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”一世一代の着物”で歩くジャパンパレード 「Magnificent KIMONO!」vol.2

”一世一代の着物”で歩くジャパンパレード 「Magnificent KIMONO!」vol.2

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150年ぶりに開催されたNYジャパンパレードにて、アメリカで活躍するアーティストたちとともに本格派「花魁道中」に挑戦しました!「きものと」読者のみなさまには、この花魁の衣装がどのように制作されたかをご紹介いたします。

2022.08.11

よみもの

”何でもない日”に着物を 「Magnificent KIMONO!」vol.1

「きものと」をご覧のみなさまこんにちは。米国ボストンの着付師、北川聖子です。

前回のコラムでは、「何でもない日だからこそ着物を着る」をテーマに綴った内容でしたが、今日は私の
”一世一代の日”に、”一世一代の着物”を着たお話しをさせていただきます!

150年ぶりのジャパンパレード

今年5月、ニューヨークのマンハッタンにて、初開催となるジャパンパレードが盛大に開催されたことをご存知でしょうか。

JAPAN PAREDEの記事

このイベントは、アメリカのメディアはもちろん、NHKをはじめとする日本のメディアでも大きく取り上げられ、東京都内の地下鉄のスクリーンでも大々的に放送されていました。

JAPAN PAREDEの様子

Photos from CBS / JAPAN PAREDE公式サイト
Photographer : Masahiro Noguchi

JAPAN PAREDEの神輿

Photos from CBS / JAPAN PAREDE公式サイト
Photographer : Masahiro Noguchi

「初開催」と申しましたが、正確には今回で2度目。実は150年ぶりのジャパンパレードだったのです。

なんと今からちょうど150年前、1872年に岩倉具視を特命全権大使とする使節団が米国を訪問し、着物姿の日本人たちがNYの街を練り歩いたそうです。

使節団の米国訪問

使節団の米国訪問

そしてこの使節団訪問を契機に同年ニューヨークに日本領事館が設置されるなど日米関係の深化に繋がりました。

使節団の中には、日本人初の和英通訳者であるジョン万次郎や福沢諭吉も!そんな有名人達の後を引き継ぐパレード。キュッと気持ちも引き締まりますね。

それにしても…アメリカには本当にたくさんの日本文化愛好家の方がいらっしゃるのに、今までジャパンパレードがなかったというのも驚きです。

ゼロから生み出す苦労はいかばかりか。実現させた主催のNY領事館そして実行部のみなさまの地道な努力とご苦労には、頭が下がるばかりです。

本格派「花魁道中」に挑戦!

本格派『花魁道中』

さてそんな歴史的な一歩でもあるNYジャパンパレードにて、アメリカで活躍するアーティストたちとともに本格派「花魁道中」に挑戦しました!

アメリカで活躍するアーティスト達と共に

最近ではSNS等で、花魁をモチーフにしたモダンなスタイルをよく見かけますが、アメリカで着物の仕事をさせていただく者として、いつかこの地で本格的な装いの花魁道中を実現させたい、とずっと考えていました。

「本格」に拘る理由。

それはやはり日本の伝統文化を正しく伝えたいという気持ちと、パレードをご覧になられた方々に「わっ、本物だ!」と一瞬でも夢を見ていただきたい、エンターテイナーとしての意地があったから。

もちろん日本文化紹介のイベントで「花魁」という複雑な背景を持つパフォーマンスコンテンツをお見せすることに関しては、さまざまなご意見があると予想されました。

確かに現代では、彼女たちのような状況におかれる女性があってはならないことですが、彼女たちの生み出した当時の流行やファッション、文化は後世に引き継ぐべきであると考えます。その歴史をなかったことにだけはしたくない、と。

電車内の広告
沢山のメディアにて取り上げられる
90団体もの出演チームがある中、多くのメディアが取り上げる

想いが込められた一世一代の着物

私の想いに賛同し支援してくださった方々への感謝の気持ちをこちらでも述べさせていただきたいところですが、止まらなくなりそうなので、またそれは別の機会に(笑)。

きものファンの方々が多くいらっしゃる「きものと」読者のみなさまには特別に、この花魁の衣装がどのように制作されたかをお話しさせていただきたいと思います。

「本格」と申し上げましたが、実は帯やカツラなど、本物の花魁仕様のものを使用するととんでもない金額になってしまうので、可能な限り手作りして制作費を抑えました(花魁道中にかかった費用はたくさんの友人から支援をいただきましたが、それでもほとんどは自腹を切りましたので…)。

まずはカツラ。

花魁カツラ1
花魁カツラ2
花魁カツラ3

花嫁さん用の中古の高島田のカツラ(元は自然な栗色)を購入し、黒染めスプレーで全体をトーンダウンさせた後、浅草のお店(コマチヘアさん)から購入させていただいた花魁髷を使って自分で結い直しました。

これで大体20万円は浮いたかな?

でもひとつ問題がありまして、大きな花魁髷に簪まで刺してしまうと、収納する箱に入らないため毎回パフォーマンスの直前に結い直ししなければなりません。簪も刺し直して固定させないといけないのでかなり面倒で… いつかお金が貯まったらやはりプロが結い上げた花魁のカツラを購入するのが私の夢です!

そしてカツラの総仕上げとして、地元愛媛のデザイナー・dual-modeさんが作ってくださった「伊予水引」をモチーフとした花魁の髷を中央に配置すれば…

世界にひとつ、オリジナル花魁カツラの完成です!

自画自賛かもしれませんが自分でも納得の後ろ姿です。

納得の後ろ姿

そして打掛は、オークションで花嫁の打掛を購入。ただこちらは振袖なので、母に袖を切って抜い直してもらいました。

真っ黒な花嫁の打掛

幸運にも新品の打掛が数万円で落札できたので助かりました。苦労した点は、なかなか真っ黒な花嫁の打掛が出回っていなかったことでしょうか。 これだ!と思うものに出会うまで数ヶ月かかりましたね。

そして花魁といえばこの「まな板帯」ですよね!

花魁といえばこの「まな板帯」

こんなにも豪華な刺繍の入った帯を大衆演劇などの衣装を制作していらっしゃるプロに作っていただくと100万円はくだらないかと…

ここは本当に知恵を搾り出し、裁縫が得意な友人とともにいろんなアイデアを出し合いました。

澤村一馬さんのお店で衣装の勉強

Photo by Sugar farm

そもそもどんな作りになっているのかもネットに落ちている写真からは読み取れず、やはり現物を一度見てみないと分からない!と言うことで、愛媛で大衆演劇バーを経営していらっしゃる澤村一馬さんのお店まで、衣装の勉強に行かせていただきました。

花魁道中の歩き方や所作、メイクアップに衣装の作りに至るまで、こと細かく教えていただいて…

その甲斐もあり、私と友人で考え出した手法は、「中古の花嫁衣装の一番刺繍がゴージャスな部分を切り出して帯にする」というものでした。

ですがこれだけの幅を出すにはどうしても繋ぎ目が出てくるので、そこは繋ぎ目の見えにくい白の打掛を選び、さらに友人は他の刺繍部分を切り抜いてアップリケのようにすることで繋ぎ目をなじませることに成功しました!

何度も綿を入れ直し、何度もフィッティングして、寝る間を惜しんで縫い直し、最高の帯を作り上げてくれた彼女。

「ちゃんとお仕事として引き受けてね!」と念押ししていたのに、完成した帯と領収書に添えられていた封筒開けると、そこには請求金額と同じだけの現金が花魁道中への支援として入っていました…

これを見た時、次から次に込み上げてくる涙を止めることができませんでした。 この花魁の衣装には本当にたくさんの方の熱い想いと愛と優しさが込められています。

友人と考え出した最高の帯

その他にも花魁の顔を華やかに彩ってくれる半襟は、刺繍作家・刺繍好日さんからの提供です。帯のデザインをもとに、花魁の「返し襟」を連想させる特別デザインにて作り上げて下さいました。 この半襟に関して特に反響が大きく、たくさんの方々からお褒めの言葉をいただいております。

着付けはNAOさん

そしてこの日の着付けはNYで活躍するメイクアップアーティスト&着物スタイリストであるNaoさんにもサポートいただきました!以前「きものと」で連載もされていたと聞き、ご縁にびっくりです!

よみもの

Nao(北野菜央子)さんのコラムはこちら

また当日の支度場所からパレードまでの長距離移動を可能にしたのは、老舗和装小物メーカー タテカワ森本の新ブランド『流神』発案の「花魁スニーカー」です。

このスニーカーのおかげで移動中全く疲れることなく、最高のパフォーマンスに繋がりました。

「流神」発案の花魁スニーカー

『流神』発案の花魁スニーカー

これが私の”一世一代の着物”。
この先これ以上の衣装を身に纏うことはないでしょう。花嫁衣装を超えた、私の自慢の花魁衣装です。

私の一世一代の着物

こんな私のそばには、いつも夫アダムのサポートがあります。

いつも夫アダムのサポートが

私たちの出会いは日本・東京でした。その頃の私は海外で暮らすなんていう考えは毛頭ない人間。ですが人生とはおもしろいもので、あれよあれよという間に、ともに住まいをアメリカに移すこととなりました。

それ以来アダムは、アメリカで”私が私らしく生きること”を心から応援し、常に最大の理解者でいてくれます。

この日も自分のショーの仕事を休んでNYまで運転してくれたほか、花魁道中のメンバーとしても参加、さらには一番しんどい「傘持ち」の役を買って出てくれました。

また演者の支度場所の確保からお昼ごはんの買い出しにまで行ってくれたアダム。彼の大きな家族愛はもちろんですが、彼もまた、日本文化をそれほどまでに愛してくれている一人なのです。

花魁道中01

今回のパレードでも、アメリカの方々に愛される日本文化の魅力をあらためて実感しました。

アメリカをベースに作り上げた我ら花魁道中パフォーマンスチーム。

いつか日本のみなさまの前でもお披露目できる機会がありますように!お仕事のご依頼お待ちしております♡フフフッ

パフォーマンスの様子
花魁道中02
花魁道中04
花魁道中03

パレード当日の写真/Photos by Youhei Sogabe

ジャパンパレード
花魁髷/コマチヘア
髪飾り/dual mode
衣裳・所作指導/澤村一馬
半衿/刺繍好日
花魁スニーカー/流神
パレード当日の写真/Youhei Sogabe
パフォーマー/中澤利彦大久保衣梨窪田弥生熊本翔士

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