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城間栄順 米寿記念 「紅(いろ)の衣」展 沖縄・京都に続き、東京へ―

城間栄順 米寿記念 「紅(いろ)の衣」展 沖縄・京都に続き、東京へ―

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2022年3月21日から東京にて、城間栄順氏の米寿を記念した「紅(いろ)の布」展が開催されます。会場を彩るのは、圧倒的な魅力を放つ琉球紅型の逸品群。琉装の工芸品から和装のきものへと昇華された城間栄順氏の琉球紅型の世界を、ぜひ会場にてご照覧ください。

城間栄順 米寿記念 「紅(いろ)の衣」展

沖縄 琉球紅型 城間栄順氏
提供:染と織 琉藍

琉球王国の時代から王族や士族、そして舞台の衣装として染められてきた琉球びんがた。

城間栄順の功績は、父・栄喜から受け継いだ琉球びんがたを、工芸品として見せる布から、着て楽しむ「きもの」として昇華させたことにある。

琉球びんがた宗家・城間家に生まれ、家業を継ぎながら、”暮らしが仕事、仕事が暮らし”の日々を積み重ね、米寿を迎える城間栄順。

沖縄の輝く自然から享受した光と風を布に染め、「きもの」としての着すがたを大切に、手仕事にこだわりものづくりを重ねてきた。

琉球びんがたの世界を次世代に繋げたいとの想いで、今展のために新たに創作した作品の数々を、復帰50周年にあたる2022年に展覧します。

――「紅の衣」展 案内状より

琉球紅型(びんがた)とは

沖縄で制作される染物の総称である琉球紅型

琉球紅型(びんがた)は、沖縄で育まれた独自の染技を用いて製作される染物の総称です。
その起源は13世紀に遡り、長きに渡り、その独特の美しさが人々を魅了しています。

琉球紅型の一番の魅力は、素朴な図案に鮮明な色彩で大胆に施された配色。
琉球王朝の交易品として発展を遂げた工芸品で、中国的な豪華さと日本的な優美さを掛け合わせて沖縄の豊かな自然が表現されています。

沖縄で制作される染物の総称である琉球紅型

歴史とともに受け継がれてきた琉球紅型。

第二次世界大戦で沖縄が大きな被害を受けた後も、栄順氏の父である城間栄喜(えいき)氏によって再興されます。

父から息子へ、そしてさらに孫へ。
栄喜氏から栄順氏へと受け継がれた技術は今、またその次の世代、城間栄市氏にも受け継がれようとしています。

今回の「紅の衣」展は、城間栄順氏の米寿を記念した展覧会。
2月沖縄での開催を皮切りに3月頭に京都を巡回、3月21日よりは東京にて開催されます。

琉装と和装を融合させた城間栄順氏

3月頭に開催されました京都展の際に、主催者である株式会社染と織琉藍 社長、前田昌亮さんにお話を伺いました。

「株式会社染と織琉藍」の社長前田昌亮さん
株式会社染と織琉藍 社長 前田昌亮さん

城間栄順先生の米寿を記念した展覧会ということですが、企画・準備にはどれくらいの期間をかけられたのでしょうか。

「今から3年ほど前から準備をはじめました。ちょうど新型コロナウイルスの流行が始まる少し前ですね。当初はコロナ禍の影響を心配したりもしましたが、そのような状況を逆手にとって、先生には製作に集中していただくことができました」

会場風景

栄順先生の作品は伝統的な紅型を進化させたものだと聞いています。その特徴を教えていただけますでしょうか。

「琉球紅型は沖縄の伝統的な染物で、先代の栄喜先生の頃は琉装(りゅうそう)の『工芸品』という色合いが強いものでした。
栄順先生はそんな琉球紅型に日本の和装の伝統を取り込み、『きもの』として昇華させました」

会場風景

「このことは沖縄でも非常に高い関心が持たれており、先日沖縄県立博物館で開催された展覧会最終日には800人もの方に来場いただきました。会場を訪れた方々からも、紅型=琉装というイメージが変わった!という意見を数多くいただいています」

非常にエネルギッシュな方と耳にする栄順先生。実際には、どのようなお人柄なのでしょうか。

沖縄 琉球紅型 城間栄順氏
提供:染と織 琉藍

「作品に表現されたエネルギーを見ていただいても分かるように、栄順先生はお歳を重ねられてなお大変活発で明るく気さくな方です。私たちにもいろいろなことを丁寧に教えてくれます。

そして何より人を大切する方。よくおっしゃられるのが『良い作品を作るためには、良い人間が必要』という言葉です。

そんな栄順先生の人柄に惹かれる人は多く、大勢の方が先生を慕っています。私自身もそんな栄順先生の人柄に惚れ込んだ一人。息子の栄市さんと同世代ということもあり、今後ともに紅型の魅力を伝えていきたいと思っています」

注目の作品

今回の展示のみどころを教えてください。

「すべての作品が必見に値するものなのですが、とりわけ私からおすすめしたいのは『花涛(はななみ)』です。栄順氏が20年ほど前に作成した図案をもとに制作されました」

作業工程が複雑さを極める城間栄順氏の目玉作品『花涛』
城間栄順『花涛』

「非常に美しい図案にも関わらずリピートして製作されなかった理由は、その作業工程の複雑さにあります。
全てのラインのぼかし加工や、地色を染める際に施す伏せの作業など、困難で手間のかかるな工程が多く、今回工房の職人さん方に聞いても本当に大変だったとお聞きしています」

作業工程が複雑さを極める城間栄順氏の目玉作品『花涛』
幾重にも重なる細かな彩りぼかしに、根気の要る作業のようすが伺える
城間栄順 花涛

『花涛』(はなみみ)

真夏の引き潮の浜辺
干上がった珊瑚礁や海草
黒潮の冷たい海水がはいると
息を吹き返し喜ぶ誌が聞こえる

作品の世界観をあらわした栄順先生からのメッセージに、南国の風を感じます。

「また、もう1点ぜひご覧いただきたいのが『彩潮(あやしお)』です。
柄部分以外を彫り取った型紙『白地型』と模様の輪郭を彫り取った『染地型』を織り交ぜて製作された作品です」

展覧会主催者である前田昌亮さんが薦める彩潮
城間栄順『彩潮』

栄順先生の長女松子(しょうこ)さんが配色し、完璧なバランスにて仕上がった一枚。工房の職人さんからもとても愛されている図柄だそうです。

「福を呼ぶ」ようにと城間栄順氏は自身作品にフグを使用することも。

「栄順先生は『福を呼ぶ』という意味で自身の作品にフグを使われることが多いのですが、この作品にもたくさん小さなフグがあらわされています。海を愛する先生らしい表現の一枚です」

他の作品にも、生き生きとした海の生き物たちが描かれています。

城間栄順氏の別の作品にもフグが登場している。

想いが込められた総勢103点の作品群

「振袖」

展覧会では、今回のために製作された振袖3点、訪問着20点、小紋30点、帯50点が展示される予定となっており、どれも美しく見応えのある作品ばかり。

城間栄順氏の作品1つ1つに想いが表現されている。

各作品には、栄順氏のそれぞれの作品に対する想いが表現された作品名が付けられており、それも作品鑑賞の楽しみのひとつになるかもしれません。

城間栄順氏の作品1つ1つに想いが表現されている。
地機の本場結城紬地に染められた逸品も(センター黒地のもの)

琉装と和装が融合した沖縄の伝統工芸品、琉球紅型。
そしてそれを現代に体現する城間栄順氏の感性。

ぜひとも会場にてご照覧ください。

城間栄順展

城間栄順 米寿記念「紅(いろ)の衣」展

「美しいものは、きれいな仕事場からしか生まれない」

その信念を貫くため、城間栄順は、米寿を迎える今、毎朝、工房を掃き清める。
アダンやソテツ、フグやサンゴなど、命輝く沖縄の自然を染めながら、作る喜び、着けて楽しむ喜びを、ともに分かち合える、ものづくりを目指して約半世紀。
その昔、王族の権威を象徴した衣装を奥ゆかしい「きもの」の世界へと展開させ、次の世へと彩を放ち続ける城間栄順の「紅の衣」をご覧ください。

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文/中村砂織
(提供画像以外)撮影/スタジオヒサフジ

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