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柄に込められた物語に思いをはせて 「歌舞伎へGO!大久保信子先生に聞く着物スタイル」vol.18

柄に込められた物語に思いをはせて 「歌舞伎へGO!大久保信子先生に聞く着物スタイル」vol.18

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だんだんと、街に人が多くなってきました。 劇場へのお出かけも、少しは気軽になってきたでしょうか? 久しぶりに歌舞伎座へという方もいらっしゃることでしょう。 歌舞伎座「六月大歌舞伎」の第一部『菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)』で歌舞伎の様式美を楽しんでみませんか。

扉画像

「四十八茶百鼠」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。それぞれに、歌舞伎役者などの人名や花鳥風月からとった名前がつけられており、バラエティーに富んだ色の数々は、現代でも十分通用する素敵なものばかり…江戸の人たちが楽しんだ色を、私たちもまとってみましょう。

歌舞伎の様式美を楽しむ

だんだんと、街に人が多くなってきました。
劇場へのお出かけも、少しは気軽になってきたでしょうか?

久しぶりに歌舞伎座へという方もいらっしゃることでしょう。

歌舞伎座「六月大歌舞伎」(6月2日~27日、9・20日は休演)の第一部『菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)』で歌舞伎の様式美を楽しんでみませんか。

『菅原伝授手習鑑』は、菅原道真(菅丞相)をめぐる歴史的事実や諸伝説をもとにつくられた物語。もとは人形浄瑠璃で、すぐに歌舞伎化され、今も人気の時代物です。

今回上演される「車引」は物語の中盤、松王丸・梅王丸・桜丸という三つ子の兄弟が吉田神社の社頭で出会います。3人はそれぞれ別の主に仕えていました。

流罪になった菅丞相の舎人(とねり)である梅王丸(坂東巳之助)、斎世親王の舎人・桜丸(中村壱太郎)は主人の恨みを晴らそうと、政敵で権力者の藤原時平(市川猿之助)の行列を襲います。

しかし、その前に立ちはだかったのは時平の舎人・松王丸(尾上松緑)でした。
さらに、牛車から現れた時平に一睨みされ、ふたりはすくみ上がってしまいます。

「車引」には、歌舞伎のエッセンスが詰まっています。

梅王丸の荒事、松王丸の実事、桜丸の和事と三者三様の演技を繰り広げます。

それぞれのキャラクターを表す隈取、衣裳にも注目です。怪異な雰囲気を漂わせる時平も見逃せません。

柄に込められた物語

3兄弟はそれぞれ、名前そのものズバリの柄を身につけています。

松王丸は松、梅王丸は梅、桜丸は桜。

なぜ、登場人物たちはその衣裳を着ているのでしょうか。衣裳の柄にはどんな物語が込められているのでしょう?

「車引」より後の場面になりますが、敵役の時平に仕える松王丸は、松に雪が積もった様子を意匠化した「雪持松(ゆきもちまつ)」文様の衣裳で登場します。

現在の主は時平でも、松王丸は菅丞相への忠義心を持っていました。観客は、雪の重みに耐える松の姿に、そんな松王丸の苦衷の心情を重ね合わせるのです。

衣裳はその人物の身分や地位、キャラクターを表現するだけでなく、このように「思い」を託すこともあるのではないかしら。柄に込められた思いや物語、由緒などを知ることで、観劇の楽しみは増すことでしょう。

季節の装いとはまた別に、登場人物の心情に寄り添うような装いを考えるのも面白いかもしれません。

梅文の物語性

松梅桜の3兄弟のうち、松(vol.13)と桜(vol.4)は以前に触れましたので、今回は梅の文様を取り上げます。

新年を寿ぐ装い

新しい年のはじめには、歌舞伎座の『壽 初春大歌舞伎』へ参りましょう。新春を前に、ハレの衣裳をととのえる。小物を買い替えたり、新しい半衿を付けたり。そんな時間を持てれば、慌ただしい年の瀬も心豊かに過ごせそうです。きたる年がよい一年になりますように。

『桜姫』を満喫する桜の着物コーディネート

第三部の『桜姫東文章(さくらひめあずまぶんしょう)』は四世鶴屋南北による、ちょっと官能的な作品です。清玄と釣鐘権助には片岡仁左衛門、白菊丸と桜姫には坂東玉三郎。ふたりがこの演目で共演するのは1985年以来とのこと。初日が待ち遠しいですね。

梅文にはいろいろなタイプがあります。

梅の枝と花を写実的に表したもの、尾形光琳の流れをひく表現、自然の風物と組み合わせたもの、梅を意匠化したものなどです。

梅文は植物文のうちでも古くから日本人に親しまれ、絵画のみならず器物、室内の装飾にも取り入れられてきました。

きものでも、初春の装いには欠かせない文様です。

梅の花の文様が衣服に用いられるようになったのは桃山時代以降なのだとか。江戸時代になると、立木や枝に花を散らす表現が盛んになったようです。

『菅原伝授手習鑑』にも登場する「飛梅」や、「箙(えびら)の梅」「鶯宿梅(おうしゅくばい)」など梅にまつわる故事を意匠化したもの、梅にちなんだ詩歌の文字を散らしたものなど、梅文は単に植物の文様とはいえないほどの意味や物語を持っています。

写実的なもの、単独で描かれたものはやはり、初春の季節にお召しになるのがふさわしいでしょう。

ですが、梅に蘭・竹・菊を合わせた「四君子」、また「松竹梅」は季節を問いません。きものや帯は単独の文様でも、小物も合わせて全体で松竹梅にするなどでもめでたさを表現できます。

意匠化された梅なら、さらに幅広いシーンで用いることができるでしょう。

雨の日の足元

昨年は雨ゴートのお話をしました(vol.6)ので、今回は雨の日の足元についてご紹介しましょう。

文様を探す楽しみ

6月は歌舞伎座「六月大歌舞伎」から舞踊二題をご紹介しましょう。第一部の『夕顔棚』、第三部の『銘作左小刀 京人形』です。舞踊だからといって、特に決まりなどはありません。小紋でも付け下げでも、お好みのお召し物でお出かけください。

雨降りの日に「雨下駄」というのは風情がありますが、現代では不都合なことが多いのです。

歯のある下駄は滑ります。
駅のホームや階段などは特に滑りますから、細心の注意が必要です。

ただでさえ雨の日は荷物が増えたり、きものが濡れないか心配したりと、気をつかうことが増えます。足元だけでも不安がないよう、草履のほうがよいでしょう。

雨草履を履くか、裏から水が染みない草履に雨よけのカバーを掛けます。足袋の上に足袋カバーをはいたり、替えの足袋を持ったりすればなお安心。
普通の雨であれば、街中ではこのような仕度で大丈夫ではないでしょうか。

足袋カバーには、こはぜのあるもの以外に、ソックスタイプのものがあります。

はいたり脱いだりが楽なのでソックスタイプはおすすめ。足袋カバーをはくのは道中ですから、どのようなタイプでも構いません。

また、雨の日には、縮緬やお召しは縮みやすいので要注意。
水に強い大島紬なら心強いです。

【本場白大島】 紬着尺 「菱間道」
【本場白大島】 紬着尺 「菱間道」

裾丈は少し短めに着つけましょう。
足元に気をつけて、雨の季節の装いを楽しんでくださいませ。

監修:大久保信子
文:時田綾子

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