時代劇パートナーズ42社

©「仕掛人・藤枝梅安」時代劇パートナーズ42社

中でも、梅安に因縁ある浪人・井上半十郎を演じる佐藤浩市さんと、彦次郎の仇である井坂惣市役の椎名桔平さんの凄みには、何度も息を呑むことでしょう。とくに、端正さと無頼さを行ったり来たりする椎名さんの、松平甲斐守の家臣・峯山又十郎との一人二役はお見事です。

ご両人ともに、所作や殺陣、表情や声の抑揚だけでなく、ただそこに在るだけで物語る力を持つ役者さん。まさしく、江戸の、日常に生きている——その息遣いの生々しさは、劇場だからこそ味わえる臨場感だと言えます。

ちなみに、わたくし個人的には、ドラマ「剣客商売」で主人公・秋山小兵衛(藤田まこと)と40歳も歳の離れた妻・おはるを演じた小林綾子さんの渾身の演技にぜひご注目いただきたい!

©「仕掛人・藤枝梅安」時代劇パートナーズ42社

©「仕掛人・藤枝梅安」時代劇パートナーズ42社

舞台が、江戸から京都へと移る第二作。空気の手触り、気候の質感といったような「ふっとあの時代に引き戻してくれる何か」が京都にはあると、河毛監督はおっしゃいます。

撮影は極寒の真冬の京都で行われ、幾度もスタッフ総出で雪掻きをするほど過酷な現場だったようですが、それらの日々を振り返って「京都で時代劇をつくることの贅沢さを感じた」とは、豊川さんのお言葉。
まち全体の雰囲気。それは、まちの人たちの営みが醸し出す空気です。そこには、「暮らしに根づいてきた文化がある」と監督。物語のベースとなる風情……京都だからこそ描き出せる佇まいを、存分に味わってくださいませ。

光と闇が生み出す、生と死の間(あわい)

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大作から独立系低予算映画まで200本以上に及ぶ作品の衣裳・衣裳デザイン・製作を手掛けるだけでなく、映画館「シネマ下北沢」の支配人となったり、映画『ざわざわ下北沢』(市川準監督)のプロデュースをするなど、幅広く活動されています。2013年「第36回日本アカデミー賞協会特別賞」を、2023年には芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。

そんな宮本さんのセンスが最も光るのが、江戸から京へと旅する際の梅安の道中着です。

©「仕掛人・藤枝梅安」時代劇パートナーズ42社

©「仕掛人・藤枝梅安」時代劇パートナーズ42社

一見コートっぽくも見える、襟元が特徴的な意匠。これは、マカロニウエスタンが好きな河毛監督の嗜好を巧みに盛り込んでデザインされたオリジナル!あまりに気に入った愛之助さんが、現場でとても羨んでいらしたとか。思わず欲しくなる気持ち、大変共感いたしました。冒頭、刮目してご覧あれ。

©「仕掛人・藤枝梅安」時代劇パートナーズ42社

©「仕掛人・藤枝梅安」時代劇パートナーズ42社

キモノという点では、菅野美穂さん演じる女中・おもんの装いが物語に花を添えているのも見逃せません。藍や紫紺、墨といった男性陣の暗めの衣装の中にあって、おもんの明るいお召し物は彼女のピュアさを思わせるからです。長襦袢の濃い桃色の半衿も可愛らしい印象。

なぜあんな男と親しくしているのかと半十郎(佐藤浩市)に詰め寄られ、瞳を潤ませながらも「あの人を好いていることが私の慰めになるのです」と気丈に答えるシーンは、おもんが梅安にとって唯一の心の癒しであることに説得力をもたらします。

©「仕掛人・藤枝梅安」時代劇パートナーズ42社

©「仕掛人・藤枝梅安」時代劇パートナーズ42社

同じ仕掛人でも、片や袴姿(佐藤浩市 as 井上半十郎)で、もう片方は着流し(一ノ瀬颯 as 佐々木八蔵)。それぞれのキャラクターらしいヘアスタイルとの相性も良く、並んで歩くときの色の対比も絶妙です。しかも、佐々木八蔵は左右で色の濃淡が異なる片身替で、半衿は粋な紫。さらに、実は髪結いの紐もお洒落。男前というより妖艶なかんじが引き立つコーディネートです。

©「仕掛人・藤枝梅安」時代劇パートナーズ42社

©「仕掛人・藤枝梅安」時代劇パートナーズ42社

第一作の早乙女太一さんとはまた趣の違った殺陣も見どころです。殺める相手の命を軽く見ている冷酷さと己の強さを誇示することへの拘りが、その太刀筋に表れているような。ひらりひらりと翻る裾から見える脚、はだけた衿元、乱れる髪……すべてが妖しく、画面の暗さや拡がりと相まって、印象的なシーンでした。

まさに“新時代劇”の名に相応しい、河毛監督曰く「美しい」時代劇となった『仕掛人・藤枝梅安2』。スクリーンから立ち昇る独特の世界観を、肌身で感じとってほしい作品です。

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