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自分の感じる“好き”を大切に 「花柳凜の、和でも洋でも美しく」vol.7(最終回)

自分の感じる“好き”を大切に 「花柳凜の、和でも洋でも美しく」vol.7(最終回)

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舞踊家という職業上、着物の着方をとても大切にしています。ルールやマナーも重んじています。しかし同時に、新しい着物のスタイルを楽しむ多くの人を見ると、とてもうれしくなります。着物が可能性を広げ、末長く愛されてくれたらそれは何より幸せなこと。着物でも洋服でも、わたしたちのスタイルは常に自由です。

春を楽しむ着物

春の季節をより楽しむ着物

着物にとって季節との関わりはとても大きなものです。

短いと1年のうちほんの1ヶ月弱しか楽しめないような柄行もありますが、巡る季節の足音にワクワクと心躍らせ、今年もまたあの着物を着られる時期がきた、と思い描くときにはえもいわれぬ喜びを感じます。

今回は、たくさんの人にワクワクを運んでくれる、春の季節をより楽しむ着物。

そして、「和でも洋でも美しく」シリーズの最終回として、着物の未来への想いを少しお話したいと思います。

生きる素材、美しいちりめん

春、といえばシボの美しいちりめんの生地が思い浮かびます。

繊細な糸の撚りによって生まれるシボの風合いは、春の優しい光にぴったりで、春霞に溶け込むちりめんの美しさはまさに、日本の美といえるでしょう。

春と言えばシボの着物

蚕という命から生み出された絹は、生きる素材です。ちりめんはその「命」の側面を最も感じられる織物ではないでしょうか。

ちりめんの凹凸感や糸の節の風情は、生糸がまさに命であるということを感じさせてくれます。

ご存知の通り絹は蚕の繭から取った動物繊維で、天然繊維としては唯一の長繊維です。絹の滑らかな質感と美しい光沢は着物の魅了の根幹を成すもの。

そもそも着物の生地一反に、いくつの繭が使われているかご存知でしょうか。

その数なんと3000以上。着物一反を作るために3000以上のお蚕さまの命をいただいているのです。

着物は多くの命、そしてたくさんの職人さんの技術の結晶です。

シボが生む光の乱反射

ちりめんのシボが生む光の乱反射は華やかながらとても上品で優しく、春の空気の中でさらにベールを纏ったように繊細です。

まだ寒さの残る時期としてもちりめんの風合いは温かみがあり、少しの光でもふっくらと温もりを留めてくれる風情があります。

ちりめんは無地でも十分な存在感を演出してくれますし、華やかな柄も立体的でナチュラルにより自然に表現してくれます。

また、シボの高いちりめんは、小紋であっても重厚な帯がマッチするのも特徴で、帯を変えるだけで様々なシーンに活躍してくれます。

柄はもちろん、着物で季節を楽しむのであれば生地に注目してみるのも深みのある楽しみ方ではないでしょうか。

重厚な帯がマッチする

わたしたちのスタイルは常に自由

さて、1年半以上も続けさせていただいた「和でも洋でも美しく」。今回でこちらのシリーズは最終回となります。

「和でも洋でも美しく」というテーマをいただいたとき、わたしが常々着物を着る上で考えていること、“和装をよりナチュラルに楽しんでほしい”という思いにぴったりだと感じました。

多くの方は、洋服であれば気温や天気など最低限の条件は気にかけても、あとは自由に、好きなものを着て楽しまれています。

私もお洋服では、メンズのアイテムも多く取り入れてマニッシュなファッションを楽しんでいます。

しかし着物となると途端に決まりごとやルールが多く感じられ、楽しむことより正式な形式に則っているかが気にかかり、制約が多く感じ、最終的には難しいものとして着物から足が遠のいてゆきます。

わたしも過去に何度、「着物を着てみたいけど、決まりごとが多いんだよね?」という質問に出会ったかわかりません。

マニッシュなファッション

着物には確かに多くのルールやマナーが存在します。
しかしそれはあくまでも、日本人の心として、お相手や空間に敬意を持ちたいという心遣いからきたものです。

逆をいえば、楽しくプライベートで着物を着るのであれば、時代と共にさまざまな様式が生まれるのも当然で、今までのルールとは違う新しいカタチを採用するのはなんの問題もなく、むしろ着物が多くの人の生活に馴染みながら未来に繋がれていく上でとても大切な進化だと感じています。

着物とは伝統として守られるべきものですが、同時に日本人の心の衣装としてこれからも末長く生活の中で愛されていくべきものでもあります。

そういった意味で、「和でも洋でも美しく」という言葉には、「和でも洋でも同じように自由に楽しんでほしい」そんな想いが込められています。

例えば衿の抜き。セオリーでは「拳ひとつ分ほど」と言われています。

しかし「今日はお洒落なパーティだから、着物で行ってみよう。ちょっぴりセクシーに衿を大胆に抜いてみたらカッコいいかな?」と思っている人に「着物の衿は拳ひとつ分。大きく抜くなんて下品です」と言ってセオリーを押しつけ、結局楽しく着物が着られずに「それならドレスを着て行こう」と思われてしまったら。

そんなことが続いていけば、日本から着物を着る人はどんどん少なくなってしまいます。

おしゃれに着崩してみる
なかなかない組み合わせをしてみる
洋装と合わせてみる

時代や着る年齢層によっても、着物は少しずつ変化して、進化していきます。

ルールやマナーを守ることはとても大切です。だからこそ、正当で美しい着物は守られています。

しかし同時に、常識にとらわれず好きなスタイルで思いっきり楽しむことも同じくらい大切ではないでしょうか。

着物の着方はとても大切にしている。

わたしは舞踊家という職業上、着物の着方をとても大切にしています。ルールやマナーも重んじています。

しかし同時に、新しい着物のスタイルを楽しむ多くの人を見ると、とてもうれしくなります。

着物が可能性を広げ、末長く愛されてくれたらそれは何より幸せなこと。

着物でも洋服でも、わたしたちのスタイルは常に自由です。

自分の感じる“好き”を大切に

着物の着方はとても大切にしている。

和でも洋でも美しく。

自分の感じる“好き”を大切に、これからもたくさんの人が自分らしく自由に着物を楽しめたら素敵だなと思います。

そして最後にあらためまして、いつもわたしのコラムを読んでくださっているみなさまに心から感謝いたします。

このシリーズは一旦最終回を迎えますが、わたしも着物への理解を深め、またみなさまとお会いできます日を心待ちにしております!

ありがとうございました。

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