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東京国立博物館創立150年記念 特別展『国宝 東京国立博物館のすべて』「きものでミュージアム」vol.15

東京国立博物館創立150年記念 特別展『国宝 東京国立博物館のすべて』「きものでミュージアム」vol.15

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東博所蔵の国宝89件すべてが展示されるという世紀の展覧会。ぐるっと見回すとすべてが国宝!という空前絶後の体験を… 恒例の招待券プレゼントもお見逃しなく!

豊田市美術館にて開催中!

2022.09.12

よみもの

『ゲルハルト・リヒター展』東京国立近代美術館 「きものでミュージアム」vol.14

史上初、国宝89件すべて公開

今回は、東京国立博物館で開催中の東京国立博物館創立150年記念 特別展『国宝 東京国立博物館のすべて』をご紹介します。

※本コラム内の美術作品の写真につきまして、各美術館プレスより撮影および掲載の許諾を得て使用しております。
※所蔵先を記載していない作品は、すべて東京国立博物館所蔵です。
※展示期間が記載してないものは通期展示です。

平成館入口エスカレータ前

東京国立博物館(以下、東博)は、1872(明治5)年に発足し、今年創立150年を迎えます。

それを記念して、東博12万件の所蔵品の中から国宝89件、重要文化財27件を含む約150件が展示されています。

第一会場エントランス

第一会場エントランス

国宝すべてを展示するのは東博史上初めての画期的な試みとなります。

みどころ
 1.史上初、所蔵する国宝89件すべてを公開(展示替えあり)
 2.国宝刀剣19振が集結する「国宝刀剣の間」(刀剣はすべて通期展示)
 3.東京国立博物館の150年の歩みを追体験

文化庁のHPによると2022年10月1日現在、美術工芸品で国宝に指定されている件数が、1,131件です。
そのうち89件を東博が所蔵しています。1つの施設が所蔵する数としてはもちろん日本一です。

国宝以外にも、東博だからこそ可能な充実のラインナップ。すばらしい展示の数々は、まさに”世紀の展覧会”ともいえる必見の内容です。

まずは等伯がお出迎え

会場に入ると、”東博のスター中のスター”というべき長谷川等伯の《松林図屛風》がお出迎えです。

国宝 松林図屛風 長谷川等伯筆

国宝 松林図屛風 長谷川等伯筆、安土桃山時代・16世紀、展示期間:10月18日~10月30日

長谷川等伯の代表作《松林図屛風》は、墨一色で大胆で荒々しい筆づかいにもかかわらず、非常に繊細で静謐な印象を受けます。

墨の濃淡が霧にかすんだ空気感や奥行きを感じさせて…この屏風を観ているととても静かな気持ちになります。

そしてその左には、狩野長信の《花下遊楽図屛風》。

冒頭が「長谷川派 vs 狩野派」で一気にアドレナリンが放出されます!

国宝 花下遊楽図屛風 狩野長信筆

国宝 花下遊楽図屛風 狩野長信筆、江戸時代・17世紀、展示期間:10月18日~11月13日
空白になっている右隻の中央二扇は、関東大震災で失われたそう

等伯の墨の濃淡の世界から一転、楽しそうな光景が。

狩野長信は狩野松栄の4男で、永徳、宗秀の弟です。

桜と海棠の下で花見に興じる人々が描かれ、出雲阿国(いずものおくに)がはじめた歌舞伎踊りを踊っている人もいます。服装は当時最先端のファッションに身を包み、実に色鮮やかに描かれています。

入り口付近の屏風が並ぶ展示風景

入り口付近の屏風が並ぶ展示風景

会期中に展示替えがあります。11月15日からは、国宝 洛中洛外図屛風(舟木本)岩佐又兵衛筆が展示されます。

国宝 洛中洛外図屛風(舟木本)(右隻)

国宝 洛中洛外図屛風(舟木本)(右隻)岩佐又兵衛筆、江戸時代・17世紀、展示期間:11月15日~12月11日

法隆寺献納宝物

国宝 灌頂幡

国宝 灌頂幡 飛鳥時代 7世紀 展示期間 : 10/18~12/11

幡(ばん)とは、寺の境内や寺堂の内部に掲げる 旗のことです。

灌頂幡(かんじょうばん)は、彫りが美しくとても興味深いので見入ってしまいました。

天女が舞っているように見えたり仏像が見えたり。”日本金工史上最高傑作”の一つと言われているそうです。

国宝 竜首水瓶

国宝 竜首水瓶(りゅうしゅすいびょう)
飛鳥時代・7世紀

国宝 鵲尾形柄香炉

国宝 鵲尾形柄香炉(じゃくびがたえごうろ)
朝鮮・三国時代または飛鳥時代 6~7世紀

曲線が美しい《竜首水瓶》と《鵲尾形柄香炉》もお見逃しなく。

《舟橋蒔絵硯箱》の計算された美しさ

国宝 舟橋蒔絵硯箱 本阿弥光悦作

国宝 舟橋蒔絵硯箱 本阿弥光悦作 江戸時代・17世紀 展示期間 : 10/18~11/13

本阿弥光悦の《舟橋蒔絵硯箱》は蓋の盛り上がりが特徴的です。

金地に鉛板を渡して橋を描き、橋の下には4艘の小舟と波を描いています。

『後撰和歌集』に収められた源等の歌「東路の さのの(船橋) かけてのみ 思わたるを 知る人そなき」が銀文字で散らされています。

金・銀・鉛と素材を使い分けた色遣いと素材感の違いの妙、蓋の造形美… 一見シンプルに見えて、実に奥深い趣があります。

国宝 八橋蒔絵螺鈿硯箱 尾形光琳作

国宝 八橋蒔絵螺鈿硯箱 尾形光琳作、江戸時代・18世紀、展示期間:11月15日~12月11日

11/15からは、《八橋蒔絵螺鈿硯箱》尾形光琳作が展示されます。

こちらも東博のスターですから見逃せません!

19振が集結する「国宝刀剣の間」

「国宝刀剣の間」の展示風景

「国宝刀剣の間」の展示風景

第1会場を抜け、第2会場に入ると「国宝刀剣の間」が広がります。

黒い壁に刀が浮かび上がり、計算しつくされた照明によって美しく輝いています。

私は刀剣についてあまり詳しくないのですが、それでもその圧倒的な美しさと19振が並ぶ光景に目を見張りました。刀剣には、少し背筋が凍るような感触がありますね。

刀剣好きの方にはたまらない空間だと思います。しかも刀剣はすべて通期展示。思う存分鑑賞できそうです!

これまでの歩み、そして未来へ

第2部「東京国立博物館の150年」では、東博のこれまでと現在、そしてこれからを展望します。

キリン剝製標本 明治41年(1908) 国立科学博物館蔵

キリン剝製標本 明治41年(1908) 国立科学博物館蔵

キリンの剝製あり、金の鯱(シャチ)あり… 通常の展覧会であれば1級のスターである有名な重要文化財も並びます。

主な作品は、

《風神雷神図屛風》尾形光琳筆
《見返り美人図》菱川師宣筆
《伝源頼朝坐像》
《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》葛飾北斎筆
《遮光器土偶》
《麗子微笑》

など。

《見返り美人図》菱川師宣筆

《見返り美人図》菱川師宣筆 江戸時代・17世紀、展示期間 10月18日~11月13日(11月15日~12月11日は複製展示)

まなぶ

「浮世絵きほんのき!」

個人的には《赤坂離宮花鳥図画帖》が展示されていてうれしい気持ちに。渡辺省亭の作品を観たいと思っていたところでしたので…

《赤坂離宮花鳥図画帖》展示風景

《赤坂離宮花鳥図画帖》展示風景

縫箔は重要文化財

今回少し意外に思ったのは、東博所蔵の「染織品」に国宝がないことです。

もともと染織品の国宝は少ないのですが、ひとつもないとは驚きでした。

重要文化財 縫箔 紅白段草花短冊八橋模様

重要文化財 縫箔 紅白段草花短冊八橋模様 毛利家伝来 安土桃山時代・16世紀

今回展示されている毛利家伝来の《縫箔 紅白段草花短冊八橋模様》、展示されてはいませんが東博所蔵の尾形光琳筆《白綾地秋草模様描絵小袖(冬木小袖)》(江戸時代・18世紀)も、重要文化財です。このあたりはてっきり国宝だと思っていたのですが…

とはいえ、《縫箔 紅白段草花短冊八橋模様》の美しさは変わりません。

前からも後ろからも観られるケースに展示されているのがうれしい点です。着物ファンのみなさまはぜひ、両方向からじっくり眺めてくださいね!

最後に

今回、ぐるっと見回すとすべて国宝!という空前絶後の体験をしました。

そのパワーは絶大なもの。

国宝をはじめとする逸品の数々を鑑賞し、感動を通り越して畏敬の念に打ちのめされ、充足した疲れを感じました。帰宅後しばらく動けなくなったほどです…

作品の作り手たちだけでなく、それを復元したり保存したり、作品にかかわってきた多くの人々の存在を感じました。みなさまもぜひ、体調を整えて万全の態勢でおでかけください。

東博正面

展示替えが何度かありますので、お目当ての作品がある場合は必ず公式サイトで展示期間をご確認ください。また、チケットは日時指定の予約のみ。当日窓口での販売はありません。早々に予約が埋まる傾向ですので、お早めに。

国宝の展示期間の確認はこちらが便利です(展示構成)。

東博所蔵の国宝は、本館の常設展や法隆寺宝物館、考古展示室などでも展示されることがあります。冒頭にご紹介した長谷川等伯筆の《松林図屏風》は展示期間が短いですが、2023年1月2日〜1月15日に本館で展示されるようです。

ぜひ展示作品を公式サイトでチェックして、国宝展が終了した後も、東博にお出かけくださいね。

この日の装い

この日の装い1

今回は、東博150周年のお祝いなので、京友禅の訪問着(竹梅)に川島織物の袋帯(松)、で松竹梅コーディネートです。
松竹梅はもともと、中国の文人画で好まれる「歳寒三友」が日本に伝わって吉祥柄になったと言われています。

この日の装い_帯回り

帯締めは、道明の高麗組・信解品。

ミュージアムへのきものは、通常、小紋や紬がTPO的に相応だと思っていますが、国宝展には訪問着に袋帯がふさわしかったように思います。

みなさまも展示に想い馳せて、お気に入りの装いでお楽しみくださいね。

この日の装い2

撮影/五十川満

今回ご紹介の展覧会情報

東京国立博物館創立150年記念 特別展『国宝 東京国立博物館のすべて』

東京国立博物館創立150年記念 特別展『国宝 東京国立博物館のすべて』

東京国立博物館 平成館
http://tohaku150th.jp/

日 時:2022年10月18日(火)~12月11日(日)
    9:30~17:00、金曜・土曜日は20:00まで
    (総合文化展は17:00まで、入館は閉館の30分前まで)

休館日:月曜日

※本展は事前予約制です。詳細は展覧会公式サイトをご確認ください。
※会期中、一部作品の展示替えを行います。

◆11/11追記◆
【木・日・祝も開館時間を延長】
11月17日(木)より、木曜・日曜・祝日も午後8時まで開館します。

◆12/5発表◆
【12/18(日)まで会期延長】
この度、文化財保護の観点から展示作品の状態等を考慮したうえで、12/18(日)まで1週間に限って会期を延長することといたしました。
会期延長期間中の展示作品や、日時指定券のご予約・ご購入等に関する詳細は、展覧会公式サイトをご確認ください。
http://tohaku150th.jp

【会期延長期間のご予約について】
12月13日(火)~12月15日(木)の日時指定券は、12月7日(水)正午から予約を受け付けます。
12月16日(金)~12月18日(日)の日時指定券は、12月9日(金)正午から予約を受け付けます。
※12月13日(火)から12月18日(日)は午後8時まで開館します(総合文化展は午後5時閉館)。

その他、おすすめの美術展

※日時など変更になる場合があります。おでかけ前に公式サイトなどで最新情報を確認してください。

企画展『銘仙』ポスター

企画展「銘仙」

埼玉県立歴史と民俗の博物館
https://saitama-rekimin.spec.ed.jp/kikaku_meisen

日 時:2022年10月15日(土)~12月4日(日)
    9:00~16:30(観覧受付は16:00まで)

休館日:月曜日 ※11月14日は開館

※詳細は展覧会公式サイトをご覧ください。

※「美術展ナビ」のサイトにて企画展「銘仙」をご紹介しています。こちらもご覧ください。
https://artexhibition.jp/topics/news/20221026-AEJ1059792/

企画展『銘仙』展示風景
静嘉堂創設130周年・新美術館開館記念展Ⅰ「響きあう名宝―曜変・琳派のかがやき―」

静嘉堂創設130周年・新美術館開館記念展Ⅰ「響きあう名宝―曜変・琳派のかがやき―」

静嘉堂文庫美術館
https://www.seikado.or.jp/exhibition/current_exhibition/

日 時:2022年10月1日(土)~ 12月18日(日)
    10:00〜18:00 (金・土・祝前日は21:00まで)
    ※最終入場は閉館時間の30分前

休館日:月曜日、11月8日(火)、11/9(水)

    ※展示替えあり
    [前期]10月1日(土)~ 11月6日(日)
    [後期]11月10日(木)~12月18日(日)

※詳細は展覧会公式サイトをご覧ください。

東京国立博物館創立150年記念 特別展『国宝 東京国立博物館のすべて』

◆ 読者プレゼント ◆

さて、ここでうれしいお知らせです。
今回は、東京国立博物館創立150年記念 特別展『国宝 東京国立博物館のすべて』の招待券を2組4名の方にプレゼント!
ぜひ、きものでお出かけくださいね!

下記リンクより、お使いのSNS経由にてご応募くださいませ。

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※応募期間:2022年11月6日(日)まで

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