着物・和・京都に関する情報ならきものと

名古屋帯とは?袋帯との違いと種類ごとの使い分け・最適な仕立て方まで解説

名古屋帯とは?袋帯との違いと種類ごとの使い分け・最適な仕立て方まで解説

記事を共有する

名古屋帯は、袋帯よりもカジュアルでおしゃれな着こなしができる帯です。名古屋帯にはいくつか種類があり、仕立て方や素材によって着用するシーンも変わります。今回は名古屋帯と袋帯の違いを、その歴史や仕立て方から紐解いていきます。また知っておきたい名古屋帯の種類ごとのコーディネート方法も、あわせてご紹介します。

2023.2.21更新

着物のコーディネートを考えるときに欠かせないのが、帯。
さまざまな帯の中でも、比較的カジュアルで普段使い向きなのが「名古屋帯」です。
名古屋帯とはどのような帯なのか、どのようなシーンに合った装いとなるのかを知っておくことで、着物コーディネートの幅がぐっと広がります。
今回は、着物初心者の方にも知っておいていただきたい「名古屋帯」についてご紹介します。

名古屋帯

着物の帯の代表格!名古屋帯とは?袋帯の違いとは?

フォーマルシーンに用いられることの多い「袋帯」とは対照的に、カジュアルなおしゃれ着物とあわせて普段使いにできる「名古屋帯」。
袋帯よりも扱いが簡単で、楽に身に着けられるのが特徴です。
まずは、名古屋帯の歴史や特徴について解説いたしますので、袋帯との違いを比較してみてください。

名古屋帯とは?

名古屋帯は、結ぶのが難しい袋帯を、より簡単に結ぶことができるよう改良された帯のことです。

簡単に結ぶことができるといっても略式というわけではなく、名古屋帯の中にはきちんとした装いに向いた帯地もありますし、金糸銀糸を用いて豪華な柄が織りだされた名古屋帯などは、セミフォーマルの装いに使われることもあります。
ただ、帯の長さとして「一重太鼓」(背中部分が一重となる帯結び)にちょうど良いため、基本的に名古屋帯は、気軽なおでかけのような普段使いに向いているものが多いようです。

また一重太鼓の「重ならない」という意味合いから、黒やグレーの名古屋帯は服喪のようなシーン(お葬式や通夜・法事などの弔事)に用いられることもあります。

名古屋帯の歴史

名古屋帯の発端や考案者には諸説ありますが、名古屋で発案されたというのは確かなようです。
大正時代に、それまでの丸帯や袋帯では支度に時間がかかって困っていたために、着付けの簡略化を目指して、手先からたれ部分までの帯幅を最初から半分に仕立てた帯を開発したのがはじまりです。

その仕立て方と短めの帯が結びついて、一重太鼓結びにちょうど良く、着付けも簡単な名古屋帯が登場。大きな呉服店によって広く売られ、全国に広まることとなりました。

仕立て方による違い

仕立て前の帯地の段階では、名古屋帯は二種類に分けられます。
ひとつが「九寸名古屋帯」で、もうひとつが「八寸名古屋帯」。
「八寸名古屋帯」は別名、「かがり帯」 「袋名古屋帯」とも呼ばれます。

名称の由来は、仕立てる前の「帯の幅」です。
和裁で使用する鯨尺で九寸(およそ34cm)か八寸(およそ30cm)かということによりますが、それぞれに向く帯地や仕立て方も違ってきます。

名古屋帯を仕立てる縫製には、「名古屋仕立て」「松葉仕立て」「開き仕立て」などがあり、仕上がりがそれぞれに異なります。各仕立てのメリット・デメリットをつかんだ上で、お好みや体型に合わせて選ぶといいでしょう。

※着用時は同じ形になりますが、使い勝手や保管のしやすさなどにおいて多少違いがございます。

名古屋仕立ての九寸名古屋帯
九寸名古屋帯(名古屋仕立て)
※帯芯を入れ、両耳の生地を折り込んで仕立てる
八寸名古屋帯(松葉仕立て)
※帯地のまま、帯芯は入れずに仕立てる
(お仕立て後、お太鼓部分の帯幅はいずれも八寸となる)

名古屋仕立てとは?

名古屋仕立てとは、「手先からお太鼓になるたれ部分の手前までを半分に折って半幅に仕上げたもの」です。
一般的に良く使われており着装しやすいのですが、帯をしまう時に若干たたみにくいというデメリットがあります。また「胴回りが半幅」と決まっているので「前帯を少し広めに帯幅を取って着付けたい」などと、胴回りの帯幅を自分で調整したい方には不向きかもしれません。

松葉仕立てとは?

松葉仕立てとは、「手先1尺(およそ38cm)ほどのみを半幅に仕立て、残りはお太鼓の幅のままに仕上げたもの」です。
背の高い方は胴に巻く帯の幅を調整し、半幅よりは少し太めに巻いたほうがスタイルが美しく見えますので、この松葉仕立てと、この後に紹介する開き仕立てが合うでしょう。
手先部分は半幅で固定されているため、お太鼓に少しだけ見える手先部分がきちんと二つ折りになって美しく見えるのがいいところです。

松葉仕立てのかたち

開き仕立てとは?

開き仕立て(鏡仕立て・平仕立て・お染め仕立てとも言う)とは、「名古屋仕立てや松葉仕立てのように半幅に折っている部分がなく、すべて並幅に仕上げたもの」です。
たたむには最も楽なのですが、他の仕立てのように着装が簡便にはいきません。
胴回りが半幅で固定されていないため、結ぶときには、袋帯と変わらない煩雑さも生まれてきます。
ただ前述のとおり、胴回りの帯幅を自分で調整できますので、背の高い方にはおすすめの仕立てかもしれません。

開き仕立てのかたち

シーンによって選びたい!名古屋帯の種類

名古屋帯とひとくくりに言っても、さまざまな種類があります。
ここからは、「名古屋帯の種類」と「それぞれの特徴」、「着るべきシーン」をご紹介します。

九寸名古屋帯

染めの九寸名古屋帯

一般的に「名古屋帯」と呼ばれる帯は、九寸名古屋帯であることが多いようです。
仕立て前は鯨尺で幅九寸の染めや織りの帯地を、両端の耳を五分(およそ2cm)ずつ折り、帯芯を入れて仕立てていますので、仕上がりの幅は八寸(およそ30㎝)になります。
帯芯を入れるので、帯の生地自体には薄手のものが用いられるものも多いです。

九寸名古屋帯は少しきちんとした装いが求められるシーンからカジュアルなおしゃれ着物にまで、多くのシーンで使われます。
季節を問わずに締められる一本を用意するのも良いですし、あえて季節限定の帯を用意して楽しむのも贅沢なおしゃれとなりますね。

デザイン性の高い「染め」の九寸名古屋帯

九寸名古屋帯は、さまざまな色柄が施された多彩な帯地で作られます。
縮緬(ちりめん)や塩瀬(しおぜ)・綸子(りんず)・紬などの白生地を用い、後染めの技法を用いて創作されたものは一般的に「染め帯」と呼ばれ、デザイン性の高いものが多くあります。
フォーマルシーンには向きませんが、友人との会食やおでかけ、観劇、街歩きなど、比較的カジュアルな場面で普段使いに用いるのがいいでしょう。

デザイン性の高い染め帯

染めの九寸名古屋帯は、織りの帯地で作られたものよりフォーマル度は下がりますが、そのぶんやわらかな印象を持ち、たおやかな美しさを演出してくれます。
「織りのきものに染めの帯」という言葉もあるように、紬にあわせるのが王道ではありますが、染めの着物であれば付け下げ・色無地や小紋などに合わせると、女性らしい優しい着こなしとなります。

華やかな織り生地の九寸名古屋帯

素材が織り生地の九寸名古屋帯の場合、染めの九寸名古屋帯よりも使えるシーンは広がります。金糸銀糸が多く使われた華やかな仕上がりのものは、セミフォーマルな場面で、付け下げや色無地などと合わせて略礼装として着用できます。

吉祥文様や伝統的な柄行など、格調高い意匠性も加わっていれば、きちんとした着物コーディネートに足る帯となります。金銀糸の量や模様の雰囲気によって帯の格は変わりますので、合いそうな着物を選んでコーディネートに挑戦してみてください。

八寸名古屋帯

八寸名古屋帯は、帯を仕立てる前の幅が仕上がり時と同じ鯨尺八寸(およそ30cm)であることから名付けられました。
ほかに、「八寸帯」「袋名古屋帯」「かがり帯」とも呼ばれます。

横幅が広めの生地に帯芯を入れ、両端の生地を折り込んで仕立てる九寸名古屋帯と違い、八寸名古屋帯は帯芯を入ずに仕立てます。帯地の両端を折り込むのではなく、そのまま「かがって」仕立てますので、もともとの帯地自体がしっかりとした、厚めに織られた織物を用います。

八寸名古屋帯の定番の仕立て方は「松葉仕立て」です。
手先から1尺(およそ38cm)のみが半分に折られており、胴の部分をお好みの幅に調節することが可能です。

博多の八寸名古屋帯

粋な着こなしができる八寸名古屋帯

粋な着こなしができる八寸帯

八寸名古屋帯の帯地の種類としては、綴織(つづれおり)、紬、博多織、などが代表格です。

紬や博多織などの八寸名古屋帯は、小紋や紬の着物に合わせてちょっとしたおでかけなどのカジュアルな場で用いるといいでしょう。
木綿生地や和モダンなおしゃれ着物などにも、柄行きを合わせてコーディネートしてみると、粋な着こなしとなります。

綴織で作られた八寸名古屋帯

金銀糸を使った綴織の八寸名古屋帯は、他の帯と違い「礼装用の帯」としてフォーマルな場に用いることができます。
訪問着や付下げ、色無地などに、色柄を合わせて使ってみるといいでしょう。

写真のような金銀糸をふんだんに用いた伝統的な文様のものですとさらに格が上がるので、黒留袖に合わせることもできます。
逆に金銀糸を用いず、柄もおしゃれ度の高い模様の場合、綴織の八寸名古屋帯であってもフォーマルには向かなくなります。

他の名古屋帯と同じく長さは3m60cm前後ですから一重太鼓にしか結べませんが、八寸名古屋帯は仕立てによって二重太鼓に見えるよう縫製することもできます。
「トンネルかがり」というもので、たれ部分を折り返して縫製するときにお太鼓の両側部分をかがらず開いたままの状態で仕上げる仕立て方のことです。

名古屋帯で広がる着物の世界

名古屋帯はカジュアルな着物の着こなしができる帯ですが、種類が豊富でさまざまな楽しみ方ができる帯でもあります。
名古屋帯の生地や仕立て方と着物の柄行きや質感とを合わせて、コーディネートを楽しんでみましょう。

シェア

BACK NUMBERバックナンバー

LATEST最新記事

すべての記事

RANKINGランキング

  • デイリー
  • ウィークリー
  • マンスリー

HOT KEYWORDS注目のキーワード

CATEGORYカテゴリー

記事を共有する