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『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』 国立新美術館「きものでミュージアム」 vol.8

『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』 国立新美術館「きものでミュージアム」 vol.8

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ニューヨークから国立新美術館に珠玉の名画65点が!そのうち46点もの作品が日本初公開とのこと。ラファエロ、レンブラント、フェルメールからポスト印象派まで…必見の美術展です。恒例の招待券プレゼントもお見逃しなく!

ポンペイ展

紀元79年、イタリアのヴェスヴィオ山で大規模な噴火が発生。ローマ帝国の都市ポンペイが飲み込まれました。今回、ナポリ国立考古学博物館からポンペイ遺跡の名品がかつてない規模で来日。「ポンペイ展の決定版」ともいえる迫力の展覧会が東京国立博物館にて開催されています!恒例、招待券プレゼントもお見逃しなく。

主要作品が一挙来日

今回は、国立新美術館で開催中の『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』をご紹介します。

※本コラム内の美術作品の写真につきまして、各美術館プレスより撮影および掲載の許諾を得て使用しております。
「メトロポリタン美術館展」東京展ポスター

「心奪われる美の至宝、来日」

アメリカ・ニューヨークのメトロポリタン美術館は、1870年に創立され、先史時代から現代まで、5000年以上にわたる世界各地の文化遺産を包括的に所蔵しています。
今回は、ヨーロッパ絵画部門から、選りすぐられた珠玉の名画65 点(うち46 点は日本初公開)、15世紀の初期ルネサンスの絵画から19世紀のポスト印象派まで、西洋絵画の500年の歴史を彩った巨匠たちの傑作が、一挙来日します。
フラ・アンジェリコ、ラファエロ、クラーナハ、ティツィアーノ、エル・グレコから、カラヴァッジョ、ジョルジュ・ド・ラ・トゥール、レンブラント、 フェルメール、ルーベンス、ベラスケス、プッサン、ヴァトー、ブーシェ、そしてゴヤ、ターナー、クールベ、マネ、モネ、ルノワール、ドガ、ゴーギャン、ゴッホ、セザンヌまで、豪華なラインナップです!

展示は時代順に3章で構成されます。

I.信仰とルネサンス
II.絶対主義と啓蒙主義の時代
III.革命と人々のための芸術

メトロポリタン美術館正面入口
メトロポリタン美術館正面入口
© Floto+Warner for The Metropolitan Museum of Art

何はともあれレンブラント

「一番好きな画家は?」と聞かれれば、私は迷うことなく「レンブラント!」と答えます。

メトロポリタン美術館の想い出
メトロポリタン美術館の想い出

今をさかのぼること30数年前、初めてメトロポリタン美術館を訪れた時のこと。
私はレンブラント・ファン・レインの《ホメロスの胸像を見つめるアリストテレス》を観て、雷に打たれたようになりました。初めて観た本物のレンブラントは、印刷の絵とは全く違い、圧倒的なパワーを持っていました。微妙な光と影の描写、繊細な表情、細密に描かれた洋服、暗い背景もなんだか吸い込まれそう…一気に惹き込まれてしまいました。

メトロポリタン美術館には、レンブラント以外にも、美術に疎い私でも見覚えのある絵の「本物」が至るところにあり、感動の連続、もう目が回りそうだったのを覚えています。

それまで美術館には、ほとんど行ったことがありませんでした。初めて行ったメトロポリタン美術館で本物の芸術作品の持つ力に気付いて美術鑑賞に目覚め、それからは機会をみつけて美術館に行くようになったのです。そしてその数年後には、ニューヨーク中の美術館を巡る一人旅もしました。本当に楽しく充実した旅でした。

そんなわけでメトロポリタン美術館とレンブラントは、私にとって特別な存在なのです。

前置きが長くなりました。今回、レンブラント作品は、《フローラ》が来日しています。

レンブラント《フローラ》
レンブラント・ファン・レイン《フローラ》
 1654年頃 ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Gift of Archer M. Huntington, in memory of his father, Collis Potter Huntington, 1926 / 26.101.10 展示風景

フローラは、古代ローマ神話の春と花と豊穣を司る女神。ボッティチェリの《春》やティツィアーノの《フローラ》など、さまざまな画家の作品にも描かれています。

レンブラントの《フローラ》は一見、女神というより普通の女性に見えるのですが、細かく描きこまれた洋服のひだや帽子の花の輝き、真珠のネックレスとイヤリングの光沢感などが美しく、まるでほんのりと発光しているかのよう。少し寂しそうに見える表情にも惹き込まれます。花を持った右手を差し出していますが、思わず両手を出して受け取りたくなります。

やはりレンブラントの作品が大好きです。

貴重なルネサンスの絵画

15、6世紀ルネサンスの名画をこれほど一度に観られる機会はめったにありません。ずらりと並ぶ様は圧巻です。

なかでも目を引いたのは、カルロ・クリヴェッリ《聖母子》。

カルロ・クリヴェッリ《聖母子》
カルロ・クリヴェッリ《聖母子》
 1480年頃 ニューヨーク、メトロポリタン美術館 The Jules Bache Collection, 1949 / 49.7.5 展示風景

静謐という言葉がぴったりで、なんと高貴な表情なのでしょう…

聖母マリアのほっそりした指とキリストのふっくらした脚の対比が印象的です。

聖母の洋服や二人の頭部円形飾りの宝石は、大変細かく描きこまれています。キリストが手に抱く鳥はゴシキヒワで”無垢”の象徴、大きなハエは”罪”の象徴だそう。上にかかっているリンゴときゅうりが大きくて、不思議な印象を与えます。キリストが座る手すりの大きなひび割れも気になります。

こちらは、額装もとても特徴的なのでぜひご注目を。額装は画集やネットの画像では観られないもの。ぜひ美術館で実物を観ていただきたいです。

ほかにも、フラ・フィリッポ・リッピ《玉座の聖母子と二人の天使》とヘラルト・ダーフィット《エジプトへの逃避途上の休息》、ディーリック・バウツの《聖母子》も聖母子を描いています。

これらを比較して観られるのも大変興味深く、とても贅沢なことですね。

フラ・フィリッポ・リッピ《玉座の聖母子と二人の天使》
フラ・フィリッポ・リッピ《玉座の聖母子と二人の天使》
 1440年頃 ニューヨーク、メトロポリタン美術館 The Jules Bache Collection, 1949 / 49.7.9 展示風景
ヘラルト・ダーフィット《エジプトへの逃避途上の休息》
ヘラルト・ダーフィット《エジプトへの逃避途上の休息》
 1512–15年頃 ニューヨーク、メトロポリタン美術館 The Jules Bache Collection, 1949 / 49.7.21 展示風景
ディーリック・バウツの《聖母子》
ディーリック・バウツ《聖母子》
 1455–60年頃 ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Theodore M. Davis Collection, Bequest of Theodore M. Davis, 1915 / 30.95.280 展示風景

《パリスの審判》では、3人の女神が異なる角度で描かれています。

しなやかに美しい肢体に魅了され、細緻に描きこまれた背景にも惹き込まれました。

ルカス・クラーナハ(父)《パリスの審判》
ルカス・クラーナハ(父)《パリスの審判》に見入る
展示室風景
「メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年」 2022年 国立新美術館 展示風景
展示室風景
「メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年」 2022年 国立新美術館 展示風景

17世紀の絵画

会場にて、カラヴァッジョ(本名 ミケランジェロ・メリージ)の《音楽家たち》と、ジョルジュ・ド・ラ・トゥール《女占い師》が並ぶさまは、ぜひともご覧いただきたいポイント。

カラヴァッジョ《音楽家たち》
カラヴァッジョ(本名 ミケランジェロ・メリージ)《音楽家たち》
 1597年 ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Rogers Fund, 1952 / 52.81 
展示風景
ジョルジュ・ド・ラ・トゥール《女占い師》
ジョルジュ・ド・ラ・トゥール《女占い師》
 おそらく1630年代 ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Rogers Fund, 1960 / 60.30 展示風景

またここ最近は、ヨハネス・フェルメールがとりわけ大人気。
作品が来日すると必ずといっていいほど、その美術展のメインビジュアルとしてポスターや図録の表紙を飾っていますが、今回は違います。

それでも《信仰の寓意》が素晴らしい作品であることは間違いありません。

ヨハネス・フェルメール《信仰の寓意》
ヨハネス・フェルメール《信仰の寓意》
 1670–72年頃 ニューヨーク、メトロポリタン美術館 The Friedsam Collection, Bequest of Michael Friedsam, 1931 / 32.100.18 展示風景

《信仰の寓意》は、フェルメールが描いた数少ない寓意画。

ここに描かれている女性は、白(純潔)と青(天国)の洋服を着てのけぞるような姿勢で、地球儀を足で踏んでいます。この仕草は、カトリック教会が広く世界を支配することを示唆しているといわれています。

床に転がるかじりかけのリンゴ(原罪の隠喩以下同)と教会の「隅の親石」(キリスト)につぶされたヘビ(邪悪な存在)、画中画のキリストの磔刑の図も意味深で、テーブルの上のキリストの処刑像の十字架、聖餐杯、ミサ典書は聖餐式を暗喩しています。

左側にかかるタペストリーと光の粒や、椅子に置かれた青いクッション、女性の下に敷かれた布、それぞれの模様や質感の違いをじっくり見るのも興味深いです。女性の顔が手に比べてとても白っぽいのが気になります。

ターナーを見直す

ターナー《ヴェネツィア、サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂の前廊から望む》
ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー《ヴェネツィア、サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂の前廊から望む》
 1835年頃 ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Bequest of Cornelius Vanderbilt, 1899 / 99.31 展示風景

今回、ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーの《ヴェネツィア、サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂の前廊から望む》を観て驚きました。

「ターナーってこんなにすごかったっけ ?!」と感動してしまったのです。

澄み切った青い空に雲が浮かび、雲のほうが多いにもかかわらず、青空が引き立っています。運河の水は透明感があるのになんとも深みのある色合いで、表面のさざ波や人物や船、両岸の建物が映り込む描写が絶妙。両岸の建物も遠景に行くにしたがって徐々にぼかされていくのがとても奥行きを感じさせます。

とにかく幻想的で、透明感にあふれています。

この絵は、過去に何度か見ているはずなのですが…こんな風に感じるのは初めてでした。

そのほか気になった作品

18世紀以降の作品にも秀作がたくさんあります。
多すぎてひとつひとつ語っていったらきりがありません。気になった作品の画像をあげますね。

エリザベート・ルイーズ・ヴィジェ・ル・ブランとマリー・ドニーズ・ヴィレール
左:エリザベート・ルイーズ・ヴィジェ・ル・ブラン《ラ・シャトル伯爵夫人(マリー・シャルロット・ルイーズ・ペレット・アグラエ・ボンタン、1762–1848年)》
 1789年 ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Gift of Jessie Woolworth Donahue, 1954 / 54.182 展示風景
右:マリー・ドニーズ・ヴィレール《マリー・ジョゼフィーヌ・シャルロット・デュ・ヴァル・ドーニュ(1868年没)》
 1801年 ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Mr. and Mrs. Isaac D. Fletcher Collection, Bequest of Isaac D. Fletcher, 1917 / 17.120.204 展示風景
レオン・ジェローム ピュグマリオンとガラテア
ジャン=レオン・ジェローム《ピュグマリオンとガラテア》
 1890年頃 Gift of Louis C. Raegner, 1927 / 27.200 展示風景
ポール・ゴーギャン《タヒチの風》
ポール・ゴーギャン《タヒチの風景》を見る
ポール・セザンヌ《リンゴと洋ナシのある静物》
ポール・セザンヌ《リンゴと洋ナシのある静物》
 1891–92年頃 ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Bequest of Stephen C. Clark, 1960 / 61.101.3 展示風景

どれも素晴らしい作品ばかりで、鼓動が高まりっぱなしでした。

最後に

本展の作品リストを最初に見たとき、私は軽いめまいを覚えました。これほどの作品群が一時に来日するとは!

今までにいくつも「メトロポリタン美術館」を冠した美術展はありましたが、これほど充実した内容はありませんでした。そして、今後もまれではないかと思います。

現在メトロポリタン美術館では、ヨーロッパ絵画部門常設展ギャラリー改修工事が行われており、そのため今回の規模での来日が実現したそう。全65点と聞くとさほど多くないと思うかもしれませんが、1点1点すべてが名画で小品はありません。クオリティがとてつもなく高いのです。特にルネサンス期の名品が、これほどやってくることはもうないのではないか…とさえ思います!

国立新美術館
国立新美術館

本当に素晴らしい、のひとこと。
もっとゆっくり観たいところを、後ろ髪を魅かれる思いで美術館を後にしましたが、会期中にまた訪れたいと思います。

会期は5月30日までと長いので、状況が落ち着くことを祈っています。時期をみてお出かけください。決して後悔することはありません。そして、普段あまり美術展に行かない人にこそおすすめしたい美術展です。

思えば2年前の3月といえば、久しぶりにニューヨークに行く予定でした。…がコロナ禍であえなくキャンセルに。状況が落ち着いて海外へ自由に行き来できるようになったら、やはり真っ先にニューヨークに行こうと思います。

その日が早く来ることを祈って…

アフターミュージアムは、ブラッスリー ポール・ボキューズ ミュゼへ

ブラッスリー ポール・ボキューズ ミュゼ
©国立新美術館

フレンチの巨匠ポール・ボキューズ氏の正統なお料理をいただけるブラッスリーが、館内にあります。

各種コースやカフェメニューのほか、展覧会とのコラボレーションメニューも人気。美術館の閉館後もご利用いただけますので、ディナーもOK。アイスクリームコーンのような形をした上の部分がレストランになっていますので、眺めも楽しめます。

カフェ、レストラン(夜)
©国立新美術館

この日の装い

この日の装い1

この日のテーマは、「ニューヨークできものを着るなら」。

ニューヨークの街になじむようドレス風コーディネートにしました。

付下げは、NHK『趣味どきっ』にも出演されている着物スタイリストの石田節子さんのショップでレンタル用だったものをいただいて、洗い張りして着ています。
名古屋帯は工芸染匠 成謙の染め帯。名古屋帯はいつも開き仕立てにしています。

帯揚げは貴久樹、銀製の月の帯留めは、Atelier華eのもの。
自作のコットンパールの根付けも、今回はキラキラのものをセレクト。

この日の装い 帯回り
この日の装い コート

まだ寒い日でしたので、衿回りにファーのついたマントを着ていきました。

今回ご紹介の展覧会情報

「メトロポリタン美術館展」ポスター

メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年

国立新美術館 企画展示室1E
https://met.exhn.jp/

日 時:
2022年2月9日(水)~5月30日(月)
10:00-18:00(毎週金・土曜日は20:00まで)
※入場は閉館の30分前まで

休館日:
火曜日(ただし、5月3日(火・祝)は開館)

※混雑緩和のため、事前予約制(日時指定券)を導入します。チケットの詳しい情報は、 展覧会ホームページ のチケット情報をご覧ください。

その他、おすすめの美術展

※日時など変更になる場合があります。おでかけ前に公式サイトなどで最新情報を確認してください。

『宝石 地球がうみだすキセキ』メインビジュアル

特別展「宝石 地球がうみだすキセキ」

国立科学博物館(東京・上野公園) 地球館地下1階 特別展示室
https://hoseki-ten.jp/

日 時:
2022年2月19日(土)~ 6月19日(日)
9時~17時(入場は16時30分まで)
※会期等は変更になる場合がございます。
※ご入場される方はオンラインでの日時指定予約が必要です。

休館日:
月曜日(祝日の場合は翌火曜日休館)
※ただし3月28日、5月2日、6月13日は開館

『ダミアン・ハースト 桜』ポスター

ダミアン・ハースト 桜

国立新美術館 企画展示室2E
https://www.nact.jp/exhibition_special/2022/damienhirst/

日 時:
2022年3月2日(水)~5月23日(月)
10:00~18:00
※毎週金・土曜日は20:00まで ※入場は閉館の30分前まで

休館日:
火曜日 ※ただし5月3日(火・祝)は開館

「メトロポリタン美術館展」ポスター

◆ 読者プレゼント ◆

さて、ここでうれしいお知らせです。
今回は『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』の招待券を5組10名の方にプレゼント!
ぜひ、きものでお出かけくださいね!

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※応募期間:2022年3月17日(木)まで

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