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人生に幸いをもたらす唯一無二の出逢い『わたしの幸せな結婚』 「きもの de シネマ」vol.26

人生に幸いをもたらす唯一無二の出逢い『わたしの幸せな結婚』 「きもの de シネマ」vol.26

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銀幕に登場する数々のキモノたちは、着こなしやコーディネートの良きお手本。せっかくなら、歌舞伎やコンサートみたいに映画だってキモノで愉しみませんか。桜の蕾が開き始めたいまだからこそ、美しい桜の風景が印象的な『わたしの幸せな結婚』に注目いたしましょう。

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注目すべきは、キーモチーフとなる「桜」

桜の開花宣言が待ち遠しい今日この頃。みなさま、いかがお過ごしですか。
ごきげんよう、椿屋です。

春着物の柄として欠かせない「桜」。もはや春だけに限ったことではなく、和柄=桜というイメージもすっかり定着しました。ファッションに造詣が深く、着物デザイナーとしても活躍された随筆家・宇野千代さんが桜柄を愛し、一年中着用していたことから、桜が季節を問わないモチーフになったという話もあるほど。

ですが、和装においては、やはり季節を先取りしたお洒落を愉しみたいもの。蕾の模様、満開の桜花、散りゆく花弁、花筏……と、その表情が豊かに変化するのも桜の魅力です。本来なら少し前倒しでコーディネートに取り入れたいところですが、柄の配置や大きさによっても印象が随分と異なります。

©2023 映画『わたしの幸せな結婚』製作委員会

©2023 映画『わたしの幸せな結婚』製作委員会

今回ご紹介する『わたしの幸せな結婚』(略して「わた婚」)は、そんな桜コーデのお手本のような装いが物語の核たる部分を担う作品です。

なかでも、ヒロインにとって母の形見である桜地紋の生地の振袖は、なかなか稀に見る美しさ

冒頭、地味で暗い色味の着物で登場する美世(今田美桜)が、華やかな装いをその身にまとうようになる際の桜づくしのコーディネートも必見です

©2023 映画『わたしの幸せな結婚』製作委員会

©2023 映画『わたしの幸せな結婚』製作委員会

また、今作に登場する女性陣は須らく(元使用人でさえも)、花々しい刺繍の半衿をお召しです。季節の花が咲き誇る半衿が次々と登場するなか、お手伝いさん役の山本未來さんが身につけるシックな装いも見逃せません。呉服店店主を演じる珠城りょうさんの落ち着いた花柄も魅力的でした。とにもかくにも、凝った半衿!本作の見どころのひとつでございます。

©2023 映画『わたしの幸せな結婚』製作委員会

©2023 映画『わたしの幸せな結婚』製作委員会

そして、もうひとつ注目していただきたいのが「組紐」

クレジットを拝見するに、平田組紐さんが関わっておられる模様。長髪である清霞(目黒蓮)のために美世が組紐を組むシーンは、彼女の想いが組み込まれているようで胸に迫ります。また、その組紐で清霞の髪を結う画も微笑ましく、それまでの苦労を思えば、切なささえ漂う名場面です。

©2023 映画『わたしの幸せな結婚』製作委員会

©2023 映画『わたしの幸せな結婚』製作委員会

元は武具に使われた組紐は丈夫なのが特長。着物ではもちろん帯締めとして利用することが多いですが、髪結いに使うのも素敵でございますね

クラシックなシンデレラストーリーに非ず

登場する着物がどれもこれも素晴らしく、ついつい作品についてのご説明が後回しになってしまいました。失敬。

では、あらためまして。

「わた婚」こと『わたしの幸せな結婚』は、原作小説とコミカライズが累計発行部数550万部を超える人気の異色ラブストーリー。舞台は、明治・大正期を彷彿とさせる近代日本で、特殊な能力【異能】を受け継ぐ家系の者たちが、帝(てい)とともに国を守っています。

目黒蓮さんと帝

©2023 映画『わたしの幸せな結婚』製作委員会

主人公は、冷酷無慈悲で知られる若き陸軍対異特殊部隊長・久堂清霞(くどうきよか)。先日行われた「第46回日本アカデミー賞」にて、新人俳優賞と助演男優賞をダブル受賞したSnow Manの目黒蓮さんが、美しくもしなやかに演じておられます。

©2023 映画『わたしの幸せな結婚』製作委員会

©2023 映画『わたしの幸せな結婚』製作委員会

最初は期待もせず、なんなら警戒していた美世の健気さにふれることで、少しずつ閉ざしていた心を解いていく様子に、にやっとしてしまったのはわたくしだけではないはず。

彼と政略結婚で出逢う斎森家の長女・美世を演じるのは、「第45回日本アカデミー賞新人俳優賞」を受賞した今田美桜さん。異能の家系に生まれながら能力を持たないことで、継母(山口紗弥加)と義母妹(髙石あかり)から使用人同然に虐げられて生きてきた薄幸な少女を体現されています。

©2023 映画『わたしの幸せな結婚』製作委員会

©2023 映画『わたしの幸せな結婚』製作委員会

これまでの気丈で快活なイメージとは反する、憂いある儚い佇まいや繊細かつ無垢な印象を与える今田さんの表情が、物語が進むにつれてどう変化していくかをぜひスクリーンでご覧ください。

時代劇でもあり、SFでもある本作。

胸キュン♡学園モノが主流となっている昨今の少女漫画の実写化とは一線を画した新たな世界観ーが融合する独特の雰囲気も魅力のひとつ。そのあたり、TBS『アンナチュラル』(2018年)、『MIU404』(2020年)といった骨太な作品を生み出してきた塚原あゆ子監督の手腕。孤独なふたりが出逢ったことで起こる化学反応を、ぜひお愉しみあれ。

©2023 映画『わたしの幸せな結婚』製作委員会

©2023 映画『わたしの幸せな結婚』製作委員会

帝の専属医師に扮する尾上右近さんのミステリアスな存在感、宮内省長官役の声優・津田健次郎さんの美声、陸軍対異特殊部員たちの詰襟軍服姿(清霞の軍服は衣裳担当の宮本まさ江さんがデザインし、撮影用に仕立てられたもの!)、舞鶴赤れんがパークの倉庫群でオールロケを行ったクライマックスの迫力……と、着物以外の見どころも上げればキリがありません。

エンドロール後、続編を期待させる思わせぶりなシーンも要チェックでございます。

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©2023 映画『わたしの幸せな結婚』製作委員会

©2023 映画『わたしの幸せな結婚』製作委員会」

ちなみに、清霞の軍服は衣裳担当の宮本まさ江さん(当コラムではもはやお馴染み!直近では『仕掛人・藤枝梅安』を担当されておられます)がデザインし、撮影用に仕立てられたもの。

制作を担われたのは、和の要素が光るポップ&キュートなテキスタイルでトータルアイテムを提案する
SOU・SOUさん。

「SOU・SOU足袋 京都店」では、3月31日まで映画衣装展示が行われているそう。目黒さんが実際に着用された軍服を間近で拝見することができる貴重な機会をお見逃しなく!

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