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是枝裕和監督が描く花街の文化 Netflixシリーズ『舞妓さんちのまかないさん』〈前編〉

是枝裕和監督が描く花街の文化 Netflixシリーズ『舞妓さんちのまかないさん』〈前編〉

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京都の花街を舞台に、芸舞妓さんの日常を描く『舞妓さんちのまかないさん』は、タイトル通りの美味しいごはんと、花街ならではのキモノがたくさん登場します。是枝裕和監督が手掛けたドラマの制作現場に迫る前編は、衣装監修の伊藤佐智子さんにお話をお伺いしました。

笑って泣いて、一緒に食べる

©小山愛子・小学館/ STORY inc.

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原作はアニメ化もされた累計発行部数270万部を優に超える、人気コミック 『舞妓さんちのまかないさん』。

青森出身の著者・小山愛子さんが、舞妓に憧れて故郷・青森から京都の花街へとやってきたふたりの少女を主人公に、屋形「朔」での日常とそこで共に暮らす少女たちの成長を描きます。

©小山愛子・小学館/ STORY inc.

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原作マンガを見初めた川村元気さんがNetflixシリーズ化を是枝裕和監督に打診されたわけは、「是枝監督の作家性の幅の中には、向田邦子さんや倉本聰さんのような日本のドラマが得意としてきたホームドラマのテイストもある。それを単発の作品ではなく、何話も続くシリーズとして観たかった」という言葉が示すとおり。

©小山愛子・小学館/ STORY inc.

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同じ場所で、それぞれの道を進むことになるふたりの主人公、キヨ(森七菜)とすみれ(出口夏希)をはじめ、主要なキャラクターを演じている若手俳優たちだけでなく、ショーランナーを務める是枝監督のもと各話の演出を担当する新進気鋭の監督たちもオーディションのような選出方法で絞り込まれただけあって、それぞれの持ち味で是枝監督の脚本に独自の世界を創り上げています。

©小山愛子・小学館/ STORY inc.

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修業に励む少女たちの繊細な感情の揺れや共同生活だからこその微妙な距離感など、心の内が美しく描き出されている本作。

その世界観を担保している大切な要素が、種田陽平さんが手掛けた裏路地までも再現した大がかりな屋形(やかた)のセットです。原作マンガでモデルになった台所も実際に見に行かれ、タイルの感じまでリアルにセットに取り入れられています。

©小山愛子・小学館/ STORY inc.

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台所は、キヨちゃんの仕事場。そして何より、舞妓さんや屋形を訪れる人々の憩いの場でもあります。

笑って泣いて、一緒に食べて——多くの物語が、台所で生まれるのです。

加えて、芸妓・百子(橋本愛)が『黒髪』を舞う船上の舞台は、Netflixでなければ不可能だったと是枝監督がおっしゃるだけのことはあります。紅葉を背に、夜の桂川に浮かぶ船の上で百子が舞う幻想的なシーン(5話)は、切なく艶やかな空気に満ち、気づけば息をするのも忘れているほどでした。

©小山愛子・小学館/ STORY inc.

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本作は、祇園甲部の協力を得て、京舞の指導には人間国宝の京舞井上流5世家元・井上八千代さんが当たられているのも見逃せないポイントです。

舞のお稽古風景は、芸の道に生きる芸舞妓たちの日々の研鑽を感じさせる大切なシーン。そこに説得力があるのは、頼もしい限りです

©小山愛子・小学館/ STORY inc.

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フードスタイリスト・飯島奈美さんによる料理も必見ですが、「きものと」としてはやはり華やかなキモノの多彩さと魅力を無視できません。

普段着、お稽古用の浴衣、舞妓としての衣装……と、その種類もさまざま。たくさんのキャラクターたちの個性を引き立たせる装いは、いったいどのようにして選び抜かれているのでしょうか。

衣装に見て取る、キャラの味

——衣装監修にあたって、どのような下準備をされましたか。

衣装監修・伊藤佐智子さん(以下、伊藤さん):花街のしきたりや暮らしについては、以前かかわった映画でたっぷりおつきあいがあったので、今回は、脚本に描かれている祇園街での屋形「朔」の”暮らしぶり”を細やかに追いました。衣装としては、四季折々における各キャラクターのセンスに対するこだわりでしょうか。

——登場人物それぞれの立場や趣味嗜好の違いが画面からもうかがえました。それぞれに意識された点、苦労されたことなどはあったのでしょうか。

伊藤さん:是枝監督と各キャラクターの性格や趣味などを打ち合わせていき、そこからイメージを膨らませて、衣装へと落とし込んでいきました。

例えばキヨは、田舎でおばあちゃんと一緒に暮らしていたからこそ、おばあちゃんが着ていた上っ張りのような服を着せたり、季節ごとに手拭いを変えたりしていますし、半纏は田舎から持ってきた設定で用意しました。

©小山愛子・小学館/ STORY inc.

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伊藤さん:対してすみれは、子どもの頃から蝶々が好きな女の子なので、私服で蝶のプリントがされたTシャツを着せたり、着物の柄に蝶があしらわれたものを用意したりしました。

他にも、歴女の菊乃にはアンティーク着物、つる駒はなんとなくぼんやりしているのでメガネを、など。今時のジャージのパンツに、みんなそれぞれのこだわりが見え隠れするトップスを合わせて、舞妓の髪型との独特なアンバランスさも狙いました。

©小山愛子・小学館/ STORY inc.

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——是枝監督からのご要望で、大変だったことはありましたか。

伊藤さん:要望で「大変だー!」ということはありませんでしたが、時間がなくて……時間は買えないので大変でした。

——これまで手掛けられた他作品と比べて、『舞妓さんちのまかないさん』ならではだなと感じられることはありましたか。

伊藤さん:是枝監督指揮のもとに作られたので、香りが他作品とは違います。

淡々としたなかにメリハリのあるドラマ、日常と非日常のビジュアルのバランスが絶妙です。時間の描き方がWeb配信のなかでどんなふうに感じとってもらえるのか、興味津々です。

©小山愛子・小学館/ STORY inc.

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——2話冒頭、常盤貴子さんがお召しになっている白の雪輪柄の夏キモノの美しさに見惚れました。作中登場する衣装で、印象に残ってるものはありますか。

伊藤さん:はんなりとした京風の組み合わせを、私自身も終始楽しみながらコーディネートしました。

京風の番外として、出戻り吉乃役の松岡さんの着物は、洋服のセンスも含めて、あえてこれどうなの?!というコーディネートにして、凸凹感を出しました。

花街の方々と接していて時々感じるのは、年齢を経た方でもかわいいものがお好きだなという点。それゆえ、常盤さんの着物の柄には、動物や昆虫などそんな要素がさりげなく入っています。そこもぜひ注意してご覧ください。

©小山愛子・小学館/ STORY inc.

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〈予告編〉

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