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母の想いが込められた大島紬 「オフィシャルアンバサダーが伝えたい大島紬の魅力」vol.1

母の想いが込められた大島紬 「オフィシャルアンバサダーが伝えたい大島紬の魅力」vol.1

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「世界三大織物」や「日本三大織物」ともいわれている大島紬。「一家に一枚は大島紬」といわれた最盛期の昭和50年代より、今なおその魅力は尽きることがありません。あなたの箪笥やご実家にも、おばあさまやお母さまから受け継がれた大島紬が静かに眠っていませんか?

大島紬枡屋儀兵衛八代目

ポーカーフェイスの奥にひそむ、いたずらっ子な瞳。家業である大島紬メーカーを継がれた立場から、伝統的工芸品である大島紬のこと、セカンドライン「Kimono Factory nono」のこと、また現在の着物の姿と未来の形について伺いました。

大島紬が大流行した昭和50年代、「一家に一枚は箪笥の中に大島紬が入っている」といわれたそう。
あなたの箪笥やご実家にも、おばあさまやお母さまから受け継がれた大島紬が、静かに眠っていませんか?

都喜ヱ門の白大島

きものLifeプロデューサー・星君枝です。
私は着物の中で大島紬が一番好きで、現在「大島紬オフィシャルアンバサダー」を務めるほど。

着心地の良さ、織り技術のすばらしさ、色柄の魅力…
自分が大好きなあまり、着物販売員だった頃はお客様に、現在では生徒さんに、よく大島紬をおすすめしています。

全5回となる本コラムでは、大島紬の魅力をみなさまに、より具体的にお伝えできましたらと思います。

母への想いと大島紬

まず先に、母への想いと着物にまつわることからお話しさせてください。

私が初めて大島紬に出会ったのは20歳過ぎなので、もう37年も前のこと。
岩手県釜石市で生まれ高校まで過ごしましたが、父の仕事の関係で小学2年生から両親と離れて暮らしていた期間が長く、両親と妹は東京、私は祖母と岩手で暮らしていました。

高校を卒業後、上京して就職先の寮に1年間入寮し、その後やっと両親と同居できましたが、22歳で結婚したので一緒に生活できたのは3年間だけ。

藍泥大島紬

結婚する際には、母が着物を誂えてくれました。
昭和60年ころの話なので、当時は、結婚するときに着物を持たせる慣習がまだ一般的なものでした。

父は大工でしたが、病弱で怪我もよくしていたので経済的には厳しかったと思います。
それでも嫁ぐ私に惨めな思いをさせたくなくて着物をひと揃い持たせてくれた母の想いがとてもありがたかったこと…後になって強く実感いたしました。

着物ひと揃いの内訳は、訪問着・付け下げ・黒紋付・小紋などが10着ほど。
そしてその中に、大島紬がありました。藍泥大島と白大島で、大体の価格も覚えています。緯双(よこそう)絣なので現在流通されている大島紬よりは手が出やすい価格でした。

大島紬との出会い

初めに誂えたのは、藍泥の大島紬。
母も私も着物の知識がなかったので、着物屋さんに勧められるままに購入しましたが、20歳そこそこなのにずいぶんと地味な色柄でした。

当時流行していたアンサンブル(着物と羽織)で持っていますが、今となってはお対の羽織は古めかしく感じられるもの。申し訳ないと思いつつ箪笥にしまってあります。

藍泥大島紬

当初、大島紬の知識はほとんどありませんでした。

それでも着るのがうれしくて何度か着ていましたが、30代、40代になるにつれて、

・似合わない
・野暮ったい
・思ったイメージにならない

そんな印象になってしまってほとんど着なくなり、眠ったままになってしまいました。

藍泥大島紬

32歳から一般企業で働いていましたが、あるきっかけから好きなことを仕事にしようと思い立ち、50歳を目前に着物を生涯の仕事にすると決意。
その時思い浮かんだのが、一度も袖を通していない小紋や、眠らせてしまっていた藍泥の大島紬のこと。

父は私が結婚した翌年に他界し、またこの転機の数年前に母も他界しました。

母の死に目に立ち会えなかった後悔の気持ちが未だに残るとともに、私のために着物を揃えてくれた母への感謝と、着てあげていなかった着物たちを身に纏って仕事をする。そう心に誓いました。

似合わない民芸調の大島紬を着こなすコツ

藍泥の大島紬は、オレンジ色の名古屋帯とセットで求めていました。
ですがどうしても帯が気に入らず、20代でほんの数回使用してからすっかり使わなくなってしまいました。

30代になり好きな色と苦手な色が自分で分かるようになって気づいたのが、オレンジ色は絶対的に苦手な色だということ。40代も後半になりいよいよ、今後この帯を締めることはないだろうと判断。母には申し訳ないけれど手放すことにしました。

そして気づけば、十何年も眠らせてしまった藍泥の大島紬。
50歳を目前にしてようやく再び着るようになりましたが、紺や藍色、そして民芸調の柄が私には似合わないのです。

年齢を重ねると肌のハリが若いころとは違いますし、顔のたるみや下瞼のくぼみが強調されてしまい、どうにも垢抜けない、野暮ったい。どうしたら自分が納得できる着こなしができるのかと手持ちの帯をあれやこれやと合わせてみて、好きなピンクの帯でも納得できませんでした。

藍泥大島紬の帯合わせに苦戦

それでも諦めず模索しておりますと、最後に行き着いたのが、寒色系のパーソナルカラーの帯や淡いグレーの帯。

藍泥大島紬のコーディネート

苦手な色も柄も中和される感じがして、「似合うに寄せる」自分らしい着こなしになってきました。

伝統的な柄や民芸調の大島紬は、民芸調を活かすのか都会的に装うのかなど、「どんなイメージで着こなしたいのか」をまず思い浮かべてから帯合わせを考えることがポイント。
具体的なイメージを持つことで、バランスのとれたコーディネートに仕上がります。

時代感を漂わせる八掛の色

私(現在58歳)と同世代の方なら、大島紬の八掛の赤色を見れば「昭和に作られたものね」と、大体の見当が付くと思います。

昭和の真っ赤な八掛

昭和の時代の大島紬の八掛は、

娘(未婚) … 赤
少し年齢がいくと … 錆赤や赤茶など

と、ほぼ自動的に赤系の色で決められていたようです。
私の大島紬も真っ赤な八掛でしたが、ご想像の通り、寒色系の帯を合わせた着こなしにはどうも赤が邪魔をしていました。

生地にハリがあり丈夫な大島紬は、摩擦で八掛が擦り切れやすいもの。
藍泥の大島紬、白大島紬ともに結構な着用回数でしたので、八掛の擦り切れを通り越して生地まで切れては大変と、ガロンレースで補強して誤魔化しながら着ていましたが…

泥藍大島紬の八掛の色

やっと昨年終わりに仕立て替えをお願いし、その際、絣柄の一部に使われている薄縹(はなだ)色に八掛を別染めし、つけ替えてもらいました。

色味が統一されたのでスッキリとスマートな表情になった気がします。

二着目に誂えていた白大島紬は、私の好みの柄のもの。当時、ピンクの絞りの羽織と中紅色の博多織名古屋帯の3点セットで求めていました。

ですが、ピンクの絞りの羽織は若いころこそ気に入っていたものの、さすがに今では色が若すぎて出番がなくなっています。

中紅色の博多織名古屋帯も柄が気に入っていなっかったり、着物との色合わせがマッチしなくなってきたように感じられ、こちらも出番が少なくなっています。

昭和っぽくなってしまった白大島のコーディネート
白大島のコーディネート

最近は、パーソナルカラーのピンク色・水色・白・紫色などの帯を合わせて、大人かわいいイメージでコーディネートを楽しんでいます。

こちらにはローズピンク色の八掛をつけており気に入っていましたが、やはり擦り切れてしまっている状態。

仕立て直しの際、同じ色味がなかったので、こちらも八掛を同じローズピンク色に別染めしてつけてもらいました。

大島紬は、洗い張りすると糸の糊が落ちて柔らかくなると聞いていたので戻ってくるのを心待ちに。

藍泥の大島紬も白大島紬もハリのある生地でしたが、耳にしていた通り、仕立て直しの後にはハリ感がおさまってしなやかになり、さらに着やすくなりました!

白大島のコーディネート

緻密な絣織に魅了される

二着の大島紬までは知識がなく、その着心地の良さに満足するだけだったように思います。

桜柄の大島紬

私が大島紬の魅力に惹かれていったのは今から8年ほど前、桜柄の大島紬に出会ってから。まだ、着物を仕事にしようとは頭の片隅にも思っていなかったころです。

着物の展示会でその大島紬を見かけ、まるで後から染めたような絣柄に「なんて素敵なんだろう」と、見惚れてしまいました。

結局お嫁にもらうことになったのですが、拡大鏡を使わないとよく見えないほどの細かな絣細工のもので、絣織の緻密さに見れば見るほど惹き込まれ、今なおすばらしい技術に惚れ惚れとしています。

桜柄の大島紬

様々な色を染めつけた絣糸を経糸(たていと)と緯糸(よこいと)で織りあわせ、微細なズレもなく、一面の柄を絣技にて表現する…
これほどまでに細かな絣模様を織ることができるのは、世界で唯一、大島紬のみ。思わず息をのむほどの技術です。

そしてこの桜柄の大島紬がきっかけとなり、少しずつ大島紬について知りたくなってきました。

およそ40工程ともいわれる職人さんたちの努力と技。
最終工程となる織工さんは微細な絣を合わせながら織るため、1日に10cmほどしか織ることができないそう。一反を織るまでに少なくても3〜4ヶ月はかかります。デザインを作るところから織り上げるところまで1年以上をもかけてつくられる大島紬のすばらしさが、段々と分かってきました。

大島紬を着ると、たくさんの職人さんたちの想いが込められているんだなぁと、感慨深い気持ちになります。

大島紬を纏うということ

白大島のコーディネート

着心地の良さも大島紬の魅力ですね。

軽さ
艶感
ほどよいハリ感
さらりとした感触
着付けが楽でシワになりにくい
普段に気軽に着られる
「シュッシュッ」という衣擦れの音
キリッとした気分にさせてくれる
雨で濡れても縮みにくい*

*それでもガード加工をおすすめします

軽さについては、単衣仕立てにするとよく分かりますよ。

織の密度が高いので風が吹くと裾がハラっとなびき、風が強い日は軽さのあまり裾がめくれてしまわないように気をつけています。
着付けもしやすいので、着物初心者の方にもおすすめです。

あなたのお手持ちの大島紬の魅力を再確認するきっかけになるとうれしいです。

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