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お母様の付け下げをモダンに! 「コバヤシクミのパーソナルスタイリング」vol.7

お母様の付け下げをモダンに! 「コバヤシクミのパーソナルスタイリング」vol.7

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着物スタイリストのコバヤシクミさんが、きものと読者をパーソナルスタイリング。今は亡きお母様がゲストのハレの日のために誂えた昭和の付け下げが、令和に麗しく再登場いたします!思い出を美しくまとう喜びを。

前回のスタイリングはこちら!

2022.10.13

まなぶ

新しい自分に挑戦!テーマは”和風美人” 「コバヤシクミのパーソナルスタイリング」vol.6

着物スタイリスト コバヤシクミさんがご提案!

着物スタイリスト・コバヤシクミさんが読者の着物姿を丸ごとプロデュースする企画「コバヤシクミのパーソナルスタイリング」。

コバヤシさん

これまで手がけた個人スタイリングは5000人以上。顔のパーツの直線・曲線の組み合わせ等を測定分析し得意なテイスト・柄・色合い・素材を診断する「顔タイプ着物診断」や、その方の内面性をふまえた論理的なアドバイス、さらには思わずハッと目をみはるような色使いや小物合わせといったコバヤシさんの天性のセンスが加わり、みたことのない新鮮なコーディネートが次々と繰り広げられます。

さて今回はどんなコーディネートを提案してくださるのでしょうか?

きもの歴30年!ゲストNさんをお迎え

今回のゲストは、きもの歴約30年というNさん。

松葉地紋の乳白色の綸子地に、墨一色の素描きの技法にて、バラが描かれた付け下げをお召しになってお越しくださいました。

Nさんビフォー正面
Nさんビフォー後ろ姿

金地にパステル調の多色づかいの雲霞の袋帯に、帯揚げは優しい水色、帯締めはきもの初心者のころから愛用しているという水色と茶色のぼかしの丸組のものを。帯揚げとのお色リンクもおだやかな佇まいです。

お草履は、本日のために京都きもの市場のオンラインショップにてお誂えくださいました。

「自分で着るようになったのは30代ですが、小さいころからお正月にウールのきものを着せてもらうのが本当に楽しみでした。母が節目節目に着ていたきものも覚えているんですよ」

付け下げの白生地とバラ

今回の着物と帯もそのうちのひとつ。なんと、Nさんの小学校の卒業式のためにお母様が誂えたものなのだそう!

母のきもの姿

Nさんの卒業式のためにお母様が誂えられた思い出の着物と帯

「悉皆屋さんに、こんなステキな白生地は今はもうなかなかないですよ、と言われました。お直しに出して自分サイズに仕立てましたが、袖を通したのは実は今日がはじめて。

大切な母の着物を、コバヤシさんに今っぽくコーディネートしてほしい!と思って応募しました」

こんなお悩みも、コバヤシさんならバッチリ解決してくれるはず。早速パーソナルスタイリングをはじめてまいりましょう!

帯をセレクト

Nさんのバラの付け下げに合わせて、コバヤシさんが京都きもの市場の約3000点もの帯の中から選んだお品はこちらの4本。

鏡の前で当てながら、コバヤシさんとNさんのご相談タイムです!

1本目は、花唐草が織り出されたスクイ織の袋帯。

「4本の帯の中では一番金銀をふんだんにあしらった帯ですが、仰々しいモチーフではなくモダンでドレッシーな雰囲気なのでパーティーやお食事におすすめです」とコバヤシさん。

Nさんは、「前帯はとてもすっきりしているんですね!この着物だけでなく、手持ちの他の着物とも合いそう。それにとっても軽いんですね」と頷きます。

2本目の帯 ひなや 組織袋帯

2本目は、紫をベースに金やピンクなどの色糸を用いた「組み」の袋帯。

「シックで合わせやすい帯です。実際に当ててみると紫の糸がきらめいて、グラデーションがふわっと立体的に浮き立つのが感じられるでしょう?無地感覚なので、帯留めをしても印象的ですね」

Nさんは「置いた状態で見た時よりも、当ててみるとぱっと華やかな印象ですね!」と驚いたご様子です。

3本目は、金糸がさりげなくあしらわれたリバーシブルの袋帯。こちらも組帯(くみおび)です。

「事前にお写真を拝見して、Nさんにはピンク色がお似合いになると思ったんです。寒色も織り交ぜられているので、ピンクでも抵抗感なく締められると思うのでぜひ」とコバヤシさん。

「意外と落ち着いていて、大人かわいいピンクですね!」とNさんもうれしそう。

4本目は、菱と唐草が織り出されたふくれ織の袋帯。

「袋帯ですが、カジュアル感のあるしゃれ袋帯です。ふくれ織の立体感のある質感に若干の光沢もありおしゃれです」

さてさて、4本の帯を当て終えたNさん。

「どれも綺麗で迷います!着物の柄が枝や葉まで描かれていて具体的なので、花でないものがいいかもしれません。直感で選んでもいいですか?」

「直感でいいんです。その感覚を大事にしてくださいね」

とNさんの背中を押すコバヤシさんの回答に、Nさんが「これ!」と指差したのは…

2本目と4本目の帯!さて、運命の帯はどちらなのでしょうか!?

4本目の帯を当てる

一本目の帯の小物コーデ

たくさんの帯締め

ここからは小物を当てながらじっくり比較します。

くすみピンクの帯締めを当てる

まずは2本目の紫の組織の帯から。大人かわいい印象の、くすみピンクの単色の帯締めを当ててみます。

「着物と帯をなじませる役割を担ってくれますね。フェミニンな雰囲気です」とコバヤシさん。

「着物に色がないので、これくらいの色もいいですね!」とNさんも頷きます。

続いて、グリーン単色のもの、鶯・桃・水色の3色のぼかしのもの、紫みのブルーのもの…とどんどん合わせていきます。

「自分では選ばない組み合わせばかり。グリーン単色のものを使うと、不思議と帯に緑を感じます!」と驚いたご様子。

そして、とりわけ気に入られたのがこちら。

紫みのブルーの帯締めを当てる紫みのブルーの帯締めを当てる

「この紫みのブルーのものは、グラデーションになっていて白地の着物とよく合います。Nさんの洋服のお写真を拝見して、ブルーが似合う方だなと思ったんです」とコバヤシさん。

「濃いブルーは苦手だけど、これはモダンで好みです!」と目をみはるNさん。

帯締めはこちらに決定です!

続いては、帯揚げです。

グレーっぽいニュアンスカラーの絞りの帯揚げを当てる
グリーンの帯揚げを当てる

「グレーのものなら落ち着いた感じ…でもNさんはもう少し明るい色の方がお似合いかな。グリーンのものも良いですね」

水色と焦茶色と緑色のぼかしの帯揚げを当てる

次々と帯揚げを当てていくコバヤシさん。

「このニュアンスカラーの帯揚げは、帯締めと同系色でよく合いますね」

Nさんはこちらの一枚がお気に召したご様子。紫の組帯にあわせる帯締めと帯揚げは、こちらに決定です!

二本目の帯の小物コーデ

帯揚げ

続いて、ふくれ織のカジュアルなしゃれ袋帯の小物選びです!

ブルーグレーに絞りの帯揚げを当てる
紅藤色の帯揚げを当てる

「帯締めは、このやさしい多色使いのものが面白いですよね。コーディネート全体に明るさが出て、帯が落ち着いた色合いなのでメリハリが生まれます。大人ピンクのものも良いですが、こちらがおすすめです!」

そしてそのまま帯揚げ選びへ。こちらもテンポ良く進みます。

「最初のブルーグレーに飛び絞りのものは、当ててみるとブルーが強く出ますね。紅藤色のものならふんわり優しい印象です」とコバヤシさん。

「紅藤色の帯揚げが一番しっくりきました!」と、2パターンのコーデが完成です!

2パターンの帯周りのコーディネート

「なんだかニヤニヤしちゃいます!どちらも良くて決められない!」と、鏡に近づいたり離れたりしながら迷われるNさんに…

もはや恒例!?スタッフによる多数決です!

「右の、ドレッシーな紫の組帯コーデがいいと思う人!」…3人

「左の、カジュアルムードなふくれ織帯コーデがいいと思う人!」…1人

組帯コーデに決定です!

完成したコーディネート

完成したコーディネート

プロの着付けとヘアメイクでより上品に

今回も、着付けとヘアメイクを担当するのは、きものとのコラム「きもの、着てみませんか?」を連載中の薬真寺香さんです。

メイクをする薬真寺さん

「Nさんは笑顔のかわいらしい方。それをより魅力的に見せるような、ご自身らしい自然な華やかさをメイクでプラスしたい」

と薬真寺さん。ヘアセットのちょっとしたポイントも教えてくれました。

「襟足や耳の横の生え際の後毛をちょっと整えるだけで、だいぶ印象が変わるんですよ。ジェル状のしっかりホールド力のある整髪料を手にのばして使うのがおすすめ。メンズ用のものを使う人もいます」

その言葉通り、みるみるNさんの印象がきっちりしたものに変わっていきます。

「Nさんは、お仕事で海外のレセプションパーティーに着物で出席することもあると聞きました。今回は、そんなビジネスシーンの着物姿にも合うヘアメイクを提案します。

後ろの髪はきっちりまとめて着物の格に合うフォーマル感を出しつつも、前髪を少しだけ下ろしてNさんらしい親しみやすい雰囲気を大切にしました」

着付けをする薬真寺さん

ヘアメイクと着付けを終えたNさんがくるりと振り向くと… スタッフから歓声があがります。

ヘアメイクと着付けを終えたNさん

乳白色のシルク地の艶感がふんわりと、Nさんのお顔の白さをまろやかに引き立てて。

そこに一見意外にも思える紫の組織の帯が優しく調和。ニュアンスカラーの帯締めと帯揚げが溶け込むように着物と帯をつなぎます。

Nさんのにこやかな笑顔が印象的で、内からあふれだす優し気なムードに、街中で出会いましたら思わず「ステキですね!」なんて話しかけてしまいそう!

ビフォーアフター拝見

あらためて、今回のビフォーアフターを拝見してみましょう。

ビフォー

ビフォー

アフター

アフター

ビジネスシーンにもぴったりなきりりとしたフォーマル感や信頼感、上品さがあるだけでなく、そこに親しみやすさも感じられる、Nさんのお人柄をあらわしたようなコーディネート。

昭和の付け下げが、令和に麗しく再登場です!

母にみせたい和姿

「この着姿を母に見せたいな」と呟くNさん。

長年眠っていたお母様の付け下げ。そして、かつて、Nさんの小学校卒業という節目の一日を祝い誂えられたお母様ご本人もきっとお喜びになっているはずです!

扉画像

「着物がつやつやした綸子なので、このままおしゃれなレストランに行きたい気分。今日は大好きなコバヤシさんにもお会いできたし、こんなに綺麗にしていただいて最高の一日です!!」

Nさん、お越しいただきありがとうございました!

撮影/湯澤藍
文章/都留詩織

2020.11.25

まなぶ

着物の種類と、初めての着物を「付け下げ」にするべき5つの理由

薬真寺 香さん(本記事 着付け・ヘアメイク)のコラムもどうぞ!

インタビュー

「きもの、着てみませんか?」

都留詩織さん(本記事 ライティング)のコラムもどうぞ!

よみもの

「都留詩織のきもので下町おでかけ帖」

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