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振袖選びが母と娘の絆を深める 「親子できもの日和」vol.3

振袖選びが母と娘の絆を深める 「親子できもの日和」vol.3

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とある母娘の2年にもおよぶ振袖選びの記録をご紹介。帯選びのため京都まで振袖を担いでいったこと、お嬢さまのためにヘッドドレスやナンタケットバスケットを手作りされたことなど、気になるエピソード満載です!

2023.01.02

よみもの

人生の節目は、家族で着物姿に 「親子できもの日和」vol.2

母と娘の振袖選びの記録

本日1月9日は、「成人の日」。毎年この1月第2月曜日には、成人式に向かう華やかな振袖や真新しいスーツに身を包んだ新成人の姿が方々で見かけられます。

その日は成人を迎えられた方のお父様、お母様にとっても特別な日。20年間、愛情をかけて育ててきた子どもの大人びた晴れ着姿を目にしたときの感動は… 筆舌に尽くしがたいものであるはず。

成人式当日までにさまざまな準備をしてきた方なら尚のこと。

とりわけ女の子のお子さんを持つ親御さんが悩むのは振袖選び。一生に一度しかない大切なイベントであるゆえ、多くの方は1年以上前から準備を重ねています。

晴れやかな着物姿のおふたり

(左)お母さまのNさん (右)お嬢さまのSさん

「親子できもの日和」連載第3弾は、母と娘の二人三脚で多くの時間をかけ、納得のいく振袖に巡り会えたという母娘に密着。

ブーケデザイナーでいらっしゃるお母さまのNさんと、昨年成人となられたお嬢さまのSさんです。

ヘアアクセサリーとブーケはNさんが手掛けたもの。後ほどお話を伺います

ヘッドドレスとブーケはNさんが手掛けたもの

今日はお母さまも着物で、振袖姿のSさんとお越しくださいました。まるでモデルさんのように美しいおふたりの着姿とともに、振袖選びの記録をご紹介します。

「呉服屋さんと良いお付き合いができたら」

明るく開放的な空間… 東京駅ほど近くのホテルのレストランに、ひときわ目をひくおふたりがいらっしゃいました。

姉妹にしか見えないNさん、Sさん親子

小柄で上品さと可愛らしさを併せ持ったNさんと、お背が高くスラッとしたスタイルをお持ちのSさん。おふたりが並ぶと、つい見惚れてしまうような華やかさがあります。

この日、おふたりはこちらのレストランでランチを堪能。僭越ながらお食事後のティータイムに駆けつけ、振袖選びに始まる素敵なエピソードを伺いました。

「娘の振袖を選ぶにあたり、当時からこういうものを綴っていました」とNさんが見せてくださったのは、まさに振袖選びの記録。

Sさんがまめに書き記していた振袖選びの記録

Sさんがまめに書き記していた振袖選びの記録

振袖を試着されたSさんの写真とともに、感想がメモで書き記されています。

おふたりの振袖選びが始まったのは、2019年4月。歯科医師を目指すSさんが大学に入学されたばかりの頃でした。

母に見守られながら大人への階段をのぼる

おふたりが他の方よりも早い段階から振袖を選び始めたのにはわけがあります。

Sさんが通われていた中高一貫校はミッション系の学校で、成人の日には記念礼拝が行われるそう。その日は毎年、成人を迎えた卒業生が集まり、振袖姿で写真を撮り合うのだといいます。

「地方や海外の大学に進んだ子もその日は必ず戻ってきて、みんなで写真を撮るんです。在学中から先輩たちの素敵な振袖姿をSNSで見ていて、自分の時はどんなのを着ようかなとワクワクしながら考えていました」(Sさん)

Sさんが18歳になった頃から続々と振袖のカタログが届くなか、おふたりがまず足を運んだのは呉服屋さん。そこにも、娘を思う母の願いがありました。

娘の一つの巣立ちを見守る

「私ももともと着物は好きなのですが、知識、というと娘に対して教えられることがなかったものですから… 振袖を誂えることで呉服屋さんと良いお付き合いができたら、将来娘のためにも良いのではないかと」

そうして呉服屋さんにアドバイスを受けながら、振袖選びをスタートさせたおふたり。まず迷ったのが、「何色にするか?」でした。

赤や白などの定番色も試しましたが、最終的に一番しっくりきたのが黒地の振袖。シックでありながら、大きな橘意匠を背景に四季折々の花々が丸紋に込められて浮かび上がる、大変華やかな一枚です。

柄が伸びやかにあしらわれた着物は長身だからこそ着こなせるもの

長身のSさんだからこそ着こなせる柄付けのお振袖

まるでカタログモデルかのような存在感! 襟元の赤色も目を引きます

まるでカタログモデルかのような存在感!襟元の赤色も目を惹きます

「最初はオーソドックスなもので揃えたいと思っていたので、流行りの柄ではなく、古典的な柄にしようと決めていました!」(Sさん)

振袖は決まったものの、なかなか帯との運命的な出会いを果たせずにいたというおふたり。そんななか、お母さまのお知り合いが京都の呉服屋さんを紹介してくださったそうです。

一生に一度のことだから後悔はしたくない。

おふたりは意を決し、京都まで足を運ぶことに。振袖は写真でもいいと言われていましたが、「実際に合わせてみたい」と、なんと京都まで振袖を担いでいったのだとか!

龍村美術織物の袋帯

そしてようやく出会えたのが、『龍村美術織物』による西陣織の袋帯でした。

ナンタケットバスケットに編んだ娘への思い

一方、Nさんがこの日お召しになられたのは、ご結婚の際にNさんのお母さまが誂えてくれた訪問着。ほのかな光沢感のある灰色地に、流水とともに小花模様があしらわれた優美な友禅の一枚です。

お母さまの装い

お母さまの装い

「当時20代の私にはとても地味なものだったんですが、逆に今になってこれを選んで良かったなと思っています。今でも地味好みで、着物もなるべくシンプルなものが好きですから」

Nさんが着物を好きになったのもまた、お母さまの影響でした。

「母は30枚ほど着物を持ってお嫁に来ていたんですが、全く着ない人だったのでしつけ糸も付いたままだったり一回着たきりだったり。どこかでもったいないなと思っていたのか、いくつかはそのまま母から譲り受けました」

二匹の鴛鴦が寄り添うように水面を泳ぎ

二匹の鴛鴦が寄り添うように水面を泳ぐ

こちら、日本国宝であった故・羽田登喜男氏図案の袋帯もまた、お母さまから譲り受けたもの。柔らかなゴールド感をまとう淡黄色地に、すくい織りの技法にて松竹梅に遊ぶ鴛鴦の意匠が織りあわされています。

窓辺から差し込むゆらめく光を受けて、まるで鴛鴦たちがゆったりと泳いでいるかのよう。

これまでも知人の結婚式やSさんの七五三など節目の時にはなるべく着物を着るようにしていたというNさん。そんななか、古くからの友人が着物に関するお仕事で活躍されている姿を見て「やっぱり着物っていいな」と思われたのだとか。

そこから着物熱が加速。最近では着物でお出かけされる機会も増え、着物でアフタヌーンティーなども楽しまれているようです。

そんなNさんは現在、アーティフィシャルフラワーのデザイナーとして活動されています。

後ろから見ても横から見ても存在感のある胡蝶蘭のヘッドドレス

後ろから見ても横から見ても存在感のある胡蝶蘭のヘッドドレス

アーティフィシャルフラワーとはポリエステルやポリエチレンなどの素材で生花をリアルに再現するもの。生花にはない美しさも出せる上に耐久性に優れ、長時間の対応が可能であることから結婚式で花嫁さんが持つブーケやヘッドピースとして人気があるそうです。

「自分がこういう仕事をしているので、娘が成人式に付けるヘッドドレスは絶対に作ってあげたいと思っていました」と語るNさん。Sさんのリクエストを受け、可憐ななかにも唯一無二の存在感を放つ胡蝶蘭のヘッドドレスが完成しました。

アーティフィシャルフラワーのお仕事と着物選びには、何か通じる要素はあるのでしょうか。

アーティフィシャルフラワーの仕事について語るNさん

「例えば、娘のように身長が高い方だと大柄の着物が合いますよね。それと同じようにアーティフィシャルフラワーもサイズ感がすごく大事になってきます。

あとは、その方のお顔映りが良くなるような色を選ぶことだったり、“その人に合うものを選ぶ”という点において通じるものがあるなと思いました」

そんなNさんが今回の撮影のために用意してくださったのは、Sさんのヘッドドレスに合わせた胡蝶蘭のブーケ。ヘッドドレスもブーケも今回は一種類の花で作られていますが、普段は10種類以上の花を組み合わせて作ることもあるのだとか。

「色とりどりの花を組み合わせてきたことが、帯合わせなどにも役立っているように思います。一方で、例えば鶸色に赤色を合わせる日本古来の色合わせなど、着物から学ぶことも多く刺激になっています」

撮影用のブーケもNさんが手がけたもの

撮影用のブーケもNさんが手がけたもの

実は、NさんがSさんのために作ったのはヘッドドレスだけではありません。

なんと…こちらのナンタケットバスケットもNさん手作りのもの。

蓋は取り外し可能。代わりにファーをかければ一気に冬仕様に

蓋は取り外し可能。ファーをかければ一気に冬仕様に

アメリカ東海岸に位置するナンタケット島の人々に古くから愛されるナンタケットバスケット。手編みの温かさもありながらとても丈夫で、着物ユーザーから近年大変人気を博しています。

ですが「籠界のエルメス」と称されるように、既製品はなかなか手の届かないお品物……

そんなナンタケットバスケットが、まさか手作りできるとは!

裏にはメッセージを添えて

振袖選びをはじめた頃から「Sさんの20歳のお祝いはナンタケットバスケットにしよう」と心に決めていたというNさん。教室に通われ、一年半かけて蓋付きのナンタケットバスケットを完成させました。

手作りの醍醐味は、ハンドルの素材からプレート部分のモチーフまで一つひとつ自分で選べること。ナンタケット島は捕鯨の町であるため、プレートには鯨のモチーフが施されることが多いのですが、Nさんは紫陽花の造花をポイントに。

バスケットの裏には、「20歳によせて」と記念の文字が刻まれています。

ナンタケットバスケットに込められた母の愛

人生の節目を迎える娘にできうる限りのことをしてあげたい―

NさんのSさんに対する愛情が、一つひとつのエピソードにあふれていますね。

着物でファッションの街ミラノを歩くのが夢

東京パレスホテルのロビーにて

振袖を誂えたのをきっかけに、着付け教室にも通われたというSさん。

クールビューティーな第一印象とキュートな笑顔とのギャップが素敵なSさん

クールビューティーな第一印象とキュートな笑顔とのギャップが素敵なSさん

「いろんな人の手助けを借りて着るうちに、自分でも着れたらなと思いはじめて。着付け教室の体験に行ったら楽しくて、そこから一年間通いました。一応着れるようにはなったんですがまだ綺麗な仕上がりにはならないので、これからたくさん練習したいと思います」

残念ながらご自身が出席するはずだった成人式はコロナ感染予防の観点から中止になってしまいましたが、Sさんは「なるべく着る機会を持ちたい」とこれまでも何度か振袖でお出かけされたのだとか。

それほどまでに心を奪われる着物の魅力とは。

レセプションロビーに飾られた菅原健彦氏による絵画の前にて

「普段の洋服とは全然違うので、着るだけでテンションが上がりますし、非日常感を味わえます。うれしいことに周りも褒めてくれるので、もっと着たいなと思いますね」

着物姿を特に褒めてくれるのが、お父さまなのだとか。お父さまも着物がお好きなのだそうですが、いわゆる”見る専門”。ご自身は着ないものの、おふたりが着物姿でいるととても喜んでくれるそう。

ただでさえ華やかなおふたり。着物姿になるとさらに増す美しいオーラに、お父さまが喜ばれるのも納得です。

さりげなくナンタケットバスケットでお揃いに

さりげなくナンタケットバスケットでお揃いに

最後に、今後どのような着物ライフを送りたいかをおふたりに伺いました。

「着物や帯はもちろん、帯締めや帯留めなどの小物類もたくさん揃えて、何通りものコーディネートを組めるようにしたい」とSさん。歌舞伎にもご興味があり、いつか着物で観に行きたいという夢も持っていらっしゃるようです。

大人の魅力を放つお母さま

一方、Nさんが着物で訪れたいのは、日本ではなく海外。

「娘と一緒にファッションの街ミラノを着物で歩きたいですね」

振袖選びを通じて、着物という共通の趣味ができたおふたり。母娘の歩みはこれからも続きます。

着物でミラノの街を歩く日を夢見て

撮影/水曜寫眞館

2022.10.20

まなぶ

成人式や振袖にぴったりなおすすめ髪飾りは?失敗しない選び方をご紹介!

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