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『une fleuriste pour Violetta』 佐々木智子さん(前編)「MariMaedaが訪ねる、パリで活躍する日本人」vol.5

『une fleuriste pour Violetta』 佐々木智子さん(前編)「MariMaedaが訪ねる、パリで活躍する日本人」vol.5

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さまざまな分野においてパリで活躍する日本人の方々にスポットを当て、着物姿にてお話しをお伺いいたします。今回は『une fleuriste pour Violetta』オーナー、佐々木智子さん。長年、フランス花界の大巨匠ジョルジュ・フランソワ氏の右腕として活躍され、昨年マレ地区にご自身のお店を出されました。

2022.06.27

よみもの

『LES TROIS CHOCOLATS PARIS』 佐野恵美子さん(前編)「MariMaedaが訪ねる、パリで活躍する日本人」vol.3

マレ地区のお花屋さんを訪ねて

みなさまご機嫌いかがですか。
9月になりフランスでは、日を増すごとに秋の気配を感じております。

初秋を迎えたパリでは、街路にマロニエの枯れ葉が舞い、軒を並べるマルシェでは、秋の味覚を目にするようになりました。

しかし、今年の夏は、パリでも大変な猛暑が続き熱帯夜が続きました。
地球全体が温暖化の影響を受け人々の生活に支障をきたしています。

日本では、今の時期になると台風による影響が多くなると思います。
どうぞ、お気をつけてお健やかにお過ごし下さいますようお祈り申し上げます。

さてこの度も、パリで活躍する日本人の方にスポットを当ててご紹介してまいりたいと思います。

une fleuriste pour Violetta

今回訪ねましたのは、前回に引き続きマレ地区にあるお花屋さん『une fleuriste pour Violetta(ユヌ フルリスト プール ヴィオレッタ)』。

ヴォージュ広場から光あふれるアーケードをくぐり抜けて小道を歩いていきますとふいにあらわれる、夢のようにキュートなお店です。

une fleuriste pour Violetta

こちらのオーナーは、佐々木智子さん。2021年10月に『une fleuriste pour Violetta』をオープンされました。

佐々木智子さん

佐々木智子さん プロフィール

文化女子造形学科卒。
イラストやカリグラフィーを主として活動。
2007年にフローリスト界の重鎮と呼ばれているジョルジュ・フランソワと出会い、花の世界へ。2008年9月、共同経営にてモンパルナスに『ジョルジュ フランソワ フルール』を立ち上げる。
2021年10月、妹ブティックとして『une fleuriste pour Violetta』をオープン。

Georges Francois(ジョルジュ・フランソワ)プロフィール

1942年パリ生まれ。
1960年代はじめから50年以上、花の世界にかかわりつづけるフランス花界の大巨匠。
フランス元大統領をはじめ数々のVIPを顧客に持つ。
2001年には、銀座メゾンエルメスのオープニングパーティー花装飾のために来日。
パリ、モンパルナスにブティックを持ち、第一線で活躍し続けている。
https://georges-francois.fr/

アートの世界からお花屋さんへ

MariMaeda(以下、Mari)―――
パリでの生活は、何年目になりますか。

佐々木智子さん(以下、智子さん)―――
フランスに来て19年目でしょうか。花屋さんになるつもりは全くなかったのですが、絵やカリグラフィーをしており、自分のしていることで何か形にできればと思っての渡仏でした。

Mari―――
もともと美術をされていたということですが、どちらで学ばれたのでしょう。また、現在のお仕事にもその経験が反映されているのでしょうか。

楽しそうにブーケを作る智子さん

楽しそうにブーケを作る智子さん

智子さん―――
造形をしていました。文化女子造形学科です。女ですがブリコラージュ的なことはできます。

美術の経験というか、色彩に関してはずっと好きなことだったので、お花の色合わせをしたときなど胸にドキっときます。

Mari―――
智子さんは、長年、巨匠と言われていますジョルジュ・フランソワ氏の右腕として活躍されてこられたのですが、師匠との出会いやその経緯についてお聞きかせいただけますか。

智子さん―――
当時通っていたソルボンヌ語学学校の近くで見つけた素敵なお花屋さんに、自分で作ったショップカードを持って行きました。

Mari―――
なんと!それほど魅力的だったのですね。ジョルジュ・フランソワ氏のどういったところに惹かれ、リスペクトされていらっしゃるのでしょうか。

智子さん―――
ムッシューは誰がなんと言おうと、類まれなる色彩感覚とダイナミックさ、そして繊細さをも兼ね備えた正真正銘のフローリストだと思います。

本人は”アーチスト”という言葉を好みませんが、生まれ持った美に対するセンスと直感をとことん追求する性格、そして信じられないほど力強いパワーに満ちた方です。普通の人が真似しようとしてもまず無理ですね。強烈だけどチャーミングな方です。

フランソワ流ブーケを引き継ぐ

Mari―――
ブーケの作り方で、フランス式と日本式の違いは、どういったところにあると思いますか。そして、ブーケやラッピングをされている時に注意されていることなどがありましたら教えてください。

智子さん―――
私は今までジョルジュ・フランソワとしか働いていないので、フランス式、日本式という以前に他のフローリストのやり方については全くわからないのです。100%ムッシューフランソワから教えてもらったことで、またそれでいいと思っています。フランソワ流ブーケを追求していきたいのです。

ブーケやラッピングをする時にはそれぞれのお花の良さを出してあげること、お花たちが壊れないようにと意識しています。そしてお客様方に喜んでいただけるようにと。

Mari―――
お店の雰囲気がとてもステキですが、内装やディスプレイのコンセプトやこだわりなどはどのようなところにありますか。

智子さん―――
”ムッシューフランソワのフェミニン・ヴァージョン”とか言われていますね(笑)
アンティークを取り入れて、女性が好きな森の中やジャルダンを思い起こすような。鳥やリスなどの小動物も隠れているんですよ。

幻想的な世界感

おとぎの国にいるような幻想的な世界感。ドライフラワーと生花とのバランスが美しい

Mari―――
智子さんが最も好きなお花は何でしょう。また日本のお花では、どのようなものがお好きですか。

智子さん―――
私の1番好きな花…難しいですね!ベタですがやっぱり、バラの種類が好きです。いろいろな色や形があるし、野薔薇のような野性味のある咲き方もあるし。
日本のお花ですと、紫陽花でしょうか。

Corail Sunset

色鮮やかな芍薬系の品種「Corail Sunset コーラル サンセット」

Mari―――
このお仕事をされていて良かったと思えるのは、どのような時ですか。また、思い出に残るエピソードを教えていただけますか。

智子さん―――
まず何より、いろいろなお客様と出会えること。そしてみなさんお花が好きですので、必然的に私たちのことも好きでいてくれます。うれしいですね。お食事にお呼ばれされることも多々あるんですよ。

思い出に残るエピソードと言えるか分かりませんが、ムッシューのブティックでもここでもそうなのですが、外に飾っている植物やブティックのお花を見ただけですぐに「ジョルジュ・フランソワのお店?」とよく聞かれることでしょうか。お花と雰囲気がすでにトレードマークになっているんですね。

Mari―――
お花自身がジョルジュ・フランソワ氏を物語っているのですね!

お花が元気を分けてくれる

Mari―――
着物でお花の柄の着物を選ぶとしましたら、どんなお花の柄を着たいと思われますか。

智子さん―――
こんな柄があるかわかりませんが、バラの花びらがあしらわれた柄行きの物とか、一度は牡丹柄も着てみたいですね。残念ながらパリで着物を着たことはないのですが、フランス人からみて着物は憧れそのものだと思います。

二人とも嬉しそう

撮影中もお客様が次から次へとお花を購入されていきます

Mari―――
今後は、どのようなことをしたいと思われていますか。

智子さん―――
まずこのブティック『une fleuriste pour Violetta』にさらなる力を注ぐこと。そして英語強化、旅行、美術館巡り…普通の答えですね(笑)。

Mari―――
コロナ禍で人々は大変不安定な時期を過ごしてきましたが、お花から安らぎや、癒しをもらったという人も多いと思います。ロックダウンでお店が閉まっていた時期もありましたが、再開されてから、お客様から印象に残る反応やお言葉はありましたか。

日本通の男性

片手にお寿司を手にした日本通の男性も。奥様へのプレゼントでしょうか。着物姿をお褒め下さいました

智子さん―――
1回目のロックダウン中も、私たちは配送のみでお花をお届けしていました。
会えない家族間やお友達どうしの贈り物として、また自宅のバルコンに植える植木などもムッシューが電話で注文を受け、ムッシューの甥っ子がされている花問屋さんとも協力してたくさんのお花を届けたものです。

みなさん思うように外出できずストレスを感じるなか、お花によって癒しを感じていただけていたようです。

Mari―――
智子さんが思う「花の魅力」とは、何でしょうか。

智子さん―――
どんなに疲れていてもお花が元気を分けてくれます。そして贈る方も贈られた方も、優しいうれしさを感じられます。「花の魅力」…ひとことでパッとは浮かびませんが、小さなブーケを見ていますと花々が天使のように語りかけてくれます。喜びやサプライズを与えてくれること、でしょうか。これからまた、良い言葉をみつけていきたいと思います。

人生は、どのようなところで出会いや変化が待っているかわからないもの。

智子さんにとって、渡仏されたことやジョルジュ・フランソワ氏との出会いは、人生における大きな分岐点となりました。

パリで生活をしてみたいと思われる方はたくさんいらっしゃいますが、外国での生活は、夢のような楽しいことばかりではありません。そんななか本連載にご登場いただく方々はみなさま常に前向きで努力家であること。

花々に包まれたおだやかなほほえみが印象的な智子さん。これからますますのご活躍が楽しみです。

素敵なインテリアと共に。

花々に包まれて

花々に囲まれて幸せな気分。

今回の着物は、このお店のイメージを意識して選びました。初めてこのお店に伺いました際に、ピンク系の着物を着たいと思ったものですから。そしてご覧のように、花の図案の着物で全身を包んでみたいという思いもありました。

甘い香りと、さまざまな花々に囲まれて大変幸せな気分です。

このインタビューのきっかけは、前回のマレ地区での取材撮影の際の出来事でした。

インタビューのきっかけ。

ステキなお花屋さんをみつけてみとれていますと、お店の方があわてて外に出て来られるご様子。てっきり注意されるものと思っておりますと、笑顔でカメラマンに「お久しぶり!」とお声をかけて下さり…
パリの日本人どうしの繋がりは本当に不思議なもので、輪のように繋がっていきますね。

店内ではお花の甘い香りが智子さんワールドを際立たせ、すっかり魅了されましてこの度の取材となりました。この写真は、その時に撮影をした写真です。

美のるつぼであるパリを舞台に、悪戦苦闘しながら夢に向かって羽ばたいてゆく方々を訪ねて。

後編へと続きます。

撮影/Ikuo Yamashita

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