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撥水を極めた…パールトーン本社見学レポート・前編 パールトーン本社に潜入!お手元に届くまでとそのこだわりとは?

撥水を極めた…パールトーン本社見学レポート・前編 パールトーン本社に潜入!お手元に届くまでとそのこだわりとは?

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お着物や帯に触れる際に目にする「パールトーン加工」。 なんだか良いのは知ってるけど…そもそもどんな効果があるの? 実は撥水だけではなく、お食事中の食べこぼしを防いだり、お手入れがラクになるんです! パールトーン加工のことをより深く知るべく、京都きもの市場社員一同、パールトーン本社にお邪魔してまいりました。

皆様はお着物や帯を購入される時、「撥水加工」について悩まれたことはありませんか?「水濡れするかな?その為だけにかけるのは勿体ない気が…」
「そもそも撥水ってどの程度強くかかってるの?」
など悩まれた結果、結局何もかけなかった、という方も多いのではないでしょうか。
撥水加工といえば…皆様ご存知、「パールトーン加工」。

今回、京都きもの市場社員一同、パールトーン加工への理解を深めるべく、京都市内にあるパールトーン社さんにお邪魔し、直接お話しを伺うこととなりました。
お着物好きさんが気になるポイントについても質問してきましたよ!
今回案内してくださったのは、株式会社パールトーンの営業本部 副統括部長・今井さん。
パールトーン社に入社して20年以上のベテラン。
パールトーンについて知らない事はない!と言っても過言ではありません。
今回は今井さんにパールトーン本社内をご案内いただきました。

まず最初に案内されたのは本社ビルの4階。
ここにはこれからパールトーン加工にかかる前のお着物や帯が着荷します。

パールトーン加工ができるのは京都本社のこちらのみ…ということで日本全国から毎日お着物が集まってくるのだそうです。
まずは発送元の地方ごとに分類された後、その後の工程やお納め日、種類に応じて細かく荷分けされています。
パールトーン社さん、実はパールトーン加工だけではなく、シミ抜きやお仕立て等、着物に関わる加工は全て請け負っていらっしゃいます。

ちなみにこちらは当日東京から届いたダンボール。
1日でこんなにも…!
全国のお客様からの人気の高さが伺い知れます。

お次はパールトーン加工をかける前に、伝票登録。

数多くの商品が日々届き、加工に回されます。
取り違えが起きないよう、まずはこちらでシステムに登録され、伝票と商品を一つのセットにします。
これで加工に出して安心!

しかしまだまだ加工にはかけません!
加工にかける前に、付着してしまっている汚れやカビ、ヤケがないか等を検品されています。
このままパールトーン加工をかけてしまうと出来上がりに響く…という場合は加工依頼元の会社さんに確認の上、お直しに出されているそう。

ここのセクションは、着物の反物・帯・お仕立て上りのお着物の3つのセクションに分かれて検品をされています。

こちらは反物。
反物巻きが皆さん物凄く速い!あれよあれよという間に巻かれていく反物!

今井さん曰く、ベテランさんになると1反(約12m)を2、3分で巻かれるそう。
しかもただ巻きとるだけではなく、ヤケやシミがないか、その後の加工に影響がないかをきっちり見極めつつされています。
まさしく熟練の業…

こちらは帯の検品。

こちらはお仕立て上がったお着物用の検品。

既にお仕立てされているお着物の場合、表地と裏地の伸縮率の違いで、生地のだぶつき(いわゆる「フクロ」状態)が発生していることがあります。
それがパールトーンや丸洗いの過程で増えていないかどうかを、加工の前後で確認しておられます。

検品が完了し、パールトーン加工をかけて問題なし!と判断されたのち、ようやくパールトーン加工へ…

そして加工が終わったあと、着物や帯は繊維が縮まないよう自然乾燥されて…

きちんと問題なく撥水性があるかの品質チェック部署へ!

こちらの男性社員の方が、品質チェックを専門に担当されています。
この方のOKが出ない限り、お客様に発送されることはないとのこと。

あ!あー!水が…!
…いえ、見事に水が玉のように弾かれております!
このお着物のパールトーン加工の撥水品質は合格のようです。

確認したのちはすばやくタオルで拭き取り。
これを繰り返し、着物や帯の色々な箇所で試して行くのだそうです。

パールトーン加工がきちんとかかり、撥水性に問題がない場合、このようなまん丸の水になります。
この様子が真珠のようにコロコロと転がる様・調子であることから、「パール(=真珠)」「トーン(=様・調子)」の名を冠するようになったとのこと。
「この水の様子、本当に綺麗で何回見ても飽きないんですよね…」と今井さん。

ちなみにこちらが撥水加工が甘い場合の水の様子。
一見弾いているように見えますが、水がまん丸にならず歪な形状に。
タオルで拭き取ってみると…

うっすら水の跡が残ってしまっています!

どうしてもパールトーン加工がかかりにくい生地もあるようです。
「1回では完全にかからない場合、3回までは加工をかけ直しします。それでも当社の撥水基準を満たせない商品は、申し訳ないのですが、当社ではおかけできない事をお客様にお伝えしていますね。」とのこと。

さて、品質チェックが合格になったものを、パールトーン加工が掛けられた着物や帯の証である「パールトーン」タグをつけて綺麗に畳み、たとう紙に納められ…

各社に発送されます。

「折角きれいな状態でも、発送時にヨレてしまったり皺になってしまったら本当に勿体無い。
呉服の小売屋さんはどこも気を付けていると思いますが、弊社もかなり発送には気を遣っています。」
「お着物の感動ってまず、たとう紙を開けて、綺麗に仕立て上った着物と初めて相対した時だと思うんですよね。
僅かに空気をはらんでぴっしりと畳まれた着物は何とも言えず、美しい。
その感動をお届けするためにも、できる限りのことをしたいと思っています。
本当は自社で発送までできたら一番良いんですが…。」

今井さんの語りにも熱が籠っておりました。

他にも自社ビル内では、悉皆や紋入れの工程もされているとのこと。
少しだけその模様を拝見しました。

こちらはパールトーンがかけられる前のお直し部門。

シミや汚れなどを、水溶性か油性かを見極め、素早い手捌きで落としていきます。

水溶性のシミと、油性のシミ。
どちらかというと油性のシミが工程が簡単とのこと。
「水溶性のシミは水でないと落とせない。
だけど水をかけると生地が縮みやすくなってしまうから、落とすのに気を遣います。
パールトーン加工をかけていただくと、水溶性のシミがそもそも沈着しにくいので、シミ落としの観点からも加工をかけていただきたいですね。」とのことです。

こちらは、なんと入れ紋をする専門部署。
「幸せ家紋工房」と「Happy come on」をかけていらっしゃる…なかなか洒落がきいております。

紋入れは昔は水性塗料で手描きが主流でしたが、家紋の細い線が表しづらいのと、年を経るとぼやけがちになってしまうことから、現在では油性塗料で機械もしくはシルクスクリーンを用いて染められることが主流とのことです。

紋の型がずらり…!
女性用の着物、男性用の着物、お子様の祝い着(のしめ)用と、同じ紋でもサイズが違うため、それぞれ用意されているようです。
なんと1万個以上の紋型がこちらに納められているようです。
「もしなかったら型から作りますよ。」とのこと。

この紋型を機械に嵌め、石持の白い丸にレーザーで照準を合わせて…

型を捺したら…

紋が入りました!

周囲が白く残ってしまっているので、再び型を同じ場所に捺して、周りに塗料を吹き付け…

綺麗に紋が入れられましたね。

ただこのままですと地の色と境目が見えてしまうので、水性塗料を上から塗って、境目が目立たないように1つずつぼかしていきます。
この繊細な作業は、やはり人でないとできませんね、とのこと。

この手間があるため、1日にできる紋入れは10反程度とのことです。
今回、パールトーン社さんにお邪魔して感じたのは、想像以上に多くの方が着荷から発送まで関わっておられ、かつそれぞれの方がご自身のセクションのスペシャリストとして業務にあたっていらっしゃる事。

その全てが「お客様に綺麗な状態で着物を着て欲しいから」という思いから成り立っているのだと痛感いたしました。
着物や帯に、どのような流れでパールトーン加工がかけられるのか、という一連の流れについてご説明いたしましたが…
では多くの方が気になっているところであろう
「もしお着物にお醤油こぼしちゃったらどうしよう?」
「パールトーン加工ってほかの撥水加工となにが違うの?」
という疑問については…

きちんと今井さんに確認してきました!
記事後半をぜひお読みください!
後編はこちら!

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