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『奥村土牛―山﨑種二が愛した日本画の巨匠 第2弾―』 山種美術館 「きものでミュージアム」vol.6

『奥村土牛―山﨑種二が愛した日本画の巨匠 第2弾―』 山種美術館 「きものでミュージアム」vol.6

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山種美術館『奥村土牛―山﨑種二が愛した日本画の巨匠 第2弾―』。《醍醐》や《鳴門》などの代表作や院展出品作を中心に、土牛の画業をたどります。きもの割引のある同館は、きものでミュージアムにぴったり!恒例、招待券プレゼントもお見逃しなく。

きものでミュージアム_民藝の100年

今、「民藝」が熱い!!「ローカルであり、モダンである。」のコピーが気になる柳宗悦没後60年記念展「民藝の100年」が、東京国立近代美術館にて開催されています。まだ行けていなかったわ…という方にぜひ。恒例の招待券プレゼントもございますよ!

きもの特典がある山種美術館へ

今回は、山種美術館で開催中の『【開館55周年記念特別展】奥村土牛―山﨑種二が愛した日本画の巨匠 第2弾―』をご紹介します。

※本コラム内の美術作品の写真につきまして、各美術館プレスより撮影および掲載の許諾を得て使用しております。
『奥村土牛 ―山﨑種二が愛した日本画の巨匠 第2弾―』ポスター

公式サイトより

山種美術館では開館55周年を記念し、当館がその代表作を多数所蔵している日本画家・奥村土牛(1889-1990)の展覧会を開催します。当館の創立者・山﨑種二(1893-1983)は、「絵は人柄である」という信念のもと、同時代の画家と直接交流しながら作品を蒐集しました。特に土牛とは親交が深く、画業初期の頃から「私は将来性のあると確信する人の絵しか買わない」と土牛本人に伝え、その才能を見出して支援し、約半世紀にわたり家族ぐるみの交際を続けました。現在、当館は135点に及ぶ屈指の土牛コレクションで知られています。

土牛は16歳で梶田半古(1870-1917)に入門、兄弟子にあたる小林古径(1883-1957) のもとで研鑽を積みます。38歳で院展初入選と遅咲きながら、40代半ばから名声を高め、101歳におよぶ生涯を通じて、日本画制作に取り組みました。本展では、《醍醐》や《鳴門》などの代表作をはじめ、活躍の場であった院展出品作を中心に、土牛の画業をたどります。

山種美術館は、山﨑種二氏(山種証券(現SMBC日興証券)創業者)が個人で集めたコレクションをもとに、1966年7月、日本初の「日本画専門」美術館として開館しました。

きものファンのみなさま、ご存じでいらっしゃいますでしょうか。
山種美術館ではなんと、きもの割引が実施されているのです!「きものでミュージアム」にぴったりの美術館ですね。

記事最後のチケットプレゼントは、会期の兼ね合いで応募期間が短くなります。どうぞお見逃しなく!

展示室入口前で

第1章 土牛芸術の礎

《甲州街道》1924年
《甲州街道》1924年35歳の時の作品

奥村土牛(おくむらとぎゅう)は、梶田半古(かじたはんこ)と小林古径(こばやしこけい)という二人の師から、写生への厳格な姿勢、色彩に対する鋭敏な感覚、作品の品格の重要性など、土牛芸術の核となる要素を学びました。

本章では、大正期から昭和20年代にいたる時期の作品を展示しています。

38歳で院展初入選と遅咲きながら、40代半ばから名声を高めた土牛。

この章には60代前半くらいまでの作品が並んでいますが、101歳まで生き、生涯描き続けた土牛、画家としての礎を築いた時期の作品です。

《雨趣》1928年
《雨趣》1928年
3羽のアンゴラ兎が描かれた《兎》1936年の作品
3羽のアンゴラ兎が描かれた《兎》1936年の作品
2羽の白と黒の兎が描かれた《兎》1938年の作品
2羽の白と黒の兎が描かれた《兎》1938年の作品

この頃の作品は、シンプルな構図に、動物や鳥・草花そのものを描いているものが多くみられます。絵の対象を慈しみながら描いたことが伝わってくる作品の数々ですね。

作品名も、同じ《兎》の絵が3枚ありました。

どれもかわいらしいのですが、それぞれの表情が違います。3羽のアンゴラ兎のふわふわ毛並みが印象的に描かれている1936年(上左)の作品に比べると、1938年(上右)と1947年頃の作品(下)は目と表情に重きを置いて描いているようです。

黒い兎と赤い花が描かれた《兎》1947年頃の作品
黒い兎と赤い花が描かれた《兎》1947年頃の作品

それぞれに味わい深いのですが、黒い兎と赤いポピーの花が描かれたこちらが一番かわいらしいと思いました。

花と兎の色の対比が美しいのですが、さらには目がとにかく愛らしく、土牛の優しいまなざしを感じます。

こちらは、戦後信州を引き上げて東京に戻った翌年、庭に咲いた花を描いたもの。

それぞれ美しい花なのですが、なぜかもの悲しさを感じてしまいました。まだ点々と焼け野原が残っていたころの作品だからでしょうか。

《花》 1952年
《花》1952年
展示室内風景
展示室内風景

第2章 土牛のまなざし

写生を重視した土牛は、形を表面的に写すのではなく「物質感、つまり気持ちを捉える事」が大切だと述べ、描く対象の本質や生命感を表現することに努めたそう。
色彩についても、外観の色だけでなく「精神を意味したものでなければならない」と考えました。

本章では、「何か開放されたような気持になって、自由にのびのびと制作できるような気分」になったと、旺盛に制作へ取り組み、数多くの代表作を生み出した60代から70代にかけての作品を展示しています。

《水蓮》 1955年
《水蓮》1955年

水蓮も美しいのですが、魚や水草そして蓮も描かれている鉢のほうに目が行ってしまいます。

水蓮のそばに本物の魚が泳いでいるように見えます。

この頃になると、描く対象物の全体を描くのではなく、部分をクローズアップした迫力のある構図が増えています。

《城》は天守閣を下から仰ぎ見る構図ですが、白い壁が目の前に迫ってくるよう。上部に見える青空が非常に印象的です。

《城》1955年
《城》1955年
《門》1967年
《門》1967年

《城》のほか《門》や《茶室》も一部分をクローズアップし、画面いっぱいに描いています。

迫力と筆の勢いを感じると同時に、絵に奥行きが増し色の使い方が深みを増したように思います。

《茶室》
《茶室》1963年
《鳴門》1959年
《鳴門》1959年

《鳴門》を見たときには、思わず渦潮に引きこまれるような錯覚を覚えました。 

土牛は、船上から妻に帯をつかんでもらいながら(!)何十枚も写生し、それをもとに、下絵は作らず作品を完成させたそうです。船上で土牛が感じた渦潮の迫力が、しっかりと絵に描きこまれています。

色もとても深みがあり、勢いがあります。音まで聞こえてきそうなほど。この臨場感は…ぜひ実物を間近で鑑賞いただきたい作品です。

《那智》1958年
《那智》1958年

《鳴門》の左には、《那智》が並びます。

写真で絵のおおよそ大きさをお分かりいただけますでしょうか。サイズ感もさることながら、とにかく迫力があります。

おそらく《鳴門》と2枚並べて展示されていることによる相乗効果で、一層迫力を増しているのでしょう。水しぶきの描写は特筆すべきものですし、また周囲の奥行感も稀有な表現に感じました。

展示室内風景
展示室内風景

第3章 百寿を超えて

《富士宮の富士》1982年
《富士宮の富士》1982年

私の仕事も、やっと少しわかりかけてきたかと思ったら、いつしか八十路を越してしまった。(中略)私はこれから死ぬまで、初心を忘れず、拙(つたな)くとも生きた絵が描きたい。むずかしいことではあるが、それが念願であり、生きがいだと思っている。
芸術に完成はあり得ない。要はどこまで大きく未完成で終わるかである。

「私の履歴書 奥村土牛 26」『日本経済新聞』 1973年10月7日

84歳で、このように述べた土牛。
尽きることのない制作意欲を抱き続け、100歳を超えても制作に取り組み、生涯をかけて画業に専心しました。

こちらでは、晩年の作品を中心に、生涯絵画と向き合い続けた土牛の歩みが紹介されています。

《醍醐》1972年
《醍醐》1972年

《醍醐》は、京都醍醐寺三宝院のしだれ桜を描いたもの。

桜の幹が大きく描かれ、実際に描かれている桜の花は多くないにもかかわらず、絵の外にはみ出した部分の桜も感じることができます。

迫力ある桜木の姿。
何層にも重なった花弁の色も美しく、周りの景色も桜色に染まって見えます。

《吉野》1977年
《吉野》1977年

吉野山の桜は、200種3万本に達すると言われています。

土牛の《吉野》では、右手前近景の桜から遠景の山の奥まで桜でおおわれているのがわかります。一見淡い表現に見えるのですが、何層も塗り重ねられていて力強さを感じます。

吉野山の桜をまだ観たことはないのですが、実際に目にしたらどんなに感動的な風景なのでしょう…。土牛の感動が伝わり、ぜひとも現地を訪れてみたい思わせる作品です。

特集 土牛と山﨑種二

山﨑種二と奥村土牛
山﨑種二と奥村土牛

山種美術館創立者の山﨑種二は、1935年頃から約半世紀にわたり、土牛と家族ぐるみで交際し、支援を続けました。

長年にわたる交流の結果、山種美術館には多数の土牛作品が収蔵され、全部で135点を数えます。こちらの展示室では、特に美術館との関わりが深い作品が展示されています。

《山中湖富士》1976年
《山中湖富士》1976年
《奥村土牛から山﨑種二宛書簡(牛)》
《奥村土牛から山﨑種二宛書簡(牛)》
《寅》1986年
《寅》1986年
《戌年》1982年
《戌年》1982年
《山なみ》1987年 98歳のとき
《山なみ》1987年 98歳のとき

土牛は何枚も様々な富士山を描いています。

98歳で描いた富士山《山なみ》を観て感動しない人がいましょうか…
肉体的には衰えても生涯絵に対する情熱を持ち続け、描き続けたこと。技巧を超えて想いの力を感じます。

最後に

《白寿記念》1987年 墨書
《白寿記念》1987年 墨書

土牛の画力は、100歳を超えても衰えませんでした。

100歳を迎えた1989年には、NHK特集番組「百歳の富士 奥村土牛」が制作されています。
そこに映る土牛は若いころと変わらぬ情熱を持った方であり、描くことへの尽きることない意志とパワーに心が動かされました。

晩年の土牛に比べましたら、まだまだ自分は若いのだからもっともっと頑張ろう!そんなパワーをいただける美術展でした。

アフターミュージアムにほっと一息

土牛の絵にちなんだ和菓子5種
土牛の絵にちなんだ和菓子5種

館内のCafe椿では、季節や展覧会にちなんだオリジナルメニューを楽しめます。今回は、青山の老舗菓匠「菊家」に特別オーダーした、土牛の絵にちなんだ和菓子5種が用意されています。

お抹茶とともに目でも楽しめる和菓子をいただいて、絵の余韻にひたるのもいいですね。和菓子は2個からお持ち帰りもできます。

この日の装い

この日の装い_帯回り

この日は日本画のイメージで、シンプルシックに。

「羽織の堀一」の羽織地で作った大きな雪輪柄小紋に、西陣「洛陽織物」の焼箔の帯を合わせました。

帯締めは「道明」の変わり厳島組。帯揚げは貴久樹。コットンパールとタッセルの根付けは自作です。

京都きもの市場 洛陽織物 商品一覧
京都きもの市場 道明 商品一覧

展示室入り口前で戸室美奈さんと

「きものでミュージアム」コラム内の写真は、美術館側からご提供いただくものと、展示風景など、内覧会にて許可を得て自分で撮影しているものがあります。

また私が映っている写真はいつも、友人の戸室美奈さんに撮ってもらっています(vol.1をのぞく)。

いつもありがとう!この日はきもので来てくれたので一緒に♪

今回ご紹介の展覧会情報

『奥村土牛 ―山﨑種二が愛した日本画の巨匠 第2弾―』ポスター

【開館55周年記念特別展】
奥村土牛 ―山﨑種二が愛した日本画の巨匠 第2弾―

山種美術館
https://www.yamatane-museum.jp/

日 時:
2021年11月13日(土)~2022年1月23日(日)
開館時間 10:00~17:00

休館日:
月曜日(1/3(月)、1/10(月・祝)は開館、1/11(火)は休館)

※日時など変更になる場合があります。おでかけ前に公式サイトなどで最新情報を確認してください。

その他、おすすめの美術展

※日時など変更になる場合があります。おでかけ前に公式サイトなどで最新情報を確認してください。
企画展「文様のちから-技法に託す-」※広報画像

企画展「文様のちから-技法に託す-」

根津美術館
https://www.nezu-muse.or.jp/
※オンライン日時指定予約制・詳細はHPをご覧ください。

会 期:
2022年1月8日(土)~2月13日(日)
午前10時~午後5時(入館は4時30分まで)

休館日:
月曜日(2022年1月10日(月・祝)は開館、翌11日(火)休館)

茶地立涌雪持松模様縫箔 日本・桃山~江戸時代 17世紀 根津美術館蔵 ※広報画像
茶地立涌雪持松模様縫箔 日本・桃山~江戸時代 17世紀 根津美術館蔵
紅浅葱段籠目草花模様唐織 日本・江戸時代 19世紀 根津美術館 ※広報画像
紅浅葱段籠目草花模様唐織 日本・江戸時代 19世紀 根津美術館蔵
クリスチャン・マークレー トランスレーティング[翻訳する]ポスター

クリスチャン・マークレー トランスレーティング[翻訳する]

東京都現代美術館
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/christian-marclay/

会 期:
2021年11月20日(土)-2022年2月23日(水・祝)
10:00-18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)

休館日:
月曜日(2022年1月10日、2月21日は開館)、1月11日

『奥村土牛 ―山﨑種二が愛した日本画の巨匠 第2弾―』ポスター

◆ 読者プレゼント ◆

さて、ここでうれしいお知らせです。
『奥村土牛―山﨑種二が愛した日本画の巨匠 第2弾―』の招待券を5組10名の方にプレゼント!
ぜひ、きものでお出かけくださいね!

下記リンクより、お使いのSNS経由にてご応募くださいませ。

◆Facebook
https://www.facebook.com/kimonoichiba/

◆インスタグラム
https://www.instagram.com/kimonoichiba/?hl=ja

◆Twitter
https://twitter.com/Kimono_ichiba

※応募期間:2022年1月6日(木)まで

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