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京友禅サリーで、日本の卓越した技術を誇る手しごとを世界へ

京友禅サリーで、日本の卓越した技術を誇る手しごとを世界へ

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京都市内で、「京友禅サリー」がお披露目されました。展示会場を鮮やかに彩るのは、京都伝統の京友禅で染められた、インドの伝統衣装・サリー。振袖のような華やかな配色に、古典的な文様が描かれています。京友禅の未来への技術継承のため京都府のサポートを受けた、新しい挑戦です。

「京友禅サリー」とは?

めずらしく小雪が舞う1月のある日。京都市内で、「京友禅サリー」がお披露目されました。

展示会場を鮮やかに彩るのは、京都伝統の京友禅で染められた、インドの伝統衣装・サリー。振袖のような華やかな配色に、古典的な文様が描かれています。

京都工芸染匠協同組合主催の新事業分野開発展でお披露目された、京友禅サリー
京都工芸染匠協同組合主催の新事業分野開発展でお披露目された、京友禅サリー

インドは経済大国としての可能性を大きく含んでおり、世界各国にインド文化を持つ人々が生活していることから、潜在的な市場は大規模です。

そこで、京都の職人さんたちの高度な技術によってのみ生み出される洗練された美しさを、サリーというプロダクトに落とし込んで海外に拡めようというのです。

この日は、11社が製作したサリー23枚がずらりと並びました。

サリーは、縫わない1枚の長方形の布を体に巻きつけて着用するのがその特徴。四角い布を身にまとうという意味では日本の着物と似ていますが、「前身頃」にメインの図柄がくる着物と違い、ドレープをつけて左肩にかけた「後ろ姿」に華やかなポイントが出るように図柄が描かれます。

京友禅サリーのチャレンジ

ここまで、どのように作り上げられたのでしょうか。

本展示会の主催者である「京都工芸染匠協同組合」の理事長、竹鼻進さん(タケハナ染匠)にお話を伺いました。

「京都工芸染匠協同組合」理事長の竹鼻進さん(タケハナ染匠)。
京都工芸染匠協同組合」理事長の竹鼻進さん(タケハナ染匠)

「インドのサリーも、日本の着物同様、昔と比べて着用人口が減っていると聞いています。

そんな市場に我々が踏み込むのはおこがましいとも思いつつも、京都府のバックアップを受けてチャレンジさせていただくこととなりました」

すでに、インドの方もご覧になったのでしょうか?どんな反応があったのでしょう。

「京都より先に開催した東京での展示会についてインド大使館にお知らせしたところ、駐日大使ご夫妻、皇子ご夫妻、スタッフの方々とみなさまご来場くださり、『本当に全部手しごとなの?』という感嘆の声をいただきました。

ちょうど大使の奥様がお着物姿で『美しいキモノ』に登場された後という絶好のタイミングで、お話も弾み、当日の様子をすぐに公式ツイッターにあげてくださいました。

そのおかげで、インドで活躍する世界的な日本人YouTuberからも連絡をもらったんですよ」

やさしいエメラルドグリーンが印象的なタケハナ染匠さんの作品には、日本の国家である菊花が大胆にアレンジされています。

松竹梅やカキツバタ、菊花など、あえて和のモチーフをサリーに展開
松竹梅やカキツバタ、菊花など、あえて和のモチーフをサリーに展開。

他の作品にも、松竹梅やカキツバタなど、私たちにとっては着物でおなじみの和のモチーフが描かれています。

「当初は、インドからモチーフを持ってくるアイデアもあったんですよ。
今後、そういうニーズも出てくるとは思うのですが、今回はファーストステージとして、あくまでも我々が着物に使っている和のモチーフをサリーに展開することにチャレンジしました」

伊藤若冲『象と鯨図屏風』をモチーフに
伊藤若冲『象と鯨図屏風』をモチーフに

着物の反物は「小幅」とも呼ばれますが、その名の通り、西洋のテキスタイルに比べて幅が狭く、約36センチ(鯨尺9寸5分)と規格が決まっています。

そのため、以前別コラムにて紹介したサリーは、3反分を縫い合わせて作られていました。

世界に衝撃を与えた民族衣装の融合

優美で美しい「着物」に、なんとか世界の人々のご理解とご関心を持っていただきたいという一途な思いから、2016年、手描き京友禅の図案で生地を制作し、インドの民族衣装サリー(Sally)を制作しました。

今回展示されているのは、たっぷり115センチの広幅生地。さらに、長さ5メートルもある絹の一枚布です。大きさゆえ重くなってしまわないよう、生地の薄さにもこだわりがあります。

竹鼻進さん

この大きな違いに、職人さんたちは苦労されたのではないでしょうか。

「そうなんです。描く図柄の大きさもそうですが、いちばん大変だったのは、道具ですよね。
手描染や引染、地入れなどを行うときに、生地を張り伸ばした状態に保つために欠かせない『伸子(しんし)』という道具があるのはご存知でしょうか。小幅に合わせた長さで湾曲している、特別な竹の棒です。
この、なくてはならない基本の道具を、約3倍の115センチに拡張するのにいちばん難儀しましたね」

今後はどんなふうに展開されていくのでしょう。

「ご覧になった方から、本当にさまざまなお声がけをいただいています。CAさんに着用していただいてはどうだろう、というアイデアにもワクワクします。インドの方からオーダーをいただいて、第2弾、第3弾と続けていき、未来への技術継承に繋げていきたいですね」

「手しごとならではの京友禅の技術を、世界中の方に知っていただく機会になれば」という竹鼻さん。
「手しごとならではの京友禅の技術を、世界中の方に知っていただく機会になれば」という竹鼻さん。

インド宮殿ホテルでの結婚式に

会場には、『きものと』コラムでおなじみのJunko Sophie Kakizakiさんのお姿も。

展示されている作品の一つひとつを興味深くご覧になっている柿崎潤子さん。
展示されている作品の一つひとつを興味深くご覧になっているJunko Sophie Kakizakiさん

なんと4月に、こちらのコラムにも登場したアイシュワリヤ・サワルナ・ニールさんの結婚式に参列されるご予定とのこと。ジャイプールの宮殿ホテルにて、1週間にわたり華やかに開催されるそうです。

Aishwarya & Junko 扉写真

さまざまな美の発見と、日本文化の奥座敷への探求、京都で暮らす女性としての新しい視点を。/The city’s beauty, and the new perspectives I have developed as a woman living here. /我將每個月與大家分享這座城市各種美的發現,以及我作為一個女人生活在京都的新視角。

一つひとつの作品を丹念に見ていかれながら、どうやら「ぼかし染め」の手法を使った作品が気になっていらっしゃる様子。

「ぼかし染め」は、京友禅の数ある技法のなかでも高度な技が必要とされる手法であり、また、えもいわれぬ風情を醸し出すものでもあります。

お話する柿崎さん

「こういった淡い色合いのものに、やはり京友禅らしさ、日本らしさを感じますよね。現地のサリーにはない魅力だと思います」

サリーをご覧になっている柿崎さん

贅を尽くした祝宴にふさわしく、実際に身にまとわれた京友禅サリーはひときわ輝きを放つことでしょう。

さまざまに広がる新規事業開拓

「京うちわ 阿以波」
揃いの反物から生み出された団扇は『京うちわ 阿以波』制作

今回の展示では、サリーの他にも「京手描友禅フルオーダーメイドのドレス生地」「うちわやベッドスローといったインテリア商品」などが新たに発表されました。

こちらもそれぞれ、職人さんたちの高度な技術と洗練された意匠力によって生み出された京友禅の逸品ぞろい。今後、海外市場およびインバウンド向けの商品として、注目が高まりそうです。

濡れ描き友禅の幻想的な表現
濡れ描き友禅の幻想的な表現
思わず息を呑むほど美しい、手描京友禅ならではの繊細な図柄。
藤井友子さん率いる「富宏染工」の作品
染匠市川 市川昌史さん

すらりとした高身長に、ぱりっとした白シャツが目を引く市川昌史さん。京都で三代続く染め元の、今に息づくものづくりを受け継ぎます。当初、個人へのインタビューは…と固辞されておられたところをお願いし、京都御苑の紅白梅を背景にお話を伺いました。

和歌を詠む

4か国語で読める!Junko Sophie Kakizakiさんのコラム
「Junko Sophieの秘伝京都」

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