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堂々と胸を張って好きなことを。 着物クリエイター・みさまるさん

堂々と胸を張って好きなことを。 着物クリエイター・みさまるさん

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「着物は自由に楽しむもの」をモットーに、着物とスカートやブーツなどを自由に組み合わせたコーディネートが話題の着物クリエイター・みさまるさん。今年4月に発売された初のスタイリング本『フリースタイル着物コーデBOOK』に込めた思い、そしてその大胆な発想を育てた環境に迫ります。

“人と違うことをしなさい”
気鋭の着物クリエイター「みさまる」を育てた環境

みさまるさん02
Photo by かるるく

「人に言葉で叩かれたって、命まで取られるわけじゃない」

そう強く語るのは、着物クリエイターのみさまるさん。

SNSを中心に着物と現代のファッションを融合させたコーディネートを発信するみさまるさんは、これまで他人の着付けを批判する人々、いわゆる“着物警察”の被害に遭ってきたといいます。

それでも「着物は自由に楽しむもの」というモットーを貫いて活動を行ってきた結果、たくさんの着物ユーザーからの支持を集め、この度、自身初となるスタイリング本『フリースタイル着物コーデBOOK』(KADOKAWA)を発表しました。

本書は、みさまるさん自身がこれまでSNSに投稿してきた着物コーデを一冊の書籍にまとめたもの。

「簡単コーデ」「ワンポイントコーデ」「スカートコーデ」「パンツコーデ」「室町コーデ」「パンク・ゴシックコーデ」と6つのカテゴリに分け、全50通りのスタイリングを紹介。

また、基本的な着付けから帯の代わりにベルトを使ったコーデ、大胆に着物をショート丈にリメイクする方法などを写真付きでわかりやすく解説した、誰でも簡単に“フリースタイルコーデ”が始められる実践的な内容となっています。

ゴシック風コーデ
深紅の振袖をレザーのコルセットをはじめとした黒の小物で引き締めるゴシック風コーデ
Photo by 石川奈都子 model Ayane(TRAPEZISTE)

著者のみさまるさんは、大阪府大阪市在住の20代。着付師の祖母の影響で幼い頃から着物に親しんできました。

普段着として着物を取り入れるようになったのは大学生になってから。最初は祖母や母から譲り受けた着物からはじまり、アルバイトをするようになってからは自分で稼いだお金でリサイクル着物や、ネットで手に入る比較的安価なポリエステルの着物を購入し、日常のコーデに取り入れるようになったといいます。

ショート丈着物にもんぺパンツのコーデ
著書でも紹介しているショート丈着物にもんぺパンツを合わせた動きやすさ抜群のコーデでお出かけ

そんなみさまるさんが個性的なスタイリングに挑戦するようになったきっかけは何だったのでしょうか。

「着物を普段着にしようと思った時に、着物を着る道具や小物を一式揃えて、きっちりとした着方を勉強したらお金も時間もかなり費やしそうだな…と感じたのがきっかけです。

お気に入りのショート丈の着物は、昨年から流行しているY2Kファッション(※)の影響を受けたのと、夏の着物が暑すぎて『思いきってお腹を出したら涼しいんじゃないか』と思って製作しました」

※Y2Kファッション…「Year 2000」の略で、2000年頃に流行したスタイルのこと。ミニスカ、ヘソ出し、厚底など、若者のエネルギーを感じられる着こなしが象徴的。

『フリースタイル着物コーデBOOK』著者・みさまるさん Photo by 石川奈都子

“右にならえ”の精神が古くから根付く日本では、ちょっと人と違ったことをするだけで白い目で見られたり、一部の人から叩かれることがあります。

みさまるさんも、SNSのコメントや、時には街中で心無い言葉をかけられることもあったのだとか。

それでも、みさまるさんは「着物を着るのが嫌だと思ったことは一度もない」と語ります。

「人と違うことをして誰かから批判されたり、キツい言葉を投げかけられるとどうしても辛く感じてしまいますが、自分の今やりたいことをやらない方が後で振り返った時に後悔するし、何より人に迷惑をかけているわけでもない。

堂々と胸を張って自分のやりたい着物やファッションを楽しめばいいのではないでしょうか」

みさまるさんの、周りに流されない強い意志を育てたのは、”一人ひとりの個性が認められる”環境でした。

中学から大学卒業まで芸術の世界にいたというみさまるさん。そこは、柔軟な発想とアウトプットができなければ「つまらない」と言われるような環境。常日頃から“人と違うことをしなさい”と教えられていたそうです。

だからこそ、自分の着物コーデについて誰かから「そんな着方は変だ」「着物のルールを破るな」と批判されても「それの何がいけないの?」と疑問に思うことができたのだといいます。

「見知らぬ人からいろいろと言われても、私が自分のやりたいことや思いつきを殻に閉じ込めずに表現してこられたのは、私が人と違う価値観を持っていても、それをいつも『いいね!』と認めてくれる家族や友人の存在があったから。

支えてくれる味方がいて、その人たちに感謝を伝え続けるということは、自分自身や周りが自由でいるためにとても重要なことに感じます」

みさまるさんお気に入り!着物+スカートのコーデ3選

UKパンクロックと和服の融合をテーマに
UKパンクロックと和服の融合をテーマにした黒紋付×赤チェックスカートのスタイリング

みさまるさんの、固定観念にとらわれない、自由な発想から生まれるスタイリングは目から鱗なものばかり。暑い夏でも着物が着たい!襦袢がなくても大丈夫?などの疑問や要望に答えるコーディネートが満載です。

今回、自身初のスタイリング本を出版するにあたり、「今までにない着物の本を出したい!」と思っていたというみさまるさん。

「着物といえば全体的に筒型のシルエットが特徴的だと思うのですが、賛否あることは承知の上でそれを壊し、さまざまなシルエットの着物コーデを提示できたらおもしろいと考えていました。
また、自分の大好きな黒紋付の着物を使ったコーデを載せられたのがこだわりです」

そんなみさまるさんが著書の中で特に気に入っているコーデ3選を、こだわりポイント付きで紹介していただきました♪

クラゲコーデ

まずは、フェリシモと加茂水族館のコラボ商品にインスピレーションを得て考えた“クラゲコーデ”。

著書の中で紹介されている「ショートスタイル(※)」で着付けた絽の着物の上から、涼しげな水色のスカートを合わせています。

※基本の着付けにひと手間加えてショート丈にアレンジしたもの

「蒸し蒸しと暑い6月に超絶爽やかなコーデをしたいと思って昨年組んだ装いです。

全体的に白と水色の構成になっていて、白地に水色の模様の絽がとっても爽やかでお気に入り。スカートのリボン位置は高めにして脚長効果を狙いました。傘でさらに雰囲気を出して」

クラゲをイメージしたスタイリング
クラゲをイメージしたスタイリング
Photo by 石川奈都子 model 元田理恵子(ルーセント)

更紗 × ボリューム

個性的な柄だけに、合わせるのが少し難しい更紗の着物。そんな主役級のアイテムにあえて大ぶりな小物を合わせたバランスの良いコーデがこちら。

更紗の着物を使ったコーデ
更紗の着物に巧みなボリューム使いのコーデ
Photo by 石川奈都子 model 元田理恵子(ルーセント)

「祖母の更紗の着物にスカートを合わせました。

私のなかで派手な印象の更紗模様に負けないよう、厚底ブーツを履いて、スカートもあえてボリュームのあるものを組み合わせています」

黒紋付コーデ

そして、冠婚葬祭以外ではなかなか出番のない黒紋付を大胆にリメイクしたコーデ!

ショート丈でヘルシーにお腹見せし、夏でも涼やかに過ごせるエッジの効いた着こなしです。

「私の一番好きな、夏用の黒紋付をショート丈にアレンジした着物を使用しました。着付けの手間をなくし、涼しさを追求した一着です。

スカートは同じく黒紋付の着物をリメイクしたもの。ゴツめのベルトを使うことで、ウエストを細く見せる効果があります」

夏用の黒紋付をショート丈にアレンジしたコーデ
夏用の黒紋付をショート丈にアレンジしたコーデ
Photo by 石川奈都子 model Ayane(TRAPEZISTE)

まだまだ遊び甲斐や発展性がある、“ファッション”としての着物

みさまるさん手製のアイヌ文様の着物
みさまるさんが自身で手縫いしたアイヌ文様の着物 Photo by 石川奈都子

みさまるさんが著書の中で紹介している着物は、ほとんどが関西のリサイクルショップやネットショップにてお得な値段で手に入れたもの。

またスタイリングに使用している洋服もGUやしまむらなどのファストファッションが多く、これまで「着物は高いから……」と値段で躊躇していた人たちの背中を押す内容となっています。

着物の上から一枚の布を巻いた室町風コーデ
着物の上から一枚の布を巻いた室町風コーデ。帯による締め付けがないため、お腹周りが楽チン!

「私は幼少期からずっと着物が好きで、単純に『着物かわいいからみんなも普段着に取り入れたら楽しいよ〜!』ぐらいのノリで着物を推しています(笑)」

デザイン性はもちろんのこと、着物は親から子へと代々「受け継ぐことができる」という点にも魅力を感じているそうです。

「私が『無地の紋付き』好きということで、SNSのフォロワーさんから真紅の無地に三つ紋付の振袖を譲り受けた時は本当に感動しました。人生の大切な日にご着用され、ご自身で染め替えをされたという思い入れのある振袖をいただいたのです。

ぜひたくさんの方に見てもらいたいと思い、今回発売された書籍でも掲載させていただきました(※)。

振袖を下さったご本人がご覧になられ、とても喜んでくれたことが本当にうれしかったです」

※本記事冒頭の赤の振袖(ゴシック風コーデ)

一方で、みさまるさんは「着物は伝統ではなくファッションとして見れば、まだまだ遊び甲斐や発展性がある」と考えます。

黒紋付×スカートコーデに身を包んだみさまるさん
お気に入りの黒紋付×スカートコーデに身を包んだみさまるさん

「国内外のファッショントレンドを着物に反映できたらおもしろいな」と、毎月発刊されるファッション雑誌にできるだけ目を通しているみさまるさん。普段の街歩きや美術館・水族館などに行った際には、見たものすべてに対して「これを着物で表現したらどうなるかな」と想像してしまうそう。

リスペクトするのは、『コム・デ・ギャルソン』の創始者であるファッションデザイナー・川久保玲さんの創造性と破壊性。自身も常識を覆すスタイリングで常に着物ユーザーを驚かせています。

それでいてみさまるさんは、決して正統派の着方や着物の楽しみ方を否定しません。

「私は完全に、自己表現や個性を前面に押し出した着物の楽しみ方をしているのに対して、正統派の着方というのは周りや相手への気配りを着物で表現しているように感じます。

慎ましく美しいと感じますし、そうなれるかは分かりませんが、私もいつかそういう側面を持てたらいいなぁと思っています」

クラゲコーデを応用したみさまるさんの着こなし

最後に、みさまるさんが考える「着物の未来」について伺いました。

「ベーシックな着物の装いやシルエットというのはこれからもずっと変わらないと思います。

しかし、ここ数年で若年層向けのレンタル着物の装いや成人式の着物コーデが、レースやパール、ブーツを組み合わせたものになるなど、発展を遂げています。これらを見ると、今後の展開はどうなるんだろう…と気になるところ。

世の流れとして、個人の個性が重視される風潮は着物にもますます取り入れられるようになると考えています」

周りの意見に流されず、自分の好きなことを突き詰める。そんなみさまるさんの姿は私たちにパワーを与えてくれます。

一人ひとりの個性が尊重される社会。
それを牽引する着物クリエイター・みさまるさんの活動に、これからも目が離せません。

扉写真撮影/NARUTO KAWASAKI

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