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錫師 山中源兵衛さん 【YouTube連動・インタビュー編】「紗月がゆく!祇園・人気芸妓が訪ねる京の技」vol.6-1

錫師 山中源兵衛さん 【YouTube連動・インタビュー編】「紗月がゆく!祇園・人気芸妓が訪ねる京の技」vol.6-1

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伝統工藝士の作業場を訪ねるスペシャル企画も最終回が迫ってきました。私たちが最後に伺うのは、現存する日本最古の錫(すず)工房「清課堂」。時代とともにその数が少なくなってきた錫の魅力をたっぷりと、7代目当主の山中源兵衛さんに伺います♪元人気芸妓・紗月さんの、貴重な引退前オフショットも必見です!

芸妓の紗月さん

2021年11月に芸妓を引退した紗月さん。引き祝いには多くのメディアと関係者が集まり、その巣立ちを見守りました。コラム『紗月がゆく!祇園・人気芸妓が訪ねる京の技』を連載する「きものと」編集部も当日は現地へ。引退直前の10月に撮影した”ここだけ”のオフショットも加え、紗月さん引退の模様をお届けいたします。

現存する日本最古の錫工房「清課堂」へ【YouTubeリンク】

約350年続く花街文化を支える職人さんたちの匠技を紹介することで後継者を発掘し、この先も絶えることない花街文化を継承していくお手伝いがしたい!そんな思いから、2020年3月よりスタートしたスペシャル企画番組「紗月がゆく!祇園・人気芸妓が訪ねる京の技」。

祇園甲部の元人気芸妓・紗月さんとともに伝統産業に携わる方々の元を訪れ、ものづくりについての熱いトークを展開。職人技を間近で見て、実際に作業を体験させていただく贅沢な時間を過ごしてまいりました。

「きものと」では、その模様を文章でもお楽しみいただけるオフショット付きの連載を毎月一度お届けしてまいりましたが、ついに来月が最終回となります。

11月1日に芸妓生活に幕を閉じた紗月さん

今回の前編と2月にお届けする後編では、金属工芸“錫(すず)”の世界をクローズアップ!

新春のスペシャルなムードにふさわしい、黒地に梅の花が咲き乱れる小紋に身を包んだ紗月さんが、現存する日本最古の錫工房「清課堂」を訪れます。

「今回は金属工芸のなかでも錫(すず)を主に扱われている工房にお邪魔します。
よくうちも、お料理屋さんで日本酒を頂くときに錫のおちょこなんかを目にするので楽しみです!」

とワクワクしながら撮影に臨む紗月さん。
神社仏閣や宮中御用達の貴重な作品もご紹介いただいているので、動画でもその輝きをご覧ください♪

紗月さんの和姿
1月のムードにふさわしい和姿でご登場
金糸を使った龍村美術織物の名古屋帯が品格を添えて
金糸を使った龍村美術織物の名古屋帯が品格を添えて

柔らかくて加工しやすい錫(すず)

清課堂の看板

京都・寺町二条にお店を構える「清課堂」ですが、今回は3年前から稼働し始めた西ノ京工房に伺います。

清課堂7代目当主の山中源兵衛さんとのツーショット
清課堂7代目当主の山中源兵衛さんとのツーショット

出迎えてくださったのは、錫(すず)師の山中源兵衛さん。
清課堂の七代目当主として、代々引き継がれてきた看板を背負っていらっしゃいます。

キリリと精悍な佇まいながらも、お話しいただくご様子はなんとも穏やかで優しいムード。古い建物を改修した工房はきちんと整えられており、ものづくりへの姿勢が伺われます。

江戸時代後期の天保9年から寺町二条で錫器や銀器といった金属工芸品の製造と販売を行なってきた「清課堂」ですが、創業当時より特に錫を得意としており、店舗で扱っている製品の約8割が錫製品です。

清課堂が手がけた錫製品の数々

こちらにご紹介していただいた製品のほとんどは、山中さんが手がけたもの。
ビールや冷酒を注ぐおちょこやタンブラー、獅子の置き物、茶器や小皿などバリエーション豊かです。

錫はとても柔らかく、他の金属に比べて曲げたり伸ばしたりしやすいことからさまざまな製品に形を変えていきます。

一方山中さんのお話では、「シンプルな形のものほど装飾がない分、手の抜きようがなく意外と難しい」のだとか。

ずらっと並ぶ錫製品の一つひとつに特徴が
ずらっと並ぶ錫製品の一つひとつに特徴が

ここで紗月さんがあることに気づきました。見せていただいた作品はどれも錫を使っているのに、それぞれ色が異なっているのです。

本来錫は、よく私たちが飲食店などで見かけるお酒の器のようにキラリと銀色に輝いているのですが、表面に汚れがついたり手の汗などで化学反応を起こしたりと、使っているうちに風化していくのだそう。

肌触りは冷やっと。これで冷酒を飲むと美味しいんです!
肌触りは冷やっと。これで冷酒を飲むと美味しいんです!

「特に純度の高い錫の場合、時代が経つとだんだん黒っぽくて緑がかった色がついてきます」

こうおっしゃいながら山中さんがみせてくださったのは、およそ80年〜100年前に御祖父様が作られた茶器。茶道具の世界では、このように年季の入った茶器が非常に高価なものとして珍重されてきました。

時の経過と共に緑がかった色に変化した茶器
時の経過と共に緑がかった色に変化した茶器

また表面にうっすらと模様が入った作品もありますが、清課堂ではかなづちを用いた「うちもの」という技法を使っています。

かなづちの金属に当たる部分へあらかじめ模様を彫り込んでおり、それで叩くことによって金属にも同じ模様が入るのです。

かなづちの種類によって表面につく模様が変わる
かなづちの種類によって表面につく模様が変わる
模様を施すかなづちはなんと50種類以上!
模様を施すかなづちはなんと50種類以上!

動画では、山中さんが実際に作業工程を披露してくださっている箇所も。みるみるうちに模様が入っていく爽快さを味わってくださいね♪

生活や歴史が器に刻まれていく

錫の歴史を話す山中さん

奈良時代に日本へ伝わってからお酒やお茶の器として愛用されてきた錫器ですが、江戸時代になるまでは金属自体が非常に高価なもので、特権階級の人しか扱えないものだったといいます。

しかし、のちに日本でも錫の鉱山が開発されるようになり、特に九州の鹿児島でよく採れたという錫。

そこから関西の方にも流通し、庶民の生活がどんどん豊かになっていったことも相まって、江戸時代中期ごろから多くの方が錫器を使えるようになりました。

お話を伺う紗月さん

しかし、第二次世界大戦の時代に突入すると、「金属類回収令」が発令されたことで家庭内にあった金属のほとんどが政府に回収されてしまいます。

「たくさんあったはずの錫がどんどん姿を消してしまい、今の私たちの生活の中ではあまり見なくなってしまった」

山中さんはこう語ります。

京都でも何軒か錫製品を取り扱っているお店が存在していましたが、今では清課堂しか残っていません。

そんななか家業を継いだ山中さんですが、最初は自分が跡を継ぐとは微塵も思っていなかったのだそう。しかし、清課堂に所属していた職人さんたちもだんだんと高齢化して引退。理工系の大学に入り、コンピューターのことしか頭になかったという山中さんですが、跡を継がざるを得ない状況になって知らず知らずのうちにこの世界に足を踏み入れたといいます。

「自分が勉強していたことと全く別の世界に入りました。今でも、芸術的な発想というより、計算したり設計したりという理系の考え方でものづくりを行なっているかもしれません」

山中さんがこの世界に入って一番苦労したのは、ベテランの錫師の多くがすでに引退されていたこと。

直接指導してくれる人が誰もいなかったため、山中さんは引退された方のところに赴いて、口伝えで作り方を教わりました。また、他の金属を扱っている工芸士さんの元へ伺ったことも。

とてつもない労力をかけて、一つひとつ自分の技を磨いてきたのです。

工房の壁は黒板になっており、なにやら設計図が書かれている
工房の壁は黒板になっており、なにやら設計図が書かれている
本来銀色に輝く錫が時間の経過とともに変化を見せていく
他の工房で作られた錫製品も個人的に集められているそう

そんな山中さんが思う錫の魅力は、やはりその特徴でもある“やわらかさ”にありました。

「やわらかいからこそ、使っていると傷がついたり落として凹んでしまったりします。
ですが使っている人の生活や歴史がどんどん器に刻み込まれていくので、その人が持っている器は、その人だけのものなんですよね。
そしてまた、器を見るたびにいろんな出来事を思い出す。経年して変化していくさまが、錫の良いところだと思っています」

山中さんと紗月さん

最初はどれも同じ顔をしている器が、使い方次第で形や輝き方を変えて世界に一つだけの宝物になっていく。

年を重ねる度に経年変化していく錫器が手元にひとつあるだけで、ものを大切にする心が育ちそうです。

撮影オフショット

工房へ伺う前にまずはオフショット撮影から
工房へ伺う前にまずはオフショット撮影から
振り返ってニコリ。今日も素敵な笑顔で
振り返ってニコリ。今日も素敵な笑顔で
打ち合わせも念入りに
打ち合わせも念入りに
カメラに向かって投げキッス
カメラに向かって投げキッス
いつもサービス精神旺盛な紗月さんです♪
いつもサービス精神旺盛な紗月さんです♪
いつも工房の扉を開く前には緊張…!
いつも工房の扉を開く前には緊張…!
お話を伺った場所には清課堂で扱っている製品の他にたくさんの本も並んでいました
お話を伺った場所には清課堂で扱っている製品の他にたくさんの本も並んでいました
錫の歴史に興味津々な紗月さん
錫の歴史に興味津々な紗月さん
撮影は終始和やかな雰囲気で行われました
撮影は終始和やかな雰囲気で行われました
後編では錫工房で作業を見学!溶けた状態の貴重な錫もご覧いただけます
後編では錫工房で作業を見学!溶けた状態の貴重な錫もご覧いただけます

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