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さりげなく都会の喧噪に溶け込む 「歌舞伎へGO!大久保信子先生に聞く着物スタイル」vol.14

さりげなく都会の喧噪に溶け込む 「歌舞伎へGO!大久保信子先生に聞く着物スタイル」vol.14

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年が明け、寒さも本番です。渋谷で、熱気あふれる舞台を楽しみませんか?クドカンこと宮藤官九郎の脚本となれば、歌舞伎になじみのない方も気軽に見られそう。コートの下にわずかな春をしのばせる、そんな楽しみもありそうです。

新年を寿ぐ装い

新しい年のはじめには、歌舞伎座の『壽 初春大歌舞伎』へ参りましょう。新春を前に、ハレの衣裳をととのえる。小物を買い替えたり、新しい半衿を付けたり。そんな時間を持てれば、慌ただしい年の瀬も心豊かに過ごせそうです。きたる年がよい一年になりますように。

胸躍る渋谷・コクーン歌舞伎

年が明け、寒さも本番です。渋谷で、熱気あふれる舞台を楽しみませんか?

クドカンこと宮藤官九郎の脚本となれば、歌舞伎になじみのない方も気軽に見られそうです。

Bunkamuraシアターコクーンで行われる渋谷・コクーン歌舞伎。
古典歌舞伎を読み直し、現代に通じる斬新な演出で話題の作品が登場してきました。第十八弾となる今回は『天日坊(てんにちぼう)』(2月1~26日、7・17日は休演)です。

原作は河竹黙阿弥の『五十三次天日坊』。
串田和美の演出・美術、宮藤官九郎の脚本で、2012年に初演されましたが、これが145年ぶりの上演だったそうです。

鎌倉時代のはじめ、源頼朝の御落胤(ごらくいん)を騙(かた)った天日坊の物語。徳川八代将軍・吉宗時代の御落胤騒動、天一坊事件に材を取っています。

修験者・観音院の弟子である方策(中村勘九郎)は、拾われた子で身元が分かりません。
あるとき、飯炊き・お三婆の死んだ孫が、将軍・源頼朝の御落胤であることを知ります。

方策は、お三婆を殺して証拠の品を奪い、御落胤になりすますことに。天日坊と名乗った方策は、盗賊の地雷太郎(中村獅童)、その女房・人丸お六(中村七之助)と出会い、ともに鎌倉へ向かいます。

いったい自分は何者なのか。方策の自分探しの旅でもありました。

モダンな装いで

原作は古いものですが、この『天日坊』は、トランペットやベースが響くジャズ風の音楽といい、大胆で独特な衣裳といい、現代的な魅力に満ちています。
そんな舞台を見るなら、いつもの歌舞伎鑑賞とは気分を変えて、モダンな装いをしてみませんか?

柄に柄を重ねるのがきものの醍醐味ですが、今回は「無地のきものに、好きな帯」という提案です。

紬でもやわらかものでも、無地のきものに、お気に入りの帯を締めれば、すっきりとした都会的な装いになります。

色無地は気楽に着られない、という方もいらっしゃると思います。場にふさわしくない格下の装いは失礼ですが、上なら文句はないでしょう?
お相手も、いいきもので来てくださった、と嬉しいのではないかしら。

もう少し気軽に着て構わないと考えます。行く場所によって、帯(二重太鼓)や小物(留袖のときのような白の帯締め・帯揚げ)でランクアップすればよいのです。

帯の柄は、幾何学的なもの、格子などは特におすすめです。縞と格子は究極の柄、ともいわれます。

チェックやストライプなら、若い人が多い渋谷の街にもすんなり溶け込むことでしょう。

きものの色はお好みでよいのですが、ジャパンブルーといわれる藍(青)がきれいです。

その昔、日本を訪れた外国人が「日本人はみんな藍色を着ている!」と驚いたそうですが、それくらい日本人にはなじみの深い色なのです。

そして、髪形も、いかにも和装用というものよりは、控えめ、小さめが似合います。
バッグなど持ち物にも意を用い、颯爽とお出かけください。

いつもの洋服感覚を取り入れたコーディネートとなれば、いろいろなアイデアがわくに違いありません。

コートのおしゃれ

厳寒の1月、2月はコートのおしゃれを楽しむ季節です。
ベルベットやフラノ、カシミヤなどの温かな素材から、道行(みちゆき)や道中着の絹ものまで、コートにもさまざまなものがあります。

道行が定番だった昭和のころとは違い、最近は道中着をお召しになる方が増えたように思います。きものと同じ衿の形で、スラリとした着姿が素敵です。

道中着と比べて、道行は少しクラシックに感じられるのでしょうか。
でも、胸元をしっかり留める道行には、襟元がはだけにくいという利点があります。

きものによって、道中着と道行を着分けるの?という質問をいただくことがあります。
コートは道中に着るもの。何を着たっていいんです。

カジュアルだから道中着、フォーマルだから道行、などという決まりはありません。
それぞれの特徴を理解して、お好みのものをお選びください。

また、絹もののコートだけでは、真冬は少し寒いかもしれません。
そんなときは、大判のショールがあるといいですね。洋服のときと兼用で構いません。

カシミヤなどお気に入りのショールで温かく過ごしましょう。結城紬素材のものも、ほっこりとした温もりを感じられそうです。

おすすめは黒の道中着

コートを一枚、手に入れるなら、大きめの地紋がある綸子の黒の道中着がおすすめです。ビロードも良いですね。汚れも目立たず、ハレにもケにもお召しになれ、何にでも合わせられます。

ビロードコート地「蔦葉」
ビロードコート地「蔦葉」
ビロードコート地「雪輪」
ビロードコート地「雪輪」

もちろん、黒のきものにも似合います。最近は、留袖で外を移動する機会は少ないと思いますが、黒留袖に黒の道中着というのは、なかなかよいものです。

洋服でも、黒のコートが重宝するのと同じです。
   
コートの丈にも気を配りましょう。道中着でも道行でも同じ、膝裏程度の丈が適当です。

現在ほど暖房が効いていなかったころは、羽織の上にコートを着たものです。今でも、雪が降るような寒さのときに重ね着をすることもあるでしょう。コートの裾から羽織がのぞかないよう、羽織より5分(約2センチ)長く仕立てます。

寒くても、年が明けると、心は春へと向かっていきます。コートの下にわずかな春をしのばせる、そんな楽しみもありそうです。

よい一年でありますように。

監修:大久保信子
文:時田綾子

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