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『やわた走井餅老舗』 11代目 井口香苗さん【YouTube連動・体験編編】「元芸妓 紗月が聞く!京都、つなぐ世代」vol.4

『やわた走井餅老舗』 11代目 井口香苗さん【YouTube連動・体験編編】「元芸妓 紗月が聞く!京都、つなぐ世代」vol.4

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前編に引き続き、紗月さんが訪ねるのは『やわた走井餅老舗』。11代目・井口香苗さんの“走井餅”づくりを見学いたします。出来立てほやほやのお餅のお味は?そして井口さんにとっての“走井餅”とは?撮影オフショット付きでお届けします!

250年愛される走井餅づくりを見学【Youtubeリンク】

石清水八幡宮の鳥居前に立つ紗月さん
石清水八幡宮の鳥居前に立つ紗月さん。軽やかな単衣の小紋に、きりりと黒地の帯を締めて

794年から約1000年に渡り、日本の都として栄えた京都。その間に育まれた独自の文化や伝統は、今も耐えることなく街の中に息づいています。そこには、いつの時代も“伝統文化の担い手”として切磋琢磨してきた人々の姿がありました。

2015年から2021年まで祇園甲部の人気芸妓として活躍した紗月さんがMCを務め、代々家業を受け継ぎ、また次の世代に引き継ぐべく奮闘されている方々に“老舗を守りつなぐお話”を伺います。

『やわた走井餅老舗』の看板

京都・石清水八幡宮の一ノ鳥居前に店舗を構える老舗和菓子屋『やわた走井餅老舗(はしいりもちろうほ)』。

前回は11代目・井口香苗さんに、1764年に創業されたお店のこれまでと、その長い歴史を受け継ぐ上での覚悟を伺いました。

MCの紗月さんと、11代目・井口香苗さん
MCの紗月さんと、11代目・井口香苗さん

10年以上前から、毎日欠かさず走井餅を作っているという井口さん。

昔は店先で作っていたそうですが、現在はお店の奥にある工場で作られているそうです。今回はなんと「特別に」ということで、井口さんの作業工程を見学させていただきました!

その模様をYouTube動画に加え、今回もオフショット付きのコラムでお届けします。

お腹を空かせた旅人に。思いやりから生まれたシンプルなお菓子

『やわた走井餅老舗』の工場

こちらが『やわた走井餅老舗』の工場。長年お客様に愛される門前名物“走井餅”は、毎朝ここで作られています。

日によって数は異なりますが、ときには何千個も作る場合があるのだとか!

「千個作ることもある」という井口さんの言葉に驚く紗月さん
「千個作ることもある」という井口さんの言葉に驚く紗月さん

これには紗月さんもびっくり。走井餅は作り置きはせず、その日作った分しか売らないと決めているそうです。

「忙しい日はその分早起きをして作るという形になります」と井口さん。

だからこそ、いつも柔らかくて美味しいお餅をいただけるのですね。

取材を受けながら、走井餅を作る井口さん
餡子をお餅で包む工程

驚くべきは、その手さばきの素早さ。井口さんが掌にお餅を広げ、あんこを包んでこねこねっと丸めたら、私たちが見慣れた刀の形がすでに出来上がっています。

井口さんの作業を見守る紗月さん

「走井餅は元々、茶店のお餅。ぱっと来た旅人がぱっと食べて早くお腹を膨らますというのが成り立ちなので、細工が少なくて簡単に作れる形になっています」

お腹を空かせた旅人にいち早く提供できるように。そんな思いやりから生まれた走井餅は、お餅で餡子をさっと包んだとてもシンプルなお菓子となりました。

お餅を同じ大きさにちぎって
お餅を同じ大きさにちぎって
餡子を包んだら刀の形に整えます
餡子を包んだら刀の形に整えます

シンプル、だけど美味しい。それは原料にこだわっているから。

餡子は北海道産の小豆をザラメのお砂糖で炊いたこし餡。それを滋賀県の羽二重というもち米をついた杵つきのお餅で包んだ走井餅。もちもちとしたお餅の食感と上品な甘さのあんこが特徴で、つい「もう一つ」と手を伸ばしたくなる美味しさです。

井口さんの手さばきは早く、一瞬たりも目が離せません
井口さんの手さばきは早く、一瞬たりも目が離せません

お話を伺っている間にも着々と作業は進み……

あっという間にたくさんの走井餅が完成!

約5分であっという間に完成した40個の走井餅
約5分であっという間に完成した40個の走井餅

1列(8個)を約1分、つまり5分程度で40個もの走井餅ができあがります。

隣で作業を見ていた紗月さんは「簡単そうに見えるけど、実際にやったら難しいですよね」とコメント。その言葉通り、最初はお餅が手にくっつかなくなるまでに時間がかかるそうです。

割烹着姿の紗月さん

一つひとつ均等で、美しい形に整った走井餅を作れるようになるためには日々の積み重ねが重要なのです。

餅屋であること。それは日常でもあり、誇り。

出来立てほやほやの走井餅とお抹茶

では実際に、井口さんが作った走井餅をお抹茶と一緒にいただきましょう。

出来立てほやほやがいただける、またとない機会です。

お餅を手にとって
お餅を手にとって

手に持った瞬間から「ふわふわ!」と、思わず笑みが溢れる紗月さん。

ひとくちでぱくり
ひとくちでぱくり

まずは口いっぱいに上品で程よい甘さが広がります。

「全部の疲れが吹っ飛んでいきますね」と紗月さん。撮影中の緊張から解き放たれ、ひととき癒しの時間を過ごされました。

インタビュー中の紗月さんと井口さん

おいしい走井餅をいただいた後は、インタビューを再開。石清水八幡宮がある京都府八幡市の観光にも力を入れているという井口さんに引き続きお話を伺います。

門前に店舗を構える和菓子屋として、「お参りに行ったら食べられるというような、ちょっとしたご褒美とかお土産とか、そういう立ち位置でやらせてもらっています」と井口さん。

そのためには、もっと八幡市のことを知ってもらわなければならない。年に一回だけの初詣だけじゃなく、日常的に足を運んでもらえるように井口さんはお店のInstagramFacebookブログに市の情報を毎日あげて、魅力を発信されています。

八幡市の観光にも力を入れているという井口さん
背割堤の桜。井口さん撮影(『やわた走井餅老舗』公式ブログより)
背割堤の桜。井口さん撮影(『やわた走井餅老舗』公式ブログより)

特に八幡には「背割堤(せわりてい)」と呼ばれる桜の名所があり、春になると河川敷沿いに約1.4キロにも渡って満開のソメイヨシノが咲き誇ります。

昔は地元の人だけが行くお花見スポットだったのが、SNSの拡散によって今や全国の人気お花見スポットランキングに入るほどの賑わいを見せているそうです。

実際に自身の足で市の観光地に赴き、その時の旬な情報をSNSにはあげているという井口さん。特に桜の開花状況は1日でガラッと変わってしまうため、毎日できるだけ桜の名所に足を運んで何分咲きかをお知らせしているのだとか。

井口さんが履くのは鼻緒をスニーカーと融合させた「鼻緒シューズ」
井口さんが履くのは鼻緒をスニーカーと融合させた「鼻緒シューズ」

「八幡の情報はだいたいうちのお店のインスタを見てもらうと結構網羅できるんじゃないかと自負しています」

お店の仕事で忙しい中、合間を縫って市全体の活性化に貢献している井口さん。毎日地道に自分ができることを。そんな井口さんの姿勢には見習うところがたくさんあります。

お話を聞く紗月さん

最後に井口さんの思う、「走井餅」とはについて伺いました。

井口さんにとって、走井餅とは「日常」と「誇り」

井口さんが色紙に書いたのは、「日常」と「誇り」の二文字。その真意とは。

走井餅を作ることは、井口さんにとってもはや日常。朝起きて顔を洗ったり、歯を磨いたり、または息をしているのと同じような感覚だといいます。それは、代々当主を務めてきた方々も同じだったはずと井口さん。

そんな先祖のお墓参りに行くと、暮石が臼と杵だったり、走井の和歌が刻まされていたりするそうです。

井口さんの書いた色紙

「それは多分商売に対してのプライド。私は餅屋だった、という気持ちがあるのだと思う。私も自分がここに生まれて毎日餅屋をしていることをとても誇りに思っているので、どちらかには選べなかった。日常であり誇りでもあるという思いを込めました」

そんな井口さんの誇り高き日常はこれからも続いていきます。

『やわた走井餅老舗』外観
和姿も似合う『やわた走井餅老舗』外観

『やわた走井餅老舗』は、9:00〜17:30まで営業中。定休日は月曜日(月曜日が祝日の場合は営業 / 翌平日休)。店内でお茶菓子やお土産も販売されています。

営業日は予告なく変更される場合がございます。詳しくはお店のホームページをチェックしてください!

紗月さんと井口さんのツーショット

今回の訪問を振り返り、

「走井餅、美味しかったです!実際に目の前で作っていただき、できたてほやほやをいただけるなんて本当に幸せだと思って。安藤広重さんが絵に描きたくなる気持ちが分かりました!」

と紗月さん。

井口さん、貴重なお話と体験をありがとうございました。

紗月さんファン必見!オフショット

撮影中の紗月さん
撮影中の紗月さん
花葉模様の小紋が自然豊かな風景に映えます
花葉模様の小紋が自然豊かな風景に映えます。お太鼓の内側には台本がしのばされて
ヘアスタイルはこちら
気になるヘアスタイル、後ろはこんな感じです
エンディングムービーを収録中♪
エンディングムービーを収録中♪
走井餅の看板
店内には石清水八幡宮の絵馬が並ぶ
店内には石清水八幡宮の絵馬が並ぶ
安藤広重『東海道五十三次』に描かれた「走井茶屋」
安藤広重『東海道五十三次』に描かれた「走井茶屋」
小さなお客様と何やら談笑中の紗月さん
小さなお客様と何やら談笑中の紗月さん
割烹着を着て見学に臨みます!
割烹着を着て見学に臨みます!
とっても近くで見学させていただきました
とっても近くで見学させていただきました
井口さんの走井餅づくりを真剣な眼差しで見守る紗月さん
井口さんの走井餅づくりを真剣な眼差しで見守る紗月さん
あまりの速さに思わず拍手する場面も
あまりの速さに思わず拍手する場面も
出来立てほやほやの走井餅は想像以上の美味しさ!
出来立てほやほやの走井餅は想像以上の美味しさ!
今回も、ありがとうございました!
今回も、ありがとうございました!

文章/苫とり子
撮影/弥武江利子

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