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郷愁を誘う定番観光地・九份「きもので歩く台北 2022」vol.5

郷愁を誘う定番観光地・九份「きもので歩く台北 2022」vol.5

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きもので旅に出る、旅にきものを持参する、そう考えただけでワクワクしませんか?どんな街に、どんなシーンに、どんなきもので?日本から飛行機で約3時間の台湾・台北。人気の観光地やおすすめのスポットを、ふらりきものでご紹介するシリーズの第5回、あなたならどんな装いで愉しみますか?

2022.07.14

よみもの

多様な文化が集まる場所、西門町から龍山寺へ%20「きもので歩く台北%202022」vol.4

きもので旅に出る、旅にきものを持参する、そう考えただけでワクワクしませんか?

どんな街に、どんなシーンに、どんなきもので?

日本から飛行機で約3時間の台湾・台北。

人気の観光地やおすすめのスポットを、ふらりきものでご紹介するシリーズの第5回目!あなたならどんな装いで愉しみますか?

台湾の定番観光地、九份を歩く

九份

今回訪れたのは…

台北から2時間ほどの山あいの町、太平洋が見渡せる台湾の定番観光地「九份」。

『千と千尋の神隠し』の舞台というあまりにも有名な誤解、それでもそう言わざるを得ないようなその世界観。そこに浸り、映える写真を撮ろうという人達で常にあふれかえっていた場所でした。

行き方はバスやタクシーを乗り継ぐ方法もありますが、私達は自家用車を使いました。日光のいろは坂を思い出すほどのヘアピンカーブの坂をぐんぐん登っていきます。

長時間の車での移動で帯が心配な時は、半幅帯なら、崩れても直せるパタパタ系や、背中がピッタリ平らになる貝の口やカルタ結び。名古屋帯なら帯枕がクッションがわりになるお太鼓結びがおすすめです。

よくぞこんな山あいに暮らそうと思ったものだと、買い物はどうするのだろうと、ふと口をついて出た言葉に、運転中の台湾人 陳さんが答えてくれました。

ここは1970年代に閉山を迎えるまで金鉱発掘の町として栄えましたが、開墾前にはわずか9軒が暮らすのみで、何をするにも助け合い買い物は持ち回りでまとめていたそう。

その”9軒”で土地や食糧などを分け合ったことから「九份」と呼ばれるようになったとのことでした。

金山岩

どこか郷愁を誘う細い坂道にひしめきあう商店や、赤い提灯が揺れる情緒的な階段に目が行きがちですが、知らなかった九份の名前の由来や歴史を聞くと、街歩きに新たな視点が加わります。

そういえば、山を登った先にあった岩の形を活かした廟には「金山岩」と書かれていました。

天候の変わりやすい場所への着物コーディネート

九份は雨の多い町。

九份は雨の多い町。その立地から、台北が晴れていても、天気予報が晴れマークでも、雨が降る確率の高い場所です。

眺望が素晴らしいかわりに階段や坂道も多いので、着物で行くには思わずひるむ場所でもあります。

私は歩きやすさ重視、ペタンコサンダルという選択肢もありましたが、雨や水溜りに足が浸かるのが嫌でブーツにしました。

ブーツありきで、ゆかたと帯結び、髪型を選んでいくと、かなり洋服に近いカジュアルなコーディネートになりました。

レトロな雰囲気のゆかたに、ベレー帽。

台湾人陳さんは、レトロな雰囲気のゆかたにベレー帽を合わせた小粋な装い。帽子があると小雨なら傘をささずにすみ、スマートですね。

台湾在住歴の長い日本人ゆりえさんは、古典柄のゆかたに縞の帯で甘くなりすぎないバランス。オトナ可愛さが漂うコーディネートでした。

オトナ可愛さが漂うコーディネート
シャッターが閉まっているお店が目立つ。

台北市内では見たことのない食べ物が並ぶ店先で目を見張るも、3年も続くコロナ禍で、シャッターの閉まっているお店が目立ちました。

それでも縁日のような雰囲気のお店で、何か着物に使えそうな小物を物色したり、お土産を見る時間は楽しくあっという間に過ぎていきます。

阿柑姨芋圓

陳さんおすすめ、人気台湾グルメ『阿柑姨芋圓(アーガンイーユィユエン)』へ。

九份名物「芋圓(ユィユエン)」の人気店です。「芋圓」とは、タロイモやサトイモ、サツマイモなどに小麦粉をまぜ、手作りしたお餅のようなもの。

高台にあり、目の前に絶景が広がる最高のロケーションで、甘さのかなり控えめなスィーツがいただけます。

絶景ポイント。

平日で人は少なかったのですが、この絶景ポイントで芋圓を食べるのはお約束らしく、ほぼ満席でした。

そしていよいよお待ちかねの、あの建物を目指します。

『阿妹茶酒館(アーメイチャージョウグァン)』へ

阿妹茶酒館

『千と千尋の神隠し』の”湯婆婆湯屋"のモデルと噂されているカフェです。

実は中に入ってしまうより、風景として眺めたい、写真を撮りたい場合には、お向かいのカフェに入るのがおすすめなのです。

海悦楼

『海悦楼』は、『阿妹茶酒館』の目の前にある茶芸館兼レストラン。
なんと、ここからは『阿妹茶酒館』と、山々と海が一望できる知る人ぞ知る撮影ポイントなのです。

うれしいのか悲しいのか、ほぼ貸切り状態…

こんな機会は、この先観光客が戻れば二度と持てないでしょうから、十二分に堪能しようと腰を据えたのでした。

妙に遠くまで来てしまった気分

台北から少し離れただけなのに、妙に遠くまで来てしまった気分に浸れる場所、九份。

ひなびた山のわずか9軒の集落、ゴールドラッシュに湧き、巨大都市となった時代を経て、再び静かな寂しい土地に戻った場所。

それが再び、映画やアニメの力で注目を集めるようになったこの小さな村は、またしても試練に立たされていました。

次に訪れる時は、どんな顔を見せてくれるのでしょうか。

九份にて三人で。

さて、タイトル「きもので歩く台北」のとおり、台北市内に戻って参ります。

夕日

3年ぶりの「ゆかた実習」

台湾には約2万人近い日本人が暮らしています。なかでも1番人口が多いのが、台北市とその周りをぐるっと囲む新北市です。

7月の半ば、私は台北市内のとある中学校にて「ゆかた実習」の講座を持たせていただきました。

男女一緒に、まずは着物の歴史と、ゆかたが夏の日常着になってきた背景、着付けで気をつけたい箇所と、ゆかたのたたみ方について簡単に説明しました。

その後男女分かれての実習です。

ゆかた実習の様子
「京都和服館」のガンさん。

男子の担当は、台北に唯一ある大手呉服屋さん「京都和服館」のガンさん。

老朽化によって建て替えられたばかりという校舎や施設はどこも真新しく、明るいオープンスペースがふんだんに広がり、未来への希望がキラキラ輝いて見えるような空間でした。

女子は素晴らしい茶室を備えた和室へ移動。私は女子のゆかた着付けの指導にあたりました。

中学生というと、お母様世代は私よりずっとお若く、お祖母様でも60代だと推測すると、着物姿を日常に見ることはほぼなかったでしょう。

「ゆかた実習」なので私もゆかたを着用する予定でしたが、「日常のきもの姿」も目にして欲しかったので、この日は絽の小紋に名古屋帯で挑みました。

「着物は日本の民族衣装で、日常着でした」

虚しく響き渡る自分の声を聞きながら、「夏にゆかた」だけは本当に残していきたい、いかなければならないと強く感じる瞬間。ゆかたから着物に移行してきた私にとって、この「ゆかた実習」はとりわけ感慨深い時間となりました。

女子も男子も先生方も、いつもとは少し違う自分の姿に浮き立つ様子が愛らしく、この場が小さなきっかけや思い出になっていくだろうことを予感させてくれました。

絽の小紋に名古屋帯で挑みました。

コロナ禍の影響にて3年ぶりに実施された「ゆかた実習」と、この後予定されているという「夏祭り」。

自力でゆかたを身に纏い、夏の楽しい思い出を彩る。

海外の中学校での、日本の心や風習を大切にする文化的な取り組みに感動したひとときでした。

カジュアルコーデで楽しむアフタヌーンティー

Kelly's ParTea Room

最後にご紹介するのは英国式本格アフタヌーンティーがいただける台北、北投区にある『
Kelly's ParTea Room』です。

台北市内からは少し離れた静かな住宅街。扉を開けると台湾らしからぬ花柄とヨーロッパのアンティーク家具が突如目に飛び込み、ファンシーな空間に心が躍ります。 

私の中では、台湾からはイギリスへ留学する人が多い印象がありました。

実際に2021年の資料でも、1位はアメリカ、2位がオーストラリア、イギリスは3位でした。ちなみに日本も、4位にはいる人気留学先国です。

こちらのカフェのオーナーであるKellyさんは、15年間、紅茶専門店の経営に携わるかたわら2006年〜2013年に日本で開催された紅茶協会の勉強会などで学び、また英国にも自ら足繁く通い、本格的に紅茶の勉強をされてきたとのこと。満を持して2017年に独立されたそうです。

カフェオーナー、Kellyさん。

紅茶の種類の豊富さもさることながら、パンやスコーン、ジャムやクロテッドクリームに至るまでが美味しく本格的で、なんとも優雅な気分に浸れます。

紅茶教室も定期的に開催されているそうです。

コーディネートの核はヘッドドレス。

カフェの雰囲気に思いきり寄せるため、この日の私のコーディネートの核となったのはKeiko Igataさんのヘッドドレスでした。

ヘッドドレスありきで組み立てたコーディネートは色数をおさえてゴテゴテ感を緩和し、まとまりを持たせました。

フリル、ビーズ、リボン…巻き髪、なによりネックレスをきものに合わせたのは初めてのこと。新たな挑戦となりました。

あなたならどんな装いで愉しみますか?

きものにアクセサリーをつける時は、直接生地にあたったり、擦れてしまうものや、生地に穴をあけるようなものは極力避けています。きものは生地の美しさだけで充分だと思っていますし、なによりその生地を痛めたくないのです。

ですが、今回着用しているのは綿麻の普段きもの。

もともと丈夫なのと、生地が擦れてもあまりダメージがない、また合わせたビーズアクセサリーも作家さんの丁寧な手作りの作品で引っかかるような金具もないため付けることにしました。

ご一緒した陳さんと。
帯結びと帯締めの結びかたがファンシー。

ご一緒した陳さんも、帯結びと帯締めの結びかたがとってもファンシー。

きものが日常から離れて冠婚葬祭や式典などで着るものになったことで、守るべきルールや格などが知れたことは、私は良かったと感じています。文化的側面から大切に伝えていくべきだと思っています。

それと同時に、普段着としてファッションとして日常に戻る時の多様性もまたあって良いのではないでしょうか。

ゆかた、夏着物、コスプレ風にも見てとれる普段(あまりしない)の着姿。

「きもので歩く」本連載は、さまざまなシーンでの普段着としての、旅をより楽しくする着こなしの提案にもなれば幸いです。

また次回もどうぞお楽しみに!

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