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涼を感じる水の文様で夏を過ごす「歌舞伎へGO!大久保信子先生に聞く着物スタイル」vol.20

涼を感じる水の文様で夏を過ごす「歌舞伎へGO!大久保信子先生に聞く着物スタイル」vol.20

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歌舞伎座に賑わいがもどってきます。8月の公演から、花道横と4階幕見席を除いて全座席が販売されることになりました。若手が活躍する『八月納涼歌舞伎』では、きっと劇場が熱気に満たされることでしょう。

馬の柄

雨が続く季節です。どきどきしたり、わくわくしたり、胸躍るような舞台を見て心晴れやかに過ごしましょう。歌舞伎座の「七月大歌舞伎」から、第一部『當世流小栗判官(とうりゅうおぐりはんがん)』で、スペクタクルとロマンを味わってみませんか。

3年ぶりの納涼歌舞伎

歌舞伎座に賑わいがもどってきます。
8月の公演から、花道横と4階幕見席を除いて全座席が販売されることになりました。

若手が活躍する『八月納涼歌舞伎』(8月5~30日、10·18日は休演)では、きっと劇場が熱気に満たされることでしょう。

今回は、第二部から『安政奇聞佃夜嵐(あんせいきぶんつくだのよあらし)』をご紹介しましょう。

明治17年に、政治犯2人が石川島監獄から脱獄した後に殺人を犯し、処刑された事件が元になっています。これを古河新水(十二代目守田勘弥)が江戸時代の佃島人足寄場に置き換えて歌舞伎に仕立てました。

ヒントは西部劇?

青木貞次郎(松本幸四郎)と神谷玄蔵(中村勘九郎)は、人足寄場で苦役していました。

神谷が青木をそそのかし、2人は島ぬけを企てます。実は神谷は青木にとって父の敵(かたき)なのですが、青木はまだそれと知りません。後半は甲州(山梨県)に舞台が移ります。

大正から昭和にかけて、六代目尾上菊五郎(青木)と初代中村吉右衛門(神谷)で何度か上演されました。その後、この芝居をもっと面白くしようということで、巌谷槇一が後半を書き直した(昭和48年上演)のが今回の『安政奇聞佃夜嵐』です。

巌谷によれば、スティーブ·マックイーン主演の映画『ネバダ・スミス』がヒントになっているのだとか。『ネバダ・スミス』は西部の鉱山で両親を殺された主人公が、脱獄して親の敵を討つ物語です。

青木と神谷が島ぬけをする場面の古い舞台写真を見ました。波を表した布が舞台一面に広げられ、顔だけ出した2人がその中を進んで(泳いで)行きます。舞台ならではの水の表現でした。

きものの世界でも、水を描いたものはとても多く見られます。

波文と流水文

【白木染匠】京友禅付下げ「流水霞に千鳥」

水の文様は季節を問いませんが、涼しげに見えるので夏物には好んで使われます。

また、地紋にも用いられます。

風景模様のほかに、植物や動物との組み合わせも多く、きものに帯にと、古くからよく見られました。

夏にはもってこいの文様といえるでしょう。

波の文様は、波頭、大波、さざ波のような写実的なものから、波の丸、波巴、青海波など意匠化されたものまでさまざま。

動きのある柄ですが、クセがなく、あっさり、さらりとしています。

波には兎、鳥、魚などがともに描かれ、中でも波に松、洲浜、貝などを描いた「海賦(かいふ)文」は平安時代からある文様です。

流水文は文字通り、流れる水の形をさまざまに模様化したもので、夏草、秋草、あやめ、かきつばた、朝顔など植物とともに構成されました。

流水に桜の花びら、渓流に青楓・紅葉、菊水、川端柳などはおなじみです。

特に御所解(ごしょどき)模様には欠かせない要素。

刺繍や摺り匹田といった技法で霞·流水·植物などからなる架空の風景をつくりだします。

ひとつの景色の中に文学的な主題を暗示するのが特徴で、武家方の模様でした。
一方、町方では近江八景や三保の松原など水辺の名所を描いたものが好まれたのだそうです。

また、水のみをモチーフにしたものでは「観世水」や「光琳水」があり、これらもよく目にすることでしょう。

このように、水が描かれたものには和歌や謡曲など文学的な意味を持つ図案が多く、読み解く楽しみに満ちています。

ちなみに、先ほどご紹介した「波に兎」の組み合わせは謡曲『竹生島』からきており、月が琵琶湖に映っていると、月にすむ兎も波間を走っているように見える、ということだそう。

意味を知れば、なおいっそう装いに自信が生まれるのではないかしら。

きもので旅を

第三部では『弥次喜多流離譚(やじきたリターンズ)』が上演されます。

弥次喜多といえば旅。夏休みを利用して歌舞伎座への旅を計画している方もおいでのことでしょう。

「きもので旅を楽しみたい」というとき、心に留めておくとよいことがあります。

新幹線など公共交通機関での移動の際には、薄手の雨ゴート兼ちりよけをお召しになってください。きものや帯を周囲の汚れから守るだけでなく、揺れる車中での飲食の際にも安心です。急な雨にも対応できます。

また、足袋カバーは必須。昔の泥はねと違い、舗装道のタールの黒い汚れは厄介です。

キャリーケースをひくときなどは特に足元が汚れやすいので注意しましょう。
さっと着脱できるソックスタイプが便利です。

そして、旅に最適なきものといえば「大島紬」です。

軽くてしわになりにくい、汚れがつきにくく、ついても拭けば取れる、水にも強い、といいことずくめ。

手頃なお値段とはいえませんが、お持ちであれば、道中の心強い味方になるでしょう。

万全の備えで、憂えなく、きもの旅をお楽しみください。

監修:大久保信子
文:時田綾子

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