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『PILGRIM(ピリグリム)』 メインシェフ 北野ゆりかさん(前編)「MariMaedaが訪ねる、パリで活躍する日本人」vol.1

『PILGRIM(ピリグリム)』 メインシェフ 北野ゆりかさん(前編)「MariMaedaが訪ねる、パリで活躍する日本人」vol.1

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さまざまな分野においてパリで活躍する日本人の方々にスポットを当て、私の大好きな着物姿にてお話しをお伺いしていきます。初回は、パリ15区にある一つ星フレンチレストラン『PILGRIM (ピリグリム)』メインシェフ、北野ゆりかシェフを訪ねました。

パリより、新連載スタート!

みなさまごきげんよう。

今回よりはじまります新連載、さまざまな分野においてパリで活躍する日本人の方々にスポットを当て、私の大好きな着物姿にてお話しをお伺いしていきます。

海外旅行がままならないなか、少しでもパリの風を感じていただけましたら。どうぞ、これからもよろしくお願いいたします。

日本人オーナーによる人気店

新連載のトップバッターは…

パリ15区にある一つ星フレンチレストラン『PILGRIM (ピリグリム)』でメインシェフを務める、北野ゆりかシェフ。

前後編にてご紹介いたしますので、みなさまどうぞお楽しみ下さいませ。

15区の住宅街

オーナーシェフ 西英樹氏のフレンチレストラン『PILGRIM (ピリグリム)』があるのは、パリ15区の閑静な住宅街。

2018年のオープン翌年に早くもミシュラン一つ星を獲得し、パリでも話題を集めている人気レストランです。

同じく15区内のエッフェル塔近辺には姉妹店『Neige d’été(ネージュ・デテ)』があり、2016年にミシュラン一つ星を獲得しています。

PILGRIM
閑静な住宅街の一角にある『PILGRIM』
MICHELIN 2021のプレート
入口には、MICHELIN 2021のプレートが掲げられて
店内はパリの建築物とマッチ
店内からのビュー。さりげなく飾られた花々がパリらしい街並みにマッチ

29歳の若さでメインシェフに抜擢

今回訪ねた北野ゆりかシェフが『PILGRIM』のメインシェフとなったのは、コロナ禍中の2021年のこと。

日本ではシェフ経験がないとのことですが、世界で最もハードルの高いパリで着実にキャリアを積み重ねられご活躍をされているのですから、食の世界でトップを目指されている方にとりましても羨望の的ではないでしょうか。

そして、29歳の若さでミシュラン星付きレストランのメインシェフに抜擢。

才能もさることながら、そこには並々ならぬ努力やご苦労があったことと思います。

北野ゆりかシェフ

競争厳しい世界で奮闘されている女性ですので、さぞ強いものを持たれている方と思っておりましたら…

お目にかかりインタビューをさせていただくうちに、お写真通りのおだやかであたたかみのある雰囲気にすっかり時を忘れてしまうほど。和やかにお話が弾みました。

北野ゆりかシェフ 略歴

北海道の調理師学校で調理師免許取得後、2012年渡仏。

レストランモリエール(ガストロノミー3つ星レストラン/日本)、Geranium(ガストロノミー3つ星レストラン/デンマーク)を経て、Passage53(ガストロノミー2つ星/パリ)部門シェフ、Clamato(ビストロタパス/パリ)部門シェフ、Noglu Saintonge(レストラン/パリ)スーシェフ、Margo(レストラン/パリ)メインシェフへ。
2021年2月、Pilgrim(ガストロノミー1つ星レストラン/パリ)メインシェフに就任。

2019~2020年、S.Pellegrino Young Chef Compétition(世界サンペレグリノヤングシェフコンペティション)にて受賞。
Forbes(フォーブス)2020* Forbes Under 30 Europe Arts&Culture受賞。

厨房
厨房にて、さまざまな国のスタッフと奮闘される北野ゆりかシェフ
視界に入る構造
オープンキッチンの迫力ある店内。スタッフの軽快な動きにみとれます
スタイリッシュかつ、清潔感溢れる内装
スタイリッシュかつ、清潔感あふれる内装
羽ばたき続けるゆりかさん

しなやかに羽ばたき続けるゆりかシェフに興味深々。早速さまざまな質問をさせていただきました。

北野ゆりかシェフ × MariMaeda インタビュー

MariMaeda(以下、Mari)―――
PILGRIMのメインシェフになられた経緯を教えて下さい。

北野ゆりかシェフ(以下、北野シェフ)―――
オーナーシェフの西シェフにお誘いを受けました。

Mari―――
ヘッドハンティングですね。その時のお気持ちをお聞かせいただけますか。

北野ゆりかシェフ

北野シェフ―――
何年も前に『Neige d’été』で1ヶ月だけエキストラで働いたことがあり、それがきっかけで何度かお誘いを受けていました。

前職(レストラン『Margo』メインシェフ)では、一人だけで作る料理に限界を感じていました。西シェフに『PILGRIM』メインシェフのお話しをいただいたのはちょうど、もっと自分の料理の幅を広げるためにまたイチから三つ星の大きなレストランで働いて料理を勉強したい、と退職を決断したタイミングのことでした。

オファーはとてもうれしかったものの、イチから勉強すると決断した後だったのでとても悩み、また、まだ未熟な状態で責任ある立場で働いても大丈夫なのだろうか?との不安もありました。

…ですが、せっかくのチャンス!との思いで、『PILGRIM』にて働くことを決めました。

Mari―――
フランス料理人として本場のパリでご活躍されていますが、さまざまなジャンルの料理のなかで、なぜフランス料理を選ばれたのでしょう。

芸術的なお料理1
スペイン産イベリコ豚の炭火焼き、根パセリのコンフィ、ケール、柿のグリエ
提供:PILGRIM

北野シェフ―――
子供の頃にフランス料理のレストランに行った際、店内の雰囲気がステキでお皿の上の料理も美しく、またとてもおいしくて感動した記憶があります。そして、フランス料理はとても自由な表現ができることにも魅力を感じました。

Mari―――
パリのレストランでお仕事をする魅力はどんなところにありますか。

北野シェフ―――
フランス全土から毎日届く、フランス産のフレッシュな食材を使うことでしょうか。
またさまざまな国の人たちと働けることによって、多種多様な文化を感じられることも魅力のひとつです。

Mari―――
パリでお仕事をされて11年目になられますが、得意とする食材や料理を教えていただけますか。

北野シェフ―――
大地の物と海の物を組み合わせる料理(Terre et Mer)が好きです。

Mari―――
フランス人の味覚と日本人の味覚の違いは、どんなところだと思いますか。

北野シェフ―――
食べたことがないものに対してとても積極的なところでしょうか。

心ときめくサービス

Mari―――
北海道ご出身と伺っています。
おいしい食べ物が多い土地ですが、北海道で育った環境が現在のゆりかシェフのお仕事に影響していることはありますか?

北野シェフ―――
得意な食材とも重なりますが、北海道の大地の物と海の物を子供の頃からたくさん食べてきたので、自然と自分の料理にも取り入れることが多くなりました。

利尻昆利を敷く
北海道の名産・利尻昆布を敷いたアートな盛り付け

Mari―――
PILGRIMで出されている料理に関して、日本人シェフとしては、何を大切にしていらっしゃいますか?

北野シェフ―――
食材本来の味、生産者の気持ち、またそのテロワール(風土感)を感じていただけるような料理を心がけています。

料理1
お米と青のりのチップス、ムール貝、チョリソーのマヨネーズ、海老のコンソメ、エストラゴンのオイル 天麩羅

Mari―――
フランス料理に和の食材を使用されていますが、主にどのような食材が多いですか?

北野シェフ―――
お米や生わさび、柚子などを使用しています。

料理2
立体感があり、ダイナミックで感動的な演出
料理3
海老の殻のから揚げがユニーク。海老のスープも美味でした
白ワインとともに
白ワインとともに

Mari―――
伝統的な和文化の世界とフランス料理の世界には、何か共通するものがありますか?

北野シェフ―――
食材本来の味を大切にすること。また、長い伝統と豊かな文化があることです。

インタビューの続き

Mari―――
シェフになってうれしいと感じるのは、どのような時ですか?

北野シェフ―――
お越し下さったお客様が、とても喜んで帰られた時ですね。

笑顔が素敵なゆりかさん
笑顔が素敵なゆりかシェフ

Mari―――
コロナ禍でレストラン業界も大変な状況ですが、現在の思いや、今後の抱負について教えて下さい。 

北野シェフ―――
コロナが終息して世界中のお客様が戻られた際に持ち味を最大限表現できるよう、日々の営業とともに、常に新作メニューを考える時間を作っています。
料理を通じてみなさまに喜んでいただけるよう、飲食店業界を盛り上げていきたいです。

Mari―――
着物をお召しになることはありますか?

北野シェフ―――
実は、着物を着たいという気持ちがありパリにも持ってきています。
ただまずは着付けを習うところから…と思うとなかなか時間を作ることができず、残念ながらまだ一度も着ていません。

Mari―――
そうなのですね!どのような着物をお持ちになられているのでしょうか。

北野シェフ―――
訪問着です。パリでお茶を習いたいと思ったのと、着物を気軽に着ることができたらいいなと持ってきました。

Mari―――
着物について、パリ生活が長いシェフとしてはどう思われますか?

北野シェフ―――
やはりその華やかさに魅了されますね。
海外に誇れる文化のひとつでもあるので、素敵に着飾ってご来店くださるお客様がいらしたらとてもうれしいですね。

“巡礼者”の名のもとに

芸術的なお料理2
タラの炭火焼き、クレソンムール貝のソース、イカグラニースミスのサラダ、ベルガモットのコンディモン
提供:PILGRIM

芸術的なお料理3
ハマチといちごのタルタル、ビーツのピクルス、ティムットペッパー
提供:PILGRIM

フランス語で巡礼者

「PILGRIM」とは、フランス語で巡礼者のこと。

世界中を旅する巡礼者が自分自身の発見に至ることを望むように、料理の世界で提供できるすべての驚きを探求し、発見したいという思いが込められています。

世界中が注目するパリの星付きレストランにあって、日本人の繊細な美意識をフランス料理のなかに表現しようとする北野ゆりかシェフに、これからも注目が集まります。

後編では、引き続き『PILGRIM』店内の様子や、レストランのあるPASTEUR界隈の風景をお届けいたします。どうぞお楽しみに。

後編もお楽しみに

撮影/助友利矢子

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