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絵絞庵 幻の染め「辻が花」 後編 作品に命を吹き込む――世代を超えて引き継がれる作品への愛

絵絞庵 幻の染め「辻が花」 後編 作品に命を吹き込む――世代を超えて引き継がれる作品への愛

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幻の染めとも言われる、伝統的技法・辻が花。その美しさを丁寧に落とし込んだ「絵絞庵」の作品を、京都きもの市場でもお取り扱いさせていただくこととなりました。 後編では作品が完成するまでの細やかな手仕事のひとつひとつをご覧いただきます。

執筆者 / 鈴木幸枝
京都きもの市場 社員。
インターネット通販から始まった京都きもの市場のリアル店舗第一号店である京都店の初代店長として、店舗事業の立ち上げに尽力。
その後一度社を離れるが、2018年に復帰。
現在はEC営業部の店長アシスタントという職種で活躍し、「京都きもの市場」にアップされる商品のバイイング業務のバックアップをし、お客様と商品の出会いのために日々奔走している。
幻の染め「辻が花」―
それを現代の形にアレンジし、
下絵から完成までの工程を工房で一貫して制作をされている、【絵絞庵】。

後編は、【絵絞庵】さんの制作工程についてお伝えいたします!
福村廣利氏

桃山時代の一時期にだけ花開き、
途絶えた幻の染め、辻が花。


福村廣利氏は、故・小倉建亮氏に一番弟子として師事され、10年後に独立。
その後、健氏とともに、親子で制作なさっております。

「最初から最後まで自分ですることが楽しさの一つ。」

「やっている人が少ない。おもしろいものがたくさんできる。」


と、いつも楽しそうに、説明をしてくださいます。

まずは、デザイン。
自然溢れる工房近くの花や植物がモチーフに。
ぱっとインスピレーションが湧くそうです。

●図案
●下絵
「下絵は≪命≫だから…」

何度も何度も微調整のために、
書き直しのあとが。
●糸入れ
下絵の線に沿って一針一針縫い進めていきます。

完成した作品を拝見しますと、
絞りのための、糸入れ後の小さな穴がみられます。

☆ちなみに、こちらの作品(左上の写真)は、現在制作を依頼している1点です。
完成が大変たのしみ。
●絞る
●浸け染め
ワークショップ用の染料

使用されるお水も井戸からくみ上げております。

絞る⇔浸け染め
色ごとに繰り返していきます。

●解く
現在制作されているネクタイ

細い糸の小さな玉結びを切って、解いているところ。

「ほんとうに細かい作業なんです。」

とおっしゃられながら、度の強い眼鏡につけかえて、
再び作業に。

●蒸し
●水洗い
●湯のし
●墨書き
完成するまでに、
どれほどの技、時間、精神が必要か。

時間をかけて、手間暇かけて、少しずつでも
納得したものづくりをされていらっしゃいます。
線ではなく、すべてを絞りで表現するからこそ、
浮かびあがる、やわらかなライン。
枠を越え、

異なるものが混じり合い、調和し、
生み出される美しさ。
不思議なことに、

1回目みた時より、2回目…

見れば見るほど魅せられ、
知れば知るほど
どんどん世界が広がっていくのです。
一見すると、
控え目な印象なのですが、
少しずつ、少しずつ
心にじわじわと伝わってくるのです。

そして、多くの気付きを与えてくれます。

この美しさが
少しずつでも広がり、
一つになっていくことを祈って。

当たり前でない一日に感謝して。

自然溢れる場所で養われた、豊かな感性。

お二人だがらこそできる作品。
【福村 廣利】氏
「解いて出来上がった時が絞りの楽しみの一つ。」

廣利さんの溢れる笑顔からは、
本当に好きなお気持ちが伝わってまいります。
【福村 健】氏
「わが子のように、大切に想っている。
 だからこそ大切にしてほしい。」

「女性を美しくみせる仕事をしたい。

 柔らかいものに包まれているように、
 身に纏った方が、やさしい雰囲気になる。」


言葉の一つ一つからは、
誠実さが伝わってまいります。

飾らず、ひたむきに、
ただただ、ひたすらに向き合い、正直にありのままに。

「昔と違って年々厳しくなっていく中で、
時代にあった新しいものを生み出し、あとに繋げてほしい。」


父から子へ、想いを託し繋がっていく。

正直な言葉は、
飾られたどんな言葉よりも、心に響きます。

●ご家族みんなでつくったお振袖
奥様のお着物をモチーフに、廣利氏が下絵、健氏が墨書きを。

一つ一つの工程をバトンのように繋ぎ、
みんなで一つのものを作る。
それは、何倍もの力となります。
お着物も、
母から子へ、そして孫へ伝わっていく。
いつも応援してくださっているお客様が教えてくださいました。

「お着物は、自分ひとりのものではなく、
代々守り繋ぐものであること。」

全てに繋がっているように感じます。

こんなにも優しく、愛に溢れたお着物たちに囲まれ、

とても幸せな気持ちにさせていただいたことに、
心から感謝いたします。

お召しになる方が、
ふわりと柔らかく、優しい気持ちになるような、
愛が溢れる作品たち。

みればみるほど、好きになる絵絞りの世界。


一生大切にしていただける方、
その心を受け取っていただける方のもとへ
お届けできますように願っております。
●少しずつですが、サイトにご紹介させていただきます。
●第66回日本伝統工芸展に、 絞り染め訪問着 【福村廣利】氏 「八瀬の里」 が入賞なさいました。
●宇宙の作品
14.5年前から、宇宙の作品を制作されております。
「星の光が、絞りの丸の光とよく合う。」
とおっしゃられておりました。
※各作品については、弊社までお問合せください。


幻の辻が花の作品をお手元で…少しずつご紹介いたします。

辻が花とは?幻と称される染め物の特徴をご紹介

みなさまは「辻が花」をご存知でしょうか。辻が花と聞くと花の種類をイメージされる方もいらっしゃるかと思いますが、実はそうではありません。”幻の染め”とも称される辻が花の染め物についてご紹介いたします。

※この記事は、過去の「店長ブログ」に掲載しておりました
「【絵絞庵】幻の染め「辻が花」―①~⑤」を再構成したものになります。

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