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”お気に入り”は履いてこそ! 「きくちいまが、今考えるきもののこと」vol.59

”お気に入り”は履いてこそ! 「きくちいまが、今考えるきもののこと」vol.59

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履物は消耗品。お気に入りだからと言って大事にしすぎず、劣化する前にぜひじゃんじゃん履いて出かけてください。

昨年9月1日のコラムはこちら!

2021.09.01

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力強い小物で秋のおしゃれを楽しむ 「きくちいまが、今考えるきもののこと」vol.35

「お気に入り」は履いてこそ!2

この夏、しみじみ思い知ったことがありましたので、こちらでみなさまにお話ししておこうと思います。

いそいそと夏祭りに出かけた娘が、早々に帰宅したのです。もっと遅くなると思ってたのに、どうしたの?

「だって、足が痛くって」

張り切って自分で浴衣を着て半幅帯を結び、きらきらした目をして出かけたはずだったのに、悔しさもにじませて、ずいぶん疲れ切った様子です。

娘は、おばあちゃんに買ってもらったお気に入りの下駄を履いて出かけたのですが、「下駄は出かける前に必ず履き慣らしておくこと」という我が家の鉄則を怠ったせいで、鼻緒が足に擦れて皮がむけてしまっていました。バッグに入れていた「もしバン」(もしものときの絆創膏)を貼ったものの、それでも長い距離を歩くのはつらかったようです。

おばあちゃんに買ってもらったのは、黒い塗りに金の蒔絵風に若松が描かれた台に、ビビッドな水色の鼻緒の下駄。履き慣らそうと思って履いているときに、ちょっとぶつかって小さく欠けてしまったのだそうで、お気に入りの下駄なだけに、それ以来もったいなくて履けなくなってしまっていたのだそうです。

「そうかぁ、お母さんあなたに大事なこと言うの忘れてた。
あのね、下駄は消耗品です。じゃんじゃん履いてください。塗がはげたり割れたりするのはしょうがないの。たくさん履いて、これはもう次の買った方がいいね、となったら、また新しいの買ってあげます。
そのときにはもっと素敵なものが見つかるかもしれない。好きなものを身に着けて、出かけてこそ価値があるというものなんだよ」

とはいえ、出かける前に下駄を履き慣らしたか確認して、レースの足袋や「こたび」(指先とかかとが出るタイプの足袋)を預ければよかったのだと反省しました。

無理して履きなれていない下駄を履かなくても、いつもサンダル感覚で素足にも履いている「草履」だってよかったんだな。出かけた先で足が痛くなるのは本当につらい。

今回娘が大事にしすぎたのは下駄ですが、これが草履の場合、鼻緒が硬くて痛いだけでなく、履いたとたんに底がベロンとはがれたとか、台がパカーンとまっぷたつに割れたとか、鼻緒が取れたとか、全くの歩行不能になったというケースをよく聞きます。

この原因はプラスチックの劣化。嫁入りで持たされてそのまま数十年放置した結果、いざ履こうとしたら使い物にならなかったというのは、残念ながら本当によく聞く話なのです。

履物は消耗品。お気に入りだからと言って大事にしすぎず、劣化する前にぜひじゃんじゃん履いて出かけてください。わたしたち母娘も「お気に入りは履いてこそ」と肝に銘じました。

2022.06.18

よみもの

お気に入りの下駄を見つけて、一年中楽しもう! 「きくちいまが、今考えるきもののこと」vol.54

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