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ナレーター 近藤サトさんの愛用品 超絶技巧へのリスペクト。

超絶技巧へのリスペクト。 ナレーター 近藤サトさんの愛用品

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前・後編と続いたインタビューでは、着物にまつわる思い出話から着物のこれからについての考えなど、さまざまなお話を聞かせてくださいました。言葉の端々から着物文化への愛を感じさせる近藤さん、今回は、インタビューの際にお持ちいただいたご愛用の品々を紹介いたします。

”近藤サト””牛首紬””白根澤”

テレビでお見かけする着物姿が印象的な近藤サトさん。フリーアナウンサー、ナレーターとして活躍するなか、メディアを通じて着物の魅力を精力的に発信されています。今回は近藤さんに、愛する着物文化について感じていることをお話しいただきました。

宮古島の紬

「宮古島といったら上布だと思うでしょ。でもこれは宮古島の紬なんです。単衣ですね」

”近藤サト””着物””宮古紬”

「もう何十年も前に廃業してしまったところの紬で、宮古島の方から譲っていただいたんです。
昭和初期のものなのかな、最後の一反だったのかもしれません、シミも浮いていたりして。このシミも経年によるものだと思うので、もうとれないでしょうね。

こんな繊細なものを宮古島で織っていたんだっていうのが驚きで、大事にしているんですけど、いかんせん、太るとせまい(笑)。反物が昔のものだから細かったですし短かったんですね。仕立屋さんには、これ何ですか?って言われました。

沖縄って米が獲れないかわりに、絹の反物を上納していたんですよね。たぶんその名残で織られていたんだけれども、宮古では織り手がなくなって絶滅してしまったと聞いています」

刀装具を使った雀の帯留め

”近藤サト””刀装具””帯留め””小柄”

「刀装具、刀の小柄ですね。廃刀令で、それまで刀を持っていた人たちがみんな古道具屋に売り払って、でも古道具屋も刀だけじゃ売れないんで、目抜きからなにから全部外してバラバラにして売って、そのうちのひとつがこうやって帯留めになったんですね。

昔の金属で、混ぜ物の配合が今と違っていますが、これは一応、金と銀と銅ですね」

「それで、刀装具を作っていた明治金工の職人たちが、今度は帯留めなどの工芸品を作り始めるんです。
笹の帯留めは、七宝と鍍金(めっき)でできていると思います。細い帯締めじゃないと通らなくて。二分でもギリギリですね」

”近藤サト””着物””帯留め”

「こういった古いものが好きなんですよ。失われたものに対するロマンもあるし、超絶技巧へのリスペクトもある。これ、どうやって作ったんだろう?って時間を忘れて眺めていられる小さな世界。根付けも好きです。

アンティークのお店や美術館に行って、いつもほぉっと見惚れてます。絵画もそうだし、美的なものが好きなんでしょうね。

琉球ガラスの帯留めは、今年卒業した私の大学の教え子たちがくれたんです。帯留めを選んでくれるなんて、本当にうれしいですよね」

乳白色の帯留め

「これは私の祖母の。珊瑚だっていうんだけど、貝じゃないかっていう説もあり。
母親が「これ珊瑚だって言われたんだけど貝だよね」と言うんですが、私は石じゃないかなと、家族で見解が分かれています」

”近藤サト””刀装具””帯留め”

「ともてかわいらしいし、何にでも合うところが気に入っています。結城紬と色合いがバッチリあうんですよ。帯留めをあえて派手にせず、乳白色であわせちゃいます。基本的に八掛も全部、着物と同色であわせますね。

大島の裏は朱っていうのが昭和の一時期流行りましたけど、手持ちのものは同色に掛け替えたかな。同じ色合いのほうが帯や小物が合わせやすくなりますね」

芥子パールとエメラルドのかんざし

”近藤サト””かんざし””簪”

「今日、挿しているのは昭和の戦前のものだと思います。
こういう細かい細工が日本人は得意なんですよね。今ではこれももうできない、って言われました。芥子パールとエメラルドが入っているんですけれども、ものすごい細かい。
土台は鼈甲(べっこう)ですね。

私、宝石の鑑定の人が持っている目にはめるルーペを持っていて、骨董品屋さんに見にいくんです、嫌がられますけど(笑)。それでみて、大丈夫だ、ちゃんと石がはまっているって思って買いました」

”近藤サト””かんざし””簪”

「手前の青色のものはガラスですね。昔のお嬢さんたちが頭に挿していたようなイメージのもの。

いびつなパールも、こうやって利用していたんだなって思わせるのが、その隣の小さな茄子。茄子ってよくあるモチーフですけど、こういうのも遊び心があってかわいいですよね。

一番奥のHのかんざしは、現代ものでエルメスです」

黒繻子に白鳩、アンティークの帯

「黒の繻子地に白い鳥がバチッと飛んでいる、ある意味アバンギャルドな柄。
こういうの、いまの子たちも好きなんじゃないかしら。ちょっと光沢のある生地に刺繍ってスカジャンみたいな感じもするし(笑)。派手ですよね」

”近藤サト””アンティーク””昭和刺繍””鳩”

「アンティークの帯ですが、昔のもののほうが奇抜だったというか、ぜんぜん地味じゃないんですよ。明治大正期の東京の人はどんな着物を着ていたんだろうって想像するんですけど、派手派手だったに違いないと思っています。この帯はいつのものか定かではないのですが、黒繻子の帯が流行ったのは明治からなんですって。

鳩もね、戦前に鳩ブームありましたよね。各新聞社が伝書鳩を持っていて、鳩を飼う趣味もあったりして着物も帯も鳩モチーフは多かった。当時の人々にとって象徴的な鳥だったんじゃないでしょうか。逆に、今はまったくない。最近は流行らないですね」

”帯””昭和刺繍””アンティーク””鳩”

「これは刺繍部分の盛り上がりも立派で、いわゆる昭和刺繍と言うものでしょうか。
今じゃ縫えないものと、お世話になっている東京の着物屋さんが教えてくれました。こんな面倒な刺繍、もう誰もしないし、やったとしてもどれくらいお金がかかるかわからないからと。

そういうものを手にできるのがアンティークの魅力ですね。ただ、短かすぎたので、仕立て直して長く伸ばしました」

”近藤サト””着物””牛首紬””白根澤”

「そういえば若いころ、明治から大正くらいに流行った地味な織りの丸帯にはまったことがあって、短いので一重のお太鼓にして結ぶっていうのをしていましたね。リキがなくなって、処分してしまったものもありますが。

あと形見でいただいた男性のお対のものを、身丈を継いで女性ものに仕立て直したことがありました。大島紬の亀甲絣で、かっこいいの。

でも、女性が着るとやはり目立つんです。だから半襟をたっぷり出すとか、思い切ってアンティークの帯を締めるとかして工夫します。
男性ものを着ているということでルールをひとつ破っているので、このさい自由に着ちゃうおうと思って。そういうときにもアンティークの帯を使いますね」

”近藤サト””着物””牛首紬””白根澤”

取材・構成/渋谷チカ
撮影/五十川満
ヘア・メイク/若宮祐子(特攻隊)

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